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第71話 査定には一週間

 シオンたちはダリオとミリアに連れられ、ギルドの解体場へやって来た。


 普段は討伐された魔物の解体や素材の確認に使われている広い場所だ。


 何人かの職員が作業をしていたが、ダリオが声をかけると、そのうち二人がこちらへやって来た。


「ここなら出して構わん」


「じゃあ出しますね」


「ああ。ただし、小さいものからにしてくれ」


「分かりました」


 シオンは《ストレージ》を開く。


 まず取り出したのはマミーだった。


 一体。


 二体。


 さらに数体。


 床へ並べていく。


「次がサンドスケルトン」


 骨だけになった魔物も並べる。


「それからストーンスコーピオン」


 硬い外殻を持つ蠍型の魔物が姿を現した。


 道中で追加で倒した魔物も含め、次々と出していく。


 解体担当の職員たちが数を確認していった。


「この辺りは問題ないな」


 ダリオが言う。


「《砂王の墳墓》では珍しくない魔物だ。通常通り素材を確認して買い取れる」


「じゃあお願いします」


「ああ」


 シオンは残った魔物を確認する。


「普通のはこれで全部です」


「普通のは?」


「次がファラオガーディアンです」


 ミリアが周囲を見る。


「皆さん、少し離れてください」


「そんなに?」


「シオンさんの三倍くらいあるんですよね?」


「そのくらいです」


「だったら離れます!」


 職員たちも作業台の近くから移動した。


 十分な場所が空いたところで、シオンが《ストレージ》からファラオガーディアンを取り出す。


 ドンッ!


