第79話 上級鍛冶師
「少し待っていてください。鉱山側にも確認を取ります」
そう言ったエマは受付を離れ、奥の部屋へ入っていった。
シオンたちは邪魔にならないよう、受付から少し離れた場所で待つ。
「調査することになりそうだな」
「たぶんね」
リュナが答えると、ロッテも頷いた。
「知らない鉱石も気になります」
「採ってこなくてよかったのか?」
「勝手に採ったら駄目って言われましたからね。それに、場所はちゃんと覚えてます」
横穴の入口近くに露出していたため、もう一度行けばすぐに見つけられるだろう。
しばらくすると、エマが戻ってきた。
「お待たせしました。鉱山の管理事務所へ連絡を出しました。返事が来るまで少しかかりますので、その前に今日の依頼を処理してしまいましょう」
「ああ」
「討伐した魔物は全部持ち帰ったんですよね?」
「持ってきた」
「では解体場へお願いします。種類と数を確認します」
三人はエマについてギルドの裏手へ向かった。
大きな扉を抜けると、石床の広い解体場に出る。
何人もの職員が魔物の解体作業をしており、壁際には素材を運ぶための台車や木箱が並んでいた。
エマが職員の一人に声をかける。
「新鉱脈の討伐依頼です。ロックハウンドとアイアンモールを持ち帰っています」
「分かった。どこだ?」
「今から出してもらいます」
職員がシオンたちを見る。
「荷車は外か?」
「いや、持ってる」
「持ってる?」
職員が三人の周囲を見回した。
大きな荷物を持っている者はいない。
エマも不思議そうにシオンを見る。
「どこにあるんです?」
「《ストレージ》」
「はい?」
「ここに出していい?」
シオンが解体場の空いている場所を指差す。
「え? あ、はい。そこなら大丈夫ですが……」
エマが答えた直後、シオンは《ストレージ》からロックハウンドを取り出した。
どさり、と石床に魔物の死体が現れる。
「……え?」
続けて二体目、三体目と取り出していく。
「ちょ、ちょっと待ってください!」
エマが慌てて声を上げた。
「どうした?」
「どうしたじゃありません! どこから出したんですか!?」
「《ストレージ》から」
「《ストレージ》って何ですか!?」
「物を入れておけるスキル」
「そんなスキル、聞いたことありませんよ!」
「ああ。珍しいらしい」
「珍しいで済ませるんですか!?」
リュナが横で笑う。
「私も最初に見た時は驚いたよ」
「そうなんですか?」
「うん。でも慣れるよ」
「これに慣れるんですか……?」
エマは信じられないような顔をしている。
シオンは途中で止めたままのロックハウンドを見た。
「続けていい?」
「……お願いします」
ロックハウンドを出し終えると、今度は少し離れた場所へアイアンモールを並べていく。
硬い甲殻を持つ魔物が次々と現れた。
「まだあるんですか?」
「ある」
「……どうぞ」
すべて出し終える頃には、解体場のかなりの面積が魔物で埋まっていた。
エマは並べられた魔物を見回す。
「これを今日一日で?」
「ああ」
「かなり倒しましたね」
「奥に進むほどアイアンモールが増えてた」
「それは気になります」
エマはすぐに仕事の顔へ戻り、職員と一緒に種類と数を確認していった。
どれも依頼の討伐対象であることに間違いはない。
「確認できました。これなら討伐証明は問題ありません。解体はこちらで行います。素材の査定が終わってから報酬と一緒に精算しますね」
「ああ」
エマは記録用紙に討伐数を書き込んでいく。
そして一度だけ、シオンを見る。
「それにしても《ストレージ》ですか。ものすごく便利ですね」
「便利だぞ」
「それは見れば分かります」
エマは記録用紙を閉じた。
「では、横穴について詳しく聞かせてください」
三人は解体場を出て、ギルド内の小さな打ち合わせ室へ移動した。
