シチューにカツを
俺の目の前で、百体ほどのドロイド達がこうべを垂れている。これは、敬われている? そんな訳ないんだよ? こいつらはヴァルキリアのパイロット用の奴らだ。かなりタカビーな奴らだ。リンクスを倒そうとしてきたのは記憶に新しい。
あの戦いも結構ギリギリだったな。タイマンバトルを挑まれたからなんとかなったが……今ならもっと上手く立ち回れるだろうか?
あれからリンクスも多少パワーアップはしているが、今でもヴァルキリアの圧倒的火力の相手は面倒くさいな。そのヴァルキリアを鎧袖一触で蹴散らしたあいつは一体何なんだ? まあ、攻撃が当たらなければどうってことないって、昔の偉い人も言っている。手品のタネを知れば、こいつらでもやり様はあっただろうか。
俺が現在憑依中のドロイドはかなり俺そっくりに仕上がっているが、目の前のドロイド達は銀河連邦産だけあって、異国情緒あふれる造形になっている。
全て女性タイプなのは管理者の趣味だろうな。どうせ女騎士っぽいキャラを揃えて戦争ゴッコでもしたかったんだろう。銀河連邦の支配階級は退廃的だって海賊達も言っていた。
性格設定は騎士っぽくしてあったみたいだが、中途半端なプライドなんぞ敵に付け入られる隙になるだけだろう。一騎打ちにこだわってくれたおかげで俺も戦い易かったしな。
そんな連中が何故こうもしおらしくしているのか? いわゆるクッコロとも違うみたいだし、罠でもなさそうだ。
「なんで俺がこいつらに崇められてるんだ? 教えてベティちゃん」
『上位存在とのリンクが切れた状態で一方的に負けて、強者に頼りたい気分なんじゃないですか? 半自律型なので』
頭に中にベティちゃんの声が聞こえる。かなり自然でいい感じだ。さすがは最新版の俺専用ドロイドだ。
俺の思うままにしっくり自然に動けるし、リミッターカットすれば正規軍のドロイドとだってやり合える性能だ。
ここのドロイド達と戦って慣らし運転しようかと思ってたんだが、向こうに戦意がないならやめておくか。半自律型だと微妙に人間臭いんだよなあ。破壊するのをちょと躊躇するくらいに。
行く手を阻む者もなく、隔壁はドロイド達が慌てて開けてくれる。なんだったら案内までしてくれそうな勢いだ。
宇宙要塞の奥へどんどん進んでいく。
どの格納庫にも、残念ながらヴァルキリアは一機も残っていない。使えそうなものは整備中のパーツくらいだな。
それなりの規模の宇宙要塞なんだろうが、あの要塞艦を見た後だとガッカリ感がある。月とスッポンくらい小さいな。
設備のデザインも月並みだしな。SFアニメとかに普通に出て来そうだ。
いや、そうでもないか。なかなか奇妙なオブジェを発見したぞ。でっかいブドウの房みたいなのが天井からぶら下がっている。
丸い実に見えるのは、一つ一つがヴァルキリアの脱出用コクピットみたいだな。ふーん、あんなボロ負け状態でも脱出装置はちゃんと機能するのか。
すでに棺桶扱いされているバンダリアに比べれば、格段に恵まれている。人間の命より高性能なドロイドの方が大切に扱われるとはな。
まあ、金持ちの猫とかの方が、社畜時代の俺より余程高価な餌を食ってたからなあ。不公平なのが世の常だ。
『戻ってください! 敵です』
いきなり意識だけが自分の肉体に戻される。憑依後の酔う感じはあまりしないが、夢から覚めた時のように一瞬自分がどこにいるのかわからなかった。
両手のジョイスティックを握りこむと、リンクスのコクピットにいるのだという実感が湧く。
ふむう、さっきの戦いで逃げた奴が戻って来たんだな。宇宙要塞の出口で待ち構えてやがる。おまけに助っ人まで連れてきやがった。三機いる。
タイマンで互角だったから、三機がかりなら勝てると思ったか? くそ、ヤバイな。こりゃあ勝てる気がせん。
雑魚ならともかく、互角の相手に三対一は圧倒的に不利だ。二対一なら一機を瞬殺すればまだ何とかなるが……そもそも瞬殺できるならあんなに苦労してねえよ。あいつ当たり判定がないんだもんなあ。
いきなり攻撃してこないところを見ると、どうも一騎打ち希望のようだな。腕に自信のある奴、騎士かぶれの奴、そういった連中はタイマン勝負をやりたがる。まあ、気持ちはわからなくもない。
一対一なら正々堂々だあ? いや、わざわざ助っ人を連れて来た時点でフェアな勝負はあり得ないだろう。
形だけはタイマン勝負だったとしても、残り二機が存在するというだけで大きなプレッシャーになる。
仲間が負けそうになった時点で乱入してくるだろう。それがなくても、最初の一機を倒せば次のが戦いを挑んでくるとか?
