06
なかなか話が進まない……。
いつ見ても広い部屋だ。
私の部屋なんて三個は入りそう。
窓際の日当たりのいい場所に響生のベッドはある。
そんなんだから余計に起きられないんだと思う。
寝返りを五回くらいしても落ちないであろうベッドの中央に人の形をした小さな山。
「響生、朝だよ」
無駄なことと知りつつ一応声をかける。
返事はない。
布団をガバッと剥ぎ取ってみた。
四月とはいえまだまだ寒い。
むしろここ最近は急に寒さが戻ってきた。
はあっと息を吐いてみれば空気が白く濁る。
そんな日に布団をとられればさすがの響生も起きると思ったんだけど……。
嘘でしょ、これでも起きないの?
仕方ない、最終手段だ。
そーっと丸くなる響生の近くに行き、耳元で囁く。
効果は覿面でぱっちりと目を開けた響生が飛び起きた。
「莉都、それ本当?!」
私の肩をがしっと掴み泣きそうな顔をする響生に庇護欲をくすぐられるが、ここは心を鬼にしないと。
響生を姫島カレンから守るためだ。
「さあ?さっさと準備すれば教えてあげるかも」
そうにやっと笑ってみせるとそれからの響生の行動は速かった。
五分で準備を済ませ、部屋を飛び出す響生の後ろをはや歩きで付いていきながら思った以上の効果に驚く。
さすが凛ちゃん。
響生の扱い方を知っている。
ただ、「どうしても響生に紹介したい人がいるの」のどこが響生には効いたんだろう。