勇者絶対条件 番外編 一話 「空を見上げて、流れる雲と」
こんにちは、みち木遊です。
今回は番外編です。
不穏なものは一切ないです。
極論、読まなくても本編にかかわるモノではありませんが読んでくれると嬉しいです。
0
浮雲唯の一件の三日後の話だ。
小鳥遊華蓮は前日に退院し、クナイは反田一の命令で一旦、三滝兼政の家から退いた。
その代わりに三滝宅の周囲には『再生者による犯罪対策課』の構成員十名が気にならないレベルで隠れつつ、監視を張り巡らせている。
三滝兼政は小鳥遊華蓮の様子を見ながら普通の日常を送り始めた。
そんな嵐のあとのいつまでも続く空のようなお話。
1
「カネマサ、あれ何?」
そう言って、華蓮は俺の手を引いた。
俺こと、三滝兼政は華蓮の退院祝いに何かか好きなものでも買ってやろうと、街に出ていた。
その道中、華蓮が興味を示したのは完全自立式水陸空対応ドローンだった。
俺が子供の頃、今から言えば、昔は空専用だったドローンが空をメインに置きつつも、陸地を走り、水上をスクリューで駆け巡るようになった。
その流れる時に早さと技術の進歩に感心しつつ、
「それはドローンて言ってな。空を飛んでカメラ撮影したり、空からやったほうが良いことに使える奴だな」
と、華蓮の質問に当たらずとも遠からずの返答をした。
「ほー」
華蓮はわかっていいるのか、いないのか、判断の点かない適当な返事をした。
俺はソレに適当な笑顔をつくり、空を見上げた。
この世界には華蓮のように人非ざる者がいること。
彼等を他人と呼ばずに『再生者』と者として、存在を知る人たちは呼んでいること。
彼等を取り巻く世界は常に何かが渦巻き、誰かが嗤っていること。
そして、人ではないために路頭に迷った再生者や、もともとそういう気質のあった再生者が度々事件を起こしていること。
それを取り締るために『再生者による犯罪対策課』が存在していること。
俺と華蓮が成行きとは言え、『再生者による犯罪対策課』と協力関係にあること。
そのために蘇者教という宗教集団に襲撃されたこと。
再生者の女児を付け狙う人間に華蓮を攫ったこと。
そして、華蓮とうきぐもゆいという小鳥遊を攫った少女が口を併せていう、男のような影。
そんな不安定の日常でも、見上げた先にある青らは青く、雨なんか降らせないような晴天が広がっていた。
憎らしいほどの青さが俺の視界を包み少し目を細め誰にも聞こえない声で、
「俺は…、誰も守れないじゃないか…」
自らを責めた。
俺を取り巻くすべての現状が俺の無力を思い知らすように過去として転がっていた。
今も、多分、この先も、未来も。
俺は『弱い』まんまなんだろう。
「ねぇねぇ、カネマサ、僕、欲しいもの決めた」
そんな自らを見直していると、華蓮は俺の足をポンポンと年相応の力で叩き、俺を呼んだ。
「ん?決まったのか、じゃぁ、何が欲しいんだ?」
何も感じさせないように優しい声色で俺は答える。
それに華蓮は何かに微笑み、
「まずは、僕の行きたいところに連れてって」
と、何か企んでいることは確実な願いを彼女は言った。
2
華蓮に言われるがままに連れてこられた場所はいつもの公園だった。
いつもの公園でありながら、彼女が攫われ、影に打ちのめされた場所でもあった。
そんな公園に着て、華蓮は言う。
「遊ぼ」
たった二文字、それだけの言葉だったが、俺はそれに二つ返事が出来ず、
「…そんなのでいいのか…?」
戸惑い、小さく萎んだ声で訊いた。
華蓮はその問いに、
「うん」
明るく、無邪気に答えた。
それに俺は何も聞くことはなく、そうすることしかできないと改めて感じ、
「…あぁ」
若干、いつもよりは力ない声で返事を返した。
3
適当に走ったり、話を聞いたり、なんだかんだして、夕日が見え始めたころ。
華蓮はブランコに乗りながら、彼女の乗るブランコを押す俺に言葉を紡ぎ始め、俺はソレに返し始めた。
「カネマサは僕が影と闘ってるとき、助けに来てくれなかったよね」
「…あぁ」
「あのね、僕はあのとき助けに来てくれなかったのって、怒ってないんだ」
「そうなのか?」
「うん、僕ねあの時、カネマサがいないときでも頑張れるって事、証明したんだよ」
「…、…すごいな、おれなんかよりもずっと立派だよ」
「えへへ、…でもね、僕それと一緒の思ったんだ、僕、カネマサがいないとダメだって」
「…、…」
「なんかわかんないけど、僕一人じゃ唯ちゃん助けられなかった」
「…」
「暖加鮮芽…、だったっけ、死んじゃった僕の同族の女の人が襲ってきたあの時、僕を負ぶって逃げてくれたあの時、カネマサがいたから何とかなったんだよ」
「…ありがとうな」
話して、途中で黙ってしまった俺に対し、俺のことを否定せず、まるで大人のように緩し、称えた華蓮。
その会話になりかけの掛け合いで俺はそんな言葉をついつい口にした。
