勇者絶対条件 一章 安価な命と再生 十二話 「終戦」
こんにちわ、含水茶吹です。
最後まで読んでくれると嬉しいです。
0
三滝兼政は行動不能になった『再生者』であり、蘇者教の人間である『暴食』こと、暖加鮮芽に投稿の要求を言い渡した。
1
「本名を知らなくて、申し訳ないが、『暴食』さん。これが最後の警告です。投降してください」
俺こと、三滝兼政は『暴食』そう言った。
そして、『暴食』はそれを聞き、静かに口をひらいた。
「…昔話をしよう」
そう言って、彼女は続けた。
「私は自分でもいうのは難だが、ほかの人々より、確実に賢かった。それに、私はあまり人と話すのが得では無かったせいで、他人との交流を避けていた。それが問題だったのだろうが、妬みや恨みを買いやすかったんだ。私はね、何万回も裏切られたし、見放されたし、省かれた。何万回という表現が大げさではないくらいに。そしてね、冬のある日、私は私を嫌う数人に呼び出されて、人通りのない倉庫に閉じ込められた。怖いなんてもんじゃなかった。その間、生き残ることと、そこから出ること、そして、私にこんな目を遭わせた奴らを恨んだ。最初は倉庫から脱出することだけを考えてた。たったの数時間で出れないってわかった。その次に生き延びることを考えた。でもね、そこには食べれる物はなくて、虫とか、隙間からとれる、雪くらいしかくちにするものはなかった。ゴキブリも食べた。でもやっぱり、飢えはなくならなかった。そして、ある日体に異常なかゆみ、それと同時に、見たことのない斑点が身体に現れた。そして、異常な熱が出て、動けなくなった。それでも結構持った。多分三カ月くらいは持ったんじゃないかなぁ。そこからは私はコンクリートの床を食べようとしたり、人のやる事ではなくなった。その時にはもう、頭の中は私を陥れた人間たちを恨み続けた。それから、また少したって、私の頭の中で何かが切れた音がした。そこからは記憶がないけど、最後だけ、記憶があるんだ。ただ、ただ、最後の最後にね、食べているときしか、幸せって思う瞬間が私には訪れなかったなって。そこから最近の話になるけれど、私は再生者となり生まれ直し、一年前、蘇者教最大主教様に出会った。そして、私のすべてを理解してくれた。そして、居場所をくれた。そんな人、生きている間、一人もいなかった。だから、その恩返しに私は、すべてを主教様にささげると決めた。彼を信じる事にした。何でもすべてやることにした。それが私の全て」
『暴食』は悲しそうに、語った。
そして、焼き焦げ、痛みを感じる部分もなくなったであろう片腕から手を離し、両手をぶらりと降ろし、『暴食』は俺の目をじっと見て言う。
「三滝兼政って言ったか?お前は私の名前を知らないはずだ。あとで調べとけ、多分新聞の記事になっているはずだ」
そういって、一息開けて彼女は告げる。
「私の名は暖加鮮芽だ」
そう告げ、彼女は空を見上げる。
きれいな夜空と三日月の空を。
そして、俺にこんなことを言った。
「お前はこれ以上、血を見たくないと言ったな。分った。これが私が見せる最後の血だ」
そう言って、手刀の形を作った手を口元に寄せた。
「私が最後に殺したきさまらと交流を持った『再生者』は物質の硬化、またわ自己の任意の部分の硬化ができるそうだ。」
『暴食』、いや、暖加鮮芽は大口を開け、手刀の形のまま手を口の書かへ突っ込む。
そして、異常な力で、押し込み、ぐちゅり、と何かを貫く音と、ガギギリリ、という固いものがこすれ削れる音が彼女から鳴り、彼女の口から大量の赤い液体が流れ、突然、うなだれると同時に、口からズポリと手が抜け落ちた。
そして、口からは血が滝のように流れ、すぐ勢いを失い、止まった。
それと同時に、彼女の肌の色が青白くなり、ピクリとも動かなくなった。
そして、俺は理解した。
彼女が死んだのだと。
そして、離れおれを眺めていたクナイさんが俺に駆け寄って着て、こう言った。
「捕らえるつもりでしたが、これは、死んでますね…」
重々しい言い方で、クナイさんは俺の肩に手を載せた。
