第50話 絆の指輪
エルダードラゴンが地面を蹴った。
翼を傷つけられ、もう空へ逃げることはできない。それでも巨体からは想像できない速度で三人へ迫ってくる。
「来るぞ!」
三人が散開した。
ドラゴンがシオンのいた場所へ突っ込み、巨大な前脚を振り下ろす。
《影跳び》。
視界に入っていた大岩の影へ移動した直後、さっきまで立っていた場所が大きく陥没した。
「相変わらず、とんでもない力だな」
シオンはすぐにロッドを向ける。
《アイスランス》。
氷の槍がドラゴンの肩へ飛ぶ。
だが、硬い鱗にぶつかり、砕け散った。
「氷は駄目か。なら――《ウインドカッター》」
今度は風の刃。
キィン!
これも鱗に弾かれる。
「鱗が硬すぎるな」
「グオオオッ!」
エルダードラゴンが首を巡らせ、シオンへ口を向けた。
口内に赤い光が集まる。
「またブレス!」
ゴオオオオオオッ!
吐き出された炎が地面を焼きながら迫ってくる。
《影跳び》。
別の岩陰へ移動してかわすと、シオンはすぐに反撃した。
《エナジーボール》。
魔力の塊が脇腹へ直撃する。
ドン!
「グルル……!」
「これは多少効いてるか」
その隙にリュナが側面から飛び込んだ。
《獣身強化》。
一気に加速し、《蒼銀華》を傷ついた前脚へ振り下ろす。
斬!
「くっ……!」
血は出た。
だが、浅い。
振るわれた前脚をリュナが後ろへ跳んでかわす。
「やっぱり硬い!」
「なら、こっちです!」
反対側からロッテが踏み込んだ。
《震撃》。
ドゴン!
バトルハンマーが後脚を叩き、衝撃が鱗の奥へ抜ける。
ドラゴンの巨体が揺れた。
「もう一発――」
「ロッテ、離れろ!」
「はい!」
ロッテが下がった直後、巨大な尾が目の前を薙ぎ払った。
「危なかったです!」
シオンはエルダードラゴンを見つめる。
攻撃は通っている。
このままでも少しずつ削れるだろう。
だが、二十五階層の主だけあって、これまでの魔物とは耐久力が違う。
「……もっと強そうな魔法ないか?」
「今!?」
リュナが振り返った。
「今だからだよ!」
「戦闘中よ!」
「だから必要なんだって!」
シオンは取得可能な魔法を確認する。
攻撃だけじゃない。
強化。
弱体化。
これまでほとんど使ってこなかった種類の魔法も並んでいる。
「これ、いいな」
《パワーブースト》。
対象の筋力を一定時間強化する魔法。
「こっちも使えそうだ」
《ヘイスト》。
対象の動作と反応速度を一定時間高める魔法。
さらに。
《ウィークネス》。
対象の防御力を一定時間低下させる。ただし、強力な相手ほど効果は弱くなる。
「よし」
必要なスキルポイントを支払い、三つとも取得する。
「シオン! 前!」
「分かってる!」
エルダードラゴンの前脚が迫る。
《影潜り》。
シオンが影へ沈み、攻撃をかわす。
そのまま影の中を移動し、ドラゴンの側面から飛び出した。
「まずはこれ!」
《ウィークネス》。
淡い光がエルダードラゴンの巨体を包み、すぐに消える。
「効いたの?」
「分からん!」
「分からないの!?」
「初めて使ったんだから仕方ないだろ!」
「じゃあ試します!」
ロッテが踏み込む。
《震撃》。
ドゴン!
ドラゴンの脚を覆う鱗が軋んだ。
「あっ!」
「どう?」
「さっきより手応えがあります!」
「効いてる!」
強敵だけあって大幅に弱くなったわけではない。それでも確実に攻撃が通りやすくなっている。
「だったら次!」
シオンがリュナへロッドを向ける。
《パワーブースト》。
「え?」
淡い光がリュナの身体を包んだ。
「なんか力が――」
《ヘイスト》。
「ちょっと待っ――」
「両方かけた!」
「先に言いなさいよ!」
「今言った!」
「かけた後でしょ!」
エルダードラゴンが動く。
リュナが反射的に地面を蹴った。
「――っ!?」
一気に身体が前へ出る。
「速っ!」
自分でも驚くほどの加速。
そこへ元々持っている《獣身強化》まで重なる。
ドラゴンの前脚が振り下ろされた。
リュナは横へ抜け、そのまま《影歩》で一気に側面へ回り込む。
「これ、すごい!」
《蒼銀華》を振るう。
斬!
