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異世界でも私、頑張って幸せになる!~転生少女は世界平和はともかく自分の幸せの為に精一杯なのです~  作者: 高丘楓


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第27話 好きな人と、焚火の約束

 また浮かれている。


 手に、腕に残った彼の体の感触が。

 耳に残った彼の言葉が。

 全身に残った彼の体のぬくもりが。


 あぁもう、好き。

 好きだよ、どうしようもないくらい。

 自分でも自分はちょろい娘だとは思うけど、恋愛経験がほとんどないのが悪い。


 そして、無自覚だったけど、たぶん私、完全にティガみたいな男子が好みなんだ。


 いや、ベルちゃん事件くらいからティガのことを意識していたし、結界事件のときには無自覚好き状態だったのは確かだよ?

 でも、彼に触れていくことで、無自覚が確信になって、一緒にずっと居たいって思って、支えたいって思って。


 もう完全に大好き状態です。


 ティガの告白を受けて、自分も告白して、二人で照れながらその日は半獣人の村に戻ったんだけど、そこから私は自分の部屋に籠ってひたすら見悶えていたわけですよ。


 だって、こんな経験初めてだし、好きな人に好きって言われたんだし、そりゃあ悶えますとも。

 その勢いでエドレシスに『彼氏できたっ!』って神パッドでメッセージ送っちゃったよ。

 返信は『笑』だけだったけど。あの女神、ホントいい根性しているけどまぁいいわ!


 と、ここで私は重大なことに気付かされる。




 ――――――好きとは言ったけど、付き合うって言ってなくない?――――――




 そうだ。

 私とティガは好きとは言い合ったけど、『付き合って下さい』とは両方とも言っていない。


 これは、彼氏ができたといっていいのだろうか?

 普通に考えたら、小さい子どもがよく言う、『〇〇くんのことすきー』『ぼくも○○ちゃんのことすきー』みたいな感じなんじゃないのだろうか?


 いや、流石のティガも、こっちの世界では成人しているんだし、そんな小さい子どもレベルの認識の好きじゃないとは思っているけれども、―――全くその可能性が無いとは言い切れない。


 何より、元々のティガ達が住んでいた村時代に、恋人とか彼氏彼女とかの概念がそこにあったのかと訊かれると、怪しい部分が大きい。

 良くも悪くも閉鎖された環境で、いるのが夫婦とその子ども達でしかないのだ。中間の存在という者が存在しない。……偏見かもしれないけど。


 そして、ティガは確実に、そういったことに興味が無さそうに育っている。

 だって自分で言っていたし。

 自分の気持ちに向き合うのは初めてだって。


 …………直接、「私たちって、恋人ってことでいいんだよね?」と聞くわけにもいかず、私はベッドの上で右に左にゴロゴロと体を動かしながら思考する。

 そして、一つの行動に出ることにした。




 「えぇ?恋人ですかぁ?一応わかりますよ。村の大人達が持っていた本にはそういう物語とかもありましたしぃ。…………でもどうしてそんなこと訊いてくるんですか?ユワちゃんは」

夜ごはんの後に女湯で、年も近い年長者の鳥の半獣人のアレッタに私はなんとなく訊いてみたところ、ちゃんとそういった概念自体は半獣人の子達の中にもあるみたいだった。


 「えっと……、後学のため……?」

「…………族長と何かあったんですねぇ…………」


 テキトーな返事で誤魔化そうとする私の嘘をすぐに見破り、アレッタは呆れたような笑いを浮かべて私にサクッと言ってきた。

 この子、エスパー?


 「大丈夫ですよぉ。多分村の他の子達。えぇと、ヒュー君はもしかしたら気付いているかもしれないけど、それ以外の子達は何も気にしてないみたいですから」

「…………わかる?」

「……………………バレバレですよ、ユワちゃん…………」


 湯船に深く浸かり、顔が真っ赤になっているだろうことをバレないようにしようとするが、彼女は首を横に振って、それが無意味であることを教えてくれる。


 「ユワちゃんが族長のこと好きなのも、族長がユワちゃんを好きなのも、見てたら普通に気付きますよぉ?いいじゃないですかぁ、素敵ですよぉ?」

「でもさぁ、好きって言ってもらえて、好きって言って、それで満足しちゃって、今になって私とティガって恋人なのかなぁ?って考えちゃって。…………だって、付き合って欲しいとかお互いに一切言わずに終わっちゃったんだよ?」

「いやぁ、ユワちゃん、すでに付き合ってるのと一緒だと思いますよぉ?ほぼ毎晩、族長と焚火を囲みながらお話しして、私達を守ることしか考えていなかった族長が、どこかへ行ってしまいそうなユワちゃんの腕をつかんで一緒に消えちゃって、戻ってきたと思ったらユワちゃんを抱きしめてるし。それから同じテントで寝るし、…………族長、割とどストレートにユワちゃんを大事にしてたじゃないですか」


