《雄峰王之逆鱗(マウンティガスケイル)》〜今なんでもするって言ったよね?〜
一方、未だ武闘大会会場のホールの陰に隠れながらミルシィ・スターライト達の様子を伺っていた俺ーーー吾妻秀悟ーーーは、魔物を撃破後に合流した兵士らしき者と一緒に走り去る二人の様子を見送ってから、《異界読本》に先ほど聞いた不吉な言葉の意味を尋ねてみた。
「………で、この国が滅ぶってどういうことだよ?見た感じあの二人だけでも余裕そうだったんだが……?」
『先程ミルシィ・スカイジア・クリム・スターライト等が撃破した魔物は《食尽王鼠》の持つ《異能》、アタックスキル《猛獣王之雄郡》の効果で生み出された『分裂体』であり、本体は10万の大群を率いて現在この国を襲っています。』
「はぁ!?10万!?そんな大群が攻めてきてたのに誰も気づかなかったのかよ!?」
『《食尽王鼠》はディフェンススキル《雄峰王之迷彩》を使用し周囲の地形に溶け込み、索敵系スキル・魔法を回避していました。』
「で………でもスキルは二つ同時には発動出来ないんだろ!?」
『魔物・魔人種・ファント・ガーフィールド等の一部の例外スキル保持者はこの法則の適用外です。』
「なんだよそれ!?インチキじゃねーか!!」
俺は驚愕に思わず声を荒げてしまうが、周囲の視線に気づいて声を再び抑える。
城下町の関所から遠かったこの辺りの住民も、段々自分達が置かれている状況に感づき始めたのかざわめき始めていた、間も無く混乱が起きるであろう。
「……おほん………で、あの馬鹿みたいに強そうな二人は、その戦線に向かったって訳か?あの二人でも勝てないほど強いのか?片方は《勇者》なんだろ?」
俺は彼女達の実力の高さに期待して発言してみるも、《異界読本》はバッサリとそれを切り捨てる。
『相性が最悪です。ミルシィ・スカイジア・クリム・スターライトの所有するスキル群は単体戦闘、一対一でこそ最大の効果を発揮するものを中心に構築されています。
それなのも彼女が《魔王》の全盛期、つまりは各国が一時停戦や和平を行い、人類一丸となって《魔王》討伐の為乗り出した時期に産まれた存在のため、彼女は対軍勢より対《魔王》個人との戦闘を意識して自身の『存在力』を消費してしまったからなのです。』
「で…………でもあのチェリンっていう魔法使いとかは集団戦向きみたいな魔法使って………。」
『本体の《食尽王鼠》はアシストスキル《月輪王之暴食》と《猛獣王之筋骨》の効果によって、常識ではあり得ない耐久性と攻撃力を獲得しています。
現状の戦力ではミルシィ・スカイジア・クリム・スターライトの所有するアタックスキル《白金剣聖》でなければ完全撃破は不可能であり、彼女でなければ本体付近の強化された『分裂体』を殺し切るのは困難です。』
つまり、だ。
ミルシィ・スターライトでないと《食尽王鼠》と取り巻きの幹部級は倒せなくて、彼女のスキルは《食尽王鼠》と相性が最悪と……………。
うわ、何これ。積んでんじゃん。
ていうか、このままじゃ俺も巻き添え食うんじゃね?
死んじゃうじゃね?ねぇ?
『そうですね。』
「いやあああああああああああ!」
俺の思考に律儀に返してきた《異界読本》の冷静すぎる回答に、俺は悲痛な声を上げた。
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『この国と貴方の生命を救う手段はあります。』
「………え?」
俺が自分の二度目の人生を哀れんでいると、唐突に《異界読本》は口を開いた。
藁にもすがりたい俺は《異界読本》に聞き直す。
「ど、どうすりゃあいいんだ!?助かるならなんでもやるぞ俺は!!」
あの死の瞬間に感じた圧倒的激痛と苦しみを、俺は二度度味わいたくなかった。
あんなもの、恐らく何度やろうが慣れようがない。
その俺の必死な声を確認した《異界読本》は、俺にこう切り出した。
『貴方が《食尽王鼠》を倒すのです。』
「……………………………。」
「……………………。」
「…………What?」
思わず、ネイティブな発声の英語で聞き返してしまった。
食尽王鼠の作成(?)スキル
アタックスキル
《猛獣王之雄郡》
ディフェンススキル
《雄峰王之迷彩》
アシストスキル
《月輪王之暴食》
《猛獣王之筋骨》




