一線を越えた日のその後。 参照[一線を越えた日][グレンの下準備][それは前団長が悪戯にわざと残したもの]
「詳しくも何も、そのままですけど」
「一体何の話をしているんだ」
「だーかーらー……! ローズピンクのひらひらなベビードール……! 勝手に見ちゃってホントごめんなさいだけどッ……!」
「勝手に見るもなにもそんなものは知らん……!」
「え、ええ〜〜……?」
またまた〜。
ハズカシイからって嘘ついて〜。
私だって今まさにハズカシイ思いをしているのだからおあいこで良いじゃないか。
「そんなこと言ってもあったんですもん。執務室でシャワー浴びて着るもの探してたときに。引き出しの奥のほうに」
「まさか。誰かが侵入したと?」
「いやいや……えー?? いや、そんな……ねぇ?(誤魔化すにしても他にあんだろー?)」
「・・・。疑っているな?」
「……ハハ。いやまさかそんなわけ」
「・・・。はぁ……まぁ明日確認してみないことには何も進まん。とにかく今は寝かせてくれ……」
「うぐ……ハイ……」
──そして翌日。
「ブルーさん。資料室の鍵、返しに来ました……って。何してんですか?」
扉を開けたらば新世紀なゲンドウさんの如く机の上で手を組み待ち構えているブルーの姿。
そんな姿で迎えられたら此方も構えてしまう。
「──犯人が分かった」
「……え??」
一体なんのお話か。乙女ゲームじゃなくて探偵ゲームの始まりですか。
とか一瞬頭を過ぎるが、生憎察しが良いので昨日のことだとすぐに気付いた。
昨日のこと。
つまりはローズピンクのひらひらなベビードールの犯人か。
「フム。当ててみせましょう。うー……ん、犯人は……ブルーさんと既成事実を作りたい女性!」
「違う」
「じゃあ〜……私が見つけるのを想定し怒らせて別れさせるため!」
「見当外れだな」
「ええっ! じゃあー……やっぱりブルーさんの趣味……?」
「違う。全くもって見当外れだ」
「ええ〜……? 本当ですかぁ〜?? うら若き王城メイドに命令して恥ずかしがる姿を眺めながら此処で酒でも飲んでたんじゃないですかぁ〜〜??」
「ッ何でそんなにも具体的なんだお前は……! 断じて違うからな……!」
「・・・アヤシイ。そんなにも否定しているところが逆に」
「何故そうなる……」
「分かりました。これこそ真実ですよ。伯爵令嬢のレイラさんのものですよね?」
「はあ? 何故レイラ嬢が出てくる……?」
「え? ヤリ友なんじゃ??」
「やりとも……?」
「ヤるだけの友達」
「やるだけ……。や、ヤ……!?」
「セックスフレンド?」
「はあ!!? な、何、そんな訳ないだろう……! 馬鹿かお前は……!」
「えっ、違うんですか? ずっとそうだと思ってたんですけど……」
「違う! 何もかも違う! 勘弁してくれ! 一体どういう誤解だ……!?」
(じゃあメルヴィンさん。なんも心配ねぇっす。安心してレイラさんを好きになっておくれ……)
「えーー……だってー……なんかあのベビードール似合いそうだったしー……」
「似合うもなにも……! そもそも公爵家に生まれ育った人間が伯爵家の娘を弄ぶわけないだろう……! そういうのはキチンとした娼婦に頼むんだ……!」
「えーーー。ソウナンダーー。娼婦ねェーーー。へェーーー」
「ぐッ……」
「やっぱそっかァーー、常識が違うっていうかァーー。恋人じゃなくて娼婦ねェ〜〜〜。へェ〜〜〜」
「ッ、とっ、兎に角……! 犯人が分かったという話でだな……!?」
「ああ。そんな話でしたっけ??」
(つかブルーさんもそんな風に慌てるんだ……。意外かも)
極寒クールにキメてるくせにちゃんと人間らしいとこもあるじゃないか。
いや。そもそも『セフレ』とか言ってくる人が居ないのか。
うん。そうだな。
ごめん。
──で。
結局あのベビードールの真犯人は〈前・騎士団長〉らしい。
(まさかの前・騎士団長……。そんな人物推理出来ないって……)
朝っぱらからメイドに聞き込みして、ブルーの執務室を担当している一番の古参(齢70)に辿り着き、事の顛末を教えてもらったんだとか。
「あら。やっとお気付きになられたんですか」
なんて言われたらしい。
「いや、てか何でベビードール隠した……?」
「それが全くもってしょうもない理由でな。早くアレを着てくれるいい女を見つけて結婚しろ、という事らしい」
「という事らしい、って……。は?? え??」
「ううん……。団長職を引き継いで早々に見つけると思っていたんだろう……。“アレは一体何なんですか”と聞かれると思いきや、もう5年以上経ってしまった……」
「えぐ。なんか不発すぎて可哀想……」
「千聖も会ったことあるぞ」
「エッ!? どこでですか……!?」
「2カ月に一度屋台が来るだろう? あの“オヤジ”がそうだ」
「ええッ!? そうなんですか!?」
「そこそこの騎士団員でもなければあんな屋台で国を回れるわけが無い」
「確かに……魔物出るしな……」
「因みに奥様は元護衛騎士だ」
「つよ」
それから2カ月が経った頃──、
前団長が暫くしょんぼりしていたらしいと護衛騎士のカイさんから聞いて思わず笑ってしまったのは此処だけの話。