仲間がいればマテリアルの補給だってできるしな。奴らの土俵で奴らのルールで戦わされるんだ。いいようにいたぶられるだけ。それでも奴らは弱い者虐めはしなかったと自己満足するんだろうけどな。
なんのことはない、ヴァルキリア軍団に囲まれて決闘した時と同じじゃないか。
もっと言えば地球にも、俺ルールを押し付けて来る勝ち組の連中は大勢いた。
結局のところ、この手の自分勝手な輩は、負けない限りやりたい放題を続ける。
面白いじゃないか。大富豪というトランプゲームのキモは、勝者がより有利になるルールだ。簡単には覆せないが絶対はない。人生のいい教訓だな。
さあて、ここは勝つしかない。でないと地球が蹂躙されるし。俺には守りたい奴らも帰りたい場所も一応あるからな。
今回、策はない。だが、今までだって絶体絶命のピンチを切り抜けてきたじゃないか。今度だって、多分なんとかなるさ。
宇宙要塞から出て、敵と対峙する。
進み出て来たのは、前とは違う機体だった。銃身のやたら長い大型銃みたいのを装備している。遠距離射撃タイプか? 嫌だよおい。
銃を八の字にブンブン振り回しやがった、戦闘開始の儀式のつもりか、カッコつけやがって。
「Xキャリヴァーだベティちゃん」
こっちも負けずに剣を振り回し、演武する。ように見せかけて、花吹雪のようにビーム粒子を撒き散らす。
周囲に生身の人間がいれば即死レベルだが、さすがにこの程度でダメージが与えられるとは思っていない。奴らに当たり判定があるかどうかを確認したかっただけだ。
案の定、輝く粒子は全てすり抜けていく。立体映像か幽霊か? どんなトリックかは知らんが、攻撃の瞬間だけはダメージが通ることは判明している。
飛び道具の場合どうなんだろうな? おそらくは発射の瞬間が弱点だと思うんだが。
今なら距離が近い。開幕と同時に間合いを詰めて斬りかかりたいところだが、当たり判定がないんじゃ意味がない。
かといって広い宇宙空間で、飛び道具の間合いで立ち回られたらお手上げだな。すでに詰んでる感はあるが、この程度で諦めるようじゃあ地球人類に明日を生きる資格はない。
案の定、相手はスッと距離を広げていく。予想通りではあるな。しばらく回避に専念しながら何かいい手を考えるか。
残りの二機は観戦するようだ。正直助かるが気は抜けない。所詮は宇宙人の気まぐれだ。油断していれば足元を掬われる。
さて、先手は相手に譲るとして。いきなりどでかいのを撃ってくるか? それとも小手調べにジャブからか?
来るぞ……それはわかるんだが、未来にモヤがかかったように見えない。
タイミングだけは読めるんだがな、なんだこれは?
まあ焦るな焦るな、異能者と戦う時には特に珍しいことじゃない。ナージャちゃんと試合してる時なんか豪運で未来を無理やりひん曲げてくるからな。それに似た能力なんだろう。
未来を予知することしかできない能力者にとっては、未来を改変してくる相手は天敵みたいなもんだ。
まあ、さらにその先を読むとか、落ち着いて対処すれば、わりとなんとかなるもんだ。
単発の射撃なんだから、どうせ当たるか外れるかだ。当たるなら回避すればいいし、外れるなら動く必要すらない。
ここはとりあえず回避だな。いつ着弾するかさえわかっていれば、そんなに難しくはないさ。
奴の銃の性能はまだ見ていないが、どんな弾だろうと光速を超えてくることはないんだ。ないよな? 別に速い分にはそんなに困らないけどな。むしろ遅過ぎる弾が恐ロシヤ。
完璧なタイミングで回避したつもりだったが、全身に鳥肌が立つ。これが死の予感か? 咄嗟にフルパワーのXキャリヴァーで斬り払うが、ヤバイ! 押し負ける!!
