勇者絶対条件 一章 安価な命と再生 十三話 「動き出した物語」
こんにちは、含水茶吹です。
一章ラストのお話です。
最後まで読んでくれると嬉しいです。
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三滝兼政は小鳥遊華蓮と共に命を狙われるが、襲撃者を撃退することに成功した。
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あの戦いから、夜が明けた。
俺こと三滝兼政はリビングのソファーの上で目を覚ます。
どうも自分のベットで寝れる気もしなかったので、ソファーの上を選んだのだが…。
体を起こすと、背中に凝り固まったような痛みが走る。
それほど気にするようなものではないのだろうが、俺はどうもその痛みが心の状態に関係しているのではないかと疑わしくなった。
今日は、祝日だった。
普段の祝日は昼間で寝て過ごすか、本を読むか、ゲームをするか、そんなことしかやっていない気がするが。
今日はそんな気も起らなかった。
時計を見れば、七時ちょうどを指している。
まだ昨日の理解が追い付いていない脳に、リビングのドアが開いた音が響いた。
俺は、とりあえずと、ドアの方へ眼を向けると、そこには華蓮が寝ぼけたように目を薄く開けて立っていた。
「おはよう、華蓮」
俺はそう彼女に言った。
彼女も、
「おはよ、カネマサ」
と、返した。
何気ない朝のこのやりとりが俺の心に針を刺すかのようにチクリと傷んだ。
昨日の反田さんや、知らない味方だとは思うおっさん、クナイさん、そして、敵の『再生者』の暖加鮮芽ともう一人の『再生者』の男。
もう一人の『再生者』の男はどうなったかは知らないが、少なくとも、暖加鮮芽は死んだ。
それも自らの手で。
いくら俺が偶然、自己防衛で、痛手を負わせたからと言って、あの死を俺は良しとはできなかった。
いきなり襲ってきて、いきなり殺そうとしてきた敵でも、俺は、最後に語った彼女の話を忘れることができない。
もしもあの話が本当ならば、俺は彼女の死を選ばせず、罪を償わすために行かせていたのではないかと思う。
死人に口なし。
そんな言葉を思い出す。
確かにそうだ。
彼女の口から、謝罪と懺悔にお言葉も愚か。
彼女が全ての人が彼女を恨んでいたわけではないと驚かせることも、出来ない。
そんな身もふたもない事だけが頭をよぎる。
それに俺は、人を刺した。
その時には、相手は死ななかったと言えど、顔を貫く様に刺した。
その感触が全身にまだ残っている。
そんな衝撃が、感覚が、まだ心が追いつけていないというのに、俺の心に押し掛ける。
そんなのに、俺は耐えられることもできず、置き去りにされている。
時間は進むが、心は成長しない。
その矛盾が、今の俺を襲う。
そんな時、俺の隣に華蓮は座った。
華蓮も、恐ろしい目に遭ったはずだ。
俺が少し遅かったせいで、彼女にとても怖い思いをさせてしまった。
「華蓮、ごめんな」
気付けば、俺はそんなことを口にしていた。
それでも、小鳥遊華蓮はこう返す。
「絶対に来てくれるって信じてたもん。約束守ってくれたから、僕は、とっても嬉しかった」
その言葉に俺はほんの少しだけ救われた。
そして、俺は思った。
華蓮は俺が思っているよりもずっと強くて、ずっと優しかった。
俺なんかよりも、ずっと、ずっと。
俺は、そんな思いからかこんなことを訊いた。
「俺は本当にお前を守れてるのかな…」
むしろ守られているのは俺の方なんかじゃないかと、そう俺は思った。
でも、彼女はこう答えた。
「カネマサはちゃんと、僕を守れてるよ」
そう言って、華蓮は俺の膝の上に乗っかった。
その軽さに、重みを感じた。
活きている者の重みを。
そして、華蓮は続けるようにこんなことを言った。
「カネマサ、僕はね、こうしてまた生まれ直して、とっても不安なんだ。でもね、カネマサといれば、大丈夫って、思える。もう、それで、僕はカネマサに助けられてるんだ。だからね、カネマサは僕を守れてる。僕がホショーする」
俺はその言葉につくづく、救われているなと思い、華蓮の頭を撫でた。
撫でられ、嬉しそうに笑う華蓮に微笑み返し、俺はもう、こんな姿を誰にも見せないことにした。
俺が壊れても、俺が消えても、彼女を、小鳥遊華蓮を守るためならば、どんなものでも、俺が何とかしなければならない。
それなら弱い所なんていらない。
強くあり続けることだけを考える。
切り替えられない部分はたくさんある。
それならそれはそのままにすればいい、ただ今は、進むことだけを考える。
もう、今の俺には、それくらいしかやることが無いから。
2
午後四時くらいに反田さんが来た。
反田さんは俺の座るソファーの対に置かれたソファーに腰かけ、ある資料を俺に渡してきた。
そこには、俺の家の塀、またそれによって、傷が入った家の部分の修繕、また包丁、衣服の費用を含めた俺と華蓮に対する賠償金。
そんなことが書いてあった。
人の死による、衝撃が金で何とかなると思っているのだろうかと、俺は心底、あきれるが反田さんはこう、俺に言った。
「本当に安価な命ですよね。僕も一応、上には金で何とかなるのかと聞いたんですが、やっぱり上はそんなことことより目先の案件やトップの機嫌取りに忙しいんですよ」
と、反田さんは皮肉を込めた口調でそんなことを言った。
どうやら、反田さんも同じことを思っているようだ。
