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勇者絶対条件 一章 安価な命と再生 十一話 「その手が掴む物」

こんにちは、含水茶吹です。

今回も前回と同じく、できるだけ読みやすくを意識しました。

最後まで読んでくれると嬉しいです。

  0


 三滝兼政みたき かねまさ小鳥遊華蓮たかなし かれんを敵の襲撃から守るため、クナイと行動を共にするも途中でクナイと二手に別れ、錯乱と逃走の成功率を高めようとしたのであった。


  1


 「ッ、はぁ、はぁはぁ…ッ」

 俺こと、三滝兼政は息絶え絶えに華蓮を背負いながら、走り続けていた。

 「んぁ…?」

 背中から、緊迫したこの空気にふさわしくない可愛らしい声が聞こえた。

 華蓮が目を覚ました。

 それが意味するのはある希望と、ある絶望。

 この状況に彼女が理解をするのか否かで全てが変わる。

 だが、俺が説明のため、口を動かすのよりも早く、華蓮は言う。

 「なんで、カネマサは僕を背負って走っているの?」

 その質問に端的に答えようと俺はするが、その時ふと思う。

 こんなにいきなりで理解できるのだろうか。

 そして、そんな疑問に答えが追撃を加えるかのように出てくる。

 俺はその答えを知っていた。

 理解できる訳がないと。

 その答えに俺は戸惑い、走る足がほんの少し、ゆっくりになる。

 その瞬間、華蓮は言った。

 「カネマサ、逃げてッ!!クナイみたいだけど、変な奴がこっち来てる気がする!!」

 そう、『暴食イーター』はただゆっくり歩いて追いかけていたわけではなかった。

 俺たちの所に来たときはすでに回復し終わり、俺たちが二手に分かれるだろうと予想し、人間である片方がつかれ、足を止めるか、遅めるのを彼女は待っていたのだ。

 背中に悪寒が走ったときにはもう遅かった。

 ズダンッ!!

