第23話 告白とかまだだけど、それを弄ってくる大人もどうかと思う!
私の問いに対してルヴィンさんは一つため息をつく。
あまり嬉しくない間を開けて、まるで私を焦らすかのように。
とはいっても、私は別に推理が得意というわけでも無く、言葉の裏を読んだりするのも苦手だったりする。
だから、ルヴィンさんとティガが親戚とかである可能性は、正直高いとも低いとも思っていない。
あくまで『可能性がある』から訊いただけだ。
「いや?ティガは俺の家族でも親戚でも何でもない」
「あ、じゃあまぁいいや。細かいこと言われてもよくわからないし」
ルヴィンさんの割とあっさりとした返答に、私もあっさりと言葉を返した。
多分この感じだと追及したところではぐらかされておわりだろうし。なにより、指示しに出て行ったゼスさんももう戻ってくるだろう。
「いいのか?惚れてる男の事を知りたくないのか?」
「いや、知りたいとは思うけど、なんか勝手に訊くのも違う気がするし、うん。ティガが言ってくれるまで待つことにします」
ルヴィンさんは意地悪く言ってくるけど。
というか、ルヴィンさんちょっと私で遊んでない?とか思ったりもするけど。
でも言ったもん。ティガは私に言ってくれたもん。
ちゃんと話してくれるって。
「そうか。ユワは割と一途なんだな。ティガは良い嫁を手に入れたな」
「だからまだ嫁じゃないですし!」
「ほぅ、まだ、か。じゃあいつかはユワはそのティガという男と結婚するつもりなのだな」
私とルヴィンさんとの会話に、指示を終わらせたゼスさんが参戦してくる。
二人は悪戯っ子みたいな笑みを向け合って、そして私をからかおうとする。
この二人からしたら、私は娘みたいなもんなんだろう。
昔お母さんとお父さんが二人して私をからかってきたときの感じとそっくりだ。
「…………まだわかりません!…………だって別に?好きは好きだけど、告白したわけじゃないし、されたわけでも無いし。でも一緒に居たいなぁって思ったりもするし、放っておけないって言うか、助けたいって言うか……。それだったらちゃんと告白した方がいいって言うことはわかってるけど、でも出会ってまだ数か月しか経ってないのにっていう気持ちもあったりして―――」
私はゼスさんの言葉を今は否定するように自分が考えていることを並べていく。が、途中からゼスさんとルヴィンさんは私をなんかイタイ子を見るような目で見てきて、自分が恥ずかしいことを言っていたことに気付いた。
「と、とにかく私のことはいいじゃないですか!ティガもちゃんと連れてきますから、協力をお願いします!ルヴィンさん!!」
照れを誤魔化すように大声で叫んで、先の提示されていた条件を承諾する。
ルヴィンさんは牙を見せるようにニヤつきながら、わかったと一言軽い調子で応えてくれた。
「じゃあ獣人の協力を得れたということで、魔瘴石破壊と周辺の魔物討伐の具体的な話をしますね?」
まず、魔瘴石破壊チームと魔物討伐チームに分かれる。
魔瘴石破壊チームには私と、ゼスさんが率いる元第五騎士団の少数精鋭が参加する。元第五騎士団の主な任務は装置の破壊ではなく、魔瘴石破壊の要である私の護衛だ。魔物討伐チームはルヴィンさんが指揮を執り、獣人と人間の一般兵で構成する。魔物は数も多く、一対一で対応するよりか四人チームで対応して一人一人の負担を減らすように編成。
幸い人間も獣人も、コリジアータ平原の戦争という名の演習でお互いの戦い方や能力をなんとなく把握できている状態だ。チームプレイもなんとなく可能だろう。
私はまず、戦場全体の瘴気を魔法で吹き飛ばし、その後で魔瘴石の装置が展開している魔力障壁を中和・無効化する。その間にゼスさんを筆頭とした少数精鋭の騎士達が装置を破壊。
必要であれば魔物達との戦闘に介入していって、平原の魔物を一掃。
その後は人間側への報復で、簡単に獣人側に侵攻できないようにする。
ここまでで一区切りだ。
明日の朝の魔瘴石破壊作戦の前に、王都へ情報収集チームも送り出しておくことも忘れちゃいけない。
ある程度の説明が終わると、ゼスさんとルヴィンさんは二手に分かれてチーム編成や細かい調整に動き出す。
その間に私は広場に集められた十人の元王国騎士の人達と、情報収集の細かい打ち合わせを行う。彼らはゼスさんに言われていたからか、既に一般の旅人のような服装に着替え、荷物も準備していた。
「ゼスさんからもう話を聞いていると思うんですが、皆さんには王都で情報収集を行ってもらいます。可能な範囲で騎士や兵士達の家族が無事かどうかの確認を行うのと、コリジアータ平原のことが王都でどう伝わっているのかということを優先して調べて下さい。一応期間は約三日間。私が転移魔法で送り迎えをするので、三日目の正午に王都郊外の指定した場所に集まっていて下さい」
