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勇者絶対条件 二章 大切なモノのための盾 十八話「ウキグモ ユイ」

こんにちは、含水茶吹です。

今回は誘拐犯の生い立ちについて書きました。

最後まで呼んでくれると嬉しいです。

  0


『再生者(リプレイヤー)』である小鳥遊華蓮(たかなし かれん)はクナイと外出中、クナイの目を離したすきにさらわれる。三滝兼政(みたき かねまさ)と反田一(たんだ はじめ)が彼女の行方を追い、小鳥遊華蓮の捜索を行うクナイとは別に捜索を試みる。

 これは、誘拐した本人の浮雲唯(うきぐも ゆい)という少女の昔から今に至るまでの話。


  1


 浮雲唯。

 そう名付けられた少女は貧困に苦しむ家庭で育った女性が暴漢に遭い、その結果生まれた子供だった。

 母親となった女性は十六歳と年端もいかない少女で、自分の娘とはあまり歳の差というものがなかった。

 その所為か、浮雲が泣くたびに、過度な暴力と罵声罵倒を繰り返し、母親の少女の心は荒み生活は廃人へと変貌し、その少女の両親でさえ、少女に愛想を尽かし、少女と浮雲唯から離れていった。

 とうとう誰にも 助けられなくなった二人は、生活保護を受けつつ、少女が水商売で稼いだ金で食い繋ぐ日々を送っていた。

 そして、その生活が十年ほど続き、浮雲唯、十歳の時のことだった。

 少女は仕事先で失敗をし、その帳尻合わせに、浮雲唯を少女の働く職場で働かそうと連れていこうとした。

 少女の働く先が違法風俗店だという事は小さいながらにも理解していた浮雲唯は、当然のように嫌がった。

 抵抗し、抵抗し、暴力を振られ、涙が止まらないほどに殴られ、痣が出来た。

 それでも、彼女は抵抗には一切の暴力を働くことはなく、何かにしがみ付くか、手足を大きくバタバタと振り、近付かせないようにするだけだった。

 それなのに、少女の暴力と暴言は止まることはなく、拳は気付けば何かのプラスティックの棒に変わっていた。

 痛みが増え、心が軋んだ。

 でも、浮雲唯の母親はそんな少女だった。

 しがみ付いて、抵抗して、殴られ、罵声を受けても、浮雲唯の母親は少女だけだった。

 その意味のない悲しいやり合いは何時しか終わっていて、少女の目はとても渇いていた。

 浮雲唯はその時、自分の気持ちが少女に伝わったのだ、と思った。

 だが、全く違った。

 少女は、彼女の持つ精一杯の力で、浮雲唯の頬を殴り、浮雲唯は、その場に倒れた。

 意識はあるものの、朦朧とし、身体に力が入らない。

 痛みさえ遠のく感じがしている。

 その中で、少女に抱き上げられた。

 これが浮雲唯の最初で最後の、母親から抱き上げられた瞬間だった。

 そして、そのまま外へと連れていかれた。

 霞む視界から見えた外は夜で、辺りは真っ暗だった。

 そんな景色が長い間続いて、く言ううに空を飛んだような気がして、すぐに、堅い物に当たった。

 痛みが一瞬意識をはっきりさせたが、すぐに感覚は霞み、今度は足を捕まれ、ズルズルと地面を引き摺られ、暗い空間に連れ込まれる。

 そして、その空間の中で足をはあ成され、少女の足音がその空間から去っていくのを聞いた。

 助けて、そう言葉を発送と口を動かした。

 だが、出るのは気持ち悪いうめき声だけ。

 そこから短い彼女(ウキグモユイ)の命のカウントダウンが始まった。

 目が覚めると激痛が体中を覆うように走った。

 その痛みに耐えながら、外に出ると、日の光が見えるのに暗く、誰もいない、そびれた公園だった。

 そして、自分が今、その公園の公衆便所にいたのだと分った。

 そこからは雑草を食み、引き摺られたときの傷が化膿し、腫れ、何かの拍子で割れ、鋭い痛みが走り、またそこが化膿し、雑草の毒素で体の調子が完全に狂い、下痢が続き、吐き気は止まらず、涙は枯れても何かの液体が涙も変わりに流れ続け、それを永遠の繰り返す生活が始まった。

