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勇者絶対条件 一章 安価な命と再生 八話 「襲い掛かる牙 護る盾 最後の静寂」

こんにちは、含水茶吹です。

今回は一話完結というか、変な感じで終わっていますが、気になさらず最後まで読んでいただけると嬉しいです。

  0


 反田一たんだ はじめが動き始め、暖加鮮芽はるか あざめが狙いを定めている、その時の三滝兼政みたき かねまさの最後の普通ではない、平和な日常の話である。


  1


 学校から帰って、俺こと、三滝兼政は取り敢えず、自分の部屋のベッドに寝転んだ。

 そして、目の前には再生者リプレイヤーに関する資料。

 学校で見ていたものではなく、この資料は再生者の生態、性質などがまとめられた物だった。

 俺にとっては、これは再生者に関する法令などの資料よりもっと、大切なものに思えた。

 文面の所々であらわれる、『サンプル』や、『被検体』の文字。

 元は人間だったのにも関わらず、まるでモルモットか、それに等しい何かのような言い方。

 もしかすると、人間から外れ人間として見られなくなったからという、理由があるのかもしれない。

 だが、俺は、そんな文面い出てくる言葉を許容することはできなかった。

 どうしてもと言われても難しいほどに、なんとも言えない悲しみと怒りを覚えていた。

 その感覚を心の底からひしひしと感じながら、あの日の記憶を思い出す。

 俺が華蓮かれんを守ると決めた、その起点となったあの日々を思い出す。

 蔑まれ、死しか選べなくなってしまった彼女のことを。

 それを気付くことも、止めることもできなかった、あの日の俺ものことを。

 そして、彼女の死で涙を流す彼女の両親の叫び声を。

 俺は思い出す。

 その怒りと悲しみが激情となり、その激情がまるでセメントのように固まり、冷えた。

 それが何か危険な感情だと俺は一瞬で理解したが、その感覚は、感情たちと共に一瞬で消滅し、何事もなかったように感情はベッドに寝ころがり始めた時のまっ更なものに戻った。

 その一連の間隔が疑問に感じながらも、俺は再び、資料に目を通す。

 

