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ゲーム世界に転生して最強になった俺、なぜか青春だけ攻略できない  作者: 愛川 唯々
第2章

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23/25

第22話:僕がいたい場所

20時に更新します。

 ~影山シュウト視点~


 ――進級試験の後。


 僕は学園に行かなくなった。


 別に誰かにいじめられたわけじゃない。

 何か言われたわけでもない。


 ただ。


 行きたくなかった。


 教室に入ったら、黒峰がいるかもしれない。


 だって。


 ――クラスで最弱は僕になったのだから。


 いや、黒峰が学園に来てなくても、僕が最弱なのは一緒だ。


 いつしか僕の拠り所となっていた、黒峰よりは上、がもうないのだ。


 僕はその事実を誰かに突きつけられたくなくて。


 学園に行くことが出来なかった。


     ◇


 そして、学園を休む日が増えていった。


 一日。

 一週間。

 一ヶ月。


 最初は仮病で休んでいた。


 そのうち連絡もせず、行かなくなった。


 パーティーを組んでいたが、連絡は来なかった。


 パーティーメンバーも黒峰にやられてショックを受けているのか。

 それとも僕なんて最初からいなくても良かったのか。


 それすらわからない。


 わかりたくなかった。


 学校に行かない日が続いたとき、ふとダンジョンへ行くことにした。


 僕にもそうなった理由はわからない。


 黒峰みたくなりたい、と思ったのか。

 僕にはそれしか残ってない、と思ったのか。


 きっかけはわからないが、僕はダンジョンをソロで潜った。


 だけど。


「……はぁ」


 思わずため息が出る。


 ――ソロでの攻略は思った以上に順調だったのだ。


 自分のスキルの存在感を消すというのは、ソロ向きだとは思っていたが、パーティーの時とこうも違うのかと思う。


 敵にバレにくく、不意打ちができる。

 倒せないと判断したら、見つからない様にやり過ごせる。


 最初からソロしていれば、とも思うが問題もあった。


 一人でモンスターを倒す。

 一人で素材を集める。

 一人で宝箱を開ける。


 誰にも認知されないのだ。


 ソロだから当然だが、これでは何も満たされない。


 ――僕は誰かに認められたかった。


 ソロでやっていても、攻略していけばいつかみんなに認められると思う。


 でも。


 僕の中の《《ナニカ》》が囁く。


 早く認められろ。

 早く有名になれ。


 早く。

 早く。


 そんな声が聞こえる気がするのだ。


「……でも、パーティーなんて。今更……」


 ぽつりと呟く。


 僕も自分の力の使い方がわかってきた。


 ソロよりは効率が落ちるが、パーティーでも活躍できると思う。


 だけど。


 ……僕は怖かった。


 教室に行ったら、入学式の黒峰みたいに最弱だと馬鹿にされるかもしれない。


 それを考えると、どうしてもクラスメイト達とはパーティーを組む気にはなれなかった。


 でも。


 誰かとパーティーを組みたい。


 仲間、と認められたい。


     ◇


 その日も。


 僕は一人でダンジョンを歩いていた。


 攻略中の中階層。


 今の僕ならソロでも問題ない場所だ。


 レベルの上がりはいい。

 スキルも順調に育っている。


 でも。


 だから何だという話だった。


「……帰ろうかな」


 そんなことを考えていると。


 少し先から人の気配がした。


 巧妙に気配を隠しているようだが、5人くらいのパーティーだった。


 別に覗き見るわけではなかったのだが、何故か気になってしまい、通路の曲がり角から様子をうかがう。


 するとその5人組は、パーティーというわけではなく、3人対し2人で、何か怪しげな物を取引していた。


「おい、例のモノは持ってきているんだろうな!?」


「へへへ、ちゃんと用意してますよ。協会からちゃんとくすねてきましたから。それで、金は?」


 少しの会話でもわかる。


 これは、犯罪の取引なのだと。


 確かにダンジョンではそういうことが行われていると聞いたことがある。


 しかし、自分がその場面に出くわしてしまうとは。


 見張りもいるようだが、ソロのためずっと隠密状態だったことで、バレずにこんな場面に出くわしてしまったようだ。


 こんな場面を見てしまって、僕には2つの選択肢があった。


 犯罪を止めるために戦うか。

 バレずに逃げて、協会に報告するか。


 悩むまでもなく、僕は後者を選んだ。


 みんな強そうで、今の僕ではどうしようもない。


 ここで僕が戦って犯罪者を倒せば、一躍有名になれそうだが、やはり僕にはそんなことはできないのだと諦める。


 そしてゆっくりとその場を離れようとすると、取引している現場にモンスターがゆっくりと天井から近づいていくのが見えた。


 僕以外、誰も気づけていない。


 この階層で極稀に出ると言われる、隠密性能が凶悪なレアモンスターだった。


