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第41話 いっぺんに出すな!

「買取をお願いします!」


 冒険者ギルドへ入ったシオンは、そのまま買取所へ向かった。


「おう。今日は何を持ってきた?」


 カウンターの向こうにいた男性職員が顔を上げる。


「結構あります」


「結構?」


「はい」


「まあいい。出してくれ」


「じゃあ」


 シオンが《ストレージ》へ手を伸ばす。


「まずは――」


 ドンッ!


「うおっ!?」


 床に。


 巨大なアーマーリザードが現れた。


「アーマーリザードか」


「はい」


「丸ごとかよ」


「その方が楽なので」


「まあ、状態もいいし、こっちで解体するから問題ない」


「じゃあ次」


 ドンッ!


「ハイオーク」


 ドンッ!


「もう一体」


 ドンッ!


「もう一体」


「……」


 職員がシオンを見る。


「まだあります」


「お、おう」


 ドンッ!


 ブレードウルフ。


 ドンッ!


 もう一体。


 さらに。


 ドンッ!


「ポイズンスパイダー」


「ちょっと待て」


「はい?」


「そこに出すな」


「なんで?」


「狭い!」


 カウンター前。


 すでに巨大な魔物の死体が並んでいる。


「ああ」


「ああ、じゃない!」


「じゃあ、どこに?」


「裏の解体場だ!」


「最初から言ってくれればいいのに」


「普通はこんなに出さないんだよ!」


「まだ全然ですけど」


「……何?」


「今のでほんの一部です」


「……」


 職員が黙った。


「どれくらいある?」


「えっと」


 シオンが《ストレージ》を確認する。


「いっぱい」


「数は?」


「数えてません」


「数えてない!?」


「途中から面倒になって」


「お前な!」


 リュナが後ろで顔を逸らした。


「リュナ」


「何?」


「笑ってるだろ」


「笑ってない」


「肩が震えてる」


「気のせいよ」


「絶対笑ってる!」


「だから言おうと思ったのよ」


「何を?」


「先に量を言った方がいいって」


「言ってないだろ!」


「今思ったから」


「それは言おうと思ったって言わない!」


「シオンさん」


 ロッテが笑いながら言う。


「解体場へ行きましょう」


「ロッテも笑ってるだろ」


「笑ってません!」


「笑ってる!」


「いいから早く来い!」


 職員の声が飛んだ。



 ギルド裏手。


 広い解体場。


「ここなら多少は大丈夫だ」


「じゃあ全部出しますね」


「待て」


「はい?」


「少しずつ出せ」


「分かりました」


「絶対だぞ」


「信用ないなあ」


「さっきカウンター前を魔物で埋めた奴をどう信用しろってんだ」


「ちょっとしか出してないのに」


「その認識がおかしいんだよ!」


「じゃあ」


 シオンが手を伸ばす。


 ドンッ!


「ストーンゴーレム」


「おう」


 ドンッ!


「もう一体」


「おう」


 ドンッ!


「リザードウォリアー」


 ドンッ!


「二体目」


 ドンッ!


「三体目」


 ドンッ!


「四体目」


「……」


 ドンッ!