 アスファルトから大きく砂埃を上げて、奴は目の前に降りてきた。

 口を三日月を横に転がしたように大きく広げ、にたりと笑いながら、ふらりふらりと派手な登場とは反して、奴は近付いて来る。

 襲撃者であり、蘇者教の刺客の少女。

 『暴食イーター』が。


  2


 俺は息を飲む。

 緊張は最早、俺の許容レベルを超えていた。

 唾液も、手汗も、ましてや、呼吸が荒くならなかった。

 その時には、ただ息をのむだけで、心音だけが耳に響いていた。

 むしろ、この世界には最初から、自分の心音しかないような錯覚まで起こしてしまいそうになった。

 その中、俺の異常な緊張に縛られているのを解いたのは俺でも、『暴食イーター』でもなかった。

 「カネマサ、降ろして」

 そんあことを言ったのは、華蓮だった。

 俺はその言葉にあっけを取られ、言いなりになって、彼女を降ろした。

 そして、華蓮は俺にだけに聞こえる声で言う。

 「カネマサ、約束守ってくれるなら、聞いて」

 その芯のある、彼女の声に俺は

 「…あぁ」

 と短く、そして小さく頷いた。

 そして、華蓮は俺に言う。

 「カネマサ、私はおとりになる、早くクナイさんと合流して、ここからなら、『あそこ』が近いからそこでこいつを倒そう」

 俺は彼女に言った言葉をこの町を一瞥することによって理解し、答えた。

 「いいのか?」

 「やらなきゃ、やられる」

 そんあ短い会話で、俺は彼女をまもるという約束を果たすため、そして、彼女が言った言葉の『倒す』の純粋さを理解し、彼女の今の願いを叶える為に俺は最後に答える。

 「分った。『あそこ』にクナイさんと合流してからすぐ向かう。絶対にお前を助けるからな」

 そう俺が言った瞬間、華蓮は今まで見せたことのない速さで近くの家の屋根に飛び、駆けていった。

 『暴食』は俺をじっと見た後、

 「お前は、最後」

 そう言い残し、華蓮のあとを追うように、家の屋根に上り、駆けていった。

 そして、俺は携帯を取り出し、クナイさんに電話をかけ、このことと、今から行く目的地を話した。


  3


俺は移動しながら、クナイさんと合流し、クナイさんはそこからの最短ルートを、俺を担ぐようにし、輸送していた。

 「何でそんな下手したら華蓮ちゃんが死ぬような真似取ったんですか?」

 クナイさんは、責め立てるように、俺に言う。

 それに俺は答える。

 「アイツの目が本気だったから、信じました」

 そう言うと、クナイさんは溜め息を吐き、

 「今度から、そんなことをしないでください。このことは隠すことができれば、反田さんには秘密にしておきます」

 「ありがとうございます」

 その会話を最後に言葉のなげあいわとまり、二人は静寂の街を飛び回る。


  4


 「っ、クッ、ハァッ!?はぁはぁ、はぁはぁはぁはぁ…」

 小鳥遊華蓮は謎の敵から『あの場所』へと誘導させるために必死の走っていた。

 その間、彼女がどう思って走っていたのかはわからない。

 その答えは彼女のみが知っている。

 ただ、わかるモノは一つ。

 三滝兼政という少年への信頼だけ。

 ただ直感だけで、自分が敵とみなした奴は現に自分に悪意を持って追跡を続けている。其れだけが彼女にとって、状況を判断できる材料だった。

 自分が死んだのは知っている。

 それでも、生きていることに疑問を覚え、迷っていた。

 そんな時でも三滝兼政は手をさしのべた。

 彼は彼女にとってはもう、『勇者』だった。

 ただそこにいるだけ、安心で切る彼の為ならば自分は、と。

 約束を果たすと言った彼ならば絶対に、と。

 彼女は走る。


  5


 暖加鮮芽はるか あざめはただ気配を頼りに走っていた。

 三滝兼政に何かで顔面を差されたとき、両目の神経を一度二傷をつけ、完全い失明させていた。

 そして、目という部分は再生しにくく、一度失明すれば完全い元には戻れない部位でもあった。

 だが、鮮芽の感覚は視界という感覚がなくなったことにより、再生者リプレイヤーのみの感覚である、同族検知能力が敏感になっていた。

 鮮芽はその鋭敏になった能力で小さな逃亡者を追っていた。

 教祖様のために。

 途方に暮れ、人を恨むことしかできなかった自分にかちをあたえてくれた教祖の為に。

 鮮芽は走る。

 別に、彼女は、特別な存在になっているわけではない。

 彼女は再生者として、この世界に出現したときは何も訳も、分からなかった。

 ただ、憎き自分を殺した人間を殺すことにしか興味がなかった。

 涙と叫びの化身として、街を放浪していた時、教祖は現れ、彼女のすべてを訊いた。

 そして、答えた。

 『君は、生まれ直した存在だ。神と似たことをしたのだ。私が君の願いを叶え、君を幸せをあたえよう』

 そう言って、彼女を抱きしめた。

 それだけで彼女は救われた。

 妬まれ、嫌がられ続けた私を理解して、抱きしめてくれた教祖に彼女は救われたのだ。

 そして、彼女はそこからは、血の道を進んだ。

 教祖様のために、教祖様が言う、異端を叩くために。

 だから、暖加鮮芽は追う。


  6


 「はっ、はっ、はっ…んぅぐっ!?」