 巨大な石の身体が解体場へ横たわった。


「おお……」


 ダリオが近づく。


 職員たちも目を見開いていた。


「これが第三階層にいた守護者か」


「はい」


 ファラオガーディアンは戦闘でかなり損傷している。


 片脚は砕け、胸部の黄金色の装甲も大きく破壊されていた。


 その奥には、リュナが《蒼銀華》で破壊した核が残っている。


「確かに、見たことのない型だな」


 ダリオが装甲を見る。


「この黄金色の部分は?」


「俺たちも分かりません」


「金ではないと思います」


 ロッテが近づき、装甲の一部へ触れる。


「少なくとも、普通の金みたいな柔らかさじゃありません。戦っている時もかなり硬かったです」


「《金属鑑定》では?」


「やってみます」


 ロッテが装甲へ意識を集中する。


 少しして、首を傾げた。


「金属なのは分かります。でも、詳しい種類までは出ません」


「ロッテでも分からないのか?」


「初めて見る金属ですから」


 ロッテは壊れた装甲を興味深そうに眺める。


「古代に使われていた合金かもしれませんね」


「なら、こいつも専門家に見せた方がよさそうだな」


 ダリオが解体担当へ声をかける。


「すぐに解体するな。まず装甲と内部構造を調べる」


「分かりました」


「核の破片も残しておいてくれ」


「はい」


 シオンは巨大なファラオガーディアンを見た。


「これ、売れるんですか?」


「価値が分かればな」


「分からなかったら?」


「調べる」


「時間かかりそうですね」


「少なくとも今日中は無理だ」


 ダリオが答える。


 ロッテはまだ装甲を見ていた。


「少し欲しいな……」


「これ?」


「はい。加工できるか試してみたいです」


「じゃあ売る前に取っておけば?」


「査定が終わってからにしてください」


 ミリアがすぐに止める。


「まだギルドに売ってませんよ?」


「そうでした」


「でも勝手に壊したら調査できなくなるだろ」


 ダリオに言われ、ロッテは装甲から手を離した。


「じゃあ待ちます」


「そうしてくれ」


 通常の魔物については解体担当へ預け、ファラオガーディアンは別に調査することになった。


「これで魔物は全部か?」


「はい」


「なら次は宝物だな」


「ここで出します?」


 ダリオが解体場を見回した。


「いや。さすがに金貨や王冠を魔物の横に並べるわけにはいかん」


「ですよね」


「別の場所を用意する」


 ギルドの倉庫の一室が使われることになった。


 三人はダリオたちと一緒に移動する。


 そこには大きな机がいくつも並んでいた。


「ここならいいだろう」


「全部出していいんですか?」


「ああ」


「かなりありますよ?」


「聞いている」


「本当に?」


「……どのくらいだ?」


「部屋いっぱい」


「とりあえず出してみろ」


「はい」


 シオンが《ストレージ》を開いた。


 最初に古代金貨。


 大量の金貨が机の上へ積まれていく。


「ちょ、ちょっと待ってください!」


 ミリアが慌てて止めた。


「何です?」


「一か所に積まないでください! 数えるのが大変になります!」


「ああ」


 シオンは別の机へ移す。


 次に銀貨。


 宝石。


 金の杯。


 皿。


 装飾品。


 いくつもの箱。


 宝石を散りばめた装飾品も並べていく。


「まだあるのか?」


「あります」


「……続けてくれ」


 王冠。


 儀式に使われていたと思われる装飾品。


 そして《砂王の宝剣》。


 次々と並べていくうちに、広かったはずの倉庫が宝物で埋まっていった。


 ミリアは途中から何も言わなくなった。


「これで大体全部です」


「大体?」


「魔道具三つは俺たちが装備してますし、《合成魔術の魔導書》は使ったので」


「そうだったな」


 ダリオは宝物を見渡す。


「……一週間だな」


「え?」


「最低でも一週間は待ってくれ」


「そんなに?」


「むしろ、この量を見て今日明日で終わると思うのか?」


 シオンも改めて倉庫を見る。


「無理そうですね」


「無理だ」


 ダリオが古代金貨を一枚手に取る。


「まず数を確認する。金や銀としての価値も調べる。宝石も種類や品質が違う」


 今度は《砂王の宝剣》を見る。


「こういう物はさらに面倒だ。金や宝石だけの価値で売るわけにはいかんだろう」


「《鑑定》でも美術品として非常に高い価値があるって出ました」


「ならなおさらだ。古物を扱う専門家にも見せる」


 ダリオが王冠へ視線を移す。


「王冠や宝剣については、由来まで分かれば価値が大きく変わる可能性もある」


「全部売れる?」


「それも査定してから相談だ。買い手がすぐ見つかる品ばかりとは限らん」


「なるほど」


「ファラオガーディアンも調査が必要だ。攻略地図の買い取り額と、完全攻略に対する扱いも決めなければならん」


 シオンは指を折る。


「魔物、ファラオガーディアン、宝物、地図、完全攻略……」


「だから一週間だ」


「納得しました」


 ミリアが帳簿を持ってくる。


「お預かりする宝物は、これから職員総出で確認します。数と品目を記録して、シオンさんたちにも控えを渡します」


「お願いします」


「査定が終わったら宿へ連絡する。それまではハサムにいるんだろう?」


 ダリオが尋ねる。


「そのつもりです」


「なら問題ない」


「一週間か」


 リュナが呟く。


「何する?」


「観光は昨日しましたしね」


 ロッテが言う。


 シオンは少し考える。


 その時、あるものを思い出した。


「あ」


「何?」


「やることあった」


「何かありました?」


「《合成魔術》」


 リュナとロッテがシオンを見る。


「まだ一回も試してない」


「そういえばそうだったね」


「宝物庫では危ないからやめたんだったな」


 シオンは自分が使える魔法を思い浮かべる。


 複数の魔法を組み合わせ、新しい魔法を生み出す。


 どんな組み合わせが成功するのか。


 成功したら、どんな魔法になるのか。


「明日、試してみない?」


「どこで?」


「砂漠」


 シオンが答えた。


「街から離れて、人がいないところまで行けばいいだろ」


「威力が分からないもんね」


「そういうこと」


 リュナが少し考えてから頷く。


「それなら私も見たい」


「私も行きます」


「決まりだな」


 宝物の査定には一週間。


 急いでも結果は変わらない。


 三人はギルドに宝物を預ける手続きを済ませると、宿へ戻ることにした。


「どの魔法から試そうかな」


 ギルドを出たシオンは、すでに明日のことで頭がいっぱいになっていた。

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