「五体目」


「待て」


「はい?」


「何体いる?」


「リザードウォリアーは十九階層で九体出ました」


「九体?」


「はい」


「全部倒したのか?」


「はい」


「三人で?」


「三人で」


「……まあ、Cランク三人なら」


「あと四体出しますね」


「ちょっと待て!」


「少しずつ出してるだろ!」


「確かにそうだが!」


「じゃあいいじゃん」


「なんか腹立つな!」


 結局。


 残りのリザードウォリアーも並べる。


「次は?」


「オーガファイター」


「何体だ」


「何体だったっけ?」


「四体よ」


 リュナが答える。


「そうそう。四体」


「先に数を言え!」


「はい」


 一体ずつ。


 オーガファイターを出す。


「次は?」


「ブレードウルフ」


「何体」


「六体」


「……出せ」


「はい」


 一体。


 二体。


 三体。


 四体。


 五体。


 六体。


「次」


「ポイズンスパイダー」


「何体」


「五体」


「出せ」


「慣れてきたな」


「誰のせいだと思ってる!」


 ポイズンスパイダー。


 さらに。


 途中で倒した魔物を次々と出していく。


 解体場が。


 どんどん狭くなっていく。


「……多いですね」


 ロッテが並んだ魔物を眺める。


「自分たちで倒したんだけどな」


「《ストレージ》に入れちゃうと分からなくなりますね」


「そうなんだよ」


「普通は分かるのよ」


 リュナが呆れる。


「運ばないといけないから」


「だから《ストレージ》って便利なんだろ」


「便利すぎてシオンの感覚がおかしくなってるのよ」


「そんなことない」


「ある」


「ない」


「ある」


「はいはい」


 職員が二人を止める。


「それで終わりか?」


「まだです」


「……」


「次がモンスターハウス」


「モンスターハウス?」


「はい」


「何階層だ?」


「二十階層」


「二十?」


「昨日見つけた隠し部屋です」


「……昨日?」


「宝箱があったところ」


「ちょっと待て」


「はい?」


「俺は何も聞いてないぞ」


「あれ?」


「昨日、ギルドには報告したんじゃないの?」


 リュナが言う。


「した」


「俺は買取担当だ! 全部の報告が即座に回ってくるわけじゃない!」


「ああ」


「納得するな!」


「それで四十七体です」


「……」


 職員が止まった。


「何体?」


「四十七」


「……」


「全部倒しました」


「……三人で?」


「はい」


「……」


 職員が。


 並んだ魔物を見る。


 そして。


 三人を見る。


「お前たち、本当にCランクか?」


「そうですけど」


「カード見る?」


「いや、いい」


 職員が額を押さえる。


「……四十七体か」


「はい」


「それも全部持ってきたのか?」


「ほとんど」


「丸ごと?」


「丸ごと」


「……」


「出していい?」


「待て!」


「何だよ!」


「場所を空ける!」


 職員が他の職員を呼ぶ。


「おい! 手を貸してくれ!」


「どうした?」


「魔物を移動させる!」


「なんでこんなにあるんだ!?」


「俺が聞きたい!」


 数人がかりで。


 先ほど出した魔物を奥へ運んでいく。


「よし」


 男性職員が振り返る。


「出せ」


「じゃあ」


「一体ずつだぞ!」


「分かってるって!」


 ドンッ!


 ブラッドウルフ。


「次」


 ドンッ!


 リザードウォリアー。


 ドンッ!


 ポイズンスパイダー。


 ドンッ!


 オーガファイター。


 ドンッ!


 ストーンゴーレム。


 次々と。


 収納されていた魔物が姿を現す。


「まだか?」


「まだ」


「まだか……」


「次、アイアンゴーレム」


「アイアンゴーレムまでいたのか!?」


「いたよ」


 ドンッ!


「重っ!」


「俺は触ってないぞ」


「そういう意味じゃねえ!」


 ドンッ!


 二体目。


 ドンッ!


