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異世界でも私、頑張って幸せになる!~転生少女は世界平和はともかく自分の幸せの為に精一杯なのです~  作者: 高丘楓


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第20話 家と畑と温泉と、自立支援の獣人達!

 「いやぁ、魔法って便利なんですねぇ。普通にやったらこれだけの量の木材加工だけで何日もかかりますよ?」

クラウさんが私の魔法の力を見て、他の獣人達と共に感嘆の声を上げる。


 「流石温泉の女神ユワだ。木材加工までできるなんて、木材加工の女神としても称えなければならないな」

 狼族の獣人も絶賛した結果、私はついに新しい称号を手に入れた。


 ―――無職なのに。


 温泉の女神改め、今の私は木材加工の女神としてその魔法の才能をフル活用している。

 神パッドの機能を使いながら獣人の皆さんから指示された図面通りの寸法で木材を加工して、大型の一軒家が建つ程の量が積み重ねられていく。


 わーい楽しい。


 日本の公務員予定だった私が異世界で公務員になって、温泉掘削担当として頑張って、そこから無職になって、放浪者になってウサギりんご係になったと思ったら、次は木材加工の達人みたいな扱いになってる。


 すみません。半分やけっぱちな部分があります。


 どうせ女神と付くなら、豊穣の女神とかそういうちょっとイイ感じの名前が欲しかった。欲張りかもしれないけど。


 ティガ含む半獣人の男の子達は男の狼獣人のダインさんの指示を受けながら木材を運んだり家の基本となる部分を作っていく。

 気のせいかもしれないけど、ダインさんはなんか、ボルグ君と距離が近いような気がする。同じ狼獣人の系譜を持つからなんだろうけど。


 家の建て方は日本の寺社仏閣とかでもよく見られた石場建てを基本とするみたいで、確かにコンクリートもセメントも無い状況だと基礎も作れないし、この世界、この環境では合理的な建築方法だと思う。


 大学時代、友達に付き合って御朱印を集めていたが為に得た知識が微妙なところで役立った。


 とりあえず、獣人の皆さんの言い分はこうだ。


 『まずは集落の中心となる建物は子ども達に手伝わせながら獣人が中心に造っていき、家づくりをレクチャーしていく。その次にちょっとした小屋とかを獣人がアドバイスをしながら子ども達で造っていく。木材加工も大きな建物作りはユワの魔法を使って行い、小屋とか小規模な物は獣人が指導して子ども達で加工できるようにしていく』と。


 たしかに、クラウさん達がずっとここの集落に居るわけでも無いし、基本的には私達で生活できるようにならないといけない。その為にはやはり、実践を重ねていくしかないのだ。


 子ども達にはハードルが高いかもしれないけど仕方ないことだ。

 まぁ構造とかさえしっかりとわかってしまえば、私が魔法で一気に創りだすこともできるんだけど、それはそれでつまらないというか、生活に必要な知識や技術はちゃんと自分達の手でできるようにならないといけないと思う。


 子ども達もティガも、そこら辺はしっかりと理解しているみたいだし、必要以上に私に頼ろうとはしてこない。

 実際、私は中心建物以外の木材は加工していない。

 魔法での木材加工が終わった後、私は余った木材を無駄にしないよう、薪に加工していく。


 今回ルヴィンさんは工具と一緒に沢山のレンガとか金網、調理器具もくれた。とは言っても、その量ではレンガ造りの家を作ることもできないし、精々でレンガのかまどくらいだ。でも、そのかまどがあれば、金網や鍋とかの調理器具を使って料理を作ることができる。

