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限りなく人っぽい何かと銀と金  作者: 美羽
嘘に漂う雲の白
177/178

16*

Side:陽





「………もうこんな時間か」


ふと顔を上げて書面から窓の外へと視線を移す。

暗くなってから降りだした雨は、日付を越えた辺りから更に激しさを増していた。

さすがに根を詰めすぎたか。

それほど急ぎの内容でもないが、一度始めてしまうとどうにもキリのいいところまで止まらなくなってしまうのだ。

悪い癖だとよく言われるが、なかなか直らない。

それに今日は色々と――落ち着かない一日だったから、余計に今になって集中してしまったのだろう。

凝り固まった目許を揉みほぐしながら息をつく。

そこへ部屋の外から、来訪者を告げる声がかかった。

同時に勢いよく扉が開かれ、よく知る男が乱雑な動作で部屋に押し入り置かれた椅子に身体を預ける。

恐らく止めようとはしたのだろう、気遣わしげに使用人が開いた扉からこちらを窺っていた。


「構わなくていい。お前もそろそろ休んでくれ。俺はこれの相手をする」


「かしこまりました」


こういうとき我が家に仕える人間達は優秀だと思う。

後で何かしら労わねばと思いつつ、黙ったまま俯いている友人を見つめた。

雨の中ここまで傘もささずに来たのか身体は全身濡れ鼠で、今も各所から雫が床に垂れている。

明日の掃除の面倒を思うとやはり何かしらの労いが必要だろう。


「見るからに負け犬、といった体たらくだな」


ピクリ、と反応したのが見えた。

だが客観的には事実だ。


「それより、どうしてお前がこの時間に起きている?