「ありがとうな、華蓮」
もう一度、俺は言って、華蓮の頭を撫でた。
「…んゅぅ」
かわいらしくうれしそうな唸り声を挙げ、華蓮はその手を受け入れ、俺に笑顔をつくった。
それにつられて俺も笑った。
そして、思う。
彼女を守るんだ、と。
護れなかったから、なおさら守るという意志が強くなり、心のどこかでずっと燃え続けていた元凶をつくってしまったクナイさんへの怒りは無くなった。
その代わり、華蓮を守るための道具として、クナイさんや反田さん、目に映るモノすべてを使うようにしようと、冷たい感情が熱い感情の内から湧き出し、俺は一つの行動を決めた。
強くなって見せる。
そのために反田さんあたりの伝手を使って、なにか、戦える技術を付ける。
シンプルかつ、優先度の高い目標を決め、俺は少し思った。
その間、もしかすると、華蓮を家に置いとかなければならない、と。
その時は、どうしようか。
様々な考えを巡らせ、簡単なことに気付く。
再生者による犯罪対策課、一般人の代表意見発表者という立場であること、それが何よりも一番だと。
もっとかみ砕いて言えば、『ただの人間の中から偶然に選ばれ、再生者の懸け橋となる使命を与えられた俺が再生者を弾いてどうするんだ』、という事だ。
信頼していなくとも、あれはダメ、これはダメと失態を理由に首を切っていったとしても、仕事としては円滑に進むべく行われる純然たる行為だとしても、受け入れる立場がそうしていてはならない。
だから、俺は何も言わないことにした。
これからもこのままで、直すべきところは直してもらって、厚くするところは厚くしてもらって、続けていこうと、そう思った。
押して、すべてに頃の中から敬意を払拭し、まっさらな仕事の仲間として、利用できるパイプとして、付き合うことにした。
全ては目的のために。
だから、そうやって振り切ったうえで、俺はもう一度彼女に笑顔を見せ、完全に決意を固めた。
4
その日の夜、華蓮が寝静まったのを確認し、俺は反田に連絡を入れ一つの要望を申し出た。
『武術を学びたいですか…』
俺の要望を繰り返し反田は電話越しで反芻るるようにいい、
『あるっちゃありますけど、絶対後悔すると思います』
「教えてくれ」
言い淀むように返した言葉にすぐさま俺は追い詰めるように返し、
『剣術…、といっても竹刀をもって人を殴るのが上手くなる程度にしかなりませんけど、私の知っている方に教わる事さえできれば戦力には数えられる様にはなるでしょう』
そう言って少しがさがさと書類だろうか、髪をあさるような音だけの無言が続き、
『一カ月以内、早くて十五日以内ですかね、そのくらいの時間があれば、アポイントは取れるはずです。なんせ、山奥に住んでいるうえに電話の場合は特殊な番号を経由しないと連絡が取れない人ですから』
期間の催促とその理由を反田は言った。
そして、俺は聞く。
「わかりました。で、そのアポを取ろうとしてる人って、どんな方なんですか?」
反田は短く息を吐き、俺の質問に答える。
『私達は普通に名前で呼んでますが、浄静院道輝という方です。知ってる人は彼の戦い方やその姿から形を持た無い者、比するモノが無い者という意味を込め『無形』と呼ばれています。彼は居合の達人でありながら剣術、刀の知識は全く持っていません。全て刀を持ってからの経験のみで積み上げられた天才です』
その反田の説明を訊き、俺はそんな人間に教わることに意味があるのかと不安を覚えつつも、持っていなかった人間が持つモノの凄さを身に付けることができるならと期待と渇望する欲望が全身を支配する錯覚に襲われ、こう言った。
「お願いします」
短くも明確。
欲望の塊とは今の俺自身なのかもしれない。
そう思うほどに、今の俺は力を欲していた。
『わかりました、連絡がつき次第、直ぐ報告します』
電話越しで伝わる訳がないそれに当たり前のごとき気づかない反田は通話を切り、俺はゆっくりと立ち上がり、窓の外を見た。
明かりが照る隣近所の家々が見え、その後、空を見上げて、流れる雲と足多恵繋がる夜空が星々を映し、暗闇を小さく照らしていた。
こんにちは、みち木遊です。
番外編いかがだったでしょうか。
本編に絡まないように本編に繋がるように書くというのはとても大変でだいぶ時間をかけてしまいました。
一応、伏線はあるのですが読んでなくても大丈夫なように似た予9唸伏線を本編似れていますので、かぶる場所があれば、これあとあと何らかの形で関わるんだろうな、くらいのノリで見てくくれて大丈夫だと思います。
今回、少し一定の記念を持たせて描いた作品なので華蓮成分が多めになっています。
それで少し楽しんでいただければと思います。
一応、二章ごとにこういう番外編は書いていきたいと思っていますので、今後ともよろしくお願いいたします。
ではまた次回お会いいたしましょう。




