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《雄峰王之逆鱗(マウンティガスケイル)》〜数の暴力〜

「もう大丈夫ですよ、ミルシィ・スターライト様。」



「え………あ………その……………?」



したたかに顔面を打ち付け、地面の上をのたうち回る《食尽王鼠(イーターラット)》を他所に、白鎧の戦士ーーーーーアージュ・マーゴ(吾妻秀吾)ーーーーーが、目を丸くしているミルシィ・スターライトに視線を落として話しかけていた。

ミルシィ・スターライトは今目の前で起こった事実を脳内で処理しきれず、自身の左腕から肋骨にかけてが折れていることも忘れ、思わずぽかんと口を開けてしまう。



「て、テメェェェェェェェェぇぇェェェ!?何者だァァァァぁぁァァァァぁぁぁぁぁァァァッ!!」



「ん?ああ。 ちょっと待っててくれ。 今彼女を兵士に引き渡すから、それから相手をしてやるよ。」



鼻血を拭いながら空気が破裂せんばかりの怒りを露わにする《食尽王鼠》を軽く流して、小柄なミルシィ・スターライトをひょいっと抱き上げる。

ミルシィ・スターライトは突然のアージュ・マーゴのこの行動に、思わず「きゃっ!」っと、先程までの勇ましい姿からは想像もつかないような、女の子らしい反応を見せた。



「ああっと!痛かったですか?すいません。」



「い、いえ!…………そ、そういうわけでは………。」



少し慌てたようにミルシィ・スターライトを見るアージュ・マーゴに、ミルシィ・スターライトは、慣れていないこの状況に身を丸めながら頬を染めていた。



「無視してんじゃねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ!!」



と、突如不意打ちの混乱から覚めた《食尽王鼠》が、自身を蔑ろにしているアージュ・マーゴに牙を向けんと飛びかかる。

その様子を、ミルシィ・スターライトを抱えたままの姿勢で見やるアージュ・マーゴは、特段驚いた様子も見せずに、冷淡に声を吐いた。



「お前の相手は後だって言っただろ、全くもう。 …………………捕らえろ、『駆動鎧』。」



その声を合図にしたかのように、周囲に立っていたミルシィ・スターライトの兵士達の中から一つの影が飛び出し、《食尽王鼠》にしがみついた。

さながらラグビーのタックルの様な動きで、『それ』は《食尽王鼠》の動きを妨害する。



「何だおまっ…………………ッ!?」



《食尽王鼠》は、飛びかかってきた『それ』に悪態を吐く暇もなく、思わず息を飲んだ。

なぜならーーーーーーーーーー





『『『ガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャ』』』



ーーーーーーーーーー無数の『白鎧の戦士』が、こすれ合う金属音と共に、津波の様に《食尽王鼠》に雪崩れ込んできたからだ。





ーーーーーーーーーー◯ーーーーーーーーーー



「な、なんだァァァァぁぁぁァァァッ!??」



驚愕の声を上げる《食尽王鼠》の上に次々と覆いかぶさっていく『白鎧の戦士』の群れは、50〜60人程まで増えると、やがて動きを止めた。

《食尽王鼠》はその物量により地面に押し付けられ、訳も分からないといった様子で、ミルシィ・スターライトを抱えたままのアージュ・マーゴを見上げる。

その視線の先にいたアージュ・マーゴは、周囲の兵士含めて唖然とした表情を見せるミルシィ・スターライトを、一番近くに立っていた兵士の一人に引き渡していた。



「はいどうぞ、それじゃミルシィ様を頼みます。」


「え………あ………は、はい!」




「さぁて……と、待たせたな。」



ミルシィ・スターライトを引き渡したアージュ・マーゴは身軽になったかのように肩を回しながら、押さえつけられながらも殺意のこもった視線を飛ばしてくる《食尽王鼠》の方へと歩み寄っていく。