魔王はもう廃業したのか、雲雀」


答えなど聞かずとも明白だったが、敢えて口にした。

ギリ、と聞こえる歯軋りに少しだけこちらの気分ものってきた。

友人であり――妹の元婚約者でもある男は、顔を上げないままくぐもった声でこちらの問いに答える。


「そうだ。あいつと会って別れたから、俺がこれ以上あの世界にいる意味はない」


「ふ………まさか俺も、お前が異世界に渡ってまで月に会いに行くとは思わなかった」


俺の揶揄めいた言葉に雲雀は黙り込む。


――あの日、俺が雲雀に向けた月からの手紙を読ませた日に感じた違和感の正体は、異世界からの力だった。

月と血が混ざったことで、最近はそういったものに敏感になっているらしい。

しかしだからと言ってそれだけで何が起こっているのかを理解できたわけもなく、その後雲雀から異世界と関わっていることを聞いた時にはこちらの神に食ってかかったものだ。

その時には雲雀が異世界に関わった原因が自分達だと思っていた。

俺と月が絆を結び直し、物の行き来が可能になるよう世界を繋げたために起こったことだと。

だが神によれば今回の件は雲雀自身の強い思いが起こしたことだという。

俺のいる世界と月のいる世界を繋げたことで薄くなった世界の境界線。

それを利用して月に会おうと、雲雀は異世界に渡ったのだ。

……勿論何の力も持たない雲雀が、意図してそれをしたわけではない。

ただ様々な物事がうまくつながり、そこに雲雀の強い思いが作用して彼は夢トリップと言う形で異世界へ渡る手段を手に入れた。

そしてそこで起きている戦争を基盤に、月と会うための策略を巡らせたのだ。


「起こっていた争いはどうにかなったのか?」


「俺が行ったときにはあいつが終わらせていた」


「きちんと渡せたんだろうな?」


「当然だ。どれだけの苦労をかけたと思ってる。

………あいつ、相変わらず不細工な面で喜んでたぞ」


「俺の妹を不細工呼ばわりとは、いい度胸だな?」


「不細工だろう。思い悩む顔も、泣き顔も、あいつに相応しくない」


「ほう?わかっていたことではあるが、俺の妹を泣かせたのはお前か雲雀」


雲雀からの返事はなかったが、それが答えを示している。

可愛い妹の心の揺らぎを感じたのは夕刻に近い頃だった。

それまで感じていた小さな、さざ波のような感情とは明らかに違うそれに、こちらまで心が締め付けられる気がした。

この男が悪いわけではないが……不愉快ではある。

不器用で馬鹿な目の前の男は、満足に慰めることもできなかったはずなのだから。


「それで?久しぶりに会った俺の妹はどうだった?」


「………どうもこうもない。相変わらずだ。あいつは何も変わってなかった。

相変わらず馬鹿で、不細工な顔をしていて、苛ついた。……………あんなやつ、大嫌いだ」


俺は遠慮することなく失笑した。






雲雀は酷く不器用な男だった。

それでいて嘘の多い、生粋のひねくれものだった。


雲雀は月を愛していた。好きだった。

小学部で出会ってからすぐに形作られた想いはすぐに強く雲雀という男の心に根を張り、雲雀の行動理由には常に月の存在が影のように隠れていた。


小学部にいた頃は、雲雀の気持ちはまだわかりやすかった。

自分にできるすべてで月から好まれようと、雲雀は何でもした。

月が花が綺麗だと語れば翌日には花束を差し出した。

月が本を読めばその隣に陣取り様々な本を周囲に積み上げた。

月が女の子に優しくするのが男のつとめだと母の口癖を漏らせば興味のない有象無象にも微笑みを返した。

それらの行為に、そしてそれに隠れた好意に、月も雲雀を一番の友達だと言って顔を綻ばせた。

けれどそれは段々と変わっていく。


中等部に上がり、俺と月は久遠の次期当主として、そしてそれを支える者としての立場を教えられた。

それによって月はこれまでの自分の在り方を変化させる。

俺の影として、久遠の闇を担うために。

当主となる俺は周囲から人望を集めるカリスマ性と、それに見合う――言ってしまえば綺麗事を語る、語れるだけのものがなければならない。

けれど綺麗事だけですべてがすむはずもなく、汚れ役がどうしても必要だった。

それを請け負ったのが月だ。

冷酷な一面を敢えて見せつけることで周囲からの妬みと反感を当主からそらす。

勿論月の周りにいる親しい人間はそんなものを向けることはなかったが、少なくともそれほど月を知らない人間からすれば俺達双子はまさに聖と邪、光と影を体現した組み合わせだった。

