↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
80/82

第80話 未調査区域

 翌朝。


 シオンたちは冒険者ギルドから発行された依頼書を持って、新鉱脈の管理事務所を訪れた。


「未調査区域の調査ですね。話は聞いています」


 受付の男は依頼書を確認すると、三人へ返した。


「昨日発見された横穴への立ち入りを許可します。魔物については必要に応じて討伐してください。それと、未知の鉱石についても調査をお願いします」


「採掘してもいいんですよね?」


 ロッテが確認する。


「ああ。昨日は採掘禁止区域だったから手を付けなかったそうだな」


「はい」


「助かった。何の鉱石か分からない以上、まず状態を確認したい。今回は調査に必要な範囲で採掘して構わない」


「どれくらい採ってきたらいいですか?」


「一か所だけじゃなく、できれば何か所かから採ってくれ。周囲の岩も一緒にな。鉱脈がどの程度広がっているのか分かるようなら、それも確認してほしい」


「分かりました!」


「持ち帰れる量で構わないぞ」


「それなら大丈夫です」


 ロッテがシオンを見る。


 受付の男もつられてシオンを見る。


「何かあるのか?」


「シオンさんが全部持てますから」


「全部?」


「《ストレージ》があるので」


「ああ、昨日ギルドから連絡に書いてあった妙な収納スキルか」


「妙って……」


「いや、便利すぎるだろ。荷車も人手も必要ないんだからな」


 確かに鉱山側からすれば便利だろう。


「ただし、好きなだけ掘っていいという意味じゃないぞ。今回はあくまで調査だ」


「分かってます」


「なら頼む」


 三人は管理事務所を出ると、新鉱脈へ向かった。


 昨日通った坑道を進み、魔物が出現する区域へ入る。


 途中で数体のロックハウンドと遭遇したが、足を止めるほどではなかった。


 シオンの《サンダーボルト》が一体を撃ち抜き、リュナが二体目を斬り倒す。


 残った一体がロッテへ飛びかかった。


「遅いです!」


 ロッテが盾で受け止め、そのまま《シールドバッシュ》で岩壁へ叩きつける。


 倒れたロックハウンドをシオンが《ストレージ》へ収納した。


「昨日より少ないね」


「この辺はかなり倒したからな」


「奥は分かりませんけどね」


 三人はさらに進む。


 昨日確認した道なので迷うこともない。


 やがて自然洞窟へ入り、しばらく進むと目的の場所が見えてきた。


「あそこです」


 ロッテが指差す。


 岩壁に開いた大きな横穴。


 その入口にはギルドの調査印がない。


 昨日はここで引き返したが、今日は正式な許可を得ている。


「まず鉱石ですね」


 ロッテは横穴の入口近くへ向かった。


「これです」


 岩壁の一部に、青みを帯びた鉱石が露出している。


 昨日見たものと同じだ。


 ロッテが手を触れ、《金属鑑定》を使う。


【名称不明】

【高濃度の魔力を含む鉱石】

【詳細不明】


「やっぱり変わりませんね」


「昨日と同じか」


「はい。これだけじゃ何なのか分かりません」


 ロッテは持ってきた採掘道具を取り出した。


 露出している鉱石だけを削るのではなく、周囲の岩ごと慎重に切り出していく。


 何度か槌を振るうと、拳より大きな岩塊が外れた。


 青みを帯びた鉱石が岩の中に走っている。


「これくらいなら調べられるかな?」


「もう少し採っておきたいです。場所によって違うかもしれませんから」


「じゃあ俺が持つ」


「お願いします」


 シオンは採掘された岩塊を《ストレージ》へ入れた。


 ロッテは少し離れた場所からも採取する。


 二つ、三つと岩塊を確保したところで手を止めた。


「入口だけならこれくらいでいいと思います」


「奥にもあったら?」


「場所を記録して、少しずつ採りましょう」


「分かった」


 三人は横穴の奥へ入った。


 中はアイアンモールが掘ったと思われる跡がいたるところに残っている。


 壁も天井も不規則で、自然にできた洞窟とは明らかに違った。


「結構広いな」


「アイアンモールなら、このくらい掘れそうですね」


 ロッテが壁の傷を確認する。


 リュナは周囲へ意識を向けていた。


「前にいるよ」


「何体?」


「四……いや、五かな」


「行こう」


 三人が進むと、前方から岩を削る音が聞こえてきた。


 やがて五体のアイアンモールが姿を現す。


 こちらに気づいた一体が突進してきた。


「《ウィークネス》」


 シオンの魔法がアイアンモールを包む。


 硬い甲殻の防御力が落ちたところへ、リュナが踏み込んだ。


 一閃。


 《蒼銀華》が甲殻の隙間を斬り裂く。


 別の一体へロッテが向かう。


「《震撃》!」


 戦鎚が甲殻を叩く。


 硬い外殻を通して衝撃が内部へ伝わり、アイアンモールの動きが止まった。


「《ライトニング》!」


 青白い雷撃が残る三体をまとめて襲う。


 狭い横穴に雷鳴が響いた。


 倒れた魔物を確認し、シオンが《ストレージ》へ収納していく。


「やっぱりいるな」


「昨日より奥ですからね」


 ロッテは一体がいた場所へ近づいた。


「シオンさん、これ見てください」


