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勇者絶対条件 二章大切なモノのための盾 二十二話「見えた悪夢と隔てる壁」

こんにちは、含水茶吹です。

展開が早まります。

最後まで読んでくれると上れしいです。

  0


 浮雲唯(うきぐも ゆい)は人を殺しかけた。

 小鳥遊華蓮(たかなし かれん)がいなかったら、殺していたかもしれない。

 浮雲唯と小鳥遊華蓮は友達と呼び合う未来に足を踏み入れたばかりだった。

 だが、これで一幕など降りる訳がない。


  1


 小鳥遊に後ろから抱き締められたまま、浮雲は涙を流して、二人で地面へと倒れ込んだ。

 土が二人の涙の痕を伝うように頬に付き、倒れた勢いで、それなりに体を擦り剥き、違和感が体を動かそうと普通はするだろう。

 だが、二人はそうしなかった。

 疲労、その二文字が二人の小さな体に圧し掛かり、体を動かす力を奪っていた。

 浮雲がすべての力を出し絶命させようとしていた、パパと呼ばれていた男は白目をむいて、戦闘続行(つづき)をできるような状態ではなかった。

 ほぼ、安全な状態で二人は倒れていた。

 その時、黒い影が二人の眼の前に現れた。

 まるでそこかから飛び降りて来たかのように、垂直に上から落ちて来た。

 二人は、動かない体でもその影を凝視することくらいはできた。

 その影は人間の形をしていた。

 そして、二人がその影の顔を確認しようとした時、

 「あ、まだ意識があるのかよぉ」

 男か女か全くわからない加工されたような声で、なんとも軽そうに言うと、掌を電灯にかざすと、電灯が突然、バギャンッ!!、と音を立て、粉砕されるかのように壊れ、あたり一面が暗闇に包まれた。

