勇者絶対条件 二章 大切なモノのための盾 十九話「閉ざされた世界 開こうとする小さな手」
こんにちは、含水茶吹です。
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浮雲唯という少女に誘拐された小鳥遊華蓮。
小鳥遊を探すクナイと三滝兼政と反田一。
これは、いや、ここからは小鳥遊華蓮の話。
彼女がやりたいことを決める、願いを叶える為の願いをつくる話。
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小鳥遊華蓮は目を覚ます。
小さな頭痛とともに瞼を開けると、夕日が入り込みオレンジ掛かった見知らぬ天井が目の前に広がる。
「ここ…、………んっ!?」
体を動かそうとした時、手首と足首が何かに縛られていることに気付く。
縛られている物をほどこうとするが食い込む痛みが手首と足首に走るだけ、何に縛られているのか、そう疑問に思い目の前に手首を出すと、まぁまぁな太さの針金が手首にきつく、複雑に、二重で縛られていた。
「何…これ…」
理解が追い付かない中、唯一、まともに発したのは手首に巻き付く、それへの疑問だった。
恐らく、足も同じくそうなのだろうと、その程度は理解できるが、それっきり。
何一つ、理解できない。
そして、少し遅れてやっと恐怖が彼女の精神を蝕んできた。
まるで大きな動物の死骸がじわじわと蛆に食い荒らされるような、そんなゆっくりとした速度で、恐怖は競り上がる。
「っ…、っ、っ…」
声にもならない音を口の端から漏らし当たらりを見回すと、
「…起きた。珍しい、こんなに早く目を覚ます人なんて初めて」
そんな声が聞こえ、そこへ向くと、記憶の最後に出会った、女の子がいた。
記憶の最後の場所、それは公園であり、そこであった少女がそこに居るということだけで、なんとなく、この状態について何か知っているのではないか、と小鳥遊は考え付き、その女の子に訊く。
「ここは、…どこなの?」
上ずった声での質問にその女の子は、
「…私は多分、地獄の中の天国なんじゃないかなって思う」
と、答えにならないようなことを言う。
小鳥遊はあたりまえのことだが、その答えを理解する事が出来なかった。
だから、
「わからない…よ…」
恐怖に飲まれそうな声で、もう一度答えてほしいと言外で伝える。
女の子もそれは理解が出来たらしく、
「…私の飼い主の家、…じゅうしょ…?とかは、わからないけど…」
と、やっと答えになることを答えた。
そして、女の子は華蓮にこんな質問を始めた。
「…私、浮雲唯。貴方の名前は?」
その問いに、小鳥遊は、答えるべきだと判断し、
「…小鳥遊、華蓮」
答える。
それに浮雲はコクリコくりと二度頷き、
「それじゃ、貴方は助けてくれるヒーローはいるの?」
と、聞いてきた。
小鳥遊はその質問を一度、理解しかねたが、頭の中で反芻しているうちに、理解をし、一人の男を思い浮かべた。
そして、小鳥遊はその名前を言う。
「…カネマサ…」
それを聞いて、嬉しそうに浮雲は目を見開き、
「おぉ、いるんだ。貴方にヒーローが」
そう言って、感情の分からない笑顔を浮かべた。
その笑顔の意味は小鳥遊が知ることはできない『何か』だという事だけは小鳥遊の本能が理解することができたらしく、小鳥遊の呼吸はその笑顔を見た瞬間、ほんの一瞬だけだが、止まった。
「じゃあじゃあ、じゃぁさ、そのカネマサ?っていう人、パパが帰るまでには来るかな?」
「え?」
浮雲の追い詰めるように聞かれた質問に小鳥遊は聞き返す。
