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ゲーム世界に転生して最強になった俺、なぜか青春だけ攻略できない  作者: 愛川 唯々
第2章

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22/26

第21話:お前が下で、僕が上!

20時に更新します。

 ~影山シュウト視点~


 ――1年8ヶ月前。


 僕の名前は影山シュウト。


 今日からダンジョン学園に通う。


 僕はここで強くなって、有名になるんだ。

 そして、みんなに認められる!


 中学までは違った。


 影が薄い。

 地味。

 え、いたの?


 そんな事ばかり言われていた。


 いや、言われないでスルーされることも多かった

 みんな僕に興味がなかったから。


 だから僕は決めた!


 高校で変わる!


 ダンジョン学園でなら、僕でも変われる!


 ダンジョンで強くなれば。

 有名になれば。


 みんなが僕を見る!


 僕の輝かしい青春がここから始まるんだ!


     ◇


 ホームルーム。


 先生の指示でステータスを確認する。


 教室がざわついていた。


「ユニークスキルだ!」

「俺も俺も!」

「すげぇ!」

「みんな凄いステータスだ!」


 あちこちから歓声が上がる。


 僕もステータスを見る。


 影山シュウト。


 レベル1。

 ユニークスキル。

 『存在希釈』

 ――存在が薄くなる

 スキル

 『隠密:Lv1』『探知:Lv1』

 ステータス

 ――


「……」


 ユニークスキルは持っていたが、微妙だった。


 強いのか弱いのか分からない。

 説明を読んでもよく分からない。


 存在が薄くなる。


 それだけだった。


 それって中学までと変わらなくない?


 ステータスも微妙だ。


 いや。


 クラスメイト達から聞こえてくるステータスと比べたらだいぶ低い。


 少しだけ嫌な予感がした。


 周りを見る。


 ユニークスキル持ってるのこと自体、すごいことのはずなんだけど、周りの話ではみんな持っているようだ。


 みんなユニークスキルで盛り上がっている。


 自己バフスキル。

 魔法威力増大スキル。

 回復スキル。


 分かりやすくて、なんて羨ましいんだ。


 僕のだけ地味だ。


 しかも弱い。


 僕はまた高校でも変われないのだろうか。


 そんなことを考えていると。


「うおっ」


 誰かが声を上げた。


 教室中の視線が一か所に集まる。


 僕もそちらを見る。


 そこにいたのはクラスの不良っぽい奴に絡まれている、黒峰ユウマというクラスメイトだった。


「おいみんな! こいつのステータス、スゲー弱ぇぞ! しかも、ユニークスキルだけじゃなくて、初期スキルすら持ってねぇよ!」


 不良が黒峰のステータスをみんなにさらしていた。


 教室がざわつく。


「え、めっちゃ弱っ!」

「こんなステータスあり得んのか!?」

「初期スキルもないのかよ」

「うわ、雑魚ぉ……」


 黒峰のステータスを見た人は口々にそんな声を漏らしていた。


 僕も黒峰のステータスを見る。


 ステータスが僕よりもかなり低い。

 クラスで一番低いではないか?


 スキルのところはユニークスキルだけでなく、今まで生きてきた経験や適性でもらえる初期スキルすら記載がない。


 端的に言うと――才能が皆無、なのだ。


 こんなステータスが自分じゃなくて良かった、と心から思う。


 こんなステータスでは、さぞ絶望しているだろうと思って、黒峰を見てみると、ケロッとしていた。


 え、その程度の反応!?