 「もぉ、子供は殺さないからいいけど、こいつだけは回収しておかないと」

 独り言のように、またどちらの性別とも言えない加工されたような声が、何かを見て屈む影をつくりながら喋り出す。

 その方向はパパと呼ばれていた男だった。

 影は男の頭をつかみ、片手でひょいと持ち上げた。

 常人ではできないその行為に、二人は息をのんだ。

 影は持ち上げている途中、男の体の上に小鳥遊と浮雲の足が乗っかていることに気付き、

 「いけない、いけない」

 と、また加工されたような声で呟きもう片手で二人の乗っかっていた足を持ち、丁寧に地面に置いた。

 二人は影に足を触られたとき、異常な悪寒が走っていた。

 何故なら、異常に生暖かく、べたべたとした何かが影の手の表面を包んでおり、降ろした後でも二人の脚の持たれた部分にそのべたつく何かが付着していたからだ。

 異常ともいえるその感覚に声すら上げることを忘れ、二人は凝視する。

 その影は男を再び続きをするように持ち上げ直し、男の足がつかない位置まで高く掲げ、影は男のからだをまじまじと見るような仕草をつくる。

 「あー、やっぱりかぁ。適合率こそはよかったんだけどねぇ…、さすがに無理があったか」

 そう呟き、

 「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■」

と、一息で言葉なのか、わからない速度で何かを言った。

 影はそうして、少し黙り込み、男の頭から首に手を一瞬で移動させた。

 まるで首をつかみ片手で締め殺そうとしているような形をつくる。

 そして、

 「バイバイ」

 そう言って、影は男の首をへし折った。

 頭頂部が下を向き、だらっと、男のからだ中から排泄物の異臭と血なまぐさい不思議なにおいが漏れ出してゆく。

 男は、完全に死んだ。

 もう、蘇生処置などは取れない。

 延命すらも無理だ。

 男の死体が影の手の中で作られてしまっていた。

 影は、その死体を投げ捨て、男の死体は地面を勢いよく転がり、すぐに止まった。

 浮雲はその光景を目の当たりにして、

 「ぅ」

 小さな嗚咽を挙げた。

 いくら殺しかけた相手だとは言え、浮雲のにとっては血親として存在していた人物。

 感情に異常が出るのも普通のことだ。

 恐怖や疲れで声が出なくても、嗚咽は出る

 だが、影は其れにはどうしてか、良しという反応を見せなかった。

 「……、…、………、どっちだろ、変な音出したの」

 影は二人を向いて、そう言った。

 その瞬間、二人を包んだのは明確な殺意。

 恐ろしく、悍ましいほどの圧倒的な圧力と拘束力が二人の全身を包む。

 「ダメだよぉぉ、汚い音は、息と共に出る声は寝息と、呼吸、深呼吸くらいでいいんだぁ、嗚咽なんか、いらなぁい」

 ねっとりとした声でそういうと、浮雲の頭を恐ろしいほどの速度で掴み、男同様に持ち上げる。

 「ぃゃ、…ぃやぁ…いやぁ、いやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやぁぁぁぁあぁぁぁああああああああっ!!」

 浮雲は最後の力を振り絞り、弱々しくも、甲高い叫び声で、抵抗する。

 だが、それは無意味だった。

 影はそのままもう片方の手を浮雲の細い腕を掴むと、

 ボキ。

 そんなあからさまな音が出るほど勢いよく、上腕骨を折った。

 「いぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!?」

 浮雲は叫んだ。

 激痛なんかじゃすまない声をあげた。

 それを見ている小鳥遊は浮雲を影の手から離そうと、立ち上がろうとするが力が全くはいらない。

 出来ても、横向きに倒れている体をうつ伏せにする程度。

 何となく血が少なくなっている感覚もわかる。

 動かない。

 寒くなって来た。

 動かない。

 助けたい。

 動いてほしい。

 動かない。

 思考はそんな回路を辿り、小鳥遊の脳は立ち上がろうと身体に命令を送り続ける。

 だが、その命令を無視するように体は動かない。

 「ああああああっ!あああああああああああああ!!」

 悔しさと、気合付けの叫びが浮雲の悲鳴と重なるように響く。

 「いだぁぁぁい、いだいいだいいだぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああぃ、ああっ!!」

 浮雲は痛みに鼻水、汗、涙を流し、悲鳴と叫びをあげる。

 それに影は言う。

 「…これは…、教育、だからね」

 その一言にどんな意味があるのか、二人は理解すらしようとしなかった。

 そして、理解できない中、影は浮雲の太ももをつかみ、

 「わかってね」

 そう一言残し、再び、大腿骨をボキッ、と折った。

 「ぎぃぃぃいいいいいいいいいいいいぃぃィぃィぃいいいいいいいぃぃぃぃぃぃいいぃぃぃっ!?」

 浮雲は再び、悲鳴を上げた。

 流していたものに加え、涎が彼女の口からあふれるように流れる。

 叫び声は掠れ始め、まるで痛めつけられている獣のような声に変わっていた。

 「やめろぉ…、やめろぉおおお!!」

 小鳥遊は絶叫した。

 動かない体をやっと入った腕の力で引き摺るように移動しながら、影の方へ向かう。

 影は小鳥遊の方に何気なく向いて、

 「もうぉ、あんまナカマにこんなことしたくないんだけどさぁ」

 そう言って、影の足元まで来た小鳥遊の頭をゆっくりと踏みつけた。

 「…ぉ…ん…んんん…!!!」

 顔面が地面に付き、小鳥遊は声も出すことができず、口に入る砂が異常な不快感を与え、目に砂や小石が入らないように必死に瞑り、声にならない悲鳴と叫び声をあげながら、影が少しずつ万力のように力を加えてくる。

