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勇者絶対条件 二章 大切なモノのための盾 二十一話「友達」

こんにちは、含水茶吹です。

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 浮雲唯(うきぐも ゆい)という少女に誘拐された小鳥遊華蓮(たかなし かれん)。

 しかし、浮雲唯のその行動が彼女の意志ではないことを知り、小鳥遊華蓮はは浮雲唯を操っている『パパ』と呼ばれる人物から逃走し、小鳥遊がいつも遊ぶ公園に何とか三滝兼政(みたき かねまさ)との連絡を取り落ち合うことになったのだが、そこには先客がいた。

 パパと呼ばれる人物が二人を待ち受けていたのだった。

 そして、小鳥遊華蓮は浮雲唯を公衆トイレへと避難させ、パパと呼ばれえる男との交戦に臨むのだった。


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 「ふふふ…、ふあ、あはははははははははは!負けたりなんてしないっかぁ、いいね、可愛いいよ!!もっと気味で遊びたくなってきちゃったよ。遊ぶときは達磨にしてやる。…決めた、手足切り落として、達磨にして遊びぃ尽くすよぉ!!」

 激昂。

 それよりも、悍ましい言葉と声だった。

 それでも、小鳥遊は男から目を逸らさなかった。

 三滝が来るまでは絶対に死なないし、浮雲を守ると固く誓ったその体は肉と皮を薄く銃弾で抉られた腹部を片手で押さえ、小鳥遊は男に立ち塞がる。

 「はぁ、…はぁはぁ…、ぁぅ…」

 痛みは無視していても体を突き刺すように走り、涙で視界がほんの少し歪んでいた。

 だが、その中で小鳥遊は男をどうやって行動不能にできるのかという思考を止めなかった。

 武器に出来そうなものはなく、遮蔽物として扱えるものはなく、足止めとして使える者もない。

 さらに、相手は武器を持っている。

 こちらは移動の疲労と掠り傷程度に収まってくれた銃創が負荷として掛かっている。

 しかし、少しの時間であれば、大人の力なんて目ではない程の能力をこの状態でも使うことができる。

 この能力は公園で遊んでいるときにたまにクナイと練習して、身に付けた技術だ。

 再生者の身体能力を最大限に生かして行動する、ただそれだけの体の動かし方。

 クナイはその能力を常に使うことができるが、まだまだ未熟な小鳥遊には数十秒が限界の能力だ。

 二秒ほどに使用を抑えれば、二十回は確実に使えると言え、かなり短い。

 それが唯一の、欠点だらけの、起死回生の可能性がある、小鳥遊の武器。

 そんな武器だけでどう勝てばいいのか、少なくとも、どうやって凌ぐことができるか、考えて、考えて、考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて―――――――。