 小鳥遊華蓮は『あの場所』から、もう少しの所で、足が止まった。

 その理由は簡単で最悪な理由だった。

 「みぃぃぃいいいい、つぅ、けぇえええ、たぁぁぁぁあああああ…」

 狂気的な声で、暖加鮮芽に片手で首を絞めつけるのと同じ要領で、宙に持ち上げられたからだ。

 「っ、ぐッ、ぅぅ、…ぐ、くるじ、…あ˝、うぅ゛…」

 小鳥遊は両手を首を絞めている手へ必死に掴もうと市、足をジタバタと動かし、抵抗するが、意味がない。

 足は空振りを続け、反動で、首が閉まる手助けするだけだった。

 息がほとんど出来ず、ただ、恐怖だけが、彼女に圧し掛かる。

 ただ、一方的に暴力を振られる感覚、それは彼女の中では最も馴染みこんでしまった感覚だった。

 そして、あの時の記憶が一瞬にしてあふれ出す。

 思い出す。

 誰にも言おうともしなかったあの過去を。

 足は、動くことを辞め、痙攣するように震えだす。

 手からは力が無くなり、するりと、片手から落ちた。

 顎は震え、がちがちと歯ぎしりのようなかみ合わせた音が鳴る。

 息は過呼吸で、程していないのに近かった。

 変な汗が小鳥遊の全身を濡らす。

 ただ、声だけが出た。

 「たすけ、て………………………、カネマサ……」

 そんな小さな悲鳴じみた、甲高い声の助けを呼ぶ言葉が。

 思ったよりも早く捕まってしまったのかもしれない。

 だからカネマサはまだクナイとここに移動している途中で。

 小鳥遊は思った。

 そして、最後に思った。

 バカなことをしたと。

 助けは来ないのかもしれないと。

 カネマサはこの助けが聞こえないのかもしれないと。

 そう思い、目を閉じた―――、


  7


 ―――そんな時、異常な声と、下に落ちる感覚が小鳥遊を襲った。

 「うぎゃぁあああああああああああ!?」

 そして、その悲鳴に恐れを覚え、小鳥遊は目を開く。

 そこには、彼女をつかんでいた手が燃え盛っている敵が映った。

 そして、信じていた人が駆け寄ってきた。

 「大丈夫か!?」

 慌てた表情で、話しかけるその顔を小鳥遊は知っている。

 知っているし、来ると信じていた。

 諦めかけた希望が彼女に訪れた。

 三滝兼政がそこにはいた。


  8


 俺こと、三滝兼政は一度、華蓮を抱え、クナイの能力によって発火した腕を抑え、のたうち回る『暴食』を見つめ、言う。

 「悪いが、もうこれ以上人を気付付けるのはやめてくれ。俺はこれ以上、血は見たくない」

 その言葉には、俺の記憶の重さを載せていた。

 それが他人から見てどう受け止め、どう感じるかはわからない。

 だが、おれなりの重さを込めて、そういった。

 そう、言ってから、華蓮の方を見て、言う。

 「遅くなった。あとでいくらでも謝る。別に許さなくてもいい。それでも、ごめんな。辛かったろ?」

 そう伝えた。

 すると、華蓮は僕に縋りつく等にして、掴みかかり、涙交じりのぐちゃぐちゃな声で、

 「ごわがっだぁぁああ、うッ、ひっぐ、うええええん、ガネ˝マ˝ザぁぁぁ」

 と、泣いていた。

 俺は、華蓮の頭をそっと撫で、近くの建物の壁の影にそっと座らせた。

 そして、俺は言った。

 「ここは俺と華蓮が『初めて会った場所』だもんな、約束したからには守らないといけないし、個々ならなおさらだ。だからちょっと、行ってくる。すぐ帰って来るから、待っててくれ」

 そういって、俺は再び、壁の影から出る。

 そこには、火が収まり炭化した自分の腕を抑える『暴食』の姿がいた。

 そして、俺は満身創痍の『暴食』に言う。

 ここから、二十メートル離れた、場所にいるクナイはすで十を構えていることを確認して。

 「本名を知らなくて、申し訳ないが、『暴食』さん。これが最後の警告です。投降してください」

こんにちわ、含水茶吹です。

今回はどうだったでしょうか。

この一章のタイトルは最後の方で回収となります。

では、この回について少しお話したいと思います。

この一章のメインテーマは約束です。

その約束というワードが一番出てきたのではないかと今回のお話を書いてから思いますが、実はこの話、サブテーマに支えの人間というものがあります。

暖加鮮芽だったら、主教。

小鳥遊華蓮だったら、三滝兼政。

クナイだったら、反田一。

このように、どちらかがどちらかを補うような形になっています。

ですが、ほかにも似たような組み合わせがあるので探してみるのも面白いうと思います。

ではなぜこのお話をしたのかと申しますと、この回では、誰のためにお前は何をしているのかという簡単なものに答えるような形になっているからです。

この作品ではそういう感じの人と人の関係性をざっくりした形で映し出す描写を大量に作るつもりです。

そんな人間の関係性を問う質問の第一問目という事で、長めの解説を書かせていただきました。

まだまだ、つたないにもほどがある小説ですが、これからも温かい目で見守っていてください。

では次回にまた会えることを願いまして、ここで示させていただきます。

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