俺は、クナイさんに一つ訊いた。
「敵って、本当に、敵なんでしょうか?」
その問いに、クナイさんは答える。
「敵はいますが、見方を変えれば、大体の敵が、『伝わらなかった正義』ですからね」
俺はクナイさんの答えにこう返した。
「これ以降から、おれにも、こういう仕事をください。途中で死んでも俺の責任でいいです。こんな詩をもう見たくないです」
それにクナイさんは静かに返した。
「反田さん次第ですが、本当に覚悟が決まっているならば、私が少しは後押ししましょう」
2
「ウグゥあぁ!?」
ソロベルティ・アルシモフは悲鳴を上げた。
その理由は、簡単だった。
反田一は正確に両足のアキレス腱に銃弾を叩き込み、断裂させたからだ。
そして、ソロベルティは地面にうつ伏せに倒れ込む。
だが、ソロベルティはそれだけでは完全い動きが止まらなかった。
犬鳴訊覚に『血に濡れた』掌を向けた後思えば、そこから、光の刃を放ち、それをすれすれで避けた犬鳴の腕に切り傷を入れた。
反田は、犬鳴の傷の浅さを確認し、呟く。
「それにしても厄介ですねぇ、自分の体液を光る刃に変える能力。まぁ、ギロチンでの処刑と訊きましたし、最後に、光り輝く刃を見たと思えば納得できなくもありませんが…」
そう、ソロベルティの能力、それは自分の体液を光る刃に変え、任意の方向に飛ばすというものだった。
一度に一回、一つずつで連射は出来ず、刃の大きさ分体液が必要になるという制約はあるモノの、恐ろしいのはその射出速度である。
見た感じで秒速千メートルは越してると考えた方がいいだろう。
それが百メートルの間合いで打ち出されると考えると、異常なモノだろう。
そして、今、反田と犬鳴は、遠距離、近距離と分担し、ソロベルティの相手をしている。
打ち出された掌に、反田は容赦なく銃弾を打ち付ける。
パン、とプラスチックを叩くような渇いた音が響き、ソロベルティの掌から、血しぶきが舞う。
「ぎぃ!?」
短い悲鳴を上げ、血だらけのからだを地面で芋虫のように捩じらせる。
犬鳴は、全身に出来た切り傷からあふれ出る血液に足元を一瞬だけ滑らす。
それにすかさず、反田は犬鳴を支えた。
そして、犬鳴はソロベルティがひるんでいることを察知し、能力を使ってクナイと小鳥遊華蓮の場所を特定すると、その周辺にはもう一人いるはずの『再生者』の気配がなかった。
特定から、次は超広範囲の捜索をするも、もう一つの気配はない。
そして、その判断材料から、犬鳴は反田に伝えた。
「『暴食』の気配が消失。多分死んだな」
そして、反田はそれに簡単に答えた。
「では、こいつだけ生け捕りにしときますか、吐かせる材料としては心もとない気がしますが」
それに犬鳴は短く答えた。
「そうしろ」
その言葉と同時に、反田は五発、ソロべルティに打ち込んだ。
膝裏に二発、肘に二発、肝臓付近に一発。
どれも比較的、再生者の再生能力が効きにくい部分だった。
反田は犬鳴を近隣の外壁二もたれか帰れるように座らせ、車を取りに行くため、その方向へ足早に駆けて言った。
その一連の行動は無言で行われていた。
そして、一分程後、だろうか。
パン、パン。
そんな渇いた銃声が聞こえた。
4
俺こと三滝兼政に反田さんから、軽い謝罪と、自宅前に集合するというメールが来たのは暖加鮮芽が死んでから、十分ほど後だった。
そのメールはクナイさんイも届いていたらしく、クナイさんも俺と同じタイミングで着信音が鳴りだし、携帯を見ていた。
クナイさんは携帯をすぐ仕舞うと、
「死体の処理は我々の部署の事後処理班が後程、回収いたしますので、さっさと落ち合いましょう」
と、言った。
俺はクナイさんの切り替えの早さと死体を見つめていられる異常さに恐怖しながら、すべてを押し殺し、彼女位の死体に一度も目を向けないまま、俺は華蓮を死体を見せないように背負い、そこを後にした。
華蓮には、目をつぶったまま移動してもらっていたが、もう、こんなこと、俺も、目をつぶりたかった。
5