硬い鱗の隙間へ、先ほどより深く刃が入った。
「グオオオッ!」
「シオン! これいい!」
「だろ!」
「でも次から先に言って!」
「はい!」
「返事だけはいいわね!」
「私もお願いします!」
ロッテが手を上げた。
「両方?」
「両方です!」
「よし!」
《パワーブースト》。
《ヘイスト》。
「おおっ!」
ロッテが目を輝かせる。
「力が湧いてきます! それに動きやすいです!」
エルダードラゴンがロッテへ向き直った。
「来ます!」
巨大な前脚が振り下ろされる。
ロッテは盾を構えた。
《不動》。
ドガァン!
「ぐっ!」
足元の石が砕ける。
それでもロッテは吹き飛ばされない。
「止めました!」
「おお!」
「今度はこっちです!」
《シールドバッシュ》。
ドン!
強化された力で盾を叩き込み、巨大な前脚を弾く。
「リュナさん!」
「分かってる!」
リュナが走った。
《獣身強化》に《パワーブースト》と《ヘイスト》が重なり、これまで以上の速度で懐へ潜り込む。
《瞬影乱舞》。
銀色の軌跡が何度も走った。
狙うのは同じ場所。
一撃、二撃、三撃。
鱗の隙間から鮮血が飛ぶ。
「グオオオオッ!」
エルダードラゴンが暴れ、リュナとロッテがすぐに距離を取った。
「俺も使ってみるか」
シオンは自分へロッドを向ける。
《ヘイスト》。
「おっ」
身体の反応が明らかに速い。
移動魔法そのものが強化されたわけではないが、状況を見てから動き出すまでが早くなっている。
「これ、俺にもいいな」
「当たり前でしょ!」
「じゃあ《パワーブースト》も――」
「シオンは魔法撃ちなさい!」
「それもそうか」
ドラゴンが大きく口を開いた。
「ブレス来る!」
ゴオオオオオオッ!
《影跳び》。
視界に入っていた岩陰へ移動し、炎をかわす。
シオンは振り向きざまにロッドを向けた。
《ファイアボール》。
炎の球がドラゴンの胸へ直撃する。
ボン!
爆炎が広がった。
しかし、エルダードラゴンはほとんど気にした様子を見せない。
「……やっぱり炎は微妙か」
「そりゃ炎吐くくらいだもの!」
「一応試したかったんだよ!」
「他は!?」
「ある!」
《ホーリージャベリン》。
光の槍が放たれる。
狙ったのは、リュナが何度も斬りつけた傷。
ドシュッ!
「グオオオオッ!」
深く入った。
「おっ!」
「今のは効いてる!」
「やっぱり貫通力は高いな」
エルダードラゴンが怒り狂ったように尾を振るう。
ロッテが盾で受け流し、リュナが反対側へ回った。
シオンも距離を取る。
「もっと強い攻撃魔法も……」
「まだ探すの!?」
「せっかくだから!」
「何がせっかくなのよ!」
取得可能な魔法を確認する。
そして。
「……あった」
「何?」
「名前からして強そう」
「嫌な予感しかしないんだけど」
《エクスプロージョン》。
指定地点を中心に大規模な爆発を起こす魔法。
高威力。
広範囲。
その分、消費する魔力も多い。
「これだ!」
「どんな魔法!?」
「爆発!」
「説明が雑!」
「でも強い!」
シオンはスキルポイントを支払い、《エクスプロージョン》を取得した。
「二人とも離れて!」
「どれくらい!?」
「分からん!」
「また!?」
「初めてなんだから仕方ないだろ!」
「ロッテ! とにかく離れるわよ!」
「はい!」
二人が一気に距離を取る。
十分に離れたのを確認し、シオンはロッドをエルダードラゴンへ向けた。
「これは……」
一度息を吸う。
「絶対叫ぶやつだろ!」
「早く撃ちなさい!」
「はい!」
魔力を集中させる。
「《エクスプロージョン!!》」
次の瞬間。
エルダードラゴンの胴体付近で光が弾けた。
ドゴォォォォォォン!!
