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婚約破棄され「奈落のダンジョン」へ追放された悪役令嬢、実は筋金入りの戦闘狂だったので大歓喜!〜無双してたら最恐の魔王を懐かせてしまい、元婚約者の王子が泣きついてきたけど物理で追い返します〜  作者: はりねずみの肉球
第5章:救援依頼という名の喜劇、あるいは物理的拒絶

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シーン1:【王都の魔物(ゴミ)掃除、奈落軍団のお披露目会】

「……ひ、ヒィィィィィッ!」


私の登場に言葉を失っていた群衆の中から、誰かが限界を超えた悲鳴を上げた。

その悲鳴が引き金となったのか。

奈落の扉の吹き飛んだ衝撃で一時的に動きを止めていた『地上の魔獣』たちが、一斉に咆哮を上げてこちらへ殺到してきた。


王都周辺の森に生息する、三つ目の大猿サイクロプス・エイプや、鋼の甲殻を持つ大百足アイアン・センチピード

普段の近衛兵であれば、数十人がかりでようやく一体を討伐できるほどの、地上の生態系における上位の存在だ。

結界が消滅したことで王城になだれ込んできた彼らは、腹を空かせ、目の前にいる群衆エサと、突如現れた私たちへ向かって牙を剥いた。


「来るぞ! 逃げろォォォッ!」

貴族の一人が情けない声を上げて後ずさる。


「逃げる? 誰から逃げるって?」


私はインナーの襟元を軽く緩めながら、微動だにせず、真っ直ぐに迫り来る魔獣の群れを見据える。


「ガルム」


私が低く、しかし絶対的な命令の響きを持たせて名を呼んだ。


「ハッ!!」


私の背後から、黒々とした突風が吹き抜けた。

二足歩行の巨体を持つ黒狼ガルムが、王国の騎士が使う大剣などとは比べ物にならない、彼の鋭い『爪』を剥き出しにして、先頭を走っていた三つ目の大猿に肉薄する。


ザシュッ!!!


一閃。

ただそれだけで、近衛兵の槍を弾き返すほど強靭な大猿の肉体が、斜めに真っ二つに切り裂かれた。

血しぶきが舞う間もなく、ガルムはさらに加速し、大百足の甲殻を素手で叩き割り、内臓を引きずり出す。


「「「ワォォォォォォンッ!!」」」


ガルムの動きに呼応し、数十匹の黒狼族が次々と奈落の門から飛び出してくる。

彼らは地上の魔獣どもを『敵』とすら認識していなかった。

奈落の過酷な生存競争の中で生き抜いてきた彼らにとって、地上の魔獣など、ただの『柔らかいエサ』に過ぎない。

黒狼たちは統率の取れた動きで魔獣を包囲し、強靭な顎で喉笛を食いちぎり、鋭い爪で肉を切り刻んでいく。


「な、なんだあれは……!」

「奈落の魔物が……王都の魔獣を、一方的に……!?」


先ほどまで死の恐怖に怯えていた群衆が、目の前で繰り広げられる一方的な殺戮劇おそうじに、今度は別の意味でガタガタと震え始めた。

当然だろう。

彼らを殺そうとしていた魔獣を、瞬く間に解体している黒狼の群れ。そして、その群れを率いているのが、つい数日前に自分たちが追放した『悪逆の公爵令嬢』なのだから。


「ふぁあ……」


私は退屈そうに欠伸を噛み殺し、肩に乗っているモッチの頭を指で撫でる。

「きゅいっ」とモッチが気持ちよさそうに鳴くのを聞きながら、私は横に立つゼノヴァルを見上げた。


「……随分と手ぬるい配下を持っているのだな、クローディア」

ゼノヴァルが、黒狼たちの戦いぶりを見て鼻で笑う。


「あら、そう言うなら、あなたがもっと派手に掃除してくれてもいいのよ? 魔王様の力、この泥舟のネズミどもに見せつけてあげたら?」


「断る。あのような有象無象に我が魔力を使うなど、魔王の矜持に関わる。……それに、貴様の『舞台ショー』を邪魔する趣味はない」


「つまんない男ね」


私は肩をすくめ、戦闘が終結しつつある前方へと歩み出る。

ガルムが最後の大百足の頭を握り潰し、私の前で恭しく片膝をついた。


「主よ。庭のゴミ掃除、完了いたしました」


「ご苦労様。……あなたたち、お腹は膨れた?」


私の労いの言葉に、背後の黒狼たちがブルブルと血に塗れた毛皮を震わせ、満足げに喉を鳴らす。

その異様な光景に、群衆は完全に凍りついていた。

私が一歩足を踏み出すと、彼らはモーセの十戒のようにサァーッと左右に道を開け、石畳の上に這いつくばる。


「……あら、そんなに畏まらなくてもよくってよ。私、一応この国の『元』公爵令嬢なのだから」


私はヒールの音を高く響かせながら、這いつくばる貴族たちの間をゆっくりと歩く。

その中の一人、かつて私を『冷酷な毒婦』と陰口を叩いていた男爵の顔を、ブーツの爪先で軽く持ち上げる。


「ヒッ……! ク、クローディア様! お許しを、どうかお許しを……!」

男爵が涙と鼻水で顔をグシャグシャにしながら命乞いをする。


「何を許すの? 私はただ、散歩の途中にゴミが落ちていたから片付けただけよ。あなたたちをどうこうするつもりなんて、これっぽっちもないわ」


私はふんわりと微笑む。


「だって、あなたたちを殺すために私の綺麗なブーツを汚すなんて、割に合わないもの。……せいぜい、私がこの泥舟を叩き壊す特等席で、震えて見ていなさいな」


私が男爵の顔からブーツを離した、その時だった。


『ク、クローディアァァァッ!!』


地下空間の奥、破壊された『地下霊廟』の扉の方向から、私の名を呼ぶ悲痛な声が響き渡った。


ドタドタという無様な足音と共に姿を現したのは。

金糸の髪をススで汚し、高価な王太子の衣装を焦がした、私の『元・婚約者』。

アルフレッド=ルーヴェル、その人だった。

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