「だから、パパ、帰ってきたらもう、どうしようもないから、それまでにヒーローが来るのかなーって、聞いてるの」
そして、再び聞かれた質問に、小鳥遊は理解し、考え、思った。
カネマサに頼りっきりでいいのか、と。
せめて、浮雲を口先だけでもこっち側に付けることはできないのか、と。
そして、その為に、考える、考える、考えて、考えて、考えて、考える。
小さな思考の中で知らない言葉をどうにかして繋げようと考えて、自分の為に、目の前にいる『何か』から逃げるために、考える。
カネマサならこのときなんて言うのか、そんなことを思いながら、やっと、思い付いた言葉を、恐怖で震える唇を動かして、紡いで、発した。
「可哀そうな人…」
ただそれだけで、浮雲の動きが止まった。
止まって、無表情になった。
無表情になり、しばらく動かなくなった。
そして、ほんの少し後に、無表情でなんの動きもないまま、涙を流した。
それに小鳥遊は驚きながらも、言葉を続ける。
「悪い事なら誰かに言って、怒られようよ。まだ間に合うかもしれないし、もしかしたら、痛いことはないかももしれないし――――」
だから、やめようよ。
そう言おうとした時、
「…、居場所、くれるの?」
遮って浮雲は小鳥遊に訊いた。
その問の本当の意味は分からなかったが、どうしてか、小鳥遊にはその気持ちが分かった。
彼女は自分と似ている、そう思えたから。
そして、小鳥遊は言う。
「わかった。頑張って聞いてみる。居場所をあげて、って」
その言葉に、浮雲は涙を流したまま、笑い、
「ありがとう」
そう言って、静かに小鳥遊の手足に付けられた針金をほどき始めた。
足がほどかれた、その解き、ガシャン、とドアの開く音がして、
「おーい、パパが帰って来たぞー」
と、男の声が部屋に響いた。
それと同時に、ビクゥッ、と肩を跳ねさせ、浮雲は震えた声で言う。
「…パパ、パパが帰って来た…」
その言葉だけで、小鳥遊は事態が悪化したことを悟った。
「…逃げよう」
小鳥遊はそういった瞬間、
「お、連れて来たのか…、それに今度は『再生者』か。いいの連れて来たな」
と、部屋の中に入って来た男が二人を見てそう言った。
そして、小鳥遊は彼の言った単語に反応し訊く。
「何で、それ知ってるの…?」
その問いに、男は少し驚いた様子で応える。
「知ってるって、『再生者』のことか…。あぁ、知ってるよ。なんてったって、元『再生者による犯罪対策課』の一員だったからね。もちろん、内心、驚いているんだよ。君を抱きかかえていた少年を打ってしまって取り逃がしたと思っていたんだ。こんな形で再会するとは、…もしかして、」
男は、小鳥遊の顔に息が重なるほどの距離まで顔を近づけ、
「俺のおもちゃ希望なのかねぇ」
そう言った。
その瞬間、こうなってから、最大の恐怖を感じた。
呼吸の仕方を忘れ、雑に息を吸い込んでは吐き出そうとし始め、目を渇いてる感じすらないほど見開いたまま、男の目を見つめ、体中が震えた。
男の言葉に、男の言った言葉の中身が何となくわかり、繋がり恐怖した。
そして、男の目の中の得体のしれない狂気に、小鳥遊は屈しかけていたその時、
「ね、ねぇ、パパ」
おどおどした声で、浮雲は男に話し掛ける。
「ん、どうした、唯」
男は顔を離し、浮雲の方に向くと、
「パパ、なんで唯を『お願い』の時じゃない時に外に出してくれないの?」
そう真っ直ぐな視線で、浮雲は男を見て、訊いた。
それに、男は、頭を掻いて、優しい口調と表情で答える。
「そっか、唯もそう言うようになったか…。あのな、唯がパパと一緒にいさせるためなんだ。パパは唯が心配で心配で、仕方がないんだよ。…わかってくれるか?」