そんな月を見て、雲雀も変わっていった。

今までの自分の行動や態度では、いずれ月の近くにいるのが難しくなる。

それがわかったのだろう。

穏やかな物言いは少々粗野とも言えるそれに。

向ける笑みは皮肉に歪んだ。

悲しむ顔も苦しむ顔も見たくないと言う代わりに不細工と悪態をつき、可愛いと囁く代わりに馬鹿な女と嘯く。

それでも月なりに、無意識下でその意図がわかっていたのだろうか。雲雀が自分の逃げ道になってくれていると。

いつの間にか親しさはどんどんと深まり、二人は恋人同士になっていった。

だがそんな関係もまた高等部に上がった頃から変化が起こった。


俺がそれを知ったのは、月が帰ってくるなり悲しそうな、どこか戸惑った様子で相談をしてきた時だ。


―――雲雀にふられちゃった。何でだろう。私、何かしたのかな。―――


俺の目から見ても二人の関係は順調だった。

何よりあの雲雀が月を手離すなど、考えられなかった。

詳しく聞き出せばただ恋人関係ではなくなっただけで、婚約は仮の状態のまま凍結させると言う。

この先高校を卒業するまで、二人それぞれに心から想う相手が現れなければ婚約は続行するという馬鹿げた話に、俺は迷わず雲雀の家に向かった。

そもそもがこの婚約は雲雀が月と恋人関係になった当初に、俺と叔父に頭を下げて頼んできたものだ。

家同士の契約程の拘束力はないが、それでもこの話を知っている者は知っている。

月の気持ちを踏みにじったのは勿論、そういった契約の不履行に関しても雲雀の行いは十分非難されて然るべきものだった。

問い詰める俺に雲雀は語った。足りないのだと。

雲雀の月への恋心は、強く深く根を張っている。

けれど月の雲雀に対する感情は、恋情よりも家族愛と言えるようなものが多かった。

それが、その落差が苦しいのだと雲雀は語った。

雲雀は一度恋人という関係性をなくすことで、再び始めようとしたのだ。

月が自らのことを、自分がそうであるのと同じくらい強く深く想うように。

そのために心の悲鳴を無視して月を自らから引き離した。

その日から言えなくなった愛の言葉の代わりに、大嫌いという言葉が時折雲雀の口をついて出るようになった。




雲雀は酷く不器用な男だ。

それでいて嘘の多い、生粋のひねくれものだ。

励ましは悪態に、賛辞は罵倒に、愛の言葉は嫌悪のそれに変わってしまう。

大切な存在を自ら引き離してしまう。

全身を嘘で固めたようなその男の真実に気づいているのが俺だけなのだから、それが更に憐れだった。

勿論月とて雲雀の言葉のすべてを額面通りに受け取っているわけではない。

それどころかその殆んどが不器用な男の偽りだとわかっている。

ただ決定的に雲雀が最後についた嘘だけが、見抜かれることなく二人の間に漂っていた。


お前の事、それほど本気で好きというわけでもない。

お前もどうせそうだろ?