 叫び声のような悲鳴と声にならない悲鳴。

 二つの悲鳴が影の周辺で鳴っていた。

 影は言う。

 「…、もう、ほかのが来ちゃう…」

 そう言って、一息開け、小鳥遊の頭から押しを降ろすと、

 「この子、持って帰ろうかな」

 そう言った。

 無感情にそう言った。

 踏みつけられ

 鼻の軟骨が折れ、息がまともに出来ていない小鳥遊だったが、その言葉は看過できなかった。

 「や、…やぁ、あ、め、…え…お……」

 小鳥遊はひねり出す。

 「……………や、え、お…、やえお…」

 その小さな体に秘めた心の力がないモノをひねり出し、小鳥遊に声をあげさせた。

 再生者(リプレイヤー)の回復力は疲労や痛みなどの回復はできない。

 それなのに、小鳥遊は更に影の足にしがみついた。

 失いたくない、ただそれだけだった。

浮雲は失禁し、気絶いている。

 影はそれを見ていう。

「意識の無い友達のためだと思って、その手、放してくれないかなぁ…」

 視線こそは向いてなくとも、その言葉が小鳥遊に向いていることくらいはわかった。

 それに小鳥遊は振り絞って答える。

「う、…あ、える……、…なぁ……」

 ふざけるな、紡いで形にこそならなかったが、小鳥遊にとっての最大の敵意の現れとして、その目は鋭く光っていた。

 言葉を超えた怒りが小鳥遊の記憶を刺激した。

 鉄パイプ、暴力をふるう母親、それを見て嗤う父親、閉ざされた部屋、寒いベランダ、トイレもなく垂れ流しになった自らの糞尿がこびり付いたまま穿き続けた変色した下着、吐瀉物と血液がついた段ボール、苦しいほどに首を絞め続ける犬用の首輪、枯れていく自らの命。

 思い出した瞬間吐き気に見舞われるも、今の小鳥遊のそんなのは関係がなかった。

 自ら受けた痛みが誰かに降りかかるのなら、その痛みを自分が受ける。

 ただそれだけ。

 たったそれだけだった。

 そして、その意思から一つの決意が生まれる。

 『私が、大切なモノを守るための盾になる』、と。

 小鳥遊は限界を超える。

 クナイが使う常に十割で体を動かせる、そんな域に到達する。

 自分の足で、ゆっくりながらも、小鳥遊は立ち上がった。

 その足がふらつくことはない。

 どっしりと二度と倒れないように大地を踏みしめているのだから。

 影はソレを見ていった。

 「持っていくのを止めるのは、ダメ、だよ?」

 そして、言い終わった瞬間に影の足あたりから回し蹴りのような攻撃的な残像を小鳥遊に向かって打ち込んできた。

 バギャンッ!!!!!!

 公園中に鳴り響く轟音。

 だが、しかし、その影の一撃は小鳥遊には届かなかった。

 それどころか、影の足のように見えるものは小鳥遊に当たることなく静止していた。

 「…動かない」

 影は足のようなものを再び地面を付くために戻そうとしているようだが、そこからびくともしない。

 そして、急にぱっと拘束が解かれた様に足が地面に落ちると影はドサッと浮雲を地面に落とし、小鳥遊に殴りかかって来た。

 バギャンッ、ダギュンッ、バギュッ!!!!!!!!!!

 ありえない速度の拳が何度も、小鳥遊に向けられるがまるで『見えない壁』があるかのように、その拳は彼女に届かない。

 そして、殴る続ける影に小鳥遊は一度目を閉じ、息を吸って、長く吐き、眼を見開き、黒色の瞳から、金色に怪しく光り出す瞳へと変貌した目で影を映し、言う。

 「…もう誰も傷付いてほしくないんだッ!!」

こんにちは、含水茶吹です。

いかがだったでしょうかも何も、超展開です。

実は諸事情により、何章か早めて、この連載を進める方針となり、結構最後まで強敵な奴が晴れて登場となりました。

実は中二の時に描いた設定を読み返して一番好きな設定が影こと、■■■■だったりして、なんだかんだで気に入ってるやべー奴です。

やっと小鳥遊が能力に覚醒したという事もあり、どんどん激化していきます。

二章はもう少しで終わりですが三章を挟み、四章から現状影が薄くなっている蘇者教との対決となっております。

今回はここでペンを置かせていただきますが、四章からガチです。

楽しみにしていてください。

ではまたどこかで。

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