「うわっ!」
「きゃっ!」
爆風が広がり、地面が大きく震えた。
小石が飛び、シオンも思わず腕で顔を覆う。
「シオン! 範囲広すぎ!」
「俺もびっくりした!」
「使う前に確認してください!」
「ごめん!」
煙が広がる。
「どうなった?」
シオンが目を凝らした。
「グ……オォ……」
低い唸り声。
「まだいる」
「でも見て!」
煙が晴れていく。
エルダードラゴンは立っていた。
しかし、胴体を覆っていた鱗の一部が大きく割れている。
「よし!」
「通った!」
「今ならいけます!」
ロッテが走る。
《ヘイスト》で速度を上げ、《パワーブースト》で力を増したまま一気に距離を詰めた。
「ここです!」
《震撃》。
ドゴン!
割れた鱗へバトルハンマーが叩き込まれ、さらに亀裂が広がる。
「グオオッ!」
「リュナ!」
「うん!」
《影歩》。
リュナが懐へ飛び込む。
狙うのは同じ場所。
《瞬影乱舞》。
銀色の刃が何度も傷口を斬り裂いた。
「シオン!」
「任せろ!」
《ホーリージャベリン》。
光の槍が露出した傷へ突き刺さる。
「グオオオオオオオッ!!」
エルダードラゴンが大きく仰け反った。
それでも倒れない。
「まだか!」
ドラゴンが大きく口を開いた。
赤い光が集まる。
「またブレス!」
「撃たせるか!」
《連続魔法》。
《アイスランス》。
一発。
二発。
狙うのは口ではなく、傷ついた前脚。
氷槍が立て続けに突き刺さり、巨体の体勢が崩れた。
吐き出された炎が三人ではなく天井へ向かう。
「今だ!」
ロッテが正面から飛び込んだ。
《シールドバッシュ》。
盾がドラゴンの頭部へ叩き込まれ、顔が横へ弾かれる。
「リュナ!」
「行く!」
リュナが地面を蹴った。
《獣身強化》。
《パワーブースト》。
《ヘイスト》。
強化された身体で一気に側面へ回る。
狙うのは首。
すでに何度も攻撃を受けた鱗の隙間。
「はああっ!」
《蒼銀華》が深く入った。
「グオオオオッ!」
「シオン!」
「ああ!」
《サンダーボルト》。
雷撃が首の傷へ直撃する。
バヂィッ!
巨体が大きく震えた。
それでも、まだ倒れない。
「しぶとい!」
「もう一発です!」
「いや、まとめていく!」
シオンがロッドを掲げる。
《ソードジャッジメント》。
高い天井近くに光が集まり、無数の光剣が生まれた。
「うわ……」
「綺麗です!」
「行け!」
光剣が一斉に降り注ぐ。
一本。
二本。
十本。
さらに次々とエルダードラゴンへ突き刺さっていく。
「グオオオオオオオオオオッ!!」
巨体が揺れる。
それでもエルダードラゴンは最後の力を振り絞るように地面を蹴った。
「来る!」
「私が受けます!」
ロッテが盾を構える。
「真正面は無茶だ!」
「全部は受けません!」
ロッテは真正面ではなく、わずかに横へ位置をずらした。
《不動》。
突進してくる巨体。
その肩へ盾を合わせる。
ドゴォン!
「ぐうっ!」
ロッテの足元が削られる。
完全には止められない。
だが、進行方向がずれた。
「今です!」
エルダードラゴンの側面が大きく開く。
「リュナ!」
「うん!」
リュナが飛び込んだ。
《瞬影乱舞》。
首の傷へ銀色の斬撃が集中する。
最後の一撃が深く入った。
「シオン!」
「ああ!」
シオンがロッドを向ける。
狙いは同じ傷。
《ホーリージャベリン》。
光の槍が一直線に飛んだ。
ドシュッ!
