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魔法使いさんと妖精さんと  作者: otsk
魔法使いさんと新しい宝物と
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お姫様の扱い方(4)

 散歩なので本来これぐらいがちょうどいいのだと私は思う。

 近場の公園で何となしに腰を落ち着ける。

 しかし、今日はまだ休日のお昼時。

 また私たちと同じように公園で遊ぼうと足を運んでいる子供たちも多数見受けられた。


「リーシャお姉ちゃんはこの辺の子供たちとは知り合い?」


「まあ、見たことはあるかなってぐらい。流石の私もこの頃は公園にも立ち寄らなくなってね」


「そっか」


「ま、あとはそんなに焦らしてもなんだし、本題に入りましょうか。あんまり興味ないかもだけど、私のお兄ちゃんのお話」


 リーシャお姉ちゃんのお兄ちゃん。マスターのところでバイトしているイカリお兄ちゃんのことである。


「とはいえ、何から話したものか……。そもそもなんで、私がヒナちゃんと知り合いなのかを話してからの方が早いかな?」


「確かに聞いてないですね」


「これもうちのお兄ちゃんが縁なんだけどね。今でこそバイトぐらいはしてるけど、お兄ちゃん3年前までは他殺志願者でね」


「他殺……?そういうのって普通は自殺では?」


「そ。お兄ちゃんの面倒なところでね。死にたがってたくせに自分で死ぬ勇気はなくて、誰かから殺されるのを待ってたの。しかも自宅前で」


「それは……」


「あはは。今はもう笑い話だからお兄ちゃんのことは盛大にバカにしてもらって構わないよ」


 きっとティアラお姉ちゃんは人をバカにするようなことは未来永劫できない気がする。

 パパがこれからもずっと面倒を見るなら話は別だけど。


「まあ、そんなバカなお兄ちゃんになんか見るからに可哀想だったのか声をかけたのが見ず知らずのまだ怖いもの知らずだったヒナちゃんだったの」


「よく知らない人に声かけられるね」


「よく褒められる」


「多分、褒めてるわけじゃないと思うよ」


 知らなければ知り合うこともできないし、何に困ってるのかも分からない。

 人には幸い言葉っていう一応コミュニケーション能力が備わっているのだから使わないと宝の持ち腐れである。

 稀というか、稀によくあることだけど言葉があっても同じ言語を話してるはずなのに言葉が通じないことも多々あるけど。

 なんでだろうね?


「前提条件としてね、一応お兄ちゃんも魔法使いなんだ。火の魔法を使えるとかなんとか。そんなお兄ちゃんの自論としては魔法で殺してもらえれば足がつかないんだってさ。そもそものお話になっちゃうんだけど、この国って魔法使いが本当にいなくてお兄ちゃん1人だけだったらしいの。私は使えないしね。で、ヒナちゃんが声をかけたのが運の尽き」


