勇者絶対条件 一章 安価な命と再生 十話 「真実」
こんにちは、含水茶吹です。
今回は読みやすさ重視で書いてみました。
ストーリーを進めるよりも読み安で書いたつもりですがどうなんでしょうか…。
最後まで読んでくれると嬉しいです。
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三滝兼政は彼が中心として巻き起こった再生者同士の戦いを目の当たりにし、一人の再生者を戦闘不能に陥らせる。
しかし、その行為には大きな代償が伴った。
それは彼の精神に多大なダメージを与えることだった。
戦場で三滝は動けなくなり、クナイは犬鳴訊覚にソロベルティ・アルシモフという再生者の相手を任せ、三滝と小鳥遊華蓮を連れ、戦場から離脱した。
1
俺こと、三滝兼政は目を覚ました。
そして、目の前にはクナイさんの顔があった。
ほのかな鉄の臭いが鼻腔を刺激する。
その匂いが全ての記憶を蘇らせる。
そうだ、俺は、人を包丁で刺した。
それも、俺と同い年ほどの女性の顔を鼻先にぐさりと。
溢れ出た血と、粘膜、そして血しぶきの生ぬるい感覚。
そして何よりも、初めは感覚がなかったg、すぐさま辛いものに当たった刺した瞬間の感覚が。
今、起きたことのように俺の頭の中に鮮明にフラッシュバックする。
「ああぁあ、あああ、ぁぁぁぁああああ…」
頭を抑え、俺はその場で寝転がったまま、呻いた。
呼吸は乱れ、うまく空気が体に入ってきてくれない。
それどころか、ただ身体から空気が出ていくだけで、空気は少なくる一方だ。
頭が痛くなってきた、変な汗も掻いてきた、鼓動も早くなっている気がする。
「はぁ、っは、は、ぁっ、はぁっ、はあっぁっ!?」
声なんか、もう出ない、ただ不規則的な呼吸音が口からは漏れ出していた。
そんな俺にクナイさんは肩を持って、
「大丈夫ですか!?しっかりしてください、深呼吸を意識せず、浅い呼吸を意識してください」
と、俺にアドバイスをした。
俺はすぐさま言われたと通りにし、時間はかかったものの、いつもと変わらない程まで呼吸を戻すことができた。
落ち着いたことを確認し、クナイさんは、
「もう大丈夫ですか?」
と、聞いてきた。
俺はその問いに、一つ息を吐き、
「大丈夫です。すみません、何か…」
と、謝罪を返した。
それにクナイさんは、
「いえ、私達が悪いんです。貴方に起こっている真実を離せばよかったんです。其れさえできて入れば、あなたがこんな思いをせずに済んだかもしれないのに」
と、申し訳なさそうに俺に言った。
そして、俺は体を起こし、あたりを一度見回した。
そこは、公園で、俺はさっきまで、ベンチで寝かされてたのだった。
華蓮はクナイさんに背負われながら、寝ている。
どうやら、関係のない俺が専門的な戦いに出て来てしまったせいで、戦線離脱を余儀なくされたのだろう。
だが、俺はそんなことより一つ、何よりも気になることがあった。
「クナイさん、その、真実って何ですか?俺、この事態の子著全く理解できてなくて…」
そう、俺はこの事態のことを知りたかった。
そして、クナイさんは口を開いた。
「そうですね、私が知る範囲のことを語りましょうか。巻き込んでしまったことに対しての今の分のお詫びとして」
2
クナイさんは重い口をひらき、続けるように真実を語った。
「先日、あなたとの会談の後南波双木が殺されました。犯人はあなたが危害を加えた、通称『暴食』と呼ばれる少女です。そして、その彼女が率いている二人のうち、もう一人がさっきほど目の前で戦っていた再生者、ソロベルティ・アルシモフです。彼の相手をしていたのは私の上官の犬鳴さんです。その中のもう一人は現在、反田さんと交戦中で最近テレビでも報道されたと思いますが、連続殺人犯の冴中多陶嗜です。『暴食』、ソロベルティ、冴中多、それら三人はそしゃきょうにかかわっているまたわその一員と思われます。そして、彼等の目的はあなたと小鳥遊華蓮の殺害と思われます。理由は定かではありませんが、私と犬鳴さんの憶測ですが、たぶんそれが一番可能性が高いと思います。いぬなきさんは初めは反田さんと共に、三滝家の周辺を警備する程度だったらしいのですが、冴中多との交戦から、事態が急速に悪い方向へ向いていると考え戦闘態勢を取りました。そして、そこから、『暴食』とソロベルティとの交戦、そして今に至る訳です。どうでしょうか、理解いただけましたか?何か質問でもあれば、わかる範囲、制限無くお答えします。」
