勇者絶対条件 二章大切なモノのための盾 二十三話「いつか壊れるものだとしても」
こんにちは、含水茶吹改め、みち木遊です。
二年目に入っての初投稿です。
相変わらず、拙い文章ですが、温かい目で最後まで読んでくれると嬉しいです。
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突如、現れた影に小鳥遊華蓮と浮雲唯は一方的な暴力を振るわれ、浮雲唯は片方の上腕骨と大腿骨を骨折させられたあげく気絶してしまう。
その状況の中、小鳥遊は何かに目覚め、影の攻撃を無力化することに成功する。
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金色に怪しく輝く瞳で小鳥遊は影を見据えていた。
「へぇ、誰も傷つけさせない、ねぇ…、ええ…えぇ?」
影は問い掛けるように言う。
それに返答するように小鳥遊はさらに獰猛な表情を浮かべ、掌を空へと翳し、地面へ振り下ろす。
「おぐっ!?」
見えない何かに潰されるように地面に影は倒れ混んだ。
「能力の発現…、かぁあ。この感じだとぉ、何らかの形で、エネルギーを任意方向に発生させる系統の能力だなぁ…」
倒れ込み、まだ謎の圧力が影を襲っているにも関わらず、影は冷静に状況を分析していた。
嫌悪感と恐怖心。
この二つを体現するにふさわしい影に小鳥遊は一歩ずつ、片脚を引き擦りながら、近付いていく。
今の彼女に『退く』という文字はなかった。
退路を断たれたわけでも、ましてや絶った訳でもない。
見据える敵がそこにいる、満身創痍でも立つ理由があるから、彼女はそうしていた。
そして、一歩一歩、小鳥遊が近付く度に、影に掛かる圧力が強くなり、倍になっていく。
だが、
「…ふふふ…、…ふはははははははあははははははあぁははあははははははっ!!」
影は笑っていた。
圧力がより強力になるほどその笑いを大きくさせる。
「ひぁっ、ひゃははははははははは!!!」
地面に影の身体が沈み始めても、影は笑っていた。
そして、
「予定ぃ、変更ぉ…お…」
そう呟き、影は手を地面に付け、とてつもない握力で握りつぶすと、
バゴォ!!
異常な轟音とともに、地面はめくれ上がり、見えない壁が砕け散った。
土煙と爆風が広がり、小鳥遊は吹き飛ばされ、地面に落ちる。
しばらくし、土煙が収まり始め、両手を広げた影の姿が現れた。
その姿はまるで、線上で一人生き残った悪魔のような、驚異的な光景だった。
そして影は言う。
「また、来る…ぅ、ね?」
そして、その直後、ゴン、という短い爆音と共にそこから飛び上がり闇に消えた。
それはこの一連の小休止を意味していた。
だが、それとは裏腹にどこかでさらに翳が迫っているという事も意味している。
しかし、小鳥遊はそれには気付けない。
戦い、いや、逃亡が終焉を告げたという事しか理解していない。
その緊張が影が消えたことにより、解れ、地面に彼女が倒れたことで、その先を考える時間などなかったのだから。
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三滝が小鳥遊を見つけたのは、彼女が倒れ、それから間もなくのことだった。
パパと呼ばれた男、そして、影との交戦の時間は十五分程の出来事。
だが、その短時間でボロボロになった小鳥遊と浮雲の姿を見つけた三滝は己の無力を恨み、決意した。
『強くなる』、と。
どんなに間違っても、どんな手を使ってでも、強くなると。
クナイに対して、責める気もその瞬間で失せ、ただの保険程度としての認知になった。
反田は情報源や、アポイントの取得の人員。
再生者による犯罪対策課という今の立場は利用できる権力。
正しく、そうやって認知できるようになった。
確かに今回の事件に関してクナイの言動は許しがたいものがあった。
その数日後、何が問題があったのか、それを突き止めるために反田に『クナイや小鳥遊が電話がかかる前に何らかを感知し、着信の事実を予言していた』という事象を三滝は研究依頼の内容として提出した。
急ピッチでその研究は行われ、十日後に『電話などの通信機器の磁場と再生者の同族感知には何かしらの接点か共通点があり、再生者が同族を判断するときに通信機器などの発する磁場に似た何かで判断している』という経過報告が送られてきた。
それに対し、三滝は対策を練ることが目前の目標として浮かび上がると同時に有事の際の手札として何かしらの形で使えないかと模索することとなった。
その間、小鳥遊は以前、三滝が運ばれた再生者による犯罪対策課直轄の病院に運ばれ三日の入院のあと、無事問題なく退院を果たした。