「タイムスキップ!」
未来に向かっての逃避。一瞬この世からいなくなれるリンクスの奥の手だ!
ジャンプできる未来は最長でも約二秒先だが、それだけあれば十分。エネルギーボールっぽい光る球は遥か背後に飛び去っている。
ヤバいな。いきなり切り札まで晒してしまった。
一瞬でボロボロになってしまったXキャリヴァーをインベントリに放り込み、次のに持ち替えていると二発目が来た。奴はどのくらい連射できるのか? まだまだ本気って訳じゃないだろう。
今度は斬り払いだけに頼ろうとはせず、Xキャリヴァーの耐久が削られる前にとっととタイムスキップで一瞬先の未来に逃げる。
時間を飛び越えるにもエネルギーがいるんで、ギリギリ短時間のジャンプに抑えるのがミソだよな。
初見の時よりは遥かに上手くできたが、それでもXキャリヴァーはノーダメージという訳にはいかなかった。二割ほど削られたか、余裕を見て次で交換することにしよう。
『剣で受けずに時間跳躍だけで回避できないんですか?』
「理屈の上じゃその通りなんだがなあ。俺の勘だとそれって試すと死ぬ奴なんだ」
『勘は大事ですからね』
ベティちゃんは聞き分けが良くて助かる。
そもそも、回避するだけならタイムスキップすら必要ない筈なんだ。なんで絶対当たるんだ? あんなの普通のエネルギー弾だろう? そりゃあ威力は凄いけどな。多分、一発でここの宇宙要塞なんて消し飛んじまう。
当たらなければ怖くないんだけどなあ。
とりあえず、極力Xキャリヴァーの耐久を削らない方向で、極めてみることにした。
上手くいけば一割程度のダメージで済むが、正に神業だ。慣れればそのうち普通にできるようになるんだろうが、それまで生きていられるのか?
俺は弱気になっているのか? いや、人間なんて本来みんな臆病者さ。やせ我慢が得意な奴が勇者になるんだ。
敵が調子に乗って連射して来たので、二刀流に切り替える。右の剣で斬り払っている間に左の剣をインベントリのと交換する。
秒間三発程度なのでなんとかまだ耐えられるが、ガトリングガン並みに撃ってきたらお手上げだぞ?
『敵機オーバーヒート!』
さすがにあれだけのエネルギーをつるべ打ちは無理があったか、底が見えたな。
「この隙に接近して叩き斬ってやる!」
あ、もう撃ってきやがった。オーバーヒート状態は十秒も続かない。これでどうしろと? ああ、よく考えたら近づいたところで敵には当たり判定がないんだった。まずそこからか。
奴のエネルギーだって無限って訳じゃないだろうが、あっちもインベントリ持ちだしなあ。その辺はたっぷり持ち込んで来てるだろう。
むしろこっちの継戦能力の方が問題だな。
「Xキャリヴァーをローテーションして、あとどのくらい戦える?」
『剣の自己修復能力は当てにしないでください。焼け石に水です』
百本以上用意したんだけどなあ。やはり全然足りないか。どうせ千本あっても足りなかっただろう。一万本? こんな特殊な武器を一万本も用意するとか、それは馬鹿だろう。
替えの剣が無くなる前に、別の方法を考えないとな。
そもそも何故斬り払いする必要があるのか? それは不思議な強制力が働いているからだ。とにかくどんな形であれ、敵の攻撃に当たったことにしなければならない。
やはりナージャちゃんの豪運と似ているな。あの異能はナージャちゃんの願いを叶えるべく未来を捻じ曲げようとするんだ。対抗手段としては、彼女の願望を別の方面にそらすのが有効だった。
異能勝負はとんちが結構モノを言う。慌てないで一休みだ。忙中自ずから閑あり、敵弾が降り注ぐ只中で余裕あるなあ。そんな自分をちょっとカッコイイと思ってしまう。
俺の異能は、じゃんけん無双だ。相手の次の手が勘でわかるから理論上は負けない。