ならこれから先そういう相手ができても困るし、一度保留にしておくか。

まあそんな相手ができなかったらお前と結婚するのも悪くない。


月はその言葉を今も信じたままだ。

だからこそどれだけその他のすべての嘘を見抜いたとしても、雲雀にとってのただひとつの真実は隠されたまま。

まるで厚い雲におおわれたようで、それが晴れることはなかったのだ。




そこまで考えて、俺はもう一度失笑した。


「……お前がもしもあの時別れようと言わなければ、月は恐らく草薙誠司やシルヴァと結ばれることはなかっただろうに」


その言葉は雲雀の心にとどめを刺すようなものであると知っていて尚、俺は告げた。

月はそういう性格だ。

例え別世界にいようとも、恋人を勝手に切り捨てるような真似はしない。

そしてそれを雲雀もよくわかっていた。

ぽたぽたと雫が垂れる音と、雨が窓を叩く音だけがシンとした室内に響く。


「………ただまあ、こちらの神曰くあの二人は月の運命の相手らしいからな。

例えお前達が別れていなくとも、結果的には奪われていただろうが」


「ふざけるなよ……そんなことさせるわけがないだろ。

何が運命だ、そんなものに左右される程俺は落ちぶれちゃいない」


「確かに運命の相手と言っても、関係性は一概に恋人とは言えない。

生涯の友人や命の恩人、そういったものも運命の相手に含まれると神からも聞いている」


「そうだ。世界さえ、違わなければ……俺が、あの時………ちくしょう、」


髪をぐしゃりと掻き乱す。

パタパタとまた雫が床に落ちた。


「くそっ、なんで、なんであいつなんだ。

よりにもよって、何であいつなんだよ……」


「いい加減拭け。風邪を引くぞ」


タオルを取り出し頭に被せても、雲雀は意地でも顔をあげなかった。

雫はやまない。流れ続ける。


「ちくしょう………なんで、俺は…」


あいつを。あいつに。


途切れ途切れに届く声は掠れて滲んでいた。

雨は依然として激しさを保ったまま降り続いている。

この男の胸のなかに渦巻く激情がそうさせているのか。

それとも、神からの同情だろうか。

すべてを雨の雫だと誤魔化せるようにとこれを降らせたのなら、それは雲雀という男にとって何よりの皮肉だった。

















それから大分経って、雲雀はようやく顔を上げた。


「気が済んだのか?」


付き合わされたこちらとしてはいい迷惑だったが。

目を赤く染めた雲雀はこちらを見ずに、おそらく月を思い出しているのだろう、ぼんやりと虚空を見つめている。


「最初から俺があいつの隣にいられる可能性はなかった。

俺は身体ごと異世界にいけるような機会が与えられなかったから」


「当然だ。お前程度が望めるはずもない」


余程の不幸を背負ったものか、余程の幸福を受けたものか。

いずれにせよ世界を管理する神々が目を留めるほどの魂を有しているものでなければ。


「俺はそれをわかっていて、それでもあの世界に行った。

あいつに会って確かめたかった。あいつの中に俺が今もいるのかどうか」


「………あの手紙を読んで、よくそんなことを考えたものだな」


あの手紙には別れを告げる言葉だけではなく月の今の恋人――シルヴァと草薙誠司のことが書かれていた。

綴られた言葉の端々に彼等への感情が感じられる文章を、この男も確かに目にしていただろうに。

半ば感心した俺を雲雀は睨みつけてくる。


「あいつは俺を忘れたことはなかったと言った。

それに………後にも先にもあいつを不細工と言って馬鹿にするのは俺だけだ。

指輪も渡した。他のやつには俺の場所を触らせるなとも言った。

これであいつの中から俺はずっと消えない。だからこれでいい」


結局一度も使っていないタオルを乱雑に掴んでこちらに寄越す態度に感謝は見られない。

そもそも月は酷い勘違いをしていた。

この男は俺のことを心底嫌っている。

雲雀にとっての俺の存在価値は月に顔立ちが似ている、俺がいると月が喜ぶというただ二点のみだ。

雲雀が俺を友人としているのは偏に、兄を嫌う人間を嫌う月にそれがバレないようにするためである。


「最悪な気分だ。月からお前に今回の事を伝えてくれと言われていなければ、お前の顔も見たくなかったっていうのに」


「奇遇だな、俺もだ。どこぞの泣き虫な天の邪鬼が夜中に不法侵入してくるものだから寝不足なんだよ」


「いい気味だな」


俺がタオルを受け取ったのを確認すると、そのまま雲雀は出ていこうとする。

だがそうさせるつもりはない。


「待て。邪魔したんだ、手伝っていけ」


「………はぁ?誰がするか。

いい機会だから言っとくが、これまでお前にこき使われてやったのはお前が月の兄弟で、俺がお前に何かした分のリターンがあったからだ」


「そんな今更当然のことを言われなくともわかる」


「ならこの先もわかれよ。もうお前に従う義務はない。

月がいなくなってから今まで何か手がかりが見つかればすぐわかるようにと付かず離れずの距離を保っていたが、それも今日で最後だ。

大体お前の顔は月から離れすぎた。年を食い過ぎてるし目の色も違う。お前はもう無価値だ」


俺は雲雀の言葉を鼻で笑った。

俺達は互いを利用してきた。

雲雀は月に好かれるため俺の存在を利用したし、俺は俺を利用しようとする雲雀をいい手駒のひとつとして利用した。

そして俺は今更使い勝手のいい手駒を手離す気は更々ない。


「ククッ、本当にお前は馬鹿だな。

いいのか?俺との繋がりをなくせばもう月から手紙が来たとしてもそれは手に入らないぞ」


月のことだ、恐らくこれを機に雲雀に向けて手紙を書くだろう。

だが雲雀が俺に従わなくなるなら、月には悪いがそれは届けることはできない。

適当に理由をつけて処分するつもりだ。

俺に言われるまで気づきもしなかったのだろう、雲雀はピタリと立ち止まってその場から動かない。

新たに婚約を結んでも、この男は結局月だけを愛しているのだ。

俺の言葉を無視できるはずがなかった。それに。


「そもそもお前の目は飾りか?