《食尽王鼠》はギリギリと歯ぎしりをしながら、アージュ・マーゴにその怒りをぶちまけた。



「貴様ァァァァぁぁァッ!!よくも!!よくも僕にこんな辱めをッ!!許さないぞッ!!縊り殺してやるッ!!!」



「うるせぇぞ◯ッキー◯ウス、今すぐ夢の国へ強制送還させてやるからそこで大人しくしてるんだな。」



「ハハッ!舐めるなよボケがッ!!この程度の人数で僕を抑え込めるなんて思ってんじゃあねぇだろうなッ!?」



そう言うと、《食尽王鼠》は額に青筋を浮かべながら両腕にさらなる力を込め、上にのしかかっている『白鎧の戦士』達を弾き飛ばそうと試みる。

だが、どれだけ足掻いても、どれだけもがいても、一向に上にのしかかっている『白鎧の戦士』達はビクともしない。

まるで一つの巨大な拘束器具に捕らえられているかのような錯覚が、《食尽王鼠》の脳裡によぎった。



「ぎぎぎぎっ………な…………何故だっ………《猛獣王之筋骨(マウンティガビルドアップ)》で強化された僕の力で………………ふ……振りほどけないなん…………て……………!?」



「無駄だよ、絶対に崩せないように組ませたからな。」



「な………何ィッ!?」



「『地獄組』っていうらしいぜ、これ。」




ーーーーーーーーーー『地獄組み』

木材片を組み上げる組子の一種で、一度組んだら二度と外すことが出来ないという意味を込めてこう呼ばれている。

物騒な名前ではあるが、構造物の強度を高めることのできる特徴を持つ組み方であり、あたかも木材片が編み込まれているかのようなその造形は美しく、古来日本で主に障子や置物に用いられる技法である。



「俺のスキル(《雄峰王之逆鱗(マウンティガスケイル)》)で作り出した全身鎧を、(《異界読本(ワールドマニュアル)》の弾き出した)最適な手法で編み込んだ『地獄組』だ。

抜け出したいならぶっ壊すしかないぜ?無理だけど。」



アージュ・マーゴはそう言うと、背中に背負った石の両手剣(グレートソード)を手に取り、一歩一歩《食尽王鼠》に近づいていく。

それを見た《食尽王鼠》は、目を血走らせながら必死に全身に力を込め続けた。



「ふ………ふざけんなァァァァぁぁぁぁぁぁァァァァぁぁぁ!!!こんな拘束ブッ壊してェェェぇぇ!!ぬがァァァァぁぁぁァァァァぁぁぁぁぁッ!!!」



「諦めるんだな、お前はここで死ぬんだ。」



「ちくしょォォォぉぉォォォォぉぉォォォォォォ!!『分裂体』共!!何をやってるぅぅぅゥぅぅぅゥゥゥ!?僕の上のコイツ等を食い尽くせェェェェェェェぇぇェェェェ!!」



「俺(の《異界読本》先生)がそんな事許すと思ってんのか? 既に周囲の『中継地点』は潰し終わっているよ。」



「な………ば…………バカなッ!?何故『中継地点』の事をお前が知って……………!?」



「あっ、企業秘密です。」





アージュ・マーゴは「『中継地点』潰してたから到着するの遅れたけど、間に合ったし良いよね?」と、自分自身を納得させるようにうんうん頷いていると、《食尽王鼠》は信じられないといった様子で目を見開いた。




「ふざけるなァァァァぁぁぁぁぁぁぁぁァァァァぁぁぁ!!やっと…………やっと生体ピラミッドの頂点に君臨できる力を手に入れたんだぞぉぉぉぉォォォぉぉォォォォォォッ!!それを………それなのにぃぃぃィィィぃぃィィィ!!」



