まずは一息………
カウスはエリザ姫の頭を撫でながら言った。
「まだ砦の1つを守っただけだ。この後、中央の砦に行き、帝国軍を追い払うよ」
カウスは昔、エリクサーを飲んだ為に寿命が伸びて若返っている。外見は20代前後の爽やかイケメンなのだ。うら若き乙女が惚れても仕方がないのである。
カウス達はゆっくりと歩きながら砦へと戻っていった。帝国軍が敗走した事で、エリザの配下も駆け付けてきた。
「あなた、お疲れ様です♪」
「ありがとう。思ったより帝国軍が弱くて助かったよ」
スピカからタオルを受けとると、軽く汗と返り血を拭いた。
「えっ…………どなたですか?」
エリザは砦に着くと親しげに話す女性をみて目を開いた。
「うん?これは私の愛する妻のスピカだ」
ガガッーーーーーーン!!!!!
雷が落ちる衝撃を受けた。
「お父様、お疲れ様です♪」
「父上、砦の掃討と兵士の治療が完了しました!」
子持ち!?しかも、私と同い年ぐらいの!?
エリザは二重のショックを受けた。
しかし、砦の兵士からエリザ姫殿下が来た事が知れると、ちょっとした騒ぎになり、表情を取り戻した。
「姫殿下!?どうしてここに!」
砦の責任者である将軍ブリガンがやってきた。
「えっ~と………?」
まさか、英雄を見にきたとは言えずに目を泳がせた。そこに、ジンが口を挟んだ。
「失礼します。エリザ姫殿下はここが襲われていると聞き、側近のみを連れて救援にきたのです。そこに、我々が合流してエリザ姫殿下自ら帝国軍の後方を強襲したのです!」
ジンはエリザに目をウインクさせて、アイコンタクトをした。
「なんと!姫殿下みずから敵陣へ乗り込んだのですか!?」
「あ、ああ!ユグドラ王国の英雄とそれに連なる精強な仲間達なら、虚を付けばいけると思ったのでな…………」
おおっ!!!!!
砦の中から歓声が上がった。ユグドラの英雄の力は疑う余地もないが、敵陣に乗り込んだのが、自分達の姫様だった事に喜んでいるのだ。
良いところを、他国の援軍に全て持って行かれては面目が立たないからだ。
「えっと………何もしていないけど一緒に行動していた………」
「そんな御謙遜を!わずが50名程度の人数で万の兵士が守る敵陣に勇敢に攻める事のできる者など、そうはいませんぞ!」
エリザは穴があったら入りたい気持ちだった。すでにノックアウト寸前である。
「しかし、エリザ様は一国の姫君なのでずぞ?余り無茶はしないで頂きたいですな?」
砦を預かる将軍として苦言はしておく。
「ごめんなさい………」
ここで話を区切り、現在の最高責任者の将軍ブリガンはカウス達に頭を下げた。
「改めて御礼を言わせて頂く。私はこの砦の責任者でブリガンと言う!ユグドラの援軍、感謝する!」
「私はカウス・グリーンウッド辺境伯だ。同盟国として援軍にきた。ここには一泊させてもらい、明日には中央の砦に向かわせてもらう」
カウスとブリガンがガシッと力強く握手を交わした。
「それにしてもユグドラの英雄とは凄まじいものですな。正直、援軍がわずか50名ほどと聞き、落胆した自分が情けない!ユグドラは少数精鋭を送り込んでくれたと気付きました。配下の者達も一騎当千の強さ、これなら帝国軍も跳ね返すことができます!」
遠目でも、敵軍に強襲したジン達の動きも見えていたようだ。砦の兵士達は目をキラキラさせて、頼もしい援軍であるカウス達を見ていた。
「それに、これだけの怪我人の治療ができる聖女様まで来て頂けるとは驚きです」
守備隊長のクリフトがシオンの治癒をみて驚いていた。欠損部分まで治療できる者など、国中を探しても1人いるかどうかなのだ。さらに砦に侵入してきた帝国軍の数百人をほぼ1人で叩き潰したカストルにも熱い目が向けられていた。
こうして、1つの戦いが終結したのだった。
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