机の上には新鉱脈地下洞窟の簡単な地図が広げられる。
「横穴を見つけたのはどの辺りです?」
「ここから入って……」
シオンが覚えている道順を説明し、リュナとロッテが補足する。
エマは話を聞きながら地図へ印をつけていった。
「この辺りですね」
「たぶん」
「ギルドの調査印はありませんでしたか?」
「なかった」
「中にも見える範囲にはなかったよ」
「分かりました」
エマは横穴の位置に丸をつける。
「アイアンモールが掘ったと思った理由は?」
「壁に前脚で削ったような跡がありました」
ロッテが答えた。
「アイアンモールの前脚と同じくらいの幅でした。それに、何度も出入りしたような跡もありました」
「奥には気配もあったよ。かなり離れてたけど、複数いたと思う」
リュナも続ける。
「最近アイアンモールが増えていることと関係している可能性はありますね」
「俺たちもそう思った」
「そして、その入口に未知の鉱石があったと」
「はい」
ロッテが頷く。
「《金属鑑定》を使いました。でも、分かったのは高濃度の魔力を含んでいることだけでした」
「見た目は?」
「少し青みがあります。岩盤の中に露出していました」
「量は分かりますか?」
「見えていたのは一部だけです。奥まで続いているかは分かりません」
エマは横穴の印の横へ、さらに書き込みを加える。
「アイアンモールは鉱石を食べる魔物です。もしその横穴をアイアンモール自身が掘ったのなら、何らかの鉱石を求めて掘り進んだ可能性はあります」
「やっぱりそう考えるよな」
「ええ。ただし、今の段階では推測です」
エマは地図を見ながら続ける。
「未調査区域ですから、何がいるか分かりません。洞窟そのものがどこまで続いているのかも不明です」
「だから勝手に入らなくてよかったってことだな」
「はい。正しい判断です」
その時、扉が叩かれた。
「どうぞ」
職員が入ってきて、一枚の紙をエマへ渡した。
エマは内容を確認する。
「鉱山側から返事が来ました」
「早いな」
「新しい横穴だけでも確認が必要ですが、未知の鉱石まで見つかったとなれば向こうも気になりますからね」
エマは紙を机へ置いた。
「横穴について、正式に調査することになりました」
「じゃあ俺たちが入ってもいいのか?」
「はい。発見者である皆さんに、そのまま調査をお願いしたいそうです」
「やります!」
真っ先に答えたのはロッテだった。
エマが笑う。
「まだ依頼内容を全部説明していませんよ」
「あっ……すみません」
「内容は三つです。横穴内部の安全確認、出現する魔物の調査と必要に応じた討伐。それから、未知の鉱石のサンプル採取です」
「鉱石、採っていいんですか?」
「今回は鉱山側からの正式な依頼ですから。ただし、調査に必要な量だけですよ」
「分かってます!」
「できれば鉱石だけを削り取るのではなく、周囲の岩ごと少量採取してください。どんな岩盤に含まれているかも確認したいそうです」
「それならできます」
「採掘道具は必要ですか?」
「持ってます」
「準備がいいですね」
「鍛冶師ですから!」
ロッテが胸を張った。
「鍛冶師?」
「はい」
「ロッテさん、鍛冶もするんですか?」
「しますよ。今使ってる装備も自分で作りました」
エマの視線がロッテの全身へ向いた。
「その鎧を?」
「はい」
「盾も?」
「はい」
「戦鎚も?」
「全部です」
「素材は何です?」
「ミスリルです」
「……全部?」
「はい」
エマがロッテの装備をもう一度見る。
「それなら、採取した鉱石を確認する時に鍛冶ギルドにも立ち会ってもらった方がよさそうですね」
「鍛冶ギルド?」
ロッテが反応した。
「バルゼンにあるんですか?」
「もちろんありますよ。ここは鉱山都市ですから。鉱石を扱う職人も多いですし、鍛冶ギルドも大きいですよ」
「私、行ったことないです」