 三体目。


「……」


 職員の顔から表情が消えていく。


「大丈夫?」


「誰のせいだ」


「俺?」


「お前以外に誰がいる!」


「倒したのは三人だけど」


「そういう話じゃない!」


 やがて。


 モンスターハウスの魔物を出し終える。


「……終わったか?」


「モンスターハウスは」


「その言い方やめろ」


「何が?」


「まだあるってことだろ」


「あるよ」


「……」


 職員が空を見上げた。


「今日中に終わるかな……」


「査定?」


「ああ」


「頑張って」


「他人事みたいに言うな!」


「だって俺、査定できないし」


「それはそうだが!」


「じゃあ」


 シオンが《ストレージ》を見る。


「最後の出す?」


「最後?」


「うん」


「何だ?」


「二十階層の守護者」


「……」


 職員が止まった。


「何?」


「守護者」


「何階層の?」


「二十」


「……」


「《アイアンミノタウロス》」


「待て」


「はい?」


「二十階層の守護者?」


「はい」


「倒したのか?」


「はい」


「いつ?」


「さっき」


「……」


 職員がシオンを見る。


「本当に?」


「本当に」


「死体は?」


「あるよ」


「……ある?」


「丸ごと」


「……」


「出す?」


「出すな!」


「え?」


「ちょっと待て!」


 男性職員が。


 走った。


「どこ行った?」


「さあ」


「シオンさん、怒らせました?」


「俺、何もしてないぞ?」


「いっぱいしたでしょ」


「魔物出しただけだろ」


「それよ」


 しばらくして。


「シオン!」


 声。


「あ」


 セリスが走ってくる。


 その後ろには。


 グラント。


「本当ですか!?」


「何が?」


「二十階層の守護者です!」


「ああ。倒したよ」


「どうしてそれを最初に報告しないんですか!」


「管理小屋では言ったぞ?」


「ギルドにです!」


「買取に来たから、ここで言えばいいかなって」


「よくありません!」


「そんなに?」


「そんなにです!」


 グラントが前へ出る。


「シオン」


「はい」


「確認するぞ」


「はい」


「二十階層の守護者を討伐したんだな?」


「はい」


「魔物は?」


「《アイアンミノタウロス》」


「特徴は?」


「三メートルくらいの牛頭で、黒い金属鎧。巨大な戦斧を使ってました」


「《鑑定》は?」


「第二十階層守護者って出ました」


 グラントの表情が変わる。


「討伐したあと、何か変化はあったか?」


「奥の壁が開いて、下へ続く階段が出ました」


「……階段」


「たぶん二十一階層」


「入ったのか?」


「いや」


「なぜだ?」


「今日は守護者を倒すつもりで行ったから。一回帰ってからにしようと思って」


「そうか」


 グラントが頷く。


「正しい判断だ」


「珍しくまともだってリュナにも言われた」


「珍しくは言ってないわよ」


「言っただろ!」


「似たようなことは言ったけど」


「同じじゃねえか!」


「二人とも」


 セリスが止める。


「今はその話じゃありません」


「はい」


 グラントが男性職員を見る。


「死体があると言ったな?」


「はい。丸ごと持ってきたそうです」


「見せてくれ」


「ここで?」


「ああ」


「じゃあ」


 シオンが手を伸ばす。


「待て!」


 男性職員が叫んだ。


「何だよ!」


「どれくらい大きい!?」


「三メートルくらい」


「先に言え!」


「さっき言っただろ!」


「俺は聞いてない!」


「じゃあどこに出す?」


「中央だ! 他の魔物から離せ!」


「分かった」


 シオンが広く空いた場所へ移動する。


「この辺?」


「そこならいい」


「じゃあ」


 シオンが手を伸ばした。


「《ストレージ》」


 ドゴォン!!


 巨大な身体が。


 解体場へ現れた。


「……」


「……」


「……」


 黒い金属鎧。


 二本の角。


 胸部の装甲は砕け。


 身体には《蒼銀華》による無数の斬撃痕。


 大きな傷の中心には。


 光の槍に貫かれた跡。


「これです」


 シオンが言う。


 誰も答えない。


「アイアンミノタウロス」


「見れば分かる」


 グラントが近づく。


 死体を確認する。


「……確かに」


 セリスも息を呑む。


「これが二十階層の守護者……」


「あと武器」


「まだあるのか」


「戦斧」


 男性職員が反応する。


「待て!」


「今度は何!?」


「そこに出すな!」


「じゃあどこだよ!」


「死体の横!」


「最初からそうするつもりだよ!」


「ならいい!」


「なんなんだよ!」


 シオンがアイアンミノタウロスの横を指す。


「ここ?」


「そこ!」


「《ストレージ》」


 ドゴンッ!