「あれ?アルスさんがやったという話では……」


「そう答えを急ぐではない姫様よ。そもそもヒナちゃんは土の魔法しか使えないから、お兄ちゃんの火傷痕を作るのは不可能だよ」


 とは言うものの、私でも火を使わずとも火を起こすことは可能である。

 パパに教えたら絶対パパの目があるところ以外でやるんじゃないって怒られたけど。

 普通に危ないしな〜あれ。

 内容は粉塵爆発です。

 これを考えると本当に私が生物兵器と捉えらえても何らおかしな話ではない。

 きっと、普通はここまでできる魔法使いもいないんだと思うけど。

 パパがあまり魔法を使うなって言ってるのはこういうところもあるのだと思う。


「まあ、そもそもどうやって魔法を使っていなかったアルスさんたちをお兄ちゃんは魔法使いだとわかったのかってところだけど」


「……あ、シオンさんが見えてた?」


「そう。私は残念ながら見えないけど、今もついて来てるんだよね」


「なんなら、リーシャさんの肩に乗ってます」


「見えないからって好き放題だなあ」


「私とヒナちゃんがいるのでおそらく余計なことはしないと思いますけど」


「妖精さんの余計なことって何?」


「特別被害はないけどやられると絶妙に嫌なこととか」


「たとえば?」


「スカートを履いてると中をのぞいてくるそうです」


「中身スケベオヤジなの?」


「見た目はお人形さんみたいな可愛らしい人ですよ。サイズは本当にお人形さんですけど。中身は知りません」


「私が見えないものにうつつ抜かしても虚しいだけだから話戻すね。さすがにお兄ちゃんもヒナちゃんをどうこうしようってほど外道じゃないからアルスさんに自分を殺してくれって頼み込んでたのよ。自宅の前で喚いてるから大人しくさせて、自宅に放り込んだのが始まり。まあ、アルスさんがあんな人だし、まだヒナちゃんを拾ったばかりとかなんか言うから私が案内役頼まれたんだよ」


 そこから、マスターの喫茶店に行ってパパと私がしばらくアルバイトで働いて、季節が暖かくなったらママのいる国へと出発するっていうパパの算段だった。

 だけど……


「まあ、本当に暖かくなってきて、ヒナちゃん連れて本当の目的地に旅立とうって時ぐらいだったかな。お兄ちゃんに対してアルスさんの堪忍袋の尾が切れちゃったみたいでね。で、結果的にお兄ちゃんは死にきれず半身火傷の重傷。全治未定みたいな状態になっちゃってね」


「その……リーシャさんは責められなかったんですか?」


「……まあ、責めようと思えばいくらでも責められたんだけどね。結局、お兄ちゃんの戯言を放置し続けた私たちも悪かったから。でも、アルスさんは本当にやる気はなかったと思うよ。結果としてなっちゃっただけで」


「どうして、そう言えるんですか?」


「だって、手から火が出せるならお兄ちゃんの頭鷲掴みにしてそこから燃やしちゃえば簡単だからね。別にそうせずにアルスさんはお兄ちゃんの足元に火を投げ放っただけだったし、お兄ちゃんはわざわざそこに突っ込んで行っただけだからね。きっかけを作っちゃっただけで、悪いのは徹頭徹尾お兄ちゃんだから。ま、言えることは他責思考で相手にばかり責任を負わせるのは他でもなくその人への冒涜ってことぐらいかな。まあ、今は生きてるし、傷も動ける程度には快復してるし、ブタクサ文句言いながらも働いてるし、最善ではなかったけど、最悪の結果にはならなかったから、これでいいかなって。さて、この話はここで終わり。ヒナちゃんが一番気分良くないよね」


「ん〜パパ、あの時は何も話してくれなかったから。多分、聞いたかもしれないけど、忘れちゃってるか」


「まあ、結構あの人いいカッコしいだからね。ヒナちゃんの前ではちゃんとしたパパでいたかったんじゃないかな」


「とりあえず、魔法を人に向けて撃つなって耳が痛くなる程言われてる」


「それは経験談からかもしれないね」


「シオンにだったらいくらでもいいって言われてる」


「妖精さんに対する扱いがあんまりじゃないかな?」


 というのも普通に使う分にも私の魔法は強くなり過ぎているらしい。

 だからいかにコントロールできるかが今の課題。

 シオン、魔法については何でもできるから、魔法に関してだけはパパの上位互換だとか。

 なぜ魔法だけを強調するのかというと、魔法以外はパパの方がすごいからです。


「いやん、ヒナちゃんにそんなに見られると照れちゃいます」


「シオンは、勝手にいなくなったりしないよね?」


「……そうですね。アルスさんは勝手にどこにでも行けってスタンスですけど、あいにく、ヒナちゃんには名前を書かれてしまいましたからね。ヒナちゃんに捨てられるようなら考えますが」


「たとえば、私がシオンに向けて魔法を放ち続けてもどっかに行ったりしない?」


「まあ、私はとあるすごい妖精さんに魔法についてはこっぴどくやられましたからね。それでもこうして生きているので、地球滅亡でもしない限りはちょっと反抗期で魔法を使われた程度で何も言いませんよ」