 アレッタに改めて言われると、確かに私は大事にされているような気がする。

 というか、割とティガが私を放したがらない感じもするし。

 ヤバい。ちょっと今更ながら彼の不器用な好意の表現に凄く恥ずかしくなる。


 「あー、でも、ユワちゃんの不安はちょっとわかるかも。…………昔から族長って、ずっとおじさんに鍛えられていて、色恋とかってほとんど無縁っぽかったし、みんなには優しかったけど、頼れるお兄ちゃんとしてしか認識されてなかったかなぁ。だから、恋人っていう概念があるかどうかは、正直怪しいかも…………」

「だよねぇ…………。…………ティガぁ…………」


 湯に身を委ね、星空を見上げる。

 アレッタの言っていることは多分当たっていると思う。

 恋人の概念が無いなら、彼氏彼女とか、恋人とか呼べないし。


 って、あれ?

 また私何か見落としてない?


 「ねぇ、ふと思ったんだけどさ……」

「どうしたんですか?改まって」

だらけていた姿勢から背筋を伸ばしてアレッタに正面から向き合う。


 そして、割と直球に訊く。


 「知人とか友人の後に恋人っていう関係性の概念が無くって、そういう状態でもお互いに好きってことは、その関係性って……、ティガの、族長の中だと―――」


 「―――夫婦にまで飛びますね―――」


 私はアレッタから言葉のカウンターを見事にキメられて、そのままのぼせるように意識を手放した―――。




 顔に少しぬるめの優しい夜風が当たり、熱を冷ましていく感触が心地良い。

 多分集会所の縁側で横になっているんだろう。

 少し眠気が強くて目は開けられないけど、誰かが私に付いて看てくれているのはなんとなくわかる。

 頭の下に感じる感触で、誰かが私を胡坐の膝枕で寝かしてくれていることを知る。

 それがなんだか落ち着いて、しばらくその状況に甘えてしまう。


 「…………ユワ、気が付いたか…………?」

「ん…………」


 そっか。ティガか。

 そう思いながら、私は瞼を開けずにそのまま小さく返事をする。


 「アレッタが呼びに来たときには焦ったが、ただの湯あたりだったみたいで安心した…………。どうだ?起きれそうか?」

「ん。でも、…………もう少し、こうしてたいな…………」


 私のちょっとしたわがままを、ティガは軽く薄い溜息で受け止めて、また静かな時間が流れる。

 その時間がなんだか好きで、ティガはちょっと足が痛くなるかもしれないけど、手放したくなかった。


 「ねぇティガ、………………好き………………」

「あぁ。俺もだ」


 そうじゃなくて。


 「……私だけが言うのは、なんかちがう…………」

「…………好きだ、ユワ…………」


 「えへへ…………。……好きな人に好きって言ってもらえたってことは、恋人、……ってことで、いいんだよね?ティガ…………」

「恋人…………というのがどういう関係かはよくわからないが、ユワがそう言うなら、恋人でいいんだと思う。…………ただ…………」


 勢いで訊いた私に合わせてくれるティガは、やっぱり恋人の意味がわかっていなかった。でも、合わせてくれて、私を恋人だって認めてくれた。

 ただ、両手放しってわけでもなかったけれど。


 「俺は、ユワとずっと一緒にいたい。恋人ではなく、添い遂げる相手として」


 ―――アレッタ。アレッタと私の読みは当たっちゃったよ―――。


 想像はしていたけど、実際聴くと恥ずかしくなりすぎて、逆に冷静に心の中でツッコミをいれてしまう自分がいる。


 「…………うん。…………私もそれがいいな…………」


 でも、私は素直にその言葉を受け取った。

 だって私もティガが好きで、ティガは私を、ティガが好きな人っていう存在にしてくれたから。


 「……まだまだ沢山やらないといけないことがあるけど、落ち着いたらまた二人で焚火を囲んで、…………また一緒にお話、しようね…………?」

「あぁ。約束する」

「…………楽しみにしてる。ティガ」


 明日はコリジアータ平原の宿営地に行ってから王都に跳んで、諜報部隊と合流してまた宿営地に戻る。ちょっと忙しい一日になりそうだ。

 でも、それが終わればゼスさん達がこの村に来て、子どもばかりで大変だったみんなの生活を手伝ってくれる。それだけでも頑張るだけの理由になる。


 いろいろ考えていると、だんだん眠気も強くなり、私はそのままティガの膝枕で寝てしまった。


 翌朝目を覚ますと、集会所の私の個室のベッドの上で一人のびのびと眠っていたようで、部屋には私しかいなかった。

 きっとティガが運んでくれたんだろう。

 恋人のティガが。


 私は少しだけ笑って、身支度を整える。


 自分たちがしっかりと前に進んでいくために。

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