 いや、よく見ると不良とかを見て首をかしげている。

 まるで、なんでそんな事をしているのだろう、と不良の行動に()()()を感じている雰囲気だ。

 確かに人のステータスをさらすなど、最低の行為ではある。


 だが。


 普通もっと取り乱すはずだ。


 不良からステータスを取り戻そうとするし、怒ったりするだろう。


 いや、僕だったらこの場から逃げている。


 しかし、黒峰は。


 静かに席に座っている。


 ただそれだけだ。


 なんというか、()()()()()()()()()かのようだ。


 それとも、()()()()()()のだろうか。


 そんな風に黒峰を見て思っていると、不良が話しかけてきた。


「おい、お前は影山シュウトって言うのか? 影山はどんなステータスなんだよ」


 まさかそんな事を普通に聞いてくるとは、常識がなさすぎる。

 ……いや、これはマウントを取ろうとしているのか。


 今後の学園生活で幅を利かせるためだろうけども・・。


 すごく断りたい。


 でも、どうせパーティーを組む時にはバレるんだ。


 ……大丈夫、黒峰よりはマシだから。


「僕はそこまでステータス高くなかったけど、黒峰よりは高いようで安心したよ。ちゃんとユニークスキルとかもあったからよかったよ」


「お! お前もユニークスキル持ってたかぁ。じゃあ、このクラスで持ってないの黒峰だけだな! ステータスも一番雑魚だったみたいだなぁ!」


 こうして。


 ――黒峰はクラスで最弱と呼ばれるようになった。


 僕はこの時思った。


 ――良かった。


 本当に。

 心の底から。


 僕より下がいた。


 安心した。


 情けない話だけど。


 自分より弱い奴がいることに安心してしまった。


     ◇


 入学式の日以降、黒峰は学校に来なくなった。


 みんな察していた、もう黒峰は来ない、と。


 それは仕方ないことかもしれない。


 あんなステータスでは、どうやってもダンジョン攻略なんて無理だ。

 出来たとしても、ずっと弱いままだと思う。


 そんな奴をわざわざパーティーに入れる者はいない。


 誰も黒峰を学校に来させようとする人は出なかった。


 逆に来たとしても、黒峰が大変な思いをするだけだろう。


 数日もすると誰も話題にしなくなった。


 そんなものだろう。


 ダンジョン学園は話題に事欠かない。


 どこかのパーティーが10階層まで攻略した。

 強い武器を宝箱から手に入れた。

 学園長から直接褒められた。


 話題は次から次へと出てくる。


 最弱の黒峰が学校に来なくなったところで、すぐに忘れられてしまう。


 もちろん。


 僕もその一人だった。


 とはいえ、少しだけ不安もあった。


 黒峰がいなくなった。


 そうなると、次の最弱が僕だったからだ。


 だが。


 そこは黒峰が最弱すぎたせいで、みんなその部分だけは覚えていたからか、僕が最弱と言われることはなかった。


 そこだけは黒峰には感謝している。


 ――最弱でいてくれてありがとう。


 僕自身最低だと思う。


 それでも黒峰を思い出す度に、そんな気持ちが浮かんできた。


 有名になりたい。

 みんなに認められたい。


 入学したころは、そんなことばかり考えていた。


 でも。


 現実は甘くなかった。


 周りには自分より才能のある奴ばかり。

 強い奴ばかり。

 目立つ奴ばかり。


 そんな中で、黒峰だけが僕より下にいてくれた。


 だから。


 黒峰にだけは勝っている。


 そう思うことで、自分を保っていた。


 いつしか。


 みんなに認められたい、という願いよりも。


 黒峰より上でいたい、という気持ちの方が大きくなっていた。


 ――試験の日までは。


     ◇


 進級試験当日。


 ――僕は自分のちっぽけなプライドが崩れていく音が聞こえた気がする。


 黒峰が試験に現れた時はみんな驚いた。


 授業にも出てない。

 ダンジョンでも見た人はいない。


 正直、何しに来たんだこいつ、とみんな思ったはず。


 まぁ、落ちると分かって記念受験みたいなものだろうと、みんながバカにしていただろう。


 そんな黒峰がダンジョン攻略実績で、110階層だと提出した時は鼻で笑った。


 あり得ない、と。


 どうやって攻略実績がデータとして保存されているデバイスを改ざんしたのか、という疑問はあったがとてもあり得ないことだ。


 だって。


 110階層だぞ?


 世界でも一握りしか到達していない場所だ。


 それを。


 あの黒峰が?

 あの最弱だった黒峰が?


 あり得るわけがなかった。


 そして。


 黒峰の実績は不正だと判断された。


 あの時の僕も、不正だと信じて疑わなかった。


 あれよ、あれよという間に黒峰を制裁するための模擬戦が行われたのだ。


 当たり前のことだ。


 強い探索者というのは国防にも関わってくる。

 その記録を改ざんしたのだ。

 重罪である。


 それをみんなで痛めつけて、終わらせようとしているのだ。


 少し隠ぺいのにおいがするが、これで済んで黒峰的には良かっただろう。


 責任者ということで、学園長と担任の先生が入って、クラスメイトからは黒峰を除く男子全員が黒峰をボコボコにしようと、黒峰の前に立った。


 ――勝負は黒峰の圧勝だった。


 黒峰をボコボコにしようとしたメンツは、黒峰から逆にボコボコにされた。


 10階層まで攻略している僕を含むクラスメイトも。

 15階層まで攻略しているクラスの1軍パーティーも。

 70階層まで攻略していた担任の先生も。

 学園最強で90階層まで攻略していると言われた学園長も。


 全員等しくボコボコにされた。


 僕とか降参してたものにも、「さえずるな!」とか「まだやるかい」とか、漫画できいたセリフを言いながら、丁寧に全員をボコボコにした。


 模擬戦のルールでHP1残るとはいえ、やりすぎだと思った。


 そして、同時にこんな風にわからされた。


 自分が黒峰を見下している間に、黒峰はずっと先へ進んでいた。


 僕が安心していた相手は、いつの間にか手の届かない場所にいた。


 有名になりたい。

 みんなに認められたい。


 そんな願いを抱いて入学したはずだったのに。


 なのに。


 気付けば僕は。


 ――黒峰より上でいたい。


 それしか考えていなかった。


 そして。


 そんな唯一の拠り所すら。


 黒峰は簡単に踏みつぶした。


読んでいただきありがとうございます。


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