  2


 そこから一時間後、俺はリビングのソファに座り、華蓮と共にさして面白くない情報番組を眺め見ていた。

 「ねぇ、カネマサ、てれび、つまんない」

 華蓮は俺にそんなことをいいながら、テレビのリモコンを差し出してきた。

 多分、俺にチャンネルを変えろと要求しているのだろう。

 仕方なく俺は華蓮からリモコンを受け取り、てきとうにチャンネルを変えている時、元々リビングにいたクナイさんが廊下へと携帯をとりながら突然出ていった。

 そして、聞き取れないが誰か馳尾通話が始まったらしく」、クナイさんの声がほんの小さく聞こえた。

 そこまでして隠そうとする通話ならば聞くのは野暮だろうと俺はふたたびテレビに目を移した。

 「これ、止めて」

 そして、そういって、華蓮が指示したチャンネルで、てきとうに切り替えていた指の動きを止めた。

 その番組は動物の特集番組で、その時ちょうど、安楽死が特集されていた。


  3


 時刻は七時ちょうどを指したその頃。

 華蓮が辺りをきょろきょろと見回すようになり、クナイさんはよく見ていないと気付かないくらいなのだが、どこか挙動不審な感じがした。

 クナイさんは別に気にすることではないだろうと思い、俺は彼女を気にしないことにしたが、華蓮の様子はやけに変だった。

 俺はそれについて、ちょっとした遠回りな聞き方で質問した。

 「なぁ、華蓮、なんか変だぞ」

 それに華蓮は微妙な物言いで答える。

 「クナイみたいなの家にいる?」

 その問いに、俺はなんとも言えない不信感に襲われた。

 だがそれも気のせいだろうと思いたかったのだろう、俺は彼女にさらに踏み込んだことを訊きたいが為に彼女にこんな質問を俺はした。

 「それって、どういう意味なんだ?」

 そして、その質問に答えるために彼女は口を開き、言う。

 「クナイと僕って、似てるんでしょ?そんな感じが、さっきからこの家の近くにいる気がする」

 その一言で不信感が不安に変わった。

 再生者がさっきからこの家の近くにいるのだと。


  4


 そこから、数十分後。

 クナイさんの携帯が何かを受信したらしく、着信音を鳴らした。

 彼女はそれに即座に反応し、画面を見て、ちょっとした操作をして、画面を暗転させた。

 どうやらメールだったらしい。

 するとクナイさんは急に、玄関に向かって俺にこういった。

 「兼政君、申し訳ありませんが、ちょっと私、外出します。少し遠い所に行くので帰って来るのは遅くなりますので、夕飯話二人で食べていてください」

 俺はその言葉を聞き彼女の顔を見た。

 その顔を表情は笑っているが目は全くと言っていいほど笑っていなかった。

 その目はまるで戦地に向かう兵士のような目をしていた。

 俺はその目に、どこに行くのかと訊こうとしていたのを呆れめた。

 そして、その代わりに俺は

 「いってらっしゃい、気を付けて行けてくださいね」

 と優しく声を掛けるしかできなかった。

 だが、クナイさんは、その声を聴いて、表情こそは変わらなかったが、彼女のその目はとても優しい目をしていた。


  5


 兼政宅から、クナイが出て行こうとしたその時、彼の家から数百メートル離れたところで反田一は冴中多陶嗜さえなかた とうしと交戦していた。

 顎を先生で殴られ、口の中が鉄の味であふれ出しそうな冴中多に反田は、容赦なく、追い打ちをかける。

 後ろ回し蹴り、鳩尾を狙ったストレート、足払い、地面に打ち付けるような回し蹴り。

 まだまだと、反田の攻撃は続く。

 実際、警官などの職業の人間は基本、正当防衛、または上層部からの命令なしには攻撃など危害は加えてはいけないのだが、反田は冴中多の手には拳銃が握られており、それに対応できるようなものを持っていなかっため、それを取り上げるための抵抗として、というなんとも小癪な理由を付けてで冴中多を攻撃したのだった。

 正直言って、この抵抗の理由が裁判で上げようものなら、職権乱用で捕まってしまう事なのだが、なにっせ、この冴中多は水面下で調査し、最近になり指名手配の犯罪者として、公に捜査し始めた人物だったため、嘘をある程度付けば、どうとでもなる相手だった。

 それに、そんなことは気にする必要も彼にはなかった。

 そんな反田の必要な連撃は、もはや一方的と思えた。

 しかし…、

 さく。

 なんとも、軽い音が、反田の肩から鳴った。

 そこには、冴中多が隠し持っていたナイフが刺さっており、たんだがそれを確認した瞬間には、引き抜かれていた。

 「うぐっ…」

 反田は小さな悲鳴を上げ、大きく後ろへ距離を取った。

 反田の猛攻の合間をぬった攻撃。

 一瞬のインターバルを正確に着いた一撃だった。

 冴中多は、猛攻のなか、勢いで飛んでいった拳銃を拾い、言う。

 「人間って、たくさん殺すと、いろいろわかっちまうもんなんだよ」

 口からこぼれる血を袖で拭いにたりと笑う。

 普通の人間なら立ってはいられないだろう。

 だが、冴中多は違う。

 判明しているだけでも三十人の命を手に掛け、未遂も含めると、五十人にも上る、殺人鬼である。

 そのうえ、その殺害した三十人には確保のため前線へと踏み出した警官の命も含まれている。

 そう、彼は警官すらも相手に出来てしまう特異な殺人鬼だった。

 そんな彼を反田は見つめる。

 まるで、ナイフに刺されたことが嘘だったかのように、立ち尽くす。

 そして、問い掛ける。

 「どうでしたか?良ければ教えてくださいよ、人を殺して、人を知った感想とかを」

 反田の声はとても冷淡で、飄々としている、いつものような雰囲気はなく、その彼の纏う空気には何もない怒りがあった。

 その反田の纏う空気に引くこともなく、冴中多は言う。

 「んー、そうだなぁ…。殺人、強姦、拷問、恐喝、窃盗、死姦、喰人、解剖、妊娠、上げればきりがないほどのことをやって来たしさせてきた、それを通して、一番思うのは、人は絶望した時の顔が一番殺すときにはそそられるってとこだな」