「グ……オォ……」
エルダードラゴンの動きが止まった。
巨体がゆっくりと傾く。
「離れろ!」
三人が飛び退く。
ズズン――!
地面を揺らし、エルダードラゴンが倒れた。
しばらく誰も動かなかった。
「……終わった?」
ロッテが盾の横から覗く。
リュナが気配を探り、やがて息を吐いた。
「うん。もう動かない」
「倒した……」
「倒したわね」
「倒しました!」
三人の顔に笑みが広がる。
「ドラゴン倒したぞ!」
「やりました!」
ロッテが勢いよくリュナへ抱きつく。
ガシャッ!
「痛い! 鎧!」
「あっ! すみません!」
「昨日もやったでしょ!」
「嬉しくて!」
シオンが吹き出す。
「昨日とまったく同じだな」
「シオンも笑ってないで!」
「ごめんごめん」
笑い声が広い空間に響いた。
少し落ち着いてから、シオンは倒れたエルダードラゴンへ近づく。
「これ、持って帰ったらグラントさんどんな顔するかな」
「その前に入るの?」
「多分」
「多分なんですね」
「試してみる」
シオンが巨大な死体へ触れた。
《ストレージ》。
一瞬でエルダードラゴンの巨体が消える。
「入った」
「本当になんでも入るわね……」
「ドラゴンまで丸ごとです」
「これなら解体しなくていいな」
「最初からする気なかったでしょ」
「うん」
「即答なのね」
ドラゴンが消えたことで、広い空間の奥まで見えるようになった。
「あれ?」
ロッテが壁際を指差す。
「宝箱があります!」
「本当だ」
三人が近づく。
リュナが周囲と宝箱を調べた。
「罠はない」
「じゃあ開けるぞ」
「うん」
「はい!」
シオンが蓋を開ける。
「……ん?」
中に入っていたのは、指輪だった。
一つだけ。
「これだけ?」
「みたいね」
「エルダードラゴンを倒した後の宝箱ですから、きっとすごい物ですよ」
「見てみる」
シオンが《鑑定》を使った。
【絆の指輪】
【大切な者へ贈るために作られた魔道具】
【贈った者と贈られた者の絆が深いほど、装備者の能力を高める】
【絆が存在しない場合、効果は発揮されない】
三人が指輪を見つめた。
「……一個しかないぞ」
「そうね」
「三人なのに」
「そうですね」
「どうする?」
シオンが指輪を持ち上げる。
「売る?」
「いや」
ロッテが即答した。
「これはリュナさんに贈るべきでしょ」
「えっ!?」
リュナの耳がぴんと立った。
「なんで!?」
「だって、《大切な者へ贈るために作られた》って書いてあるじゃないですか」
「それならロッテだって大切な仲間でしょ!」
「もちろんそうですけど、私はいいです」
「よくないでしょ!」
「いいんです」
ロッテは楽しそうに笑っている。
「シオンさん」
「ん?」
「リュナさんに」
シオンは手の中の指輪を見た。
そして、リュナを見る。
「嫌?」
「嫌とは言ってないけど……」
「じゃあ、リュナに」
シオンが指輪を差し出した。
リュナはしばらく指輪とシオンの顔を交互に見ていたが、やがてそっと手を伸ばした。
「……本当にいいの?」
「ああ」
「……ありがとう」
指輪を受け取ったリュナの頬が少し赤くなる。
なぜかシオンまで気恥ずかしくなり、視線を逸らした。
「つけてみたらどうです?」
ロッテが言う。
「そうね」
リュナが右手の人差し指へ指輪を通そうとする。
「……あれ?」
「どうした?」
「入らない」
「サイズが違う?」
「でも魔道具ですよね?」
「別の指は?」
中指。
「駄目」
薬指。
「これも駄目」
小指も入らない。
「左は?」
「やってみる」
人差し指。
中指。
薬指。
小指。
どの指にも入らなかった。
「全部駄目じゃない」
「装備条件でもあるのかな?」
「《鑑定》には出てなかったけど」
シオンが首を傾げる。
その横で、ロッテが何か考えていた。
「……もしかして」
「何?」