浮雲も小鳥遊と同じ病院で同日に退院をし、十日以上過ぎた今でも、取り調べが続いているらしい。
その取り調べには度々、小鳥遊が呼ばれることもあるが、順調に進んでいるらしい。
その証拠に小鳥遊との友好関係がみられるという浅い理由ではあるが、三滝の元に受け入れ先が決まるまで浮雲を収容という形で向かい入れることが決まっている。
今回の事件はさまざまな波乱を残したまま、少しづつ終着に近づいている。
しかし、それでもその問題に紐を垂らし続けることがあった。
影の存在の事だ。
謎で包まれた存在が現状的としている限り、こちらも何かと大きく動くことが難しくなる。
だが、むしろ、ここまで謎に包まれていると行動を大きくすればするほど、行動を制限できる可能性もある。
二律背反とはよく言うものだが、そうなってしまった現状も成行きとは言え、責任は三滝に寄ってしまう。
その責任と、三滝は『強くなる』という欲望と再生者のために考えなければならない板挟みに加え、謎の存在、過去に現れた鮮芽達が所属する『蘇者教』の脅威の対策、それらを反田や、クナイ、犬鳴と共に乗り越えなければならなくなってしまった。
そして、三滝は自分が世界の裏に足を踏み入れたことに気付いたのだった。
3
俺こと、三滝兼政は午後十時に自宅の自室で荷造りをしていた。
ふと、俺の部屋に入って来た華蓮はその俺の光景を見て、
「どうしたの?」
興味深そうに訊いてきた。
俺はあまり深い内容こそは言わなかったが、
「この前、華蓮を助けれなかったからさ。ちょっとの間、多少は強くなるために修行しに行くんだ。反田さんが剣術の名人に教えを受けれるように手配してくれてな、その名人の元に泊まり込みで教わりに行く」
正直に話した。
すると、華蓮は、
「うん」
ただ頷いた。
そして、華蓮は言う。
「今度こそは僕を助けてね、カネマサ」
その言葉はどんな感情で発せられたのかは、俺にはわからなかった。
だが、元の覚悟からでもあったが、その言葉には答えなければならない。
そう思った。
だから、返す。
「絶対に助けられるようになってくるから、待っててくれ」
俺は小鳥遊の頭を撫でる。
小鳥遊は嬉しそうに笑っている。
その笑顔を守るために俺は明日の早朝にこの家を出る。クナイさんと反田さん、そして、犬鳴さんがこの家を監視警備をしてくれるらしい。
その上、俺の自宅がある街一帯に再生者による犯罪対策課の人員が巡回してくれるらしい。
一安心とはまだ言えないが、ある程度は心配しなくてもいいらしい。
俺は一通りの荷造りを終え、その場から立ち上がる。
「華蓮、もう寝る時間だぞ」
俺はいつものように部屋の出入り口の前に立ち、そう言った。
華蓮は無言で俺より先に部屋から出て、俺は電気を消し、ゆったりと華蓮のあとを追うようにそこを後にした。
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そこから一時間経ち、小鳥遊を寝かせた俺はリビングのソファに腰かけ、クナイさんと話していた。
「そうですか、明日の午前六時には出発するんですね」
「はい、できるだけ華蓮もクナイさんも起こさないようにして出ていきますので」
あの一件から十日以上経った現在でも、クナイさんは俺とはし始めると初めに謝ってくる。
少ない時間とは言え、その間に気付き上げてきた信頼を裏切ったという事実は彼女の心にどんな形で残っているのかは知らない。
だが、少なくとも、罪悪感を残していることは明白だった。
そんな彼女に華蓮を預けていいのか、何度も考えたが、どうしても預けなければ現状どうにもならないという事が現実として現れた。
だから、俺は前向きになった。
クナイという保険にほんの少し預けることを決めた。
そして、
「…クナイさん、俺、まだあの事件のことが忘れることができないですけど、あれを繰り返さないようにすべきことはもう考えてます。全部実行できないかもしれないけど、やれるだけやるんで、なにかあったら、よろしくお願いします」
そんな頼みごとをして、
「…はい」
クナイさんの短い返事を訊くと、俺はソファから立ち上がり、自室に向かった。
5
朝六時、すべてを終わらせ、荷物を持って玄関を出ると一台の高級車とそれに乗った犬鳴さんがそこにいた。
「おはようございます」
「おう、おはよう、三滝君」
「反田さんは?」
「アイツなら、浮雲に関する書類に追われつつ、上に叱られてる途中だ」
「…そうですか」
今日、車で一緒に来るはずだった反田さんについて聞き、なんとなく納得して、車のトランクに荷物を載せ、すぐに助手席に乗り込む。