「ん?」


 地面に小さな石の欠片が落ちている。


 ただの岩ではない。


 青みを帯びていた。


「さっきの鉱石?」


「たぶん」


 ロッテが拾い上げ、《金属鑑定》を使う。


【名称不明】

【高濃度の魔力を含む鉱石】

【詳細不明】


「同じです」


「ここにも鉱脈があるのか?」


「それなら壁に……」


 ロッテが周囲を調べる。


 だが、近くの壁には同じ鉱石が見当たらない。


「ないですね」


「じゃあ、あいつらが持ってきた?」


 リュナが倒されたアイアンモールを見る。


「その可能性はありそうです」


 ロッテは鉱石の欠片を持ち上げた。


「アイアンモールは鉱石を食べますから」


「どこかで食って、ここまで来たとか?」


「それもありますけど……」


 ロッテが地面を見る。


 そこにはアイアンモールが何度も通ったと思われる跡が残っている。


 さらに奥へ向かっていた。


「行ってみましょう」


 三人は進行方向を記録しながら奥へ進んだ。


 横穴は一本ではなかった。


 途中で細い穴がいくつも枝分かれしている。


「これ、全部調べるの大変そうだな」


「地図を作りながら進んだ方がいいですね」


 ロッテが簡単に道を書き留める。


「右は?」


 シオンが尋ねる。


 リュナが少し耳を動かした。


「何も感じない。左はいる」


「じゃあ左から確認するか」


「うん」


 左の穴へ入る。


 しばらくすると、再びアイアンモールが現れた。


 今度は八体。


 だが数が増えたところで、三人にとって大きな違いはない。


「《ソードジャッジメント》!」


 頭上に光の剣が現れ、アイアンモールへ降り注ぐ。


 硬い甲殻を貫かれ、数体がその場で倒れた。


 攻撃を逃れた個体へリュナが駆ける。


 《蒼銀華》が閃き、次々と仕留めていく。


 最後の一体はロッテへ突進した。


「《不動》!」


 盾を構えたロッテが正面から受け止める。


 激しい音が響く。


 しかし、ロッテはほとんど動かない。


「《シールドバッシュ》!」


 逆にアイアンモールが弾き飛ばされる。


 そこへ戦鎚が振り下ろされた。


「終わりです!」


 すべて倒したところで、リュナが奥を見る。


「まだいるよ」


「近い?」


「さっきより遠い。でも……多い」


「どれくらい?」


「分からない。重なってる」


 シオンとロッテが顔を見合わせた。


「やっぱり奥に集まってるのか」


「そうみたいですね」


 倒したアイアンモールを収納し、さらに進む。


 途中の壁に、再び青みを帯びた鉱石が見つかった。


「あった!」


 ロッテが駆け寄る。


 入口で見つけたものより露出している範囲が広い。


「ここからも採ります」


 ロッテが周囲の岩ごと切り出す。


 一つ目。


 二つ目。


 さらに少し場所を変えて三つ目。


 すべてシオンが《ストレージ》へ収納した。


「まだ続いてるみたいです」


 ロッテが壁を確認する。


「奥まで?」


「分かりません。でも表面に出てる部分だけじゃないですね」


「じゃあ鉱脈ってこと?」


 リュナが尋ねる。


「その可能性は高いと思います」


 ロッテは場所を地図へ記録した。


「もっと奥にもあるかもしれません」


 三人は調査を続ける。


 進むにつれ、アイアンモールが残した痕跡は増えていった。


 壁の掘削跡。


 地面に残る無数の足跡。


 食い散らかされた鉱石の欠片。


「ずいぶん食べてるな」


 シオンが足元を見る。


「鉱石が目的なら、ここに集まってる理由も分かりますね」


「でも、それだけかな?」


 リュナが立ち止まった。


「どうした?」


「静かに」


 三人が足を止める。


 リュナが目を閉じ、《気配察知》へ集中した。


「……いる」


「またアイアンモール?」


「たぶん。でも今までとは数が違う」


「どのくらい?」


「数えられない」


 リュナが奥を指差す。


「あっちにたくさんいる」


 シオンも前を見る。


 通路はまだ続いている。


 その先から、微かに岩を削る音が聞こえていた。


 一つではない。


 いくつもの音が重なっている。


「行ってみるか?」


「調査依頼ですからね」


「危なかったら戻ればいいしね」


 三人は警戒しながら先へ進んだ。


 やがて通路の先が大きく開けてくる。


「広い場所に出るみたいだな」


「待って」


 リュナが再び足を止めた。


「どうした?」


「さっき感じてた気配、この先に集まってる」


「何体くらい?」


「だから数えられないって。それに……」


 リュナが眉を寄せる。


「一つだけ、変なのがいる」


「変?」


「うん。ほかの気配より、ずっと大きい」


 シオンはロッドを握り直した。


 ロッテも盾を構える。


 通路の先から、硬いものが岩を削る音が響いてきた。


 シオンは二人を見る。


「確認だけしてみよう」


「はい」


「うん」


 三人は足音を抑えながら、広い空間へ続く通路を進んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。