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《雄峰王之逆鱗(マウンティガスケイル)》〜この主人公の心臓には毛が生えてると思う〜

吾妻秀吾が、選手控え室に備え付けられた木製の簡素なテーブルの上に山積みにされた、サンドイッチのような軽食を詰められるだけ自分の胃袋に詰め込み満足げにお腹をさすっていると、控え室入り口あたりから、先ほど受付にいた女性と似たような制服を着た女性が、控え室にいた全員に向かって呼びかけた。


「間も無く武闘大会予選2組目が開始となりますので、参加者の皆様は会場にお集まりください。」


その声に反応するように参加者達は一斉に動き始め、各々の武器や杖を手に控え室からぞろぞろと外へと歩みだした。

吾妻秀吾もよくわからないまま人の波に着いて行く。



「(なぁ、予選2組目って言ってたけど、これだけの人数があと何組もあるんだったら大会も1日じゃ終わらないんじゃないか?)」


吾妻秀吾は頭に浮かんだ疑問を自身の心の中にいる異能(スキル)ーーーーー《異界読本(ワールドマニュアル)》に語りかける。


『予選は8組に分けられ行われ、各組50人が舞台に上がり、そこで最後まで舞台上に残っていた者が決勝トーナメントに進出できます。

武器や魔法・異能(スキル)の使用は自由ですが、あくまで自身の実力を反映させるものであることが条件となっておりますので、最初から魔法の力を込められている『魔道具』の類は使用できません。

予選自体は大人数を一度に絞り込むため、それほど時間は掛からないのです。』


「(ふ〜ん………でも空腹と金欠に耐えかねて、つい勢いで参加決めちまったけど、俺なんか参加して大丈夫なのかなぁ)」



「(まぁヤバそうなら自分から場外に出て失格になればいいか)」と言った辺りで、《異界読本》は口を挟んできた。



『問題ありません。現在この大会の参加者のうち、スキルを使用できるのは貴方を含めて3人だけですし、そのスキル所有者も決勝トーナメントでない限り戦闘を行うこともありません。

貴方が現在、予選で使用しようと想定している《万物名工(マテリアルクラフト)》の使用方法でまず問題なく決勝トーナメントまで進出出来ます。』



「(へぇ、やっぱりスキル持ちってのはあんまり居ないもんなのか。)」



そう考えると、カズゥの大森林で出会ったファント・ガーフィールドはやはりかなりの実力者であったのだろう。

そう考えながら、やがて吾妻秀吾達参加者は石材でできた廊下を抜けて、明るい空を覗く広い武舞台に到着した。




ーーーーーーーーーー◯ーーーーーーーーーー




「さぁっ!観客の皆様お待たせいたしましたっ!!いよいよ予選第二ブロックの屈強な猛者たちの試合が執り行われます!!」



《異界読本》曰く、声や音を増幅・伝達する類の風魔法を使用した女性が、観客のテンションを煽るように実況を行っている。

どこの世界でもああいう実況解説的な職業はいるのかと思いきや、よくみれば先ほど受付にいた女の人がそれをやっていたことに気づいた。

あからさまに受付にいたときよりも楽しそうにしている、こういう格闘とかが好きなのだろうか、と吾妻秀悟は眺めながら感じ取った。



「実況は第一ブロックより引き続き私、ジュリア・アルフィートが行わせていただきます!解説も同じく第一ブロックより引き続き、武装騎士団(ウエポンナイツ)魔法技術部隊『魔道杖(マジックロッド)』部隊長!チェリン・ポルカルト様にお願いしております!」


「はーい、よろしくねぇ。」



そんな楽しそうなジュリア・アルフィートと名乗る彼女の隣で、ひらひらと観客に手を振る長い髪の男が見えた。

髪は腰のあたりまで伸ばしているのだろうか、燃えるような赤い髪に無数の髪留めらしきものを留めている。

肌の色はこのスカイジア王国の中では珍しい小麦色の健康そうな色だが、体の線は細く、その体に不釣り合いとも言えるくらい大きな純白のローブを羽織って、背中には彼の身長とほぼ同程度の長さの、金属製の杖を背負っていた。


と、ここで先程吾妻秀吾に対して悪態をつきながら肩をすくめていた筋肉質の男が、何を思ったのか近寄ってきた。



「お前本当に参加するつもりなのか………? 悪いこたぁ言わねぇ、大怪我する前に場外に出ておけよ?」



どうやら悪態と言うより吾妻秀吾の身を案じてくれているようだ。

きっとさっきの控え室での発言も、彼なりの優しさだったのであろう。

初対面の人間なのに存外いい人もいたもんだ、と吾妻秀吾は目を細める。



「あぁどうも、ヤバそうだと感じたら遠慮なくそうさせて貰うつもりですよ。」


「……そうかい、まぁあんまり無茶して武舞台を無駄な血で汚さねぇでくれよ?」



そう言い残して吾妻秀吾から離れていく男の背中に向かって、「そうだ、あのー?」と吾妻秀吾は去っていく男を引き止める。



「なんだ小僧?もう試合が始まるぞ?」



「いえ、試合が始まる前なんで心配してもらったお礼というわけじゃないんですけど一言だけ」



「?、なんだ?」



「ええ、あの、試合が始まったら、ーーーーーーーーーーーーーーー。」





吾妻秀吾は少しだけ言葉を選ぶように一拍間を開けると、男にこう言い残して武舞台の中央へ向かい歩きだした。






「 ーーーーーーーー『受け身』の準備をしといてください。」


「………………はぁ?」




吾妻秀吾のその言葉に呆れるように疑問符を浮かべた男を尻目に、実況のジュリア・アルフィートは言い放つ。




『それでは第二ブロック予選……………試合開始ぃ!!」




試合開始を告げる大鐘が、コロシアムに鳴り響いた。












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