クナイはそう質問があるかと聞き、そこから口を閉じた。
俺はその話に、何故、蘇者教というだけで交戦的な態度をとるのか、そう疑問に感じ、
「話は大体わかりました。ですが、どうして、交戦という態度で蘇者教の再生者に対応したんですか?」
と、素朴な問いを掛けた。
そして、クナイさんはその質問を予想してたかのように答える。
「そうですね、前に蘇者教のことは少し説明しましたね。貴方の予想通り、その中にも確かに、騙されているだけの善良なはずの人間もいます。ですが、反社会派組織に分類されているんですよ、蘇者教は。それにテロ活動を行う。それだけで世界的にはもはや目障りな存在なんです。そのうえ、再生者となると、さらにきけんどがあがります。そして、世界で決まってしまったんです。『蘇者教は駆逐すべき』と。要するに世界政府で蘇者教を殺すまたわ捕獲し、それにまつわる情報を吐かせ、殺害する、という法律が」
俺は、クナイさんの言葉に絶句した。
もしかすると、話せば理解できるかもしれない存在を、否応なしに殺すという考えに。
俺はそして、質問を重ねた。
「じゃ、じゃあ、今回の襲撃者の三人は…」
「『暴食』は生け捕り、そして拷問後、殺害。残り二人はすぐ殺害、でしょうね」
クナイさんは、そう、淡々と答えた。
拷問、殺害。
その二つの単語が蘇者教がどのような扱いで見られているか容易に想像がつく。
狂っているようにも見えて、正気のようにも見える、矛盾した感覚。
例えば、数人の人を殺した人物がいるとしよう、その人が死刑になって、疑問と思う人がいるだろうか。
答えは簡単だ。
思う人がいれば、思わない人もいる。
そんな矛盾が今、俺の頭の中に駆け巡った。
そして、俺はしばらく口を噤んだ後、理解した。
だから、再生『者』なのかと。
ただ人の形をしているから『者』という文字を使っているだけで、決して『人』として見られていないという事を。
人権なんて、そんあことだったら当てはまる訳がない。
まるで、差別だ。
元は同じ人間だったのに、まるで、黒人を白人が差別していたかのように。
原点を無視し、目先の脅威だけで推し量った結果が、こういうものなのだ。
俺はその実態を、真実を―――、
知った。
3
俺は一息つき、ベンチから立ち上がった。
そして、すべてのことを理解し、いままで後回しにしていたことも含め、一つだけ、決めたことがある。
それは、単純な話で、全てに向かい合い、立ち向かう事であった。
俺は深く息を吸い込んで、思いっきり肺の空気を吐き出す。
さっきまでの過去⑨状態での酸欠がまるで嘘のように空気が体を行きまわる。
さっきまでの不安定で狂気的な何かに流されそうだった状態がまるで嘘のように安定し、しっかりと自分をもってすべてを見据えることができた。
現実として見ていた現実が非現実と思っていた現実に砕かれ、非現実が現実になってしまったのだ。
多少驚きはしても、もう止まらない。
そう、俺は決意、いや、もっと固いモノだろう。
いうなれば、芯というものが出来た、と言ったほうが良いだろう。
俺は上空を見つめ、あの時した約束を思い出す。
初めて、華蓮と出会った時に成り行きで出来てしまった約束を。
俺は、それを、破れない。
そんな自分への皮肉を込め、呟いた。
「…子供との約束は、なおさら守らなきゃなぁ…」
その声は、誰にも聞こえないほどで、まるで冬の吐息のように履いてすぐ消えるものだが、おれにはその言葉が文字となって空中を浮かぶように、くっきりと俺の心の芯に絡みついた。
その時、見上げていた空を何かが通り、俺たちのいるベンチから少し離れた公園の砂場に何かが落ちた。
ズサァ…。
砂は空中を煙のように舞い、赤い光が見え隠れした。
そして、俺はその光を一瞬にして思い出す。
