第24話 元宮廷魔導士の本領発揮します!
「まずは私が全ての瘴気を全て吹き飛ばします!みなさんはそれに合わせて作戦通りに!」
『オーッッッ!!!!』
私の拡張した声に合わせて騎士と獣人達が叫び、一気に臨戦態勢になる。
その声を聴いて私は魔力を解き放ち、戦場に暴風が吹き荒れる。
できればこれで魔物も一部倒せたらいいんだけど…………。とか思っていたら、よく見たら、何体もの小型の魔物が荒れ狂う風が集まった竜巻に巻き上げられて空高く飛んでいる。
ラッキーだラッキー。これで作戦の成功率も上がるし、負傷者も減らせるだろう。
魔力の風は瘴気を絡めとり、当初の目的通り戦場の瘴気濃度を一気に減少させた。
「よーしっ、想像通り!」
「ユワの言っていたことはホントだったんだな」
ガッツポーズを決める私の横でルヴィンさんがボソっと呟く。
さて、なんのことだったか……。とかちょっと色々思い出そうとするけど、特に何も思い出せない。
「戦場の地形を簡単に変えちゃったり、皆さんを攻撃するくらいは余裕です。とか最初に会ったときに言っていただろ」
「あ、そっか」
「…………忘れていたのか…………。この元宮廷魔導士は」
なんか残念なものを見るような目で私を見てくるルヴィンさんの目を、私は直視できなかった。
そんなことも言っていた気がする。ルヴィンさんと交渉した時に。
とはいえ、今はそんなことはどうでもいい。やるべきことはまだ終わっていない。
「平原の魔物どもを全て駆逐するぞ!俺に続けぇッッ!!」
「私達は魔瘴石の破壊だ!ユワを守れ!!」
ルヴィンさんとゼスさんが叫び、二人に誘導されるように部隊が分かれていく。
私もゼスさんの後ろをついていくように走り、魔物討伐チームが空けた穴を突き進んでいく。
息を切らしながら数分走って辿り着いた場所には、獣人達の宿営地からも見えた、数メートルはある枯れ木のようでいて刺々しい無機物のようなオブジェがそそり立っていた。
風で吹き散らしたはずの瘴気は、しかし、オブジェの所々に埋め込まれている魔瘴石から湧き出し、周辺の空気を淀ませる。
「これ、ですよね?ゼスさん」
「あぁ。頼む、ユワ」
一応の確認の言葉に、ゼスさんは頷きながら剣を構える。それに倣うように騎士達もそれぞれの武器を構えていく。
私も軽く息を飲み込んで意識を集中させる。
魔力を収束させてオブジェに手をかざした瞬間、パリンと薄氷が割れるような音が辺りに響き渡る。
「成功です。私がこのまま魔力障壁を抑え込みます!」
「了解だ!総員、魔瘴石を破壊しろ!!」
雷神のゼス。
ヒュームゼス王国第五騎士団団長の二つ名で、魔力の雷を纏わせた剣技や、稲妻や雷光の如き動きで全てを斬り捨てることから名付けられたものらしい。
私が初めて会ったときにはそんな感じには見えなかったけど、今ここで一緒に作戦を遂行している彼は、『雷神』と呼ぶにふさわしかった。
守りを全て捨て攻撃に全振りしたゼスさんは号令と共に全身に雷を纏い、衝撃波を起こしながら最上部に設置されている魔瘴石に向かい跳び、重い斬撃を当てる。
一撃で破壊はできず、しかし魔瘴石には細かいヒビが入ったようで破片がパラパラと落ちてくる。
飛行魔法が使えないゼスさんはオブジェを蹴り飛ばして高度を維持すると、容赦なく連撃を放ち続け、そして、ついには最上部の魔瘴石を粉々に打ち砕いた。
他の騎士達も次々と魔瘴石を破壊していき、オブジェから溢れ出ていた黒い靄は少しずつ量が減っていき、最後の魔瘴石をゼスさんの稲妻のような上空からの一太刀で破壊されたのと同時にその機能を停止した。
「魔瘴石の破壊を確認!魔物討伐チームへの加勢へ行くぞ!」
ゼスさんは流れるように指示を出し、私もそれに倣って騎士達に混ざって移動を開始する。
魔物と直接対峙するのは初めてだ。
ゼスさんとルヴィンさんは、『ユワは回復と援護に回ってくれればいい。直接的な戦闘は獣人と騎士が受け持つ』と言ってくれていた。
正直ありがたい。安全なところから魔法で一網打尽ならできるけど、こうやって敵味方入り混じってしまうとターゲッティングが難しいし、立ち回りもうまいことできない。
戦場には魔物の死体がゴロゴロと転がり、所々に負傷した獣人や騎士達が座り込んでいる。
負傷した味方を確認次第、すぐに回復魔法をかけて治療していく。
それを目撃した他の味方達も私に声をかけて回復支援要請をしてくる。
護衛に付いてくれた二人の騎士と一緒に戦場を走り回り、みんなを回復させていく。
幸い重傷者に該当するような人は居なかったみたいだけど、それでもダメージが蓄積していくことで動けなくなる人達はいたみたい。
そうこうしている内に、一際大きい咆哮が戦場に響き渡る。
強い敵意を感じるその方向に視線を向けると、黒く大きな影が見えた。
あれは…………ドラゴン……?