 木の床や壁では耐火性に問題がありそうだから、かまどを置く部分には石材の床を敷いたり壁も石材で保護して、ある程度安全性を確保して。

 そこらへんはクラウさんと相談してちゃんと場所も作ってもらうことになっている。換気用の窓もしっかりと。


 ありがとうルヴィンさん。すごく助かる。


 そこまで料理が得意でもない私だけれども、少しは手の込んだ料理を作ったりもできる素晴らしさ。


 日本や王都に居た時には全く意識しなかった料理がここまで愛しく感じるとは、私も思ってもみなかった。


 ちゃんと調味料もそれなりの量くれてるし、必要だったらいつでも取りに来ていいとも言ってくれたし。


 あと、ついでだから飲み水の確保やトイレで利用できる浄化用の魔石を忘れないように作り出す。

 この浄化用の魔石は万能で、例えば便器に程々の水を張ってそこに魔石を入れておくと、便器の中に排泄したものが水に入ればそのまま浄化されて清潔で、尚且つ臭いも全く無くなる。飲み水も水瓶にこの魔石を入れておくだけで雑菌などが浄化されるから安心して飲めるようになるのだ。


 ただ、その効果だけで言ってしまうと、便器の中の排泄物が入った水でさえも飲めるということになるけど、それは流石にいろいろ嫌だし、そんなことする人はまず存在しない。特殊な訓練を積んだ人以外は。


 ちなみに、女の子達は兎獣人の二人と一緒に畑作りをしている。

 これはクラウさんからの提案で、いつでも森に食べ物があるわけでも無いし、バランスも悪くなりやすいから、畑で野菜や果物を育てて、安定して食べ物がある状況を作る様に言われたからだ。


 たしかに、私がここに来るまではその日その日で食べ物を採取していたみたいだった。常備されている食べ物はリンゴばっかりだったし。


 こうやって少しずつ、キャンプ地が住むための集落になっていくと思うと、少しだけ楽しくなってくる。


 日に日に完成していく建物に胸を躍らせながら、私は時々ティガを見ながら色々考える。

 結局あの時ティガが辛そうだったのは何だったのか。

 今のティガは上半身裸で日に焼けながら大工仕事に精を出すガテン系職人でしかない。というか刺激的過ぎる。

 逞しい肉体が惜しげもなく晒されて、流れる汗が陽に当たりきらめく。

 ヤバい。けど、こういった仕事に集中することで本人の気持ちが紛れて楽になるならそれはそれでいいのかな?




 クラウさん達を招いてから約二か月が経ったその日、ついにこの集落に初めての建物が出来た。

 木造建築の平屋建てだけど天井は高めで解放感もあり、多めに採られた窓のおかげで明るく通気性もいい。―――というより、わりと本気で寺とか神社の建物を彷彿とさせられる。瓦が無いから板葺きの屋根になってはいるけれど、大和葺きで雨水も流れ落ちやすく配慮されているし、こっそり魔法でコーティングしたから雨漏りの心配も無いだろう。


 集会用の広間や食堂を中心に、個室トイレも数か所作り、台所も完備。

 風呂に関してはクラウさんと相談した結果、私が温泉を再び掘り当てて、縦格子張りの壁が特徴的な渡り廊下でつなげた離れに男女別の露天風呂を、クラウさんプロデュースの図面を基に魔法で一気に創り上げた。少し反則な気もしたけど、ちゃんと素材はみんなと一緒に集めたし。お風呂の誘惑にはやっぱり勝てないから仕方ない。

 仕方ない。


 備え付けの机と寝台がある大体六畳くらいの個室はちゃんと人数分以上は確保する予定だったけど、小さい子達が寂しがったから結局みんなで雑魚寝できる広間を作ることになって、個室は数室だけしか作らなかった。

 個室がもっと必要になるようだったら、増築とか別の家を建ててしまえばいいだけだし。


 布団については、運よく集落の外で出会った集団の魔物が羊毛のような毛を持っていたこともあって獣人のみんなと協力して仕留め、その体毛をふんだんに使って弾力性抜群の素敵敷布団や枕を人数分作れたし、掛布団には森の奥で見つけた綿のような植物を使った。

 結果、すごく快適に眠れる寝具が手に入った。


 住環境が一気に進化したその日、私は確かな充実感を感じていた。


 半獣人の子達だけで作った小屋はちょっと不格好な感じもしたけれど、畑の農作業具を入れる用の物と、木材加工用の作業場としての物ができたことで、集落がちょっとだけ賑やかな感じに見えるようになった。