あの襲ってきた女、確か、通称『暴食』と呼ばれる少女、その眼光だった。
砂の煙が止み、その中から、揺らめく様に歩き出てきた一つの影。
俺と同じくらいの見た目、花あたりから縦一直線に貫かれたような血でまみれで、ぐちょぐちょとしている、相貌。
その姿間違いなく、『暴食』だ。
先ほどまで、緊張がほぐれかけていた空気にをまた緊張が走る。
空気が厚く重たいながらも、冷たさを纏っている。
だが、もう恐怖して、立ち止まる俺じゃない。
敵が華蓮の命を俺と共に狙っているというのなら。
「容赦は出来ないよなぁ…ッ」
そう、一言、口から漏れ出し、構えた。
『暴食』を倒すために。
殺す為ではなく、あくまでも『倒す為』に。
4
「三滝君、まずは逃げることを考えてください。私達が今やることは、迎撃戦の戦闘ではなく、離脱戦の戦闘です」
クナイさんは小さな声で、俺にそう指示した。
「はい。クナイさんは華蓮をお願いします。できる限り、無理なく俺は追撃をつぶしていきます」
俺はその指示に頷き、返す。
「わかりました。では、真後ろに動きます。速度は人間レベルに抑えます。、ですが、遅いわけでは二ですよ」
そしてクナイさんはそう返すと、
二人同時に、振り向き、後ろへと走った。
5
そこから三百メートル程、走った。
俺は後ろを向くと、彼女はまだ砂場付近からゆらゆらと歩くのみだった。
だが、その姿が、その速度が、異常に恐ろしかった。
おそらく、さっき、顔面を刺した時、脊椎のどこかを痛めたのだろう。
そこがまだ刃物が抜け落ちた後で治りきっていないのにもかかわらず、再生者の同族認知の身だけで追ってきた、という予想が正しいだろう。
そして、現段階で、俺たちがどういう状態でどういう速度で移動しているのか、同族検知で探していると考えた方が妥当だろう。
俺は、そこで、その予想を信じ、クナイさんに提案する。
「クナイさん、一旦、俺に華蓮を預けてください。確か同族検知と言ってもそれを強化された能力を持つ再生者くらいじゃないと、能力や身体の代償はわからないんですよね?」
その問と提案にクナイさんは、
「そうですね、その提案乗っかりましょう。三滝君の考えは間違えじゃない」
と、足を遅めて、俺にか華蓮を渡した。
華蓮はまだ寝息を立てている。
さっきから舌を嚙んでないところを見るに、そういう心配はしなくてよさそうだ。
あとはしんぱいないとおもったことがおこらないように注意しながらさっきと近しい速度で走るだけだ。
しっかりと、俺が華蓮を背負ったところを確認し、
「ではそこの曲がり角で、別れましょう、私は曲がり角を曲がります。三滝ンはまっすぐ行ってください。もし、そちらに『暴食』が近づく気配がありましたら、そっちにすぐ向かいます。では―――」
クナイさんは曲がり角に差し掛かり、一度、間をおいて、
「ご武運を」
そういって、俺と華蓮はその道を真っ直ぐ、クナイさんは角を曲がって、二手に分かれたのであった。
こんにちは、含水茶吹です。
やっと終盤です。
恐らく五月の十四、または、十三話で終わるつもりなのですが、どうなるんでしょうか。
僕にも少しわかりません。
何せ、書き足すところとか、伏線の回収とか、タイトルの『安価な命と再生』のタイトルをどこでつじつま合わせるとか。
そういうのが残っているので、まだ先は見えないですが、とりあえず、十五話十六話以内には一章は終わります。
では、今回のお話についてですが、どうだったでしょうか。
今回は、前回のあとがき通り、ちょっとした整理のためのお話でした。
ですが、しっかりと、次回のバトルにつながるお話が出来たので、個人的には満足しています。
それにしても、この作品だけでやっと十話をむかえました。
自身で、きっも、と引いております。
そんなちょっと長い一章ですが、そろそろ、終盤戦。
次回から、ボスラッシュです。
主人公が主人公としてやっと放置プレイから解放され、動き出します。
出来るだけ、王道の戦いの勝利を意識してやっていくつもりなので、一ミリほどは期待していてくだい。
では、次回に会えることを願いまして。
また今度。