だがナージャちゃんと本気で勝負すると、明らかに勘が鈍る。霞がかかったようになる。それでも予知はできるんだが、自信がなくなり迷いが生じる。鉄の意志でパーを出すつもりが、手元がくるってチョキを出してしまったりする。
最終的に勝率は五分五分だったけどな。
まずは相手の異能の正体を見抜くことからだな。
うん、わかってるし。奴の能力は必中だ。たぶん間違いない。
絶対に当たる攻撃とか、小学生の考える必殺技かよ。用途が限定されているにも関わらず、ナージャちゃんの豪運よりタチが悪い。
何があろうと撃てば絶対当たるっぽい。ゲームだとこの手の攻撃に対しては、下手に回避するよりシールド防御が有効だ。
斬り払いを選択したのもあながち間違いじゃなかったな。タイムスキップできなければ終わってたけど。
だが、原理はわかったからな。要するに命中した扱いにしてやれば、奴の異能は満足するんだ。
それなら別に貴重なXキャリヴァーを使う必要はない。
「海水とか、まだインベントリに入れてあったよな」
こんなこともあろうかと、いろんなゴミもちゃんととってある。インベントリの容量が足りなくなったら整理して捨てるつもりだったし。
宇宙空間の高速戦闘では、ゴミも凶悪なトラップになる。スペースデブリの罠だ。
まあ今回は、剣として使うんだが。
「秘剣、海水の太刀!」
フォースフィールドで棒状にした海水で敵弾を斬り払う。うん、いけるな。たいして斬り払えていないが、どうせタイムスキップで逃げるんだし。
大事なのは、敵の必中スキルを満足させてやることだ。この方法なら、Xキャリヴァーの耐久を削られるよりずっと安上がりで済む。
剣の心配はなくなった。あとはタイムスキップのエネルギーだが、リンクスのジェネレーターも最近はスタミナがついてきたみたいだ。まだまだ全然平気そうだ。
「心配なのはマテリアルの残量だけか」
『今のペースなら、千年以上戦い続けることができますよ』
千年か、壮大な話だな。千年戦争とか語呂がいいし、百年戦争の上をいく感じもいい。
宇宙人ならそれくらい普通なのか? さすがに俺の寿命が尽きて負けてしまうけどな。
結局、反撃手段を見つけた訳じゃないからなあ。死ぬのが先に延びただけか?
焦るな焦るな。敵だってそろそろイライラしてるんじゃないか? 連射してみたりいろいろしてはいるが、基本あいつって撃ってるだけだしな。馬鹿じゃなければそのうち別の攻撃手段をとってくる筈だ。
それとも、必中に頼り過ぎて他に何もできないとかか? 特化タイプって意外につぶしが効かないからなあ。専門馬鹿とも言う。
なあに、馬鹿勝負なら俺だって負けちゃあいない。俺馬鹿日誌激闘編、ポロリもあるよ!
「俺の拳がドボドボ濡れる! 必殺技だぞ海水拳!!」
マニピュレーターを海水で覆い、飛んでくるエネルギー弾をパンチで殴りつつタイムスキップ。
リーチが短くなった分、恐怖感はあるが、どうせタイミングがシビアなのは五十歩百歩なんだ。むしろこのドキドキがたまらない、癖になる。
とにかく攻撃を当てさせてやって、必中効果さんを満足させてやればいいんだ。そうしないと時間すら飛び越えてきそうだしな。理不尽だがそれが異能って奴だ。
「ん? ベティちゃんは何をやってるんだ?」
『せっかくだしバリアの開発を。ベクトルとタイミングと威力が正確に判明しているんですから、比較的容易に制御できる筈なんですよ』
銃身の中ではエネルギーをちゃんと制御できてるわけだしな。理屈の上ではできるんだろう。
「バリアで防いだ場合、必中さんは満足してくれるんだろうか?」
『観測結果はその可能性を否定しています。無理みたいですよ?』
大抵のゲームだと命中判定の後にバリア発動なのになあ。もしかして斬り払いをぶちかますまで命中は確定していない状態なのか? それだとバリアをすり抜けてしまう理屈だ。
なんでバリアをすり抜ける? 実体かそうでないかの違いか?