 その間で浮雲唯は理解した。

 自分が捨てられたこと、望まれない生だったこと、自分が母親の言うことを訊かなかったこらこんな最後になったこと、自分の最期がすぐそこにあること、それらすべてを。

 そして、浮雲唯は願った。

 ヒーローを。

 自分が望まれる未来を。

 幸せを。

 然しそれはかなう事はなかった。

 奇跡的に食いつないで生きた十日目、浮雲唯は公衆便所の前で倒れた。

 この十日間、通行人も、何もなかったこの公園で独りぼっちで、疲れ果てて、倒れた。

 痛くもない、空腹は限度を超え、満腹のように感じ、体には力が入らず、唾液ではないモノが口から垂れた。

 そして、死後にとかろうじて動いた体を精一杯動かして、蹲った。

 その直後、カァーカァー、とカラスの鳴き声があちこちから聞こえ、なにか鋭いものが背中に乗っかった感触が立て続けに走りそれが、足、腕、頭と全身へと広がった。

 その直後、体からそがれるような痛みが走った。

 びちぃっ、びりぃ、ぐちょっ。

 湿った音とさける音。

 骨を啄まれる痛み、血管や神経が大きさ構わず千切られる痛み、筋肉がそがれ、剥がされ細切れにされる痛み、内臓をつっつかれ弾ける痛みが全身を至る所を襲い、浮雲唯の心を、体を、狂っているはずのすべてを再び狂わせる。

 そして、痛みの中、それが一瞬気持ちよく感じた。

 骨を啄まれる痛み、血管や神経が大きさ構わず千切られる痛み、筋肉がそがれ、剥がされ細切れにされる痛み、内臓をつっつかれ弾ける痛みが体中を興奮へと誘う麻薬のように、脳をえぐるような快楽に変わり、空を飛ぶような快感に酔いしれると意識が途絶えた。

 其れが、浮雲唯の最期であり、これが浮雲唯の人間としての一生だった。


  2


 目が覚めたのは、夜の暗闇の中で最後の時を共にした寂れた公園のあの公衆便所の前だった。

 服は着てなかった。

 だが、彼女はそんなことは気にすることもなく、なぜか元気な時と同じように入る力で立ち上がり、あたりを見回す。

 あの時は、こんなにこの公園は寂れていただろうか。

 そんな疑問が浮かび、彼女は公園の外へと歩き始めた。 

 歩き始めて大分来たところで、アパートを見つけた。

 そこの一階に干された大きめのタオル。

 それはタオルケットだったのだが、浮雲唯は、今の格好はさすがに人には見せられないなと思い、盗むことにした。

 浮雲唯は柵を含め、少なくても一メートル七十センチ前後は飛ばなくてはならないアパートのベランダへジャンプすると楽々とそれを飛び越え、そのタオルを盗むことに成功した。

 来た時と同じようにジャンプし、飛び越え、その場からそそくさと逃げると、物陰で、そのタオルを体をぐるりと包むように付けると、裸足のままで歩き始めた。

 歩き始めて、様々なところで盗みを働き、食いつないだ。

 その生活のは、彼女の罪悪感を増やすとともに、罪の意識を麻痺させていった。

 生きるために仕方だないと、助けてくれる人なんていないのだと、いい子にしても悪い子にすぐなってしまうからもう無理なのだと。

 諦め、妥協し、自分を騙して、彼女はその生活を続けていた。

 その生活は長く続いた。

 そんなある日の事。

 「お前、…まさか」

 中年の男がそういいながら浮雲唯に話し掛けた。

 そして、訳の分らないことをぶつくさと呟き、

 「お前、■■■■■■の子供か?」

 と、男は浮雲唯の母親の名を口にした。

 それに、浮雲唯は頷き、全てを話した。

 男はうんうんと頷き、彼女にこう告げた。

 「俺はな、お前の父親なんだ」

 浮雲唯はその言葉に驚いたが、そのあと男に抱き締められ言葉を失った。

 初めて、優しく抱きしめられ、戸惑いながらもその温かさに体を預けた。

 その日から、浮雲唯の呪縛は強さを増し彼女を縛りだした。


  3


 その男に拾われ、生活を始めてから、浮雲唯は男のことを『パパ』と呼ぶようになった。

 『パパ』の言う事は絶対。

 そんな気がして、男のいう事は出来ることであるならばすべて叶えた。

 『いい子いい子』と銘打たれた性行為をそうと知りながら、知らないふりをして応じ、男がやれと言った家事を完璧と言えるほどこなし、十歳から十五歳までの少女を誘拐して来いと命じられれば、その通りに意識を何らかの形で削ぎ取り、気絶させて、男の元へと運んだ。

