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鼓動

「遅れてごめんよ」


やっぱり、この人......美人だ。


「......なんで、ここにいる」

「番号個体が、外に——?」



「......管理、甘くなったのか?」



「下がっててね」


赤月さんが一歩前に出る。

——消える。


次の瞬間。


「っ——!?」

男が咄嗟に腕を構える。


——衝突。

衝撃が、地面を揺らす。


「私、体術のが得意なんだよね」

赤月さんが、少しだけ楽しそうに言う。


「6番目のSランク、天使のコードネームってまさか...」

男の足元がめり込む。


「でも——」

赤月さんの指先が、わずかに動く。


「遅いよ」


赤月さんが人差し指で男をデコピンした。


男の体が、吹き飛ぶ。

——空気が裂けた。


「......っ」

「今日はここまでだな」

「想定外」


男は立ち上がり、負傷した右肩を押さえながら


「青凪空斗」

「——覚えた」


そのまま、闇に溶けるように消えた。


——静かだ。


さっきまでの衝撃も、気配も、

全部、嘘みたいに消えている。


風の音だけが、やけに大きく聞こえた。




そして今、赤月さんの能力で、夜の地元を飛んでいる。


「だいじょぶ?」

「普通に死ぬかと思いました...」


「殺してもよかったんだけどね、近くが住宅街だったし面倒だった」

物騒なこと言うなあ...


「今度からそらくんのスマホにGPSつけてもいいな〜」

「私専用の」


「えぇ......」

「なに?不満?」


赤月さんに監視されるなら、まあ大歓迎だけど...


夜の空気は意外と気持ちよく、自分が颯爽と空を飛んでいることに喜びを感じた。

周りは住宅や街灯の灯りが綺麗に写っている。


「......ふう」

赤月さんが、少しだけ息を吐く。


「思ったより、やばかったね」


「......やばかったのは僕の方ですよ」


心臓が、まだうるさい。

手も、少し震えている。


「でもさ」

赤月さんが、ちらっとこっちを見る。


「ちゃんと逃げたじゃん」

「え?」


「無理に戦わなかった」

「それ、結構大事だよ」


——少しだけ、胸が軽くなる。


「......でも」


「ちょっと悔しいです」

ぽつりと、漏れた。


「まあ、だろうね」

あっさり、肯定される。


「悔しいって思えるなら——」


「伸びるよ、そらくん」

その言葉が、やけに残った。


ゴホッ


しばらくして、地面に降りる。

どうやら、拠点の近くらしい。


「今日はもう帰りなよ」

「え?」

「監視、入ってる可能性あるし」


「......あ」

あの男の言葉が、蘇る。

“家族とか、いるタイプ?”


「......大丈夫ですか、僕」


「うーん」


少し考えて、


「大丈夫じゃないかも」


「え」


「でも」

くすっと笑う。


「それ、私も同じだから」


その一言が、妙に安心できた。


「じゃ、また連絡してね」

「はい......」


背を向けて歩き出す。

でも、途中で止まって——


「そらくん」

「はい?」


「次は」

少しだけ、振り返る。


「ちゃんと戦わせるから」


その目は——

冗談じゃなかった。



* * * * * *




夜。自宅。

静まり返ったリビング。


「......ただいま」

返事はない。

ぬいぐるみたちは寝てるのだろうか。


でも、違和感。


テーブルの上。

見慣れないスマホが、一台。


「......なにこれ」

画面が点く。


『観測対象:青凪空斗(あおなぎ そらと)

『監視レベル:引き上げ』

『適合率:不明』

『実施期間:未定』


背筋が、冷える。


その瞬間。

玄関の鍵が、回る音。


「空斗?」

ママの声。


「......いるの?」


——日常の声なのに

さっきの男より、怖かった。

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