試しに前方にいくつか水球を浮かべておく。斬り払いからのタイムジャンプで復帰してみると、水球は無事だった。つまりエネルギー弾は障害物を無視してすり抜けてきている?
太陽の裏側に隠れてても当たるんだろうなあ。デタラメにも程がある。
「水のハリセンっ」
ハリセン形状に整えた海水でエネルギー弾を斬り払い、必中効果の無くなったエネルギー弾をタイムスキップでやり過ごす。
飽きてきたんで舐めプのような真似をしているが、実際には絶体絶命の綱渡り状態だ。ワンミスであの世行きなんだ。緊張せず振舞えている自分を褒めてあげたい。
それに、余裕を見せつけて敵に警戒されておく必要がある。雑魚だと舐められてゴリ押しされると、本当に詰むからな。
「シチューにカツを求めるとは、このことか」
『そろそろ食事にしますか?』
余裕だな、ベティちゃん。
千日手に陥った状況で、残りの二機がどう動くかが心配だったが、今のところ手を出さず大人しく観戦してくれている。
自分達を強者だと信じて疑わない余裕の表れか? それとも少しは歯ごたえのある獲物だと舌なめずりしている戦闘狂?
宇宙人に常識は通用しないから、あまり決めつけるのも良くないな。その辺もおいおい曇りなき眼で見定めてやる。
前回戦ったあいつはなんとかなるとして、もう一機の性能が気になる。ゴテゴテと増加装甲っぽいのを装備しているから、防御重視の近接タイプか? その割には武器は銃っぽい。
宇宙人の癖に、一目で銃だとわかるようなデザイン。月並みだなあ。
奇抜さで言えば、ビリーの失敗作の方が数段上だぞ。
のの字ライフルと命名しようとして、ベティちゃんに却下された奴だ。直径30メートル程の輪っかに、発射用の銃身がついている。ローマ数字の6とか、ネズミ花火にも見えなくはない。
原理はスリングみたいなものだ。粒子をぐるぐる回して加速していき、勢いよく発射する。威力はあるけれど、発射まで時間がかかるのと命中精度がイマイチなのが欠点だ。
必中の能力があれば、あんな欠陥品でも役に立つだろうにな。
そうか、そうだよな。ならばやってみるか。
6の字キャノンをインベントリから取り出し、その他のゴミと一緒にバリケード代わりに前面に配置していく。スペースデブリを増やして悪いな。これも正義のためなんだ。
案の定、敵のエネルギー弾は障害物をすり抜けてリンクスのみに当たってくる。それが必中。我が策成れり。
おかげで粒子を加速する時間はたっぷりとれた。
満を持して6の字キャノンを明後日の方向に発射する。果たして必中するかな? そもそも当たり判定のない相手だしなあ。
『敵機の撃破を確認。一体どうやって?』
「あれだけ何度も見せられれば出来て当然。これはなかなか便利な技だ」
あいつに出来ることぐらい俺にだって出来るさ。実際、わりと簡単に出来たさ。
粒子砲の発射された方へ、わざわざ敵機が突進して行ったよな。野球の守備でも見ているみたいだったぞ。
やっつけたってことは、丁度当たり判定が発生中だったんだろう。ご都合主義も極まれりって感じだが、それが必中。自分の技も防げん奴が未熟なのだよ。
さて、残り二機はどう出るか? ふむ、次鋒はアーマードタイプか。まだタイマン勝負を続けてくれるようだ。ラッキーと思っておこう。
重装甲だろうが圧倒的スピードは変わらんのな。アインシュタイン先生を馬鹿にするような超光速移動で飛び回っている。
必中の前ではどんなに速くても無意味なんだけどな。
あ、ビームガンぽいので撃たれた。一瞬で6の字キャノンが破壊される。先手必勝かよ、汚いぞ。
まあいいや、これって警戒されてるってことだよな? つまり奴を倒せる可能性がちゃんとあるってことだ。
正確な射撃だが、普通に回避できる。必中持ちではなさそうだ。銃の威力もさっきのより控え目……一撃でリンクスを破壊可能だけどな。