 考えた。

 そして、一つの行動に移した。

 「――――っ!!」

 小さな息を吐いた音とともに、二秒だけの超高速で、『真正面』から男に向かったのだ。

 その速度にすぐさま、急を構えて、彼女が向かうであろう直線距離に打ち込んだ瞬間。

 引き金を引き切ったタイミングと同時に、横へと大きく飛んだ。

 その間ちょうど二秒。

 着地と同時に使用を解き、身構える。

 その動きを見て、無言で男は銃弾をさらに小鳥遊へと打ち込んだ。

 そして、また、小鳥遊は引き金を引き切る瞬間に二秒間だけの力を使い、真横に避け、また、『一直線』に男へと向かって走る。

 そして、飛ぶ。

 男の頭上を跨ぐように飛び越え、男のすぐ側で着地し、クナイが唯一教えてくれた、蹴りを叩き込む。

 その蹴りの名前は足刀蹴り。

 足の小指側の側面で相手を蹴り上げるモノだ。

 だが、小鳥遊の身長と体重では蹴り上げることは不可能だったが、吹っ飛ばすことは可能だった。

 そして、使用を解き、二秒ちょうど。

 この攻防で四秒程度。

 戦闘の速度も以上だったが、それよりも、この速度に普通に付いて行くことができる男の方も異常だった。

 さすが元本職と言ったところである。

 しかし、小鳥遊もその中では異形ともいえる行動ではあった。

 彼女にとってこの一戦が初陣であり、その体躯からは想像のできない発想を行動に移し続けていた。

 パァン、パァン、パンパン。

 たっ、たっ、たたた。

 サク、サク、ザザ。

 乾いた音が連続する。

 その度に地面を蹴る音が響く。

 その足跡が響いた場所には、銃弾がの地面にのめり込む音と集団がのめり込んだ黒い小さな穴が開いた。

 男が持ている銃は改造に改造を重ね、化け物と男自らが名付けるほどの威力を持った銃であり、地面に黒い穴が開く事は普通の銃であれば、それほどない。

 初速はおそらく秒速六百五十メートルオーバー。

 これは二千二十二年から、異常な速度で発達した軍事技術の産物だった。

 その産物相手に小鳥遊は飛び、走り、避け、それを繰り返す。

 だが体力の消耗、集中力の低下、判断能力の低下、そんなマイナスな状態はそんな単調な動きをしていても、容赦なく襲い掛かる。

 人間ではないとしても、やはり生物の限界というものは存在する。

 「はぁ、っ、はぁはぁ…」

 過呼吸気味に呼吸をしながら小鳥遊は銃弾を避け、十九回目の時、大きく後ろへ飛び、男と百メートルの距離を取る。

 動き始めからこの行動になるまでの総合時間五十三秒。

 使用時間は二秒が十九回で三十八秒。

 それ以外の時間は十回蹴りを入れ、相手が立て直す時間で十五秒。

 敵も敵、自分も自分の戦闘だが、ここからは小鳥遊にまともな信頼を置ける武器はなかった。

 信頼している武器もあと一回切り。

 体力は異常に減り、目の前が汗と酸欠で歪んで見える。

 短い時間。

 だが、小鳥遊には長く感じていた。

 たったの一分にも満たない時間の中で行われた超高速の攻防に肉体は限界を告げようとしていることを知りながらも小鳥遊は立った。

 自分に危害を加えて、攫って、危険な目に合わせた少女を守るために立ち上がった。

 ただ、側にいて、できることをして、罪を全部洗い流して、また別の出会い方をしたいから。

 友達として、本当の出会い方をしたいから。

 小鳥遊はそんな理由でも、立ち上がる。

 だが、男の持つ拳銃の残弾は多少ながらある事には変わりない。

 見た感じで替えのマガジンはもうないだろうが、男がこの現在のタイミングで三回マガジンの入れ替えをしているという事はマガジン一つで十発、七発で一回目、十発で二回目、そして今は三本目のマガジンで十引く二発で残弾が七発。

 一発は避けれたとして、六発、いくら再生者の身体能力や治癒能力と言えど、治癒能力を追い抜くペースで打たれれば、確実に死を免れることはできない、その上、身体能力は解放が出来ない状態なら普通よりかなり早いだけであり、プロアスリートレベルには及ばない。

 (どうすれば…)

 手は無い、その事実を理解しながらも無視して考える。

 だが、手は無い。

 当たり前のことではあるが覆さなきゃいけない、でも、覆せない。

 (カネマサ…ッ)

 ふと、三滝の顔が浮かぶ。

 その時、

 「あぐぅぅううああぁぁぁぁぅっ!!」

 唸り声と共にとんでもない速度を孕んだ小さな人影が男の首へと飛んできた。

 「ぐっ!?」

 男はその影に倒され、背中から地面に付いた。

 そして、飛び掛かった影は男の顔面を両手で鷲掴みにし、小さな足で男の握る銃を蹴り飛ばし、そのまま両足を取所の腕に叩き付けた。

 「んんんんぐもおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 男は押さえつけられ開かない口から籠った雄叫びのような悲鳴を上げた。

 そして、その突如として訪れた光景に唖然としていた小鳥遊は、その小さな影の正体に気づき、

 「唯ちゃん!?」

 彼女の名前を呼んだ。


  2


 浮雲唯は、いや、わたしは、パパをパパと思わず、そういう名前の敵として認識し、友達を守るためにわたしが出来る限りのボウリョクを振るう。

 体には異常な力が漲り、頭蓋骨を握り潰さんと手はパパの顔を押し込み、足は断ち切らんとパパの腕を踏みつけた。

 「う˝ぅ…、う˝ぅぅぅうう…、う˝ぅぅうううぅぅぅうう…」

 わたしの口からは大量の唾液と濡れた吐息と敵意にまみれたうめき声が垂れ流しになっていた。

 全身が熱い、血が全身に駆け巡る感覚が鋭く体を貫いている。

 だけど、そのはずなのに、何故か、脳は前進が冷たくなっていると認識させていた。

 手足の末端が冷たくなっていると感じてしまう。

 まるで冷たい水を手足にずっと付けているような、そんなレベルに。

 そして、わたしはこの瞬間に自分の中に芽生えたこの感情が明確な殺意だという事を理解した。

 そして、その殺意に突き動かされる獣になっているとわかった。

 そして、その獣の感情が今も全身の力を強くさせていることが分かった。

 そして、そして、そして、そして。

 ただ、ただただ、ただただただ、パパを殺そうと体が動いていた。

 パパからはうめき声は聞こえなくなっていた。

 いつの間にかに泡を吹き、白目を剥いて、真っ青の顔がそこにあった。

 息の感覚がかすかに手にまだ当たっていた。

 ただ、それが不快で、早くその感覚を止めようと、さらに力を入れようとしたその瞬間。

 「もう、いいよ…」

 掠れた声で、わたしの体を後ろから誰かが抱き締めた。

 いや、誰かじゃなかった。

 その声で、わたしはパパの顔を握る手の力を抜き、離した。

 その声で、わたしはパパの腕を踏み潰す足の力を抜き、離した。

 そして、その抱き締める温かな感触は言う。

 「どんなに憎くても、殺しちゃだめだ…。友達として会えなくなっちゃうから…ッ」

 涙を流しているのだろうか、首の後ろ側が濡れるような感触がした。

 それで、私の中から、殺意は解けるように消え、抱きしめてくれた存在の名前を呼ぶ。

 「華蓮ちゃん…、華蓮ちゃん、ごめんね…」

 謝りながら、呼ぶ。

 友達が、また会う時に友達として出会う存在がわたしを止めて、わたしを留めた。

今回のあとがきはなしです。

何も僕が言うべきことはないと決めた話です。

伏線と伝えたいことが詰まった話だという事だけ残しておきます。

拙い文章ですが、次回も読んでくれると嬉しいです。

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