俺の目が何色かも分からないのか」


雲雀は素早く身を翻しこちらに迫った。

不愉快なほど接近した茶色の瞳が忙しなく左右に動き、そしてぴたりと止まる。


これは恐らく、月も知らないことだ。

俺と月が会ったのは、言ってしまえば精神体での話。

恐らく精神体になって神の空間にいる間は、その人間の本質――魂とも言うべきものが姿に反映される。

だからあの空間にいる間は、俺も月も瞳の色は漆黒(・・)だ。

だが現実の、生身の肉体である今は。


「………紫」


「正確には紫がかった黒という程度だがな。

だがこんなものでも俺は月との繋がりを感じ取れるし、それはお前もそうだろう?」


俺が召喚されたあの時に混ざりあった血は俺の瞳の色まで変えた。

恐らくこれを言えば月は色々と心配してしまうだろうから、秘密にするつもりでいる。

今のところ身体に起きている変化はこの瞳の色と月の心を感じ取れる程度だし、俺からしたら何の問題もない、いっそ願ったりとも言える変化なのだから。


「……………くそっ、死ねシスコン!」


そしてそれは雲雀にとっても同じこと。

月との共通点があるというその一点だけで、雲雀は俺の言葉を拒めない。

否定をせずに悪態だけついたのがその証拠だ。


「シスコンは誉め言葉だ」


愉快な気分だ。

目の前の男が義弟になれなかったのは少々残念だが、月が幸せならそれだけでいい。

さて折角だ、次の手紙には不器用で馬鹿な嘘つき男の話でも書こうか。






その後



「はぁ……最低な気分だ。お前が月の兄でさえなければ殺している」

「それはこっちこそだな。……おい、何を見ている?」

「メール」

「それはプライベート用だろう?今時仕事以外のやりとりでメールか?」

「異世界相手にラインは難しいらしくてな。神にも週に一度のメールが限界だそうだ」

「……おい、相手は誰だ」

「……………異世界の魔王」

「嘘を吐け。確かに親しくはなっただろうが、月以外の相手にそうニヤつくはずがないだろう。見せろ」

「おいテメェ返せ!」

「………おい。この画像はどうした?しかも盗撮だな?目線が合っていない」

「ただの異世界での思い出だ」

「そんな可愛らしい言葉で騙されるとでも?しかもなんだ、この露出の高い服は。着させたのはお前だな?」

「魔王妃なんだ、このくらい普通だろう。さっさと返せ」

「俺が画像を全て見てからだ。……一体何枚撮った」

「たかだか五十かその程度だろ。最終日しかこっちから電子機器は持っていけなかったんだ。ヒヴィルースと今後も連絡をとろうと思ってあっちの神を脅したが、こんな使い方もあると気付けた自分を褒めてやりたい」

「後で俺のパソコンにデータを送れ。颯花にも見せてやりたい」

「あの人か………まああの人は月の姉だしな、仕方ない」

「お前の新しい婚約者殿にも見せてやったらどうだ?」

「は?冗談だろ」

「と言うか今何をしているんだ?今回の事は言ってあるんだろう?」

「月に会ったその日のうちにバレた。今は家で格闘中だ。新しいゲームを作ることにしたんだと」

「ゲーム?」

「今の異世界への関わり方は夢トリップ、異世界転生、勇者召喚、後はログインしていたゲームの世界に入る、くらいしか思いつかないらしいからな。後々お前のところにも来るはずだ。俺も月のそばにいた男二人の言いたくもない特徴やらなにやらを延々語らされた。キャラクターデザインに必要なんだとか」

「………月に伝えておくべきか」

「言わなくていい。成功するかどうかもわからないし、どうせなら驚かせた方がいいだろう」

「お前達はまったく……」

「それよりいつまで持っているつもりだ。早く返せ」

「もう少しだ」



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