その言葉に反田はさらに要求する。

 「あとは何かありますか?」

 その一言に、冴中多は何かを思い出したかのように、言った。

 「再生者だったか?そういうのも殺したことがあるぜ、俺は。あのときは難だったかなぁ…。人と再生者の子供が出来たらしいから、母体の再生者と一緒に殺して来いって、誰かに言われてな。そんで、母体を殺した後、腹掻っ捌いて、赤ん坊を取り出したんだよ。顔だけ辺にでかくて体がひょろ臭い、人間の子供と同じだった。あぁ、ああ!!!ありゃぁ、傑作だった、うひゃひゃひゃ!!」

 そして、冴中多は笑った。

 それと同時に反田は、告げた。

 「余罪はないってことでいいですよね、それじゃ黙ってもらいますよ…」

 そういって、反田はコツコツと、冴中多との距離を、ゆっくりと詰め始めた。


  6


 クナイさんが家を出て五分くらい経った。

 華蓮が眠いと言い出し、俺の膝を枕にし、横たわっていた。

 「…カネマサ、寝る…」

 華蓮はそういって、目を閉じ、寝息を立て始める。

 その無邪気な寝顔を見ながら、俺は彼女が言った言葉を思い出し、緊張した。

 『クナイと僕って、似てるんでしょ?そんな感じが、さっきからこの家の近くにいる気がする』

 その言葉が俺の中で気味悪く流れていた。

 クナイ以外の再生者の反応、そして、言えの近くで微かに聞こえる、クナイさんと誰かの話声。

 俺は別に耳がいいわけではない。

 ただ、今日はやけに辺りが静かだった。

 だから、静寂の中、小さな声でさえもパトカーのサイレンのように大きく聞こえた。

 遠くへ行くと嘘をついてまでクナイさんがが遺失した理由が華蓮の言った言葉に関係があるのか、そう思い、また体が強張った。

 その緊張の中、第六感が告げる。

 『何かがおかしい』、と。

 そして、俺は閉じられたカーテンの向こう、窓越しに睨み付けるように見つめた。

こんにちは、含水茶吹です。

今回はいかがだったでしょうか。

結構、危ないワードが飛び交った八話ですが、無問題であると信じたいところです。

今回のお話は前座という感じで書いたお話で、冴中多と反田の戦いは次回かその次の回で終着し、ソロベルティと鮮芽ちゃん対クナイと訊覚さんの対決は次回からスタートし三話くらいで執着させるつもりですが、再生者同士の戦いは正直、もっと伸びてしまう可能性も否定できません。

それはそうとして、久しぶりに華蓮ちゃんが出てきましたが、四話ぶりにセリフを放ちました。

この回で勇者絶対条件が十回目を迎えるというのに、まだまともにセリフをもらえていないという事実。

ですが、二章から彼女の出番が増えます。

まだ一章完結してないですけど、二章がほぼ構成が出来あがり、後はセリフをちょっと考えるだけというところまで来ています。

結構なネタバレをしてしまいますが、華蓮ちゃんこの一章でしゃべるところがあんまりありません。

というか、終盤、少ししゃべりますが、十行未満です。

と、ネタバレはここまでとして、次回は兼政君が動き出します。

出は最後に。

次回を楽しみにしていただいている方ありがとうございます。

コイツいつ辞めるのだろうとか思いながら、僕が折れるところまで観察してくれている方にも、ありがとうございます。

十回目の投稿が出来たのもそんな皆様の様々な視線のおかげです。

これからも、生暖かい目で見守っていただけると嬉しいです。

では、今回は次回の為に走り出す準備のため一度ペンを置かせていただきます。

ではまた次回に会いましょう。

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