誰が止められるっていうのかしら?
カウス達は砦で一泊し、日の出と共に馬で中央砦へと向かった。
そして、すでに前日に帝国軍を追い払った事を知らせる為に早馬が中央砦に到着していた。
「なんだと!ユグドラ王国の援軍、僅か50名ほどで帝国軍3万を退けた!?」
中央砦を預かる老将グラハムは驚きの声を上げた。
「はい!ユグドラの援軍は到着すると同時に、城門前に大魔法を放ち、押し寄せていた帝国軍を吹き飛ばしました。そして、英雄カウス殿がたった1人で敵を蹴散らしながら、帝国軍の本陣へと向かって行きました。凄まじい強さです!そして、砦の方に意識が集中している隙に、ユグドラの精鋭50名とエリザ姫殿下が敵本陣の後方から奇襲を仕掛けました。その混乱している時、ちょうど英雄カウス殿も1人で敵本陣へとたどり着き、敵将を討った事で帝国軍は敗走しました!」
にわかに信じられない話であった。
………うん?エリザ姫殿下!??
「お、おい!今、エリザ姫殿下が敵陣へ奇襲を掛けたと言わなかったか!?」
老将グラハムはエリザ姫になにかあったのでは?と、動揺した。
「はい!我等のエリザ姫殿下はユグドラの援軍ばかり危険な事はさせられぬと、自らも敵陣への強襲に加わったそうです!」
(エリザはそんな事は言っていません。噂が誇張された結果です)
「なんと無茶を…………」
グラハムは手で顔を覆った。そんなグラハムに早馬で駆け付けた騎士は、遠慮がちに声を掛けた。
「そ、それでグラハム将軍、これはあくまでも自分の意見なのですが………」
騎士の様子が少し変な事に気付いたグラハムは、歴戦の猛将らしく機敏に感じ取り騎士に続きを言わせた。
「遠慮はいらん。貴様の思った事をいうのじゃ」
「はっ!ユグドラの英雄の強さを目にして、帝国軍の撃退は間違いのないものと確信しました。故に、私は恐ろしいのです!あの力が我が国に向くのが!?」
!?
「それほどの者なのか…………」
万の大軍に1人で突っ込み、敵本陣まで突き進んで、敵将を討ったのだ。普通でないことは明白である。
「はっ!?ユグドラ王国の国王からも、言われていたな!?援軍の英雄を怒らせるなと……」
グラハムもここにきて考えざるをえなくなった。同盟国と言っても単独で万の軍を壊滅できるほどの武力があれば、いつ我が国に襲い掛かっても不思議ではない!
しかし、どうやって英雄殿を思い留めるのか?
金銭ではまず無理だろう。こちらから貢がなくとも攻め滅ぼせばいい。なら、1番確実なのは婚姻を結ばせること!?
「英雄殿はどのような御方だった?」
「はい、私も僅かな時しか見掛けておりませんが、誠実な御方だと感じました。強気でこちらに圧力を掛けることもなく、『家族』で我らを助けにきて─「まて!」」
グラハムは騎士の言葉を遮った。
「英雄殿は1人ではなく、家族できたのか?」
「はい、奥方様は大魔術師であり、娘様は欠損部分をも回復させる聖女、息子様は英雄カウス様と同等ほどの武力を兼ね備えておりました」
騎士の言葉に軽い眩暈がしたグラハムであった。
これほどの逸材の名声がどうして今まで世に出回っていないのか……………
「しかし、英雄殿の息子と娘か…………これならば、我が国を救って頂いた御礼として王族のどなたかと婚姻を打診できるか?」
グラハムはグリーンウッド一家が援軍にくるまで、頭を悩ませるのであった。
そして、エリザ姫殿下と出ていった側近達と共にユグドラの英雄が到着した。すでに、隣の砦の攻防は伝わっており、大歓声の元の砦入場となった。
「これは凄いな………」
想像以上の歓迎にカウスは顔には出さなかったが驚いていた。
「自分達より戦力の大きい帝国軍を追い払ったのだから、ここの兵士達も希望が持てたのよ♪」
「そうか」
カウス達は歓声の中、砦の作戦室へと移動するのだった。
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