「鍛冶ギルドに所属していないんですか?」
「はい」
「ミスリルを加工できるのに?」
「冒険者なので」
「それは別に両立できますよ。冒険者をしながら鍛冶ギルドに所属している人もいます」
ロッテの目が輝く。
「どこにあります?」
「行くんですか?」
「行きます!」
迷いのない返事だった。
「この時間ならまだ開いていると思いますよ。ここを出て大通りを東へ進んでください。槌と金床の大きな看板がありますから、すぐに分かります」
「ありがとうございます!」
エマは新しい依頼書を取り出す。
「まずはこちらを。未調査区域への立ち入り許可も兼ねています。明日は新鉱脈の管理事務所でこれを見せてください」
「分かった」
シオンが受け取る。
「危険だと判断した場合は無理に奥まで進まず、一度戻って報告してください。特にアイアンモールが増えている原因が横穴の奥にある可能性もあります」
「ああ」
「では、新鉱脈地下洞窟・未調査区域の調査をお願いします」
正式な依頼を受けた三人は打ち合わせ室を出た。
受付まで戻ったところで、ロッテがシオンとリュナを見る。
「行きましょう!」
「鍛冶ギルド?」
「もちろんです!」
「やっぱり今日行くんだ」
「まだ開いてるんですよ? 明日まで待つ必要ないじゃないですか!」
「まあ、そうだな」
三人はそのまま冒険者ギルドを出た。
エマに教えてもらった通り、大通りを東へ進む。
この辺りは武器屋や防具屋だけでなく、鉱石や金属素材を扱う店も多い。
やがて、大きな槌と金床を組み合わせた看板が見えてきた。
「あそこですね!」
ロッテが足を速める。
建物へ近づくにつれ、奥から金属を叩く音が聞こえてきた。
中へ入ると、冒険者ギルドとはまるで雰囲気が違った。
壁には剣や槍、斧、盾などが並び、奥には工房へ続いているらしい大きな扉がある。
受付には体格のいい男が座っていた。
「いらっしゃい。依頼か? 素材の持ち込みか?」
「見学……ですかね?」
ロッテが答える。
「見学?」
「私も鍛冶をするので、鍛冶ギルドがあるって聞いて来ました」
「鍛冶師なのか?」
「はい」
男の視線がロッテの装備へ向いた。
「その鎧は?」
「私が作りました」
「……自分で?」
「はい」
男が椅子から立ち上がる。
「ちょっと見せてもらっていいか?」
「どうぞ」
ロッテが腕を広げる。
男は鎧へ近づき、表面や接合部を確認していった。
やがて、その表情が変わる。
「これ、ミスリルだな」
「はい」
「盾もか?」
「はい」
「その戦鎚も?」
「そうです」
男はしばらく黙っていた。
「お前、どこの鍛冶ギルド所属だ?」
「所属してません」
「……は?」
「鍛冶ギルドに来たの、今日が初めてです」
「待て待て。ミスリルを加工できるのに、鍛冶ギルドに入ってないのか?」
「冒険者なので」
「冒険者?」
「Bランクです」
ロッテが冒険者カードを見せる。
男はカードとミスリル装備を交互に見た。
「……ずいぶん変わった経歴だな」
「そうですか?」
「普通、Bランク冒険者が自分のミスリル装備を一式作ったりしない」
「作れるので作りました」
「そうか……」
男はそれ以上考えるのをやめたようだった。
「それで、鍛冶ギルドに登録したいのか?」
「入った方がいいんですか?」
「鍛冶を続けるならな。工房の利用や職人向けの仕事、素材の売買にも関われる。一般には出回りにくい素材をギルド内で扱うこともある」
「希少な鉱石もですか?」
「もちろんだ」
「入ります!」
「即答だな」
リュナが笑う。
「ロッテらしいね」
男は登録用の書類を取り出した。
「鍛冶ギルドには職人としての等級がある。見習い、鍛冶師、上級鍛冶師だ。さらに上には鍛冶匠があるが、そこまで行く職人は少ない」
「じゃあ、私は見習いですか?」
「普通ならな」
男はロッテの鎧を指差した。