 巨大な戦斧。


 床が。


 ミシッ。


 全員が足元を見る。


「……」


「……」


「床、大丈夫?」


 リュナが呟く。


「たぶん」


 職員が答える。


「たぶんなんだ」


「お前が出したんだろ!」


「出せって言ったじゃん!」


「ここまで重いと思うか!」


「アイアンミノタウロスが振り回してたんだぞ!」


「そういう問題じゃねえ!」


「二人とも!」


 セリスの声。


「はい」


「すみません」


 二人が黙る。


 グラントは。


 巨大な戦斧。


 そして死体を確認していた。


「間違いないだろう」


「じゃあ?」


 ロッテが聞く。


 グラントが三人を見る。


「二十階層の守護者は、これまで討伐された記録がない」


「やっぱり」


「二十階層に到達した冒険者はいる。だが、守護者を突破した者はいなかった」


「じゃあ」


 ロッテの目が輝く。


「私たちが初めてですか?」


「ああ」


「やりました!」


「初討伐!」


 シオンも拳を握る。


 リュナの尻尾も嬉しそうに揺れた。


「これで二十一階層への道も開いた」


 グラントが言う。


「迷宮の最深攻略記録も更新だ」


「おお……」


 さすがのシオンも。


 少しだけ実感が湧いてきた。


「俺たち、結構すごい?」


「今さら?」


 リュナが笑う。


「もっと褒めろよ!」


「はいはい。すごいすごい」


「適当!」


「すごいですよ、シオンさん!」


「ほら!」


「ロッテは甘やかしすぎよ」


「なんでだよ!」


 グラントが小さく笑う。


「初討伐については、正式な記録を残す」


「はい」


「それと報奨金が出る」


「報奨金?」


 シオンが反応する。


「素材の買取とは別に?」


「ああ」


「いくら?」


「まだ決まってない」


「だいたいでも」


「まだだ」


「ちょっとくらい」


「シオン」


 リュナが呆れる。


「またその顔」


「何だよ」


「お金」


「いいだろ!」


「別に悪いとは言ってないわよ」


「じゃあいいじゃん!」


 グラントが苦笑する。


「報奨金の額は確認しておく」


「お願いします!」


「そこだけ返事がいいな」


「大事だから!」


「それと」


 グラントが三人を見る。


「二十一階層以降へ進むなら、分かったことを可能な範囲でギルドへ報告してくれ」


「もちろん」


「魔物とか?」


「ああ。地形、罠、魔物、階層の特徴。何でもいい」


「分かりました!」


「無理に調査する必要はない。自分たちの攻略を優先しろ」


「はい」


「その代わり、生きて戻れ」


「もちろん」


 三人が頷く。


 グラントは。


 そこで少し黙った。


「……ところで」


「何?」


「お前たち」


 三人を見る。


「まだCランクだったな?」


「はい」


「そうよ」


「Cランクです!」


「……」


 グラントが腕を組んだ。


「どうした?」


「いや」


 セリスを見る。


「こいつら、いつCランクになった?」


「少しお待ちください」


 セリスが記録を確認する。


「……最近ですね」


「だよな」


「はい」


「何?」


 シオンが首を傾げる。


 グラントが指を折る。


「Cランク昇格後」


「うん」


「アンデッドの大群との防衛戦に参加」


「うん」


「後方へ突入して複数のデスナイトと交戦」


「うん」


「ネクロロードを討伐」


「うん」


「十三階層から二十階層まで攻略」


「うん」


「二十階層で四十七体のモンスターハウスを殲滅」


「うん」


「《迷宮転移盤》を発見」


「うん」


「そして今日」


 グラントが。


 横たわる巨体を見る。


「未討伐だった二十階層守護者を討伐」


「うん」


「二十一階層への道を開いた」


「うん」


「……」


「何?」


「Cランクか」


「Cランクだな」


「おかしいな」


「何が!?」


「私もそう思います」


 セリスが即答した。


「セリスまで!?」


「実績とランクが合っていません」


「でも俺たち、Cランクになったばっかりだぞ?」


「だから困ってるんです」


「じゃあ、そのままでいいんじゃない?」


「よくありません」


「なんで?」


 セリスが記録を見せる。


「普通、Cランクになった直後の冒険者がこんな実績を積みません」


「俺たちも普通に依頼とか迷宮攻略してただけだけど」