 僕は探知系は得意だが、その犯罪者のグループは気づけていないようだった。


「……」


 一瞬迷う。


 関わりたくない。


 それに相手は犯罪者たちだ。


 でも。


 放置するのは後味が悪い。


 僕は小さく息を吐いた。


「はぁ……」


 路地から飛び出て、大声でその集団に警告する。


「天井からモンスターが近づいています! 気を付けてください!」


「あ、誰だ!? ってか、天井? ……うお、モンスター!? お前ら、構えろ!」


 僕の注意でモンスターに気が付き、3人グループの方が戦闘態勢に入った。


 2人グループの方は僕とは別方向に逃げ出していく。


 この時、僕もすぐに逃げればよかったのだが、それは後の祭りだろう。


 3人組はモンスターの発見こそ遅れていたが、発見してからは、かなりの連携で危なげなくレアモンスターを倒した。


 だが、その後勝利の余韻に浸る間もなく、僕のところに来る。


 逃げられない、と思っていると、リーダーと呼ばれていた人が満面の笑みで話しかけてくる。


「おう、助かったぜ! モンスターの接近を教えてくれてありがとよ! うちのメンバーは探知系苦手でよぉ」


 そんなことを言ってくる。


 ありがとう。


 そんな言葉を聞いたのは久しぶりだったかもしれない。


 僕が面を食らっていると、他のメンバーが怪訝そうな顔で、リーダーに話しかける。


「リーダー、助かったけどよぉ。こいつに取引現場を見られちまったんじゃねぇか?」


「そうそう、どうすんだよ!? てか、取引相手も金払わずに行っちまったし、どうすんだよ!」


「いや、だがなぁ。一応、助けてもらったし、変なことはしたくねぇなぁ。それに逃げてった奴らも、隠密上手かったし、見つけられんだろうよ。ボスには……土下座して謝ろうぜ」


 僕と逃げていった人たちの所業をどうするかでもめていた。


 僕は恐る恐る手をあげる。


「あ、あの、ぼ、僕は、その、ここであったことは言わないので、助けていただけると……」


 何とか言葉を絞り出すと、リーダーの方はぽかんとしたあと、笑い出す。


「がっはっは、大丈夫大丈夫! 君に助けられたんだ、俺たちは何もしないさ! 通報されても、俺たちが悪いことしてたんだ! 文句は言わないさ!」


 そんな感じで笑い飛ばす。

 メンバーの方は明らかに不満そうだったが。


「えー、リーダー。それはどうなんすか? 俺、捕まりたくないっすよ」


「リーダー、それはどうでしょうか」


 しかし、リーダーはそんな意見を払しょくする。


「ふん、じゃあ殺すのか? それとも拷問? 流石にそんなことまではしたくねぇよ。それに助けてもらったんだぞ? 恩を仇で返したくはねぇなぁ」


 犯罪者だけど、変に流儀があるようだ。


 二人はしぶしぶ承諾する。


 僕に「言わないでくれよ!」って懇願はしてきたけど。


 とにかく、僕はこの場を離れられそうだ。


 そして、僕がその場を離れようとすると、リーダーの方が僕に声をかけた。


「あのモンスターを見つけられるなんて、若そうなのに、ホント凄かったぞ!」


 その言葉に。


 僕は少しだけ固まった。


 凄い。


 そんな言葉を僕に言ってくれるなんて。


 学園では聞いたことがなかった。


「いや……別に」


「まぁ、おれも助かったぜ」


 別の男も言う。


「兄ちゃんいなかったら終わってたわ」


「そうそう」


「マジで助かったよな」


 口々に言われた。


 なんだろう。


 変な感じだ。


 胸の奥がむず痒い。


 でも、嬉しかった。


 本当に少しだけ。


「……そうですか」


 それだけ返す。


 そして、背を向けてその場から離れようとしたのに、どうにも足が動かなかった。


 ああ、僕はこれを求めていたんだ。


 こんなのを知ってしまったのに、離れたくない。


 離れれば、また一人になる。


 帰れば、また誰とも話さない一日が始まる。


「あ、あの!」


 振り返って、声をかける。


「僕、影山って言います! ぼ、僕ならさっきの2人を追えるかもしれません!」


 思わず、そんな言葉をかけてしまう。


「えっ!? いや、そりゃあ、嬉しいけども、意味、分かってんのか?」


 もちろん、その意味を理解している。


 だけど、僕はどうしても手放したくなかった。


「……はい、分かってます」


 リーダーは神妙にもう一度聞いてくる。


「………本当にいいんだな? 後からやめた、は無理だぞ?」


 僕のは一瞬逡巡した後、答えを出す。


「………はい、僕を皆さんの“仲間”にしてください!」


 そして、頭を下げ続けると。


 三人は笑った。


「そうか、分かった! 影山、だな。よろしく!」


「おう、今日からよろしくな!」


「よっしゃ! お前は今日から俺らの仲間だ!」


 その言葉が妙に胸に残る。


 仲間。


 ただそれだけの言葉なのに。


 相手から言ってくれるだけで、どうしてこんなにも嬉しいのだろう。


 僕は。


 ずっと、こういう場所が欲しかったんだ。


読んでいただきありがとうございます。


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