私の話を十人は頷きながら聞き、理解してくれる。
「一応念のため、合言葉を決めておいた方がよくないか?」
「そうだな。へまするような奴はいないが、万が一王国側の人間に成り代わられても厄介だ」
二人の騎士が私に提案してくる。
確かに、私はしっかりとこの騎士達の顔を覚えきる自信は無い。
ゼスさんを伴って迎えに行けばすぐにわかるかもしれないけれど、でも、ゼスさんは切り捨てられたとはいえ、元騎士団長だ。ここにいる誰よりも顔がバレやすい。だったらそのリスクは捨てるべきだ。
「え?じゃあ……、―――――――――ってどうかな?」
私はちょっとだけ悪い笑みを浮かべながら軽く提案する。
十人の男達はその言葉を聞いて大笑いし、誰も拒否することなく認めてくれた。
「じゃあ皆さん、情報収集よろしくお願いします!行きますよーっ!!」
魔法を展開し、私はみんなを連れて一気に王都の下町に跳ぶ。
久しぶりの王都は特に変わった様子も無かった。第五騎士団が壊滅したことによる混乱も特に見られない。まぁ下町ということもあってそこら辺は無縁なのかもしれないけど。
送り出す地点と迎えに行く地点を変えたのは、万が一に備えてだったりする。
運が悪いとこの転移魔法の魔力反応を感知されてしまうし、その結果、この場所がマークされることにもなってしまう。
そうなれば帰るときに捕まってしまう可能性だってある。それだけは避けたい。
王都の地面を踏んだ瞬間、騎士達は全員バラバラな方向に散っていき、私もすぐに転移魔法をかけ直してコリジアータ平原に戻った。
宿営地に着いてからルヴィンさんともう一度話し、明日の朝の作戦前に再びここに来ることを約束して、今日は集落に戻ることにした。泊まるとも言っていないし。
集落に戻ると、ついさっきまで狩りをしていたのだろうティガが私に気付いて、上半身裸で流れる汗を布切れで拭いながら近づいてきた。
「おかえり、ユワ」
「た、ただいま、ティガ」
挨拶されただけなのに、なんだか恥ずかしい。
多分ルヴィンさん達の所為だ。二人して私をからかうから。
「どうした?少し熱っぽそうだが。疲れたのか?」
「なんでもない!なんでも、ないから…………。大丈夫」
彼の気遣いから逃げるように視線を逸らし、軽く手で顔を覆ってこの顔を見られないようにする。多分真っ赤だし。
「そうなのか?……あまり無理はするなよ。で、どうだったんだ?その……」
ティガはとりあえずは納得してくれて、そして、少し遠慮がちに宿営地のことを訊いてくる。
「ルヴィンさんは相変わらずだった。あ、でも、明日と明後日もコリジアータ平原に行くことになったの。ちょっと厄介なことになっているみたいで……」
「危ないことじゃないのか?」
一瞬でバレた。
「そんなことないですよ?多分安全?ですよ?」
嘘下手か!と、自分で言えるくらいには敬語になりながら挙動不審になっちゃってることはわかる。
「ちょっと瘴気対策して、ガッとやってバッとやるだけだから大丈夫!」
とりあえず誤魔化すように勢いよく言ってみた。
が、ティガはあまり納得してくれていないのは、その微妙そうな表情を見ればすぐにわかる。
「ユワの魔法は女神公認だから、な。だが、俺にできることがあればいつでも言ってくれ。俺はその…………」
そこまで口にして言い淀むように言葉が途切れる。
「お前の力になれる男に、なりたいと思ってる……!」
その不愛想な顔はどこか照れているようにも感じて、目の前の彼がいつもよりもカッコよく、でも不器用で可愛い、一人の背伸びする男子に見えた。
ただそれが、ただただ嬉しくて、私はニコッと笑って言葉を返した。
「うん―――っ!」
ただの返事で、ただ二文字だけど。
いつもより気持ちを込めて。
多分これはまだ告白じゃないけれど、でも今はそれでも嬉しかった。
正直番とか嫁とかまだわかんない。
でも、彼が私のことを気にしてくれているということがわかったから。同僚とか仲間とか、もしかしたらそれくらいの感情なのかもしれないけど。
翌朝、ティガに見送られながら私はまたコリジアータ平原の宿営地に跳んだ。
まずは色々考える前に、ルヴィンさんやゼスさん達の為に魔瘴石の破壊と魔物の討伐だ。
二人とも、いや、コリジアータ平原の人達はみんな、私にとって転機になったお世話になった人達だ。
だから、やることちゃんとやって、またティガと沢山話したり、一緒にみんなのことを考えていこう。
そう決心して、宿営地の広場に集まったみんなと一緒に、戦場となるコリジアータ平原旧騎士団宿営地へと歩き始めた。
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