男は唯の側まで近づいて、彼女の肩をつかんでまるで父親が子供を納得させるように言った。
その言葉に浮雲はうつむき、再び顔を上げ、
「この変態っ!!」
と、叫び、両手で力強く男を突き飛ばし、たまたまそこにあった椅子を精一杯、振り回して窓ガラスを割った。
それに驚き、突き飛ばされた男は尻餅をつきながらも、パクパクと口を開閉している。
「華蓮ちゃん、逃げよう」
「…うぇ!?」
その声とともに、浮雲の小脇に抱えられると、ベランダへと割れた窓から飛び出し、ベランダに置いて、あった大きな木の板に乗ると、その木の板は二人を乗せ、『浮かび上がり』そのまま宙を浮きながら、動き始め、それなりの速度で、どこかに向かって、飛んでいった。
2
空の中で、二人は逃げている。
その事実だけでも十分の驚きものだが、その当事者はもっと驚いていた。
「うぇ、え、え、え、えぇぇぇぇぇ!?」
そう叫んでいるのは、小鳥遊だった。
そんな小鳥遊に、
「華蓮ちゃん、唯にはね、物を浮かべて動かす力があるんだよ」
と、話しかけた。
それを聞いて、小鳥遊は、驚きをかくせないようではあったが、叫ぶのをやめて、訊く。
「空を飛ぶって、どのくらい!?」
それに浮雲は答える。
「このくらいだったら、唯がつかれるまで行けるよ」
そう言って、浮雲は何か目標を決めたように目を凝らし、
「華蓮ちゃん、唯、隠れる場所見つけたから、一緒に行こ?」
と訊くと、
「わかった!」
勢いよく小鳥遊は答え、二人を乗せた木の板はある場所へと向かった。
3
「着いた」
浮雲がそう言って木の板を地面につけたのは、人通りの少ない公園だった。
「結構、来たんだね…」
小鳥遊は呟くようにそういうと、
「唯、ここしか、場所、まともに知らないから」
そっけなく、浮雲は言って、
「ねぇ、華蓮んちゃん、唯、ここで一回死んだんだ。それでね、―――――」
そこから勝手に、零れるように、浮雲は自身の記憶を話した。
突然の告白に小鳥遊は驚いたものの、冷静に、浮雲の心情を思いながら、熱心に最後まで聞いた。
「―――、それが唯のいままでだよ」
それなりに長く続いた話が終り、小鳥遊が口をひらいた。
「ねぇ、唯ちゃん。僕、唯ちゃんが僕に石をぶつけたこととか、僕を攫ったことは、全く怒らない。でもね、今まで、攫ってきた人、傷つけてきた人を思うと、僕は唯ちゃんを許せない。だから、反田って人の所に行こう?その人の所で悪いことは反省して、いいよってなったら、カネマサと僕の所に来てよ。その時は、楽しいことしよう」
小鳥遊は、浮雲の両手を握るように掴み、優しい口調でそういった。
ある意味、説得ではあるが、小鳥遊の中では、それは約束という意味しか持たなかった。
そして、それに、再び、ツー、と浮雲は涙を流し、言った。
「…わかった。約束、しよ…?」
そして、二人は小指を絡め、約束の儀式のような歌を歌う。
指切りげんまん、嘘ついたら、針千本飲ます、指切った。
そんな、短くも、強い呪文の様に。
こんにちは、含水茶吹です。
いかがだったでしょうか。
今回、起承転結の転の方の入りだったので内容が薄いです。
浮雲ちゃんがやっと、華蓮ちゃん側についたという事で、今の所ほっと一安心です。
それにしても、華蓮ちゃん頭良すぎないか、と作者自身書いてよく思うんですけど、どうなんでしょうか。
ちょっとそれは聞きたい所だったりします。
それはそうとして、今の所、ご都合主義で超展開続きですが、中盤までいろいろと基盤を固めないといけないので四章くらいまではこういうのが続くのをご了承下さい。
では、また次回にお会いしましょう。




