第10話 高橋美咲篇-1
この自称『五』と名乗る人物が、私の向かいに座っていた。
彼女が尋ねた。「つまり、私と彼女、よく似ている?」
私が答えた。「ええ、よく似ているわ。声も似ている」
彼女が言った。「あなた、彼女のこと、とても愛していたの?」
この言葉は、彼女の口から何度目かの問いかけだった。
今回だけが、正しい問いかけだった。
私は言った。「ええ、とてもね」
明日香は、私が今まで会った中で最も善良な少女だった。
私が学校でいじめられていた時、彼女は私の前に立ちはだかった。
そして、あの連中は私の代わりに明日香をいじめ始めた。
彼らは明日香の教科書やノートを破り捨て、筆箱に接着剤を詰め込み、机に画鋲を仕掛けた。
明日香は私を悲しませないように、そんなものをこっそり隠して、私に気づかせないようにしていた。
でも、私は気づいてしまった。
私はひどく泣きながら、彼らとでもやり合ってやると言った。
明日香が私を止めた。
彼女は私を抱きしめ、優しくなだめてくれた。
「美咲、あんな人たちに時間を無駄にしないで」
「一緒に大学受験頑張って、一緒にここから出て行こう」
私は約束した。でも、それは果たせなかった。
高校三年生の時、私の日記が両親に見つかった。
そして私は精神病院に送られた。院長は父の友人だと聞いた。
彼は私を電気ショック用の椅子に縛り付け、病気だと認めさせようとした。
最初は認めなかった。
最終的に、何度も電気ショックをかけられ、もう耐えられなくなって、口を開いた。
私は病気だと認めた。
でも、それでも明日香を愛していた。
院長が警察に逮捕されて、私はようやく解放された。
私はすぐに明日香を探しに行かなかった。こんな姿で彼女に会いたくなかったからだ。
私は浪人して予備校に通い、毎日深夜まで勉強して、ようやく大学に合格した。
その大学は、明日香の大学と隣り合わせだった。
私が彼女を訪ねると、彼女は心から私を喜んでくれた。
そして、彼女が恋をしたと私に話した。
私は長い間、明日香に会うのを控えていた。
彼女から電話がかかってきても、無意識に切ってしまうことがあった。
彼女を責めたり、怒ったりしたわけではない。ただ、どう向き合えばいいのかわからなかっただけだ。
それからまたしばらくして、私はようやく思い直した。
私は明日香を愛している。彼女は別の人を愛している。それでも構わない。
彼女が幸せなら、それでいい。
私は明日香に会いに行くことにした。前の冷たい態度を謝罪しようと思ったのだ。
しかし、私が彼女の大学に着いてみると、全員が一つの建物を囲み、その傍にはパトカーが停まっていた。
大学は警察に封鎖され、私は中に入ることができなかった。そこで明日香にメッセージを送った。『来たよ、君たちの大学、何かあった?』
返事は来なかった。
私は寮に戻り、眠ってしまった。
目が覚めると、誰かに告げられた。あの建物から飛び降りた少女が、明日香だったのだと。
それ以来、何度も何度も思い返した。もしかしたら明日香は、私に助けを求めようとしていたのかもしれない、と。
深くPUAに嵌められた人間が自分自身で助かることは難しく、外からの助けが必要なのに、明日香の友人は少なすぎた。
高校時代のいじめの経験が、大学でも一人で行動する原因になっていた。
私が現れたことで、彼女はやっと友達ができたと思ったはずだ。
なのに、彼女が私に打ち明けようとした時、私は彼女の電話を切ってしまった。
明日香の死後、私は普通に大学に通い、インターンを探し、就職した。
しかし、時折、心の中で声が聞こえることがあった。
殺してやる。
殺してやる。
殺してやる。
その声は、心の中でだんだんと強くなり、頻繁に現れるようになった。
ついに、私は行動を起こした。
しかし、私が思いも寄らなかったことに、誰かが同じタイミングで、私と同じように動いていたのだ。