「まぁ、とりあえず、この金は普通に家の修繕費や、生活の足しにしてください。僕としては、ただ謝る事しかできませんので、これ以上はどうとも言えないですが」
そう言って、反田さんは暗い表情を見せた。
俺は、そんな反田さんに変なことを言う。
「反田さん、僕はもう、戦わないっていう選択肢がないと思うんです」
その言葉に反田は聞き返す。
「それはどういう事ですか?」
「今回の襲撃は俺と華蓮が標的だったんですよね。ならもう、一方的に守られているだけだと、いつか隙ができる。そのすきに俺が襲われたら、どうしようもないでしょう?なら、そうなったときのために、華蓮はともかく、俺が戦えるようになっておかないと、いけない気がするんです」
反田は俺の答えに考え込むような仕草を見せ、行った。
「分りますよ、言っていることは。ですが、私たち、『再生者による犯罪対策課』の仕事は、あなたがもともと請け負っている仕事と、蘇者教のような犯罪者集団の殲滅の仕事があるんです。それに世界政府で、『再生者』絡みの犯罪組織は基本的に捕虜としての捕獲、または関係者を含めた、完全な抹消。要は、殺害が命じられているんです。用は、犯罪組織の制圧イコール人殺しと言っても差し支えに置ない事なんですよ」
反田さんは、俺にまた新しい事実を突きつけた。
「犯罪者集団と言っても、俺は『暴食』のような、人物は構成の余地があるはずだとは思えます。なのに、殺すって、どういうことですか」
俺は、その言葉とは裏腹にとても落ち着いた声色で、声色と同じく、心も平静を保っていた。
その俺の姿を見てか、丹田さんは真面目な口調で答えた。
「情報の保持、漏洩の対策と言った感じでしょう。僕自身も、この政府の判断には不満ではありますが、立場のおかげで、僕は従わなくてはなりません。で、兼政君、本当に、戦うことにするのですか?別に僕は止めません、君次第です」
反田さんは、俺の目を見つめて言う。
両隣に座ったクナイさんと華蓮も、俺のことを見つめている。
俺は、少し、昔のことを思い出し、再び覚悟を決めた。
『三滝さんは私の大好きな人です。だから、ずっと優しい気持ちを忘れないで』
あの時、 がくれた言葉を、俺は思い出して、反田さんに言った。
「そうですね。俺は戦わないという選択肢はもうないですから」
そして、その言葉を反田さんは理解し、
「わかりました。明日、クナイさんと共に私たちの拠点に来て下さい。僕が貴方の管理責任者として面倒をみましょう」
と、諦めたように反田は言うと、突然、華蓮は単打に向かって、言う。
「カネマサが戦うなら、僕も連れてって、邪魔だったら追い出してもいいから…」
その言葉は竜頭蛇尾で、最後の言葉はとても小さな声だったが、一貫して、その声や彼女の、雰囲気からは真剣さが伝わっていた。
「…二人そろって、ですか。まぁ、手はかかることは確定ですかねぇ…。とりあえず、華蓮ちゃんも、来てください」
反田さんは苦笑いを浮かべながら、そういった。
そして、反田さんは、腕時計を見て、立ち上がった。
「すみません、もう少しお話をする予定だったのですが、上司に呼ばれてまして、これから直で、上司の所に行くんですよ」
そう言って、また、いつか見た飄々とした雰囲気で反田さんは丁寧なあいさつをしたあと、俺の家から出ていった。
3
だいぶ時間は飛んで、夜。
反田さんが帰ってから一時間ちょっとは華蓮と共に、クナイさんから説教を受けていた。
どうやら、クナイさんは、俺たちが戦う事には反対だったらしく、命を大切にしろ、とずっと言っていた。
どのくらいわかっていると、言いたかったが、その目は、本当の死地を見てきた人間の目だった。
だから、何も言い出せなかった。
そして、そこから大分時間がたったわけだが。
俺は、自分の部屋のベットの上で、電気も点けず、仰向けで寝転がりながら、ただただ、ぼーっとしていた。
そんな時、
「カネマサ、いる?」
華蓮がノックもなしに部屋に入ってきた。
俺は、
「いるぞ」
と、一言だけ言って、電気をつけようと立ち上がると、華蓮は俺の方に、抱き着いてきた。
「…どうした?」
俺は、華蓮の頭ををそっと撫で、華蓮にしては珍しいこの行動の訳を訊いた。
すると、華蓮は、
「カネマサ、怖い」
と、震えた声で言った。
俺は、一度華蓮は離し、しゃがんで目線を同じ高さにして、言った。
「どうして、怖いんだ?」
華蓮は答える。
「僕の眼の前で、誰も傷付いてほしくない」
それに俺は言う。
「そうか…、わかった。俺が絶対、誰も傷付かない世界をつくってやる。もちろん、俺は絶対生きる。死んでやるもんか。だから―――――」
そして、俺は一息置き、自分に言い聞かせるようにも、彼女に告げるようにも取れるように、言う。
「―――――約束だ」
そして、俺と華蓮は互いに、小指を結んだ。
こんにちは、含水茶吹です。
いかがだったでしょうか。
伏線めっちゃ入れようかなと思ってやっていたら、伏線が分かりにくくなってほぼ伏線ではないなという感じになった今回です。
前回言っていたように今回でタイトル、メインテーマ回収を終えました。
今回は早々に、切り上げてしまいますが、次回は、二章、と言いたいところですが、一章のALLです。
色々と変更点とか盛りだくさんなので、どうぞ次回も様んでいただけると幸いです。
では、読んでもらえることを願うまして。
またどこかで。