「普通のCランクはネクロロードを討伐した直後に迷宮の最深攻略記録を更新したりしません」


「……」


 シオンがリュナを見る。


「俺たち普通じゃない?」


「今気づいたの?」


「ロッテ」


「私も普通だと思ってました!」


「ほら!」


「ロッテに聞いたのが間違いだったわ」


「なんでですか!?」


 グラントが笑う。


「昇格推薦を出す」


「昇格?」


「ああ」


「何ランク?」


「Bだ」


「……」


 三人が止まる。


「B?」


「Bランクですか!?」


「もう?」


 リュナも驚いている。


「実績だけなら不足はない」


 グラントが言う。


「むしろCランクのままにしておく方がおかしい」


「じゃあ今日からBランク?」


「そう簡単にはいかん」


「違うのか」


「俺から正式に推薦を出す。必要な手続きについては確認しておく」


「試験とか?」


「そのあたりも含めてだ」


「分かった」


「それまではCランクだ」


「じゃあ」


 シオンが笑う。


「Cランク最後の日になるかもしれないな」


「まだ分からないわよ」


「推薦は出すと言ったが、今日昇格するとは言ってないぞ」


「分かってるって」


「本当か?」


「信用ないなあ」


「日頃の行いね」


「リュナはどっちの味方なんだよ!」


「私の味方」


「なんだそれ!」


「シオンさん!」


 ロッテがアイアンミノタウロスを見る。


「これも買い取ってもらえるんですよね?」


「あ」


 シオンが男性職員を見る。


「お願いします」


「……」


 返事がない。


「どうした?」


「お前」


「はい?」


「これ全部査定するんだよな?」


「もちろん」


 職員が。


 解体場を見渡す。


 アーマーリザード。


 ハイオーク。


 ブレードウルフ。


 ポイズンスパイダー。


 オーガファイター。


 ストーンゴーレム。


 リザードウォリアー。


 ブラッドウルフ。


 アイアンゴーレム。


 さらに。


 その他。


 モンスターハウスで倒した大量の魔物。


 そして。


 完全な状態で持ち込まれた。


 アイアンミノタウロス。


 巨大戦斧。


「……」


「いくらになる?」


「今日中には無理だ」


「え?」


「え? じゃない」


「夜まで待つけど」


「無理だ」


「じゃあ明日の朝」


「無理だ」


「まだ何も言ってないだろ!」


「朝一で来る気だろ!」


「なんで分かった!?」


「分かるわ!」


 リュナが吹き出した。


「ほら、分かりやすいのよ」


「そんなに!?」


「はい!」


「ロッテまで!」


 職員が頭を抱える。


「解体して、素材を確認して、状態を見て、魔核を取り出して……何体あると思ってるんだ!」


「いっぱい」


「帰れ!」


「じゃあ明日」


「昼から来い!」


「十二時?」


「十三時!」


「なんで一時間増えた!?」


「お前が朝から来そうだからだ!」


「十二時は昼だろ!」


「十三時!」


「十二時半!」


「値切るな!」


「時間だぞ!?」


「うるさい!」


「じゃあ十三時で」


「最初からそう言え!」


「分かったよ」


 シオンが渋々頷く。


「じゃあ明日の十三時」


「ああ」


「全部でいくらになるか分かる?」


「だから明日だ!」


「だいたい」


「帰れ!」


「はい!」


 三人が解体場を出ていく。


「楽しみですね!」


「かなりいくと思うぞ」


「シオン、明日絶対早く起きるでしょ」


「いつも起きてるだろ」


「十二時五十分くらいにはギルドの前にいそう」


「十三時って言われたからな」


「十分前ならいいと思ってるのね」


「普通だろ?」


「どうかしら」


 三人の声が遠ざかっていく。


 残された男性職員は。


 解体場いっぱいに並んだ魔物を見る。


「……」


 アイアンミノタウロスを見る。


 巨大戦斧を見る。


 もう一度。


 大量の魔物を見る。


「……これ、本当に明日の十三時までに終わるのか?」


 セリスが横から答えた。


「頑張ってください」


「手伝ってくれ!」


「私は初討伐報奨金とBランク昇格推薦の手続きがありますので」


「ギルドマスター!」


「俺も仕事がある」


「俺にも仕事があるんだよ!」


 解体場に。


 職員の叫び声が響いた。

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