《雄峰王之逆鱗(マウンティガスケイル)》〜主人公ってミルシィ・スターライトだよね?あれ違った?〜
「ヒャアァァァぁァァァァァァぁぁぁァァァァッ!!《猛獣王之筋骨》ッ!!」
突如として肥大化した《食尽王鼠》の歪で巨大な右腕が振り降ろされたのが、両者の開戦のゴングとなった。
《食尽王鼠》の攻撃にミルシィ・スターライト達が散開し回避すると、《食尽王鼠》の攻撃は標的を見失い地面に叩きつけられる。
『ズゴンッ』と空気が痺れるような轟音とともに、先程まで彼女らが立っていた地点の大地が波打つように歪み、衝撃波を伴いながら拳の着弾地点に数十メートル程の巨大なクレーターを刻み込んだ。
《巨人刀》部隊の面々はその衝撃に羽虫のごとく散り散りに吹き飛ばされるが、イギル・イーガーはどうにかそれを堪え、発生する爆風に防御の体制を取りつつ目を細めた。
「ぬぅ……ッ!? 何たる膂力か…………!!」
「《天空王之翼舞》ッ!!」
驚愕の声を漏らすイギル・イーガーの傍をひゅんっと一陣の風が吹き抜ける。
先ほどの衝撃波の渦にまるで気圧されなかったかの様に、ミルシィ・スターライトが自身の背中に純白に輝く一対の翼を広げながら、《食尽王鼠》に突撃していったのだ。
《食尽王鼠》は攻撃後の態勢を立て直しながら、突っ込んでくるミルシィ・スターライトに対し、歪に口角を上げる。
「ハッハーーーーーーーーッ!!そうこなくっちゃあねぇェェェぇぇぇェェェ!!勇者サマァアアァあァァァアアァあぁァァァ!!!」
《食尽王鼠》は目を見開きながら涎をだらだらと撒き散らしつつ、自身の両腕の筋肉を隆起させる。
ミルシィ・スターライトは自身の右手に握られた聖剣の切っ先を《食尽王鼠》に向けながら、一切速度を緩めぬまま《食尽王鼠》の攻撃射程に飛び込んだ。
「…………………《閃光攻影》ッ!!」
「ヒャアアアァハハハハハハハははハハアァァァ!!《猛獣王之鋭爪》ッ!!!」
《閃光攻影》の効果で、朧げな白い分身を発生させた『二人』のミルシィ・スターライトの剣と、《猛獣王之鋭爪》の効果で鋭く変質した《食尽王鼠》の両腕の爪の激しい剣戟が、戦場にけたたましい研削音に似た金属音を響かせ、猛烈な火花を散らせた。
並みの兵士ではミルシィ・スターライトと《食尽王鼠》の動きすら捉えることも出来ず、百戦錬磨のイギル・イーガーでさえその残像を目で追うことしかできないほどの凄まじいぶつかり合いだった。
「ミルシィ姫の剣速に………追いついている…………だと…………!?」
イギル・イーガーがそう驚くのも無理は無く、ミルシィ・スターライトは世界最強の空間格闘術《天道流》の天才であり、列強各国の名だたる剣豪達が口を揃えて認める程の剣の達人、文字通りの世界最強の剣士なのである。
かつて《天道流》の達人として世界中を放浪していたイギル・イーガー自身も、その強さに惹かれて、一回りも年の離れた彼女に忠誠を誓うことを決心させたのだ。
そんな彼女の、ミルシィ・スターライトの最高速度を、それもアタックスキル《閃光攻影》で手数を二倍に増やしているあの神速の攻撃を、出自もわからぬ一介の魔物が笑いながら捌ききっている。
悪夢のようなその光景に、イギル・イーガーは思わず青ざめた。
「ハハッ!!イイね!イイね!凄く良いッ!!最高だよ勇者サマ!!!」
「……………ッ!!」
「ホラホラッ!もっと速くなるよ!!頑張って耐えてねぇぇェェェェェェぇ!!《猛獣王之筋骨》ッ!!」
《食尽王鼠》がそう叫ぶと、彼の宣言通りに周囲に響く金属音と火花はその激しさを増していく。
まるで巨大な竜巻の様な勢いの両者の戦いは、周囲の地形をごりごりと削りながら加速していった。
「(マズイぞ………………あの《食尽王鼠》とかいう魔物の尋常ならざるスピードとパワーによって、ミルシィ姫がスキルを発動するタイミングを悉く潰されている……………このままでいかん…………ッ!!)。」
周囲がどよめく中、イギル・イーガーは冷静に戦局を読み、自分が今何をやれるのかを思索していた。
《食尽王鼠》のスピードとパワーの前では自分にできることは限られている。
唯一の救いと言えるのが、《食尽王鼠》の周囲にいた強力な『分裂体』すらもが、あの両名の激しい攻防に近づくことが出来ないということだろうか。
つまり、逆に今なら『分裂体』の邪魔を受けずに《食尽王鼠》本体へ攻撃を行うことが可能ということになる。
「(………………………………やるしかあるまい………か………!!)。」
その戦況を目にし、イギル・イーガーは、何かを決め動き出した。
ーーーーーーーーーー◯ーーーーーーーーーー
勝負が動いたのは、両者の剣戟が始まって数分後のことだった。