そこから数十分歩いたのち、車に乗った血まみれの中年の厳ついおっさんと反田さんが俺の家の前に待っていた。
「三滝君、明日、別の要件でまたお伺いします。今回の件は本当に申し訳ないと思っています」
反田さんはどこかくらい顔をしていた。
ただそれだけしかその時の俺は見て取ることができなかった。
背負われたまま、華蓮は知らない血まみれのおっさんに、
「おじさん大丈夫なの?」
と心配していたが、おっさんはそれに、
「何時もの事だ。心配してくれて、ありがとな」
と笑っていたので、そこまで心配しなくてもいいだろう。
隣りに立っているクナイさんはちょっとした擦り傷が目立つくらいで、問題はないだろう。
華蓮も見た感じ、異常はなさそうだが、後でちょっと、様子を見ておくことにしよう、そんなことを考えていた俺にちょっとした刺し傷のような怪我が目立つ反田は言った。
「三滝君、僕は君にこれだけは言っておきたいと思う」
俺はそれに疑問を受けべながら、
「言っておきたいこと、ですか」
と答えた。
そして、反田は言う。
「君は真実を知らなければならない人物なんじゃないかと思っています。だから、明日までに強制的に知らされる真実を受け止める覚悟をしておいてください」
その言葉に俺は頷いた。
それしかできなかったから。
そして、反田さんは、
「では、また明日ですね。夕方四時ごろにお伺いしますのでよろしくお願いします。おやすみなさい」
そう、あいさつし、車を走らせた。
俺は車が見えなくなるまで、その車を走らせた。
クナイさんも俺の隣で同じくそうしていた。
多分肩にかかる感覚から、華蓮もそうしているのだろう。
そして、車の姿は闇に消え、俺たちは街灯に照らされていた。
後ろを振り返ると、血の付いた包丁が転がっていた。
俺はその包丁を拾い、クナイさんに華蓮と包丁を預け先に家の中に入ってもらった。
静寂に包まれたこの夜に、俺は、他人の死を目の当たりにし、異常すぎる衝撃を受け止め切れずに、行をこらえて、泣いた。
誰にも聞かれず、誰にも気付かれない、そんな孤独な涙を流し、この夜の戦いは終りを告げた。
こんにちわ、含水茶吹です。
いかがだったでしょうか。
今回で三頭パートは終り、次回で一章が完結になります。
今回で兼政はすべてに疑問を持ち始めていますが、次回はその疑問を少し反田さんにぶつける回です。
そして、本章のタイトル回収とメインテーマでの〆が待っておりますが、取り敢えず、長い戦闘パートが終りました。
今回は敵の在り方について、前半の方で語り、後半は敵に対しての大人たちの冷たさと子供がその光景に対して覚える違和感を中心に書いた会でした。
後半より前半を書き上げるのが辛かった。
暖加鮮芽はもともとの予定では生かす予定でしたが、この後に控える話として、敵に襲い掛かる理由が理不尽極まりないやつが出てきたのでそいつの理由作りの為に、ソロベルティと変わってもらいました。
ここからをこの後の話に対して本気のネタバレになりますので少し飛んでもらうとありがたいです。
この後のお話(多分四か六章くらい)で、暖加鮮芽に関係する人物を出す予定です。
その人物は、再生者ではなく、ただの人間で理由として、「殺人鬼をなぜ生かして、妄信的なだけだった彼女を殺したんだ」という事で襲い掛かってきます。
その人物と、主人公に多少共通点をつけるつもりですが、ほぼ相対的な存在として出てきます。
その相対的な存在に対し、成長し、ちょっとやばい感じになった兼政は…、という感じになります。
なので、この回、そして、次回の兼政を覚えていてくれるとなにかと対比に出来るので、覚えておくと多分ちょっとだけ、面白いのかなぁ、と思います。
ここからは普通にいつもの謝辞です。
本当に、今回最後までお読みいただき、ありがとうございます。
次回は結構、暗くするつもりです。
すでに暗いですが、まだ暗くなります。
そんな感じで、真っ暗な感じで、やっていきますので、どうか、最後まで、お付き合いください。
では、次回もお読みいただけることを願いまして。
またお会いしましょう。