「だが、ミスリルの全身鎧を自分で作れる奴を見習いにしたら、こっちが笑われる」
「じゃあ鍛冶師?」
「実力を確認してから決める。今着ている装備以外に、お前が作った物はあるか?」
「ありますよ」
ロッテはシオンとリュナを見る。
「二人の装備も私が作ったり、加工したりしてます」
「何?」
男の視線が二人へ移った。
ロッテはまずリュナを見る。
「リュナさん。《蒼銀華》を見せてもらっていいですか?」
「うん」
リュナが腰から《蒼銀華》を抜き、受付の男へ差し出した。
「これです」
男は受け取った瞬間、眉を寄せた。
「……何だ、この剣は」
「刀です」
「刀?」
「片刃の武器です」
男は《蒼銀華》を横から眺める。
「これもミスリルか?」
「はい」
「お前が作った?」
「私が作りました」
男の目つきが変わった。
ロッテの戦鎚とはまったく違う。
細身で、わずかに反った片刃の刀身。
男は刃の状態を確認し、柄との接合部分までじっくりと見ていく。
「見たことのない形だな」
「リュナさんに合わせて作りました」
「使い手に?」
「はい。リュナさんは速さを生かして戦うので、重い武器よりこっちの方が合うと思ったんです」
男がリュナを見る。
「実戦で使ってるのか?」
「ずっとこれを使ってるよ」
「かなり使い込んでるな。不具合は?」
「ないよ。すごく使いやすい」
男はもう一度《蒼銀華》を見る。
「この細さで強度を保ってるのか……」
そこへ奥から一人の年配の職人が歩いてきた。
「何を騒いでる?」
「ちょうどいい。これを見てくれ」
受付の男が《蒼銀華》を渡す。
年配の職人も最初は怪訝そうな顔をした。
「何だ、これは?」
「刀というらしい。そこの嬢ちゃんが作った」
「これを?」
職人の視線がロッテへ向く。
「はい」
「ミスリルだな」
「はい」
年配の職人は《蒼銀華》をじっくりと調べ始めた。
刃先を確認し、刀身を横から眺め、重心まで確かめる。
「細いが、ただ薄くしたわけじゃないな」
「はい。斬るための形にしてます」
「これだけ細く仕上げて、実戦に耐える強度も残したか」
年配の職人がリュナを見る。
「嬢ちゃん、少し構えてみてくれ」
「いいけど」
《蒼銀華》を返してもらったリュナが、周囲に人がいないことを確認して軽く構える。
余計な力の入っていない自然な姿勢だった。
数歩だけ動き、軽く刀を振る。
年配の職人はその動きを見て頷いた。
「なるほど。使い手に合わせたって意味が分かった」
リュナが《蒼銀華》を鞘へ戻す。
「これ、私にはすごく合ってるよ」
「そうだろうな」
職人はロッテを見る。
「自分が使う武器とはまったく違う物を作れるんだな」
「使う人に合わないと意味ないですから」
「その通りだ」
年配の職人が満足そうに頷いた。
「他にもあるんだったな?」
「はい。リュナさんの防具も私が作りました」
今度は軽装を確認してもらう。
ロッテ自身の重装備とは違い、リュナの動きを邪魔しないことを優先したミスリル製の軽装だ。
「同じミスリルでも、ずいぶん作りが違うな」
「リュナさんに私みたいな鎧を着せたら、戦い方が変わっちゃいますから」
「当然だが、それを実際に形にできる職人は限られる」
確認を終えると、次はシオンへ視線が向いた。
「兄ちゃんの装備もか?」
「ああ。防具はロッテに作ってもらった」
シオンの防具もミスリルを使った軽装だ。
魔法を使いながら動き回るシオンの戦い方に合わせ、動きを妨げない作りになっている。
年配の職人が各部を確認する。
「これも実戦でかなり使ってるな」
「ずっとこれで戦ってる」
「動きにくいところは?」
「特にない」
「こっちも使い手に合わせてあるか」
「はい」
ロッテが答える。
「シオンさんは魔法を使いながら動き回るので、重くしないようにしました」
「それで、ロッドも加工したのか?」