1人と一匹の激しい攻防に近づけないでいる《巨人刀》の面々の先頭に立つイギル・イーガーが、ゴクリと息を飲み込む動作を見せた後、その火花と金属音の中心に向かって走り出したのだ。
「ぬおおおおおおおッ!!《巨人之大槌》ッ!!」
イギル・イーガーは新たに空間から90cm程の全長のハンマーを召喚すると、ミルシィ・スターライトと交戦している《食尽王鼠》にむかって振り下ろした。
周囲にいた他の兵士はそのイギル・イーガーの行動に、思わずぶわっと汗が噴き出す。
明らかに無謀、あんな暴力の渦に《天道流》の達人でもあるイギル・イーガーらしからぬテレフォンパンチの様な無防備な攻撃を打ち込むなど、殺してくれと言っているようなものだと、兵士達は瞬時に思ったのだ。
案の定、兵士達の予想通りに、《食尽王鼠》は向かってきたイギル・イーガーをチラリと横目で目視すると、ミルシィ・スターライトとの剣戟を一旦止め、ひょいっと容易くその攻撃を回避する、そしてーーーーーー
「あァん?雑魚は引っ込んでろって…………言っただろーーーーーーーーがッ!ボケがッ!!」
ーーーーー攻撃を回避され無防備になったイギル・イーガーの腹に、鋭い膝蹴りを叩き込んだ。
メキメキと嫌な音を立てながら食い込むその膝蹴りに、イギル・イーガーは大量の血を吐き出す。
「ゴバッ!?……ガハッ…………!」
「イギルッ!?」
目の前で行われたその光景に、初めてミルシィ・スターライトの表情が青ざめた。
それを確認した《食尽王鼠》はニタァ〜〜ッと笑みを浮かべつつ、膝蹴りの体勢のままグラグラとイギル・イーガーの巨体を足一本で持ち上げ、揺さぶる。
「ハハッ!勇者サマの側近って言っても僕にかかれば雑魚と変わらないねぇ〜。
なんだい?今の攻撃はさァ〜?止まって見えたよ?ハハッ。」
「………そ…………そうだ……ろう………な………。
『そう見えるよう』…………放ったの………だから…………。」
「…………ハァ?お前何言って……………」
イギル・イーガーの意味不明な言葉と不敵な笑みに、《食尽王鼠》は不機嫌そうに眉間にしわを寄せる。
と、ここで、イギル・イーガーの持っていたハンマーが、彼の手から滑り落ちた。
「ふふ……ふ………喰らえ………《巨人之》……………《大槌》……!」
イギル・イーガーの 《巨人之大槌》が地面に落下した瞬間、そのハンマーは『ドズウウンッ!』と、その見た目からは想像も付かないような重量を思わせる着地音と同時に、ハンマーを中心に衝撃の波が波紋のように発生させる。
その波紋は一瞬にして《食尽王鼠》の足元を通過して周囲全体に拡散し、そこで《食尽王鼠》は《巨人之大槌》の『効果』を瞬時に理解した。ーーーーーーーーーー
「………………ま……『麻痺効果』かッ!!」
ーーーーーーーーーー《食尽王鼠》の身体が、イギル・イーガーを持ち上げた体勢のまま、『動けなく』なったのだ。
アタックスキル《巨人之大槌》
その効果は二つ、一つは『衝撃貫通能力』
相手の防御を貫いて、ダメージと『第二の効果』を浸透させる効果。
第二の効果は、先程《食尽王鼠》が述べたとおりの『衝撃を受けた相手への麻痺効果』。
この効果は『衝撃』さえ当たれば例え地面や壁を経由していてもその効果を届かせることが可能で、拘束時間こそ十数秒程度と短いものの、戦場に生きるものにとってその十数秒は文字通り生死を分かつには十分すぎる時間である。
普通に放っていたのでは、確実に《食尽王鼠》はこの攻撃を回避する、そう判断したイギル・イーガーは敢えて大振りな攻撃で《食尽王鼠》の油断を誘い、《巨人之大槌》の衝撃を至近距離で発生させることに成功したのである。
勿論、地中を振動の波を介して『麻痺効果』を伝播させる性質上、周囲の兵士にも麻痺の影響を与えてしまうリスクはあるのだが………
この攻撃により、《食尽王鼠》の『分裂体』の動きも封じ込めることに成功し、なおかつ彼らの切り札、ミルシィ・スターライトは、《天空王之翼舞》の効果で地面から浮いていた。
つまり、麻痺効果は彼女には届いていない。
「……………ミルシィ姫ッ!!今ですぞッ!!」
「し……しまっ……………!?」
《食尽王鼠》が麻痺によってビクビクと痙攣させながら表情を引きつらせるが、そこにーーーーーーー
「《白金剣聖》ッ!!!!」
ーーーーーーーミルシィ・スターライトの必殺剣が炸裂した。
イギル・イーガーの作成スキル
アタックスキル
《巨人之剛腕》
《巨人之大太刀》
《巨人之大槌》
食尽王鼠の作成(?)スキル
アタックスキル
《猛獣王之雄郡》
《猛獣王之鋭爪》
ディフェンススキル
《雄峰王之迷彩》
アシストスキル
《月輪王之暴食》
《猛獣王之筋骨》
《猛獣王之咆哮》