「んな事俺が知るかよ、お前の勝手だろ。」



アージュ・マーゴは《食尽王鼠》の言葉を一蹴して、すたすたと歩み寄り続ける。

未だに、《食尽王鼠》を拘束する白鎧で形作られた『地獄組』はビクともしない。

その様子を遠巻きで眺めていたイギル・イーガーは、ゴクリと思わず唾を飲んだ。



「あ………あの者は一体………何者なのだ…………!?」



「………………アージュ・マーゴ。」



「!、ミルシィ姫ッ!お体は大丈夫ですかッ!?」



イギル・イーガーは自身の問いに答えたミルシィ・スターライトの元へ、よろよろと兵の肩を借りながら駆け寄った。

イギル・イーガーは、この時彼女の怪我が重傷ではあるものの、スカイジア王国の宮殿治癒術師で治療可能なレベルであることを見抜き、安堵の表情を浮かべた。



「……………『アージュ・マーゴ』…………で御座いますか? ……………ミルシィ姫の御友人で?」



「…………いえ、私もこの戦場に来る少し前に初めて出会った程度でして、詳しいことを知っているわけでは無いのですが…………何でも一人で仇の《竜種(ドラゴン)》を狩りながら旅をしているそうなのです。」



「なんと…………一人で………!?」



「『正体不明の異物(アンノウン)』という言葉を知っていたため、チェリンと共に話を聞かせてもらっていたのですが………………成る程、言葉通りの実力の持ち主である………と言うことですね。」



ミルシィ・スターライトとイギル・イーガーは、アージュ・マーゴの《食尽王鼠》の突進をモロに受けてもよろめきすらしない体幹の強さ、『駆動鎧』と呼んでいた『人形繰り(パペットマスター)』という種族のスキルに似た、白鎧を生み出し操る能力、そして戦場を駆け抜けてきたであろう筈なのに傷一つ付いていない戦闘センスを総合し、アージュ・マーゴの実力の高さを判断していた。



一方、アージュ・マーゴは《食尽王鼠》を見下ろせる位置までたどり着くと、石の両手剣を高々と構えた。

さながら死刑執行前の処刑人の様なその動きに《食尽王鼠》は激しく身震いしている。

アージュ・マーゴは冷徹な声色で《食尽王鼠》に最期になるであろう声を掛けた。




「じゃあな、ウォ◯ト・ディ◯ニーにあの世で謝罪しろ。」



「ひ…………ひは………ひゃは………ハハッ……………!」



「……………ん?」




アージュ・マーゴがその両手剣を今まさに振り下ろさんとしたその時だった。

《食尽王鼠》の様子がおかしい事に、アージュ・マーゴは気づく。

殺される直前の恐怖からなのか、はたまた石の両手剣程度では自身に傷などつくまいという自信からなのか、《食尽王鼠》は途切れ途切れに笑い出したのだ。


そしてーーーーーーーーーーーーーー




「………ひゃハハッ……ハハッ……《月輪王之憤怒(ルモーナラース)》。」





ーーーーーーーーーー《食尽王鼠》の筋肉が、爆発的に膨れ上がった。








吾妻秀吾の作成スキル

アシストスキル

樹形公式(クリエイトスキル)

異界読本(ワールドマニュアル)》(素養:『意思共有』『反芻教育』)

万物名工(マテリアルクラフト)

ディフェンススキル

異界逃避(パラレルエスケープ)

雄峰王之逆鱗(マウンティガスケイル)》(素養:『駆動鎧』)


食尽王鼠(イーターラット)の作成(?)スキル

アタックスキル

猛獣王之雄郡(ライグーンソルジャー)

猛獣王之鋭爪(ライグーンクロー)

ディフェンススキル

雄峰王之迷彩(マウンティガカモフラージュ)

アシストスキル

月輪王之暴食(ルモーナグラトニー)

猛獣王之筋骨(ライグーンビルドアップ)

猛獣王之咆哮(ライグーンシャウト)

鈍刀病(ソードペステレンス)

月輪王之憤怒(ルモーナラース)

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