 男と浮雲唯が住むマンションの一室の遊び場と名付けられた寝室へと彼女が誘拐した少女達を連れて行っては密室で何かをしていた。

 実際、少しでもドアに隙間が出来ていていても使っている間は中をみてはいけない、と命令されている為、浮雲唯は中で何をやっているのか見たことはない。

 そして、男は使い終わると、少し雑に接着されたような痕跡だけが残った元と何の変わらない服装の少女をどこかにおいて来いと命令される。

 そしてその度に、『誰かにちゃんと見つかるよう』に人通りの多い場所にある公園の『人目に付きやすく、誰かに助けてもらえるような場所』に寝かせておいた。

 そして、それが終り帰って来る頃には男は彼自身の仕事に出ている。

 男がどんな仕事をしているのかは知らない。

 だが、彼は何か誰にも言えないような仕事をしていた。

 最近はその職場でジョメイショブンとかいうものになり、ほかの仕事をやっている。

 前の仕事の時もだったのだが、たまに十歳から十五歳くらいの少女を連れてきては『任務完了』と言いながら、連れてくることがあった。

 当時、浮雲は気付いてはいなかったが男は其れが気に入っていたようなのか、その少女の大多数が再生者だった。

 そして、連れてこれなかったら、『任務失敗』とも言っていた。

 そして、連れてきた少女を遊び場に連れて行っては、ドア越しからでも聞こえる少女の喘ぎ声から何をしているのか察しのつく行為を男が連れてきた少女に飽きて、殺すまで続いた。

 殺すのは男だったがその始末は浮雲唯がやっていた。

 決まって、死体を埋めるのはかなり遠くの山の中腹で、死体の泣き叫んだあとの大きく見開かれた眼を閉ざし、「ごめんね」と言いながら、処理した。

 自分の能力にはその死体を運んでいるときに気付いた。

 浮雲唯が誘拐した少女を公園に返し終わった後と、死体を処理した後、漏らすことなく男は『いい子いい子』を彼女に強要させた。

 汚い身体が、自分の身体を蝕むのに大きな嫌悪感を感じ続ける苦痛でしかない時間。

 それでも、彼女は『居場所』のためにそれを受け入れた。

 それが続き、彼女は砂場で遊んでいるその時、声が掛かった。

 「何見てるの?」

 その声に彼女が振り向くと同い年くらいの女の子がそこにいた。

 その時、男から明日までに少女を一人連れて来いと言われていたのを思い出し、少女を選んだ。

 たまに男が連れてくる人の皮を被った何かと同じ気がしたから。

 そして、とりあえず質問に答えようと、

 「あり」

 と、目の端に映った蟻と答える。

 そして、注意をそらそうと、

 「あり、好き?」

 と質問し、

 「嫌いじゃないよ」

 と、少女が言う。

 そして、能力で浮かせた、少し大きな石を彼女の頭を目標に浮かせ、

 「ごめんね」

 の一言を引き金にするように、彼女の後頭部にその意思を飛ばした。

 一瞬にして倒れた少女に浮雲唯は呟くように言う。

 「ごめんね、許してね…」

 と、寂しそうに。

 そして彼女を片脇で抱え、少女が履いているサンダルを脱がし、落とさないようにもう片方の手で持ち、能力を使って持ってきた木の板に乗って、その場を後にした。


  4


 浮雲唯は今、彼女の住むマンションでソファの上に寝かせた誘拐してきた少女を寝かせ、その少女を監視していた。

 じっと少女を見つめながら浮雲唯は思う。

 彼女は何か近いものを感じると。

 自分と同じ人間の皮を被った何か、という意味でも、生まれた境遇が似ているという意味でも。

 そして彼女は呟く。

 「あなたには、助けてくれる、ヒーローはいるの?幸せはあなたの居場所にあるの?」

 と。


こんにちは、含水茶吹です。

今回はいかがだったでしょうか。

危ないワードが所々で出て、消されないか心配ではありますが、消されたら書き直すつもりなのであんまり進行の方では気にしてません。

それはともかく、今回の話は誘拐犯である浮雲唯ちゃんについての掘り下げ回でした。

唯ちゃんの生い立ちと今後のお話は暖加鮮芽の一生(再生者とかで分けると二生になりますが)の対比として描いています。

今後についても対比が出てくるので、二章はそういうのをメインに進めていくという方針になっています。

あと、気付いてる方もいるのではないかと思いますが、出てきた例の『男』は『アイツ』です。

次回かその後か、近いうちに答え合わせとなります。

楽しみにしていてください。

 ではまた次回もあえることを願いまして、ここで〆させていただきます

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