いや、実物なんてこの世界に来てからも見たことは無かったけどさ。
「えーっと、あれって…………」
「おそらくドラゴンです。あの大きさだと成体かと」
「ドラゴンかぁ…………。私、戦ったことが無いんですけど、あれって人間に倒せるものなんですか?」
「一応は。犠牲さえ覚悟できるのでしたら。ドラゴンの能力などにもよりますが、騎士団長クラスの人間が三人がかりでなんとかなるレベルです」
騎士団長レベルの戦闘力三人がかりか……。
一人はゼスさんが確実。そんなゼスさんと戦い続けられることを考えると、ルヴィンさんも騎士団長レベル。
あと一人…………。
うん、無理。
でも逆に考えると、騎士団長レベルの攻撃ができるのなら、何人束になっていても大丈夫ってことかな。
とかいろいろ考えていると、ドラゴンの方から激しい戦闘音が聞こえ始めた。
「ルヴィン様とゼスが戦闘を始めた!動ける奴は二人に他の魔物を近づけさせないように援護を!!」
獣人からの伝令で、二人が戦闘状態に入ったということがわかった。
「どうしますか?ユワ」
「…………どうすればいいと思う?」
騎士の質問に、私は明確な答えなんて出せずに質問返しをしてしまう。
「でもまぁ、騎士団長レベルの人間がもう一人足りないっていうのはヤバいですよね?…………とりあえず、加勢しに行きます!」
私が戦闘で役に立つとも思えないけど、できることはある。
「わかりました。お供させて頂きます」
「ありがとうございます!」
私は再び走り、激しい戦闘が繰り広げられている場所へと向かう。
さっきから走り続けているせいで普通なら疲れがたまるところなんだけど、自分自身に回復魔法をかけて肉体的な疲労はほぼ皆無だったりする。けど、あれもこれもと考えると、思考の疲労の方が強くなる。こればかりは魔法で解決できないしなぁ。
さっさとドラゴンをどうにかして終わらせないと。
攻撃の手数が多いルヴィンさんとゼスさんは、ドラゴンを翻弄するように互いに位置を変えながら攻撃の手を緩めずに戦い続けている。
しかし、黒いドラゴンの表皮は傷つくものの、それが活動を終わらせるための致命傷となることは無く、力強く大地を踏みしめながら、炎のブレスで牽制し、尻尾や鋭い爪で二人に襲い掛かる。
「ゼスさん、ルヴィンさん!援護します!!」
私は二人に身体能力強化魔法と防御魔法、回復魔法を同時にかける。その結果二人の動きは格段と良くなってドラゴンを追いつめていくが、やはりあと一手が足りない。
二人とも攻撃力も増しているし、一撃一撃は相当重い物になっているはずなのに。
ドラゴンの防御力がおかしいのだ。
「ドラゴンって魔法通用します?」
「自然属性の魔法だと通りにくいとは聞いたことがあります。あと、中途半端な威力の魔法だと標的がこっちに向いてしまいますし、あのドラゴンの様子を見ていると、どうやら防御特化タイプの可能性が。せめて団長の最大の一撃が放てれば別なんですが」
「使えないんですか?」
「いえ、あの感じだと、使うための溜め時間が確保できないみたいですね……。あともう一人、二人と同レベルで牽制できる戦力がいれば…………」
『―――あと一人―――』
私はその言葉に彼の姿を重ね、心で強く呼びかける。
『お願い、助けて…………!!』
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