 畑もそれなりの広さがあり、まだ種をまいて間もないから芽が出ている程度でしかないけれど、それぞれ時期をずらして色々な野菜が取れるようになった。

 小麦も育てることになったから、これで小麦粉を作ってパンとかうどんとかも作れるようになる。


 食の充実は大切だ。

 ただ、問題があるとすれば、この集落でまともに調理ができるのが私だけということなのだ。みんなと一緒にご飯を作ったりすることで、調理レベルの底上げをしていかなければと、私は新たに決意するのであった。


 あとは、どこかと取引をすることで調味料とか生活必需品を手に入れれるようにするという課題が残ってるけれど、これはうまくいけばこのままルヴィンさん達の方で調整できるかもしれない。とりあえず今はそういうのを求めすぎてはいけないだろう。

 欲をかくと良い事にはならない。




 そして、クラウさん達が帰る日が来た。

 その日は私が腕によりをかけて作った料理をみんなに振る舞い、子ども達も獣人達も楽しそうに笑ってはしゃいでご飯を食べて、別れることを悲しんだり惜しんだりもしていた。

 ボルグ君なんかはダインさんに抱き付いて「帰らないで欲しいっス、ダインさん!」とか言っちゃってるし、ベルちゃんとか年少者も泣いて寂しがってる。


 でも、仕方がないことなんだ。

 クラウさん達にはコリジアータ平原での任務もある。

 私が居るということよりもティガを安心させることができた大人達は、でも子ども達と一緒に過ごすという選択肢を選べない。


 深夜の露天風呂で、私とクラウさんは一緒に温泉に浸かりながら、この一か月のことを振り返って色々と話した。

 クラウさんは、初めはルヴィンさんの指示で来ただけだったが、半獣人の子達と一緒に過ごすうちに、あの子達の為にできることをしたいと本気で思うようになったと言っていた。

 他の獣人達も同じであり、中でもダインさんは―――。


 「ダインには妹が居てね、その子は人間との和平を望む獣人達と一緒に、人間との生活を望んで獣人の国を出て行ったの。ダインは必死に止めたんだけど。―――知ってる?獣人には血族を見分ける特殊な感知能力があって、それが外れることはまず無いの」

 「それってつまり……、ボルグ君はダインさんの甥になるってこと……ですか?」

彼女の言葉に対する私の回答。

 彼女は静かに頷き、前髪に滴る雫が水面へと零れていく。


 「多分ボルグ君も気付いているはず。あの子のあの反応はきっと、そういうことなのよ。親に感じていたような感覚を覚えたはずよ?…………半獣人でも獣人の血が流れているのなら、まず間違いないでしょうし」

「…………辛いですね、そういう能力があるっていうのも」

「えぇ。だからユワ、お願いがあるのだけれど、いいかしら?」


 クラウさんは静かに私の瞳を見つめて、そして、言葉を続ける。

「ダインをこの集落に住ませてくれないかしら。彼の知識や能力は必ずユワ達の役に立つ。ダインはずっと、妹を止めれなかったこともそうだけれど、妹を祝福してあげられなかったことを後悔している。だからせめて、彼女の形見であるボルグ君と一緒に居させてほしい」


 私の気持ちはすぐに決まった。

 断る理由は無い。

 でも、間違えてはいけないことがある。


 「クラウさん、私は受け入れていいと思っています。でも、順番が違いますよ。私はあくまでただの温泉兼木材加工の女神でしかないです。なので……」

私は自分自身に呆れた笑いを浮かべながら伝える。

「そうね。ここの代表で族長は……」

「そういうことです」

彼女も軽く笑って、そして、私はそれに応えるように微笑みかける。


 きっと彼も、反対はしないだろう。

 反対をしようものなら、ちょっと私も怒っちゃうぞ?

 とかなんとか、個室で寝ているだろうティガに向かって思うのだった。

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