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観測対象

結局、あのまま赤月さんの拠点で寝てしまった。

流石に申し訳ないので、シャワーだけ借りて自宅に戻った。


今日は学校。電車に揺られていつもの駅に着く。

学校まで歩き、教室に入る。


「おはよー」

「おっはー」


いつもの挨拶。いつもの朝。

......のはずなのに。

少しだけ、周囲の音が遠く感じる。


外の景色を眺めていると、影山が声をかけてくる。


「青凪さ」


「......なに?」


「お前、なんか歩く音しなくね?」


「......え?」


「いや、さっき廊下歩いてたとき」

「全然気づかなかったわ」


峰城も会話に入ってくる。


「それ思った」

「なんか急に後ろいてビビったわ」


どういうこと...?

......無意識に、使ってたのか?



昼休み。コンビニでパンを買うため、教室の外に出る。

昼の廊下は、やはり騒がしい。

笑い声。足音。扉の開閉音。


——なのに。

階段前だけ、妙に静かだった。


通り過ぎようとした、その時。


「この前は逃げたな」


「……え?」


反射的に横を向く。

そこには——

僕を襲った男が、階段の上に立っていた。


一段高い場所から、

こちらを見下ろしている。


右肩のあたりには、まだ白い包帯が巻かれていた。


「......っ」


「悪い、名乗り忘れてたな」

男は、階段の手すりに軽く寄りかかる。


白澄晴気(しろすみ はるき)


少しだけ、口元を吊り上げる。


「一応、同じ学校の先輩ってことになるのかな」


「......なんで」


「仕事だ」

あまりにも軽く言った。


「安心しな」

「今日は殴りに来たわけじゃない」


階段を一段、降りてくる。

靴音がやけに大きい。


「観察さ」


「......は?」


「お前がどこまで伸びるのか」

「上が見たいらしい」


その言葉で、自分が今どの立場にいるのかを察した。

上。つまり英知。


「......誰に言われてるんですか」


白澄は少しだけ笑い、

「それ、知りたい?」


もう一段、降りる。

距離が縮まる。


赤月天華(エンジェル・フォース)に守られてるだけのやつが」

「どこまで一人で立てるのか」


「ちょっと興味ある」




階段の曲がり角。

一人の少女が、その会話を見ていた。


「......青凪、くん」


その名前を、静かに記憶した。




* * * * * *




同時刻、青凪家。

青凪桃葉は、テーブルの上のスマホを見つめていた。

画面には、空斗との短い通話履歴。


「......気づいてしまったかもしれない」

小さく呟く。


「ごめんね、空斗」


「本当は、あなたを関わらせたくなかった」

少し震えながら、言った。


桃葉の視線が、棚の古い写真立てへ向く。

そこには、幼い空斗と——


顔の見えない男性。

写真の半分だけ切れている。


「......きみなら、どうしてたかな」


かつて、一緒にいた人を深く思いながら。

指先が、写真の端をそっとなぞる。


そのとき。ブルブルとスマホが震えた。

画面には、英知からの着信。


『青凪です』

『あぁ、研究長』

機械越しの声が少し弾んでいる。


『現在用意している重力砲ですが』

『少し面白いことがわかりました。博士も呼んでいます』


『おっけ、すぐ行くわ』

『ありがとうございます、スタッフルームまでお願いします』


空斗が巻き込まれないように、と祈りながら。

彼女は再び、英知へ向かった。




* * * * * *




同時刻。赤月天華の拠点。

彼女は、一人で窓の外を見ていた。

夕方の空。少しだけ赤い。


「......そらくん」

小さく、名前を呼ぶ。

誰かに聞かせるわけでもなく。


「思ったより、深く入っちゃったなぁ」

「ウケる」


そう言って、少しだけ笑う。

でも、その笑みはどこか遠い。


「今までの子は守ってくれなかったしなー」


ぽつりと落ちたその言葉が、

部屋の静けさに溶ける。


モニターには、かつて本部でスキャンした英知の施設の図面。

そして、見慣れない兵器設計図の断片。


「......嫌な予感」


「対Sランク用の兵器とか」

「作ってるわけ...?」

一瞬、目が細くなる。


「いやいや」

首を横に振る。


「その前に終わらせればいいだけか」

ソファに腰掛け、足を組みながらモニターを見つめる。


「うーん」

「問題は、どうやって政府との関連をバラすか...」


「私のDNAの関連も調べなきゃだよね〜」


軽く言ってるのに、その声の奥には焦りが滲んでいた。


でも。

ふと、窓に映る自分を見る。


「それより......私」


「いつまで、ここにいられるんだろう」


窓に映る自分の輪郭が、

一瞬だけ、薄く見えた気がした。

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