 きっと、シオンは魔法に対する耐性も防御する術も持ち合わせているのだろう。

 がからパパもシオンに向けてだけは魔法を撃ってもいいって言ってるんだ。パパの私怨も入ってそうだけど。これは話の本筋には関係ないので黙っておくことにしよう。


「……ヒナちゃん、アルスさん……パパのこと怖いって思ったことある?」


「いっぱい。結構怒られてる」


「その時って魔法って使ってる?」


「ううん。体力勝負」


「ダダ甘な人だと思ってたんですけど、結構力技だね」


「最近、ちょっと素直にごめんなさいができなくて」


「あらら」


「謝ったら負けかなって」


「いや、アルスさんが怒るのって言いがかりとかじゃないと思うよ?というか何と戦ってるの」


「相手をつけ上がらせないように」


「何と戦う予定なの……」


「なんか偉そうな人たちと」


「…… そっか。そりゃそうだよね。お姫様の付き人やるんだもんね。でも、最初から喧嘩腰じゃ話すものも話せないと思うよ?」


「でも、シオンは初対面の大人に対しては横柄にいくぐらいでちょうどいいって」


「……その妖精さんのいうことあまり信用しない方はいいんじゃないかな。話半分ぐらいの方がいいと思うよ。と言っても、私もそんな偉い人と話す機会なんてないからこうした方がいいってアドバイスはないけどね」


 そう言われて私はティオラお姉ちゃんを前に差し出した。


「ヒナの国で最上位に偉い人」


「そうだったね。自然といるからそんな気が全然しなかったや」


「でも、リーシャお姉ちゃんも最初はガチガチだったでしょ」


「……やっぱり、ヒナちゃんはそのままでいいよ」


「どういうこと?」


「私の勝手な意見だけど、ティオラちゃんも今は、だけど、これからはきっとお姫様としてもっと色んなことやっていくんだと思う。そういう時にさ、気兼ねなく過ごせる相手がいるのってすごくありがたいことだと思うんだ。まあ、例えばだけどティオラちゃん、お話しするのもすごく苦手じゃないかな?」


 前に差し出したティオラお姉ちゃんはこくこくと首を上下に振った。


「最終的にはそりゃ話せた方がいいだろうけど、今みたいにヒナちゃんがその役割をやってくれるなら、ティオラちゃんは無理なく過ごせる裏返しだと思う。ただ、喧嘩腰に話すのはやめておきなよ。それでなんとかなるのヒナちゃんのパパだけだから」


 なんとかなってるのかなあ。


「ああ、そっか。その妖精さんも元々アルスさんについてたんだよね。売り言葉に買い言葉、相手を貶すところから会話がスタートするとかなんとか。……結局、普段やってることって習慣化しちゃうからね。えっと、シオンさん?見えない私から言うのもなんだけど、あまりアルスさんにやってるようなことをヒナちゃんに見せない方がいいと思いますよ」


「手遅れですね」


 未だリーシャお姉ちゃんの肩に居座ってる妖精は事もなげにそんなふうに返答していた。

 きっと、シオンは直らないし、直さないだろう。

 ともすると私がちゃんと取捨選択しないといけない。

 今は子供だからで許されるけど、きっと中等部に上がるぐらいなるとそうも言っていられなくなる。

 ティオラお姉ちゃんを守るために。


「そうだ。まだティオラちゃんのこと全然聞いてないな。普段何やってるの?」


 リーシャお姉ちゃんは今度はティオラお姉ちゃんに話しかけている。

 私は……私がやるべきことをしっかり見極めないと。

 そして、今はきっとティオラお姉ちゃんの言葉を遮った私が主張するところではない。

 リーシャお姉ちゃんだって、ティオラお姉ちゃんからの言葉が聞きたいはずだ。

 だから、今は見ていることにした。


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