こいつも異能持ちだろうか? まあ当然そうなんだろうな。アハハ、なんだよ。ちょと楽しくなってきやがった。
フッと敵の姿を見失うが、攻撃が来るのはわかる。鬼回避ならいつものことだ。かなり厳しいがビームの雨をギリギリで掻い潜る。
今のは複数の敵からの攻撃だったな、少なくともあと三機が他にいるぞ。
卑怯なのがこいつの能力だとか言うオチじゃないだろうな? まさかな。
タイマンバトルで部下を使えば確かに卑怯だ。でも別にそんな約束はしていないんだった。勝手に俺が思い込んでいただけだしな。
次は五機で来たっぽい? ビームの網の中をパズルを解くように抜けていく。タイムスキップ? この状況じゃ下手に使うとむしろ詰む。
息もつかせぬ速攻の連続。この俺が追い詰められている。いいぞ、いい感じだ。こういうのわりと好き。
反撃の隙すら与えないつもりか? 予知ができなきゃすでに何度もやられていたなあ。
視界の隅に一瞬敵機の姿を捉えた。すでにモニタの映像なのか心眼に映った幻なのかすら区別がつかんが、確かに見たぞ。
奴は痩せていた。増加装甲がなくなっている? ふん、そういうことか。
これはあれだ。オールレンジ攻撃って奴だ。
装甲だと思っていたパーツは子機だったってことだな。
地球じゃ昔から良く知られている戦い方だよ。主にアニメだけどな。
そうか、一応タイマン縛りは守ってるのか?
俺の回避パターンに慣れてきたのか、どんどん攻めがシビアになってくるぞ。やるな。
すでにワクワクしている余裕はない。どうする?
オールレンジ攻撃にはオールレンジ攻撃? こっちだって似たような装備は持ってるが、ダメだな。
敵がちょっと強すぎる。慣れないことをするだけの余裕がない。もう少し弱ければ、いい練習相手になったものを。
シチューにカツを求めるだけじゃ駄目だ。エビフライもつけてくれ、いや、ぶっといソーセージの方がシチューには合うか。
「ソーセージに本物のジャガイモ、コトコト煮込めば美味しいシチューだ!」
気がつけば愚にもつかないことを叫んでいる。まあよくあることだ。
『なるほど。そういうことですか』
え? どういうことだ? 俺はただテンパって思い浮かんだことを口にしただけだぞ。多分、何か勘違いしてるよな。
いや、なるほど、そういうことか。戦闘中に不明瞭な会話とか、やるようになったなベティちゃん。おかげで攻略の糸口を見つけたかもしれない。
Xキャリヴァーを正眼に構える。
降り注ぐビームを斬り払う? そんなの無視だ無視。狙うは本体だ。
一気に両手剣を振り抜く。確かに手応えはあった。
背後を振り返ると、袈裟斬りになった敵機が流れていく。
「やったか……」
『やりましたね』
シチューにトンカツはやはり邪道だ。この歳になれば温野菜でほっこりしたくなる。定番のニンジン、ジャガイモ。マッシュルームやブロッコリーなんかもいい。
要するに、餅は餅屋ということだ。
必中は射撃でしか効果ないなんて誰が決めた? 物理法則無視で当たるんなら、剣だって間合いとか関係ないだろうよ。
『このタイミングで瞬間移動を使いこなすとは流石です』
あれ? 今の瞬間移動だったのか? いや、あれはそこまで便利に使えるようなものじゃなかった筈。
まあいい、何事も結果オーライだ。
さて、残りは一機。これで本当にタイマン勝負だ。
一度戦ったことのある因縁の相手だな。あいつ、特に異能とかなかったし、普通に考えて三機の中では一番弱いよな。
必中に目覚めた今の俺にとっては、油断さえしなければ特に問題はない筈だ。
俺はもうシチューにカツを求めたりはしない。
今度は残り物シチューで作ったクリームコロッケが食べたいな。特にカニクリームコロッケがな。
ベティちゃんに言ってみようか? 勘違いしてまた何かいいヒントをくれるかもしれないし。