「説明に《大切な者へ贈るために作られた》ってありましたよね?」
「ああ」
「リュナさんが自分でつけるんじゃなくて、贈った人がつけるんじゃないですか?」
「なるほど」
「えっ」
シオンは素直に納得した。
「じゃあ貸して」
「ちょ、ちょっと待って!」
「なんで?」
「いや、その……」
「装備できるか試すだけだろ?」
「そうだけど!」
リュナがロッテを見る。
ロッテは満面の笑みを浮かべていた。
「……ロッテ」
「なんです?」
「なんでそんなに楽しそうなのよ」
「気のせいです」
「絶対違う!」
「とりあえず試しましょう」
「他人事だと思って!」
リュナは顔を赤くしたまま、シオンへ指輪を返した。
「じゃあ右手から」
シオンがリュナの右手を取る。
「……っ」
「どうした?」
「なんでもない!」
「?」
まず人差し指。
「あれ?」
入らない。
「中指も駄目」
「やっぱり違うんじゃない?」
「待って。まだある」
右手の薬指。
入らない。
小指。
これも駄目だった。
「右手は全部駄目だな」
「ほら!」
「じゃあ左手」
「まだやるの!?」
「全部試さないと分からないだろ」
「そうです。全部試さないと」
「ロッテ、絶対分かって言ってるでしょ!」
「何がです?」
「もう!」
シオンは今度はリュナの左手を取った。
人差し指。
「駄目」
中指。
「これも駄目」
「ほら、やっぱり――」
シオンが次の指を見る。
「じゃあ、ここ」
「待って!」
「ん?」
「そこは……!」
「なんで?」
「なんでも!」
「でも残ってるだろ?」
「残ってるけど!」
「じゃあ試すぞ」
「ちょっ、シオン――!」
左手の薬指へ指輪を通す。
すっ。
「……」
「……」
「……」
三人が黙った。
指輪は、最初からその指のために作られていたかのように、ぴったりと収まっている。
「入った」
「入ったわね……」
「入りましたね」
ロッテがにこにこしている。
「なんでロッテはそんな嬉しそうなんだ?」
「別に?」
「絶対なんかあるだろ」
「シオンさんは気にしなくていいです」
「なんだよ、それ」
リュナは真っ赤になった顔を逸らしながら、左手の薬指にはまった指輪を見つめる。
「……外れるのかな」
「試してみれば?」
リュナが指輪を引く。
するりと抜けた。
「あ、外れる」
「呪われてはいないな」
「当たり前でしょ!」
「じゃあもう一回、自分でつけてみたら?」
「そうね」
リュナが左手の薬指へ指輪を通そうとする。
「……入らない」
「やっぱり贈った人がつけないと駄目なんですね」
「面倒な指輪だな」
「誰のせいだと思ってるのよ!」
「俺?」
「違う!」
「じゃあ誰だよ」
「これ作った奴よ!」
リュナは指輪をシオンへ突き出した。
「ほら!」
「え?」
「つけて!」
「分かった」
シオンが指輪を受け取り、もう一度リュナの左手を取る。
薬指へ。
すっ。
やはり、今度は何の抵抗もなく収まった。
その瞬間、指輪が淡く光った。
「光った!」
「効果が発動したんですか?」
「多分」
リュナが自分の手を握ったり開いたりする。
「……なんか、身体が軽い」
「能力上昇か」
「結構上がってる気がする」
「絆が深いほど強くなるんだったな」
シオンは少し考えてから笑った。
「そりゃ、ずっと一緒に戦ってきたもんな」
「……うん」
リュナが小さく答える。
また頬が赤くなった。
ロッテは二人を交互に見て、楽しそうに笑っている。
「何?」
「なんでもないです」
「絶対なんかあるだろ」
「ありません」
「ロッテ?」
「さあ、帰りましょう!」
「誤魔化した」
「誤魔化してません!」
リュナは左手を持ち上げ、薬指にはまった指輪をもう一度見つめた。
そして真っ赤な顔で叫ぶ。
「これ作った奴、絶対性格悪い!!」
ロッテが吹き出し、意味が分からないシオンだけが首を傾げた。