「ああ」
シオンは《ネクロロード・ミスリルロッド》を差し出した。
「これは最初から全部作ったわけじゃないけどな」
「元になったロッドをミスリルで強化しました」
ロッテが説明する。
年配の職人はロッドを受け取り、加工部分を確認した。
「完成品への追加加工か」
「はい。元の性能を損なわないように加工してます」
「魔法武器への加工は普通の武器より気を使うぞ」
「そうですね。だから少し大変でした」
「少し、か」
年配の職人が苦笑する。
ロッドをシオンへ返すと、今度はロッテ自身の装備を改めて確認した。
ミスリル製の全身鎧。
大型の盾。
片手で扱う戦鎚。
リュナやシオンの装備とは正反対に、防御力と頑丈さを重視した作りになっている。
「これで前に立つのか?」
「はい。盾で攻撃を受けるのが私の役目ですから」
「だから鎧も防御重視か」
「そうです。でも盾と戦鎚を使うので、腕周りは動かしやすくしてます」
「修理も自分で?」
「もちろんです」
「《ミスリル加工》は?」
「持ってます」
「《金属鑑定》は?」
「それもあります」
「鍛造系のスキルは?」
「《鍛造の才》があります」
年配の職人はロッテの装備を見たあと、リュナの《蒼銀華》、そしてシオンのロッドへ順番に視線を向けた。
受付の男を見る。
「もう十分だろ」
「ああ」
「え?」
ロッテが二人を見る。
年配の職人が言った。
「上級でいい」
「いきなりですか!?」
「何を驚いてる」
受付の男が呆れたように言う。
「自分用のミスリル装備を一式作れるだけでも十分な腕だ。それに加えて、別の戦い方をする二人の装備まで作ってる」
年配の職人も頷く。
「特にあの刀だな」
「《蒼銀華》ですか?」
「ああ。俺も初めて見る形だ。見たことのない形の武器を、使い手に合わせて実戦で使えるところまで仕上げている」
リュナが少し嬉しそうに《蒼銀華》の柄へ触れる。
「私も気に入ってるよ」
「ありがとうございます!」
「それに兄ちゃんのロッドへの加工も悪くない。自分が使う物だけ作れる職人と、相手に合わせて作れる職人じゃ話が違う」
年配の職人はロッテを見る。
「上級鍛冶師で問題ない」
「でも、私、今日初めて鍛冶ギルドに来たんですよ?」
「登録した日数で腕前を決めるわけじゃない」
「そういうものなんですね」
「そういうものだ」
必要な手続きを終えると、ロッテに鍛冶ギルドの登録証が渡された。
そこにはロッテの名前とともに、上級鍛冶師であることが記されている。
「おお……」
ロッテが登録証を両手で持って眺める。
「嬉しそうだな」
「嬉しいですよ!」
ロッテは満面の笑みを浮かべた。
「鍛冶師として正式に認めてもらえたんですから!」
「おめでとう、ロッテ」
「おめでとう」
「ありがとうございます!」
ロッテはしばらく登録証を眺めたあと、大切そうにしまった。
受付の男が尋ねる。
「ところで、どうして今日になって急に鍛冶ギルドへ来たんだ?」
「あっ、そうでした」
ロッテが今日の出来事を説明する。
新鉱脈の地下洞窟で、アイアンモールが掘ったと思われる未調査の横穴を発見したこと。
その入口に見たことのない鉱石が露出していたこと。
《金属鑑定》でも名称が分からず、高濃度の魔力を含むことしか判明しなかったこと。
そして明日、正式な調査依頼を受けてサンプルを採取しに行くこと。
「名称不明か」
受付の男の表情が変わる。
「はい」
「《金属鑑定》でも?」
「分かりませんでした」
年配の職人も興味を示した。
「面白いな」
「ですよね!」
「明日持ち帰るんだな?」
「はい。周りの岩ごと少し採ってくるように言われてます」
「なら、持ち帰ったら見せてくれ。こっちでも調べてみよう」
「もちろんです!」
ロッテは嬉しそうに頷いた。
「絶対にちゃんとしたサンプルを持って帰ってきます!」