俺がシートベルトをしたのを見計らって、車は動き出し、自宅を後にした。
6
車を走らせて、三十分。
犬鳴さんは突然こんなことを聞き始めた。
「三滝君、君はなぜ、戦いに身を投じるんだ?」
俺はその問いにすぐ答えた。
「その時がいつきても、おかしくないからです」
それに犬鳴はさらに聞く。
「…仕方ないとしても、戦わず、私たちに守られればいいことを。クナイの失態があったにせよ、本部に連絡すればいくらでも手練れを護衛として付けることができるんだ、なぜそうしない?」
俺はその問いに、少し考え、話し順を整理して言う。
「『再生者』の見方に立つべき人間が、『再生者』が使えないからって理由で護衛の変更したら、矛盾しますし、何よりも、誰もいなくなれば、どんな状況であろうと、自分が最後の砦なんですよ。だから、戦いたいんです。その一番の信念に華蓮がいるだけなんですよ。自分を守って、華蓮も守る。まぁ、それ以上に華蓮を守ることが第一ですけどね」
そう俺が言うと、犬鳴さんは盛大に溜め息を吐き、
「…言っちゃあれだが、三滝君、君はバカなんじゃねぇか?今から、行く所は俺も反田も世話になった所だが教えを乞うって意味じゃ、世話になるのは俺が知ってる人間でお前が初めてだ。なんせ、取った弟子が一人残らず、夜逃げしたっていうほどの場所の弟子になりに行くっていうその勇気、無謀の域に達していると俺は思う」
そう言って、引き返すのは最後だぞ、と言外に教えてくれていた。
その言葉に俺は何も思うことができなかった。
やることが決まっている人間に忠告なんていらないのだから。
それにやめろだなんて、マグマに水をかけるようなものだ。
だから、返す。
「ヒドイですよ、そういうのは」
俺は笑って、返した。
その返答に犬鳴さんはため息を再び吐いて、そこからは何も言わなかった。
7
話が止まって、三時間も沈黙が続き、気付けば、車の山の中を走っていた。
岩場を越え、草生い茂る道なき道を越え、たどり着いたのは一つの道場だった。
門はなく出入り口だけ。
そこを示す看板もなければ、住人を表す表札もない。
まさしく、名無しの道場。
生活感はなく人がいるのも怪しいそこに車は止まった。
「ここだ、今日から、三滝君が住みこむ場所っていうのは」
そう言って、犬鳴は煙草を出し、火を点けた。
俺はそれが降りろという合図だと察し、車から降りる。
そして、出入り口らしき引き戸まで歩いた時、その引き戸が突然開き、
「車の音がしたと思えば、もう来たのかい」
優しそうな声で、道着を着た初老ほどの小柄な男性が出てきた。
「あなたが浄静院道輝さん、…ですか?」
俺はその男性に恐る恐る聞くと、
「えぇ、私が無形、浄静院道輝です。君の名前は三滝兼正君で合っているかい?」
優しそうな声色は変わらずに心に問うような迫力がそこにはあった。
その声に退くことをせず俺は答えた。
「はいっ!僕は三滝兼正と申します!」
できるだけ元気よく、はっきりと、まるで兵士の返事のように。
その返事に浄静院さんは笑い、
「反田君からはね、話、聞いてるから。なんだって、化け物と渡り合いたいっていうんだろ?おもしろい子だねぇ、上がりなさい」
そう言って、浄静院さんは道場の中へと案内するように出入り口に俺が通るための道を開けてくれた。
「失礼します」
そう一言残し、覚悟を決め、俺は道場へと足を踏み入れた。
守るものが例え、いつか壊れるものだとしても、守るために、生き抜くために。
こんにちは含水茶吹改め、みち木遊です。
前書きでも言ったと思うのですが二年目に入り、二年目の初投稿がこのお話です。
とりあえず、二章終了です。
いかがだったでしょうか。
今回は小鳥遊が能力覚醒したり、クナイが恐ろしいほどのミスを犯し、再生者による犯罪対策課が穴だらけということも判明し、組織結成の原因も判明した二章の締めということで、主人公、ついに修行、強化フラグが立ちました。
主人公もただの一般人じゃいられないということでもあります。
テンプレにした流れで行くと次回は二章のallです。
ですが、三章のことについて少しお話しすると、次の章は主人公の修行についてです。
家を空けて一人で山奥へ、範〇の血を受け継いでるのかと思うような展開ですが、元からプランにありました。
今話、最後に登場した浄静院道輝はどんなことができるのか、三滝は何を学びに行ったのか、次々回の投稿で分かります。
三章は一番短い章と決めているので、四章にもすぐ入れるのではないかと思っています。
今回はここでペンを置かせていただきます。
ではまたどこかで。




