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ゲーム世界に転生して最強になった俺、なぜか青春だけ攻略できない  作者: 愛川 唯々
第1章

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2/26

第1話:ゲームと違くない?

20時に更新します。


 学園へ通おうと決意した翌日の朝。


 制服に袖を通した俺は、鏡の前でぼんやりと“自分”の姿を見ていた。


「……やっぱ、慣れんわぁ」


 制服が、というわけではない。

 ……いや、実は制服も慣れてない。


 前世では学ランだったのに、ダンジョン学園ではブレザーなのだ。

 それに転生して2年だが、この制服を着たのはほんの数回しかない。


 そちらではなく、今の顔にまだ慣れてないのだ。


 ―――黒峰くろみねユウマ。


 俺が転生したゲームの最弱キャラ。


 前世からするとイケメンなのだが、この世界ではモブ顔に分類されてる。

 前世よりも整ってはいる。


 だが。


 18年も向き合ってきた自分の顔から変わったのだ。


 それなりに愛着もあった顔だけに、まだまだ違和感がとれそうにない。


 違和感についてはできるだけ考えないようにして、支度を済ませる。


 黒峰ユウマ:二年ダンジョン科―Aクラス在籍


 専用のデバイスを開くと、ダンジョン学園にはまだ在籍中であることがわかる。


 学園にちゃんと通ってはいないが、成績や出席日数については問題ない。

 学年末に行われる試験さえパスできれば、進級や卒業についてはどうとでもなる設定だ。


 去年の進級試験でも必要点数は大幅に超えていた。

 ダンジョン攻略による点数で、お釣りが出るほど稼いでいたからだ。


 今年もまた、試験を受ければ三年生への進級は問題ないだろう。


「学校に行く意味はないけども……まぁ暇つぶしには丁度いいよな」


 玄関で靴を履き、家を出る。


 もちろん、行く意味はない。


 でも。


 ――暇なのだ。


 この世界の中心でもあるダンジョンに飽きてるのだ。

 だったら、他で暇をつぶさないと。


 ゲームの時なら、アイテムをカンストコンプをするために周回でもしていただろう。

 動画でも見て、他の作業もしながら。


 それがこの世界でもできてれば、ダンジョンをまだ楽しめただろうな。


 現実で命懸けの攻略になったので、流石にそんなことできなくなった。


 だから。


「とりあえずゲームキャラの日常でも……のぞかせてもらおうか」


 そんな軽い気持ちで家を出た。


     ◇


 学園へ近付くにつれて、妙な雰囲気を感じていた。


「……」

「おい、あれ……」

「なんで来て……」

「こ、殺されるっ!」


 コチラを見る視線。

 ひそひそ声。

 俺を避けるような動き。


 一目散に逃げていく者までいる。


 なんだ、俺が何かしたか!?

 ……いやまぁ、去年の試験ではゲームにない模擬戦イベントが発生して、調子に乗ってやりすぎた気はするけど。


 でもただの模擬戦だぞ!?

 ちゃんとHP1で止まるし、五体満足で死んだやつもいない!

 ……見ていた人たちの顔はだいぶ引き攣ってたけど。


 だけど、俺のダンジョン攻略について不正疑惑かけてきて、模擬戦を挑んできた向こうが悪い!

 ……学園長とか、ゲームでは強さがわからなかった人たちもシバいちゃったけど。


 総括:俺、悪くない。


 試験のことを思い出し、自然と笑みが出てしまっていた。

 笑顔の俺を見た瞬間、先ほど以上に周りから人が離れていく。


 なんなんだ、本当に。

 失礼な奴らだ。


 そんなことを考えながら、教室の扉を開ける。


 ――教室は静まり返っていた。


「「「…………」」」


 いや、怖。

 なにこれ。


 教室にいる全員が、一斉にこっちを見てくる。

 そのくせこちらと目が合いそうになると、全力で逸らしてくるのだ。


 希少なレアキャラとでも思われている?


 ……ん?

 妙に人数が少ないな。


「……?」


 三十人クラスのはずなのだが。

 ホームルーム前なのに、教室にいるのは半分もいないぞ?


 ……あ、自主的にダンジョン攻略中なのか?


 プレイヤーが操作していないキャラも学校を休んでダンジョンに行くんだなぁ。

 これも、ゲームが現実になったことの影響だな。


 そんな吞気なことを考えていると――


「アンタ……ッ!!」


 突然、鋭い声が響いた。


 思わず声のした方に視線を向ける。


 窓際の席から立ち上がっていたのは、漆黒の長髪を静かに揺らしていた清楚な見た目の女子生徒だった。


 確か、九条くじょうミオだったな。


 良家のお嬢様設定のキャラだ。

 ゲームではおっとりしていて、上品な振る舞いをする性格で結構人気が高いキャラだったはずだ。


 ステータスもクラスでは5本の指に入るくらいの優秀で、特に魔法関係のステータスが優秀なキャラだ。ユニークスキルも魔法と相性が良いから、ダンプロ初めて何もわからないならパーティーに絶対入れとけってなるキャラなんだよなぁ。

 俺もゲームを始めた当初はお世話になった。


 でも。


 俺が覚えている限りは、こんな風に相手を恫喝するようなキャラじゃなかったはずだ。


「よく学校に顔出せたわね……!」


「……は?」


「アンタのせいで……っ」


 震えている。


 怒り、なのか。


 いや、それだけじゃない。

 今にも泣きそうな顔もしているし、腰も引けていた。


 悲しみ、なのか。

 恐怖、なのか。


 なんか色々混ざっている気もする。


 いや、そんな事よりも。


「ちょ、ちょっと待て。俺がなんかしたのか?」


「――っ! したでしょうが!!」


 教室の空気がさらに重くなる。


 いや、だから何を?


「アンタの……アンタのせいで、このクラスはバラバラなのよ!!」


「……へ?」


 意味が分からない。


 いや、まぁ、登校している時から、ちょっと俺の周りの空気が変だったのは知ってる。

 たぶん試験でやり過ぎたのかなぁ、とは思っていたけども。


 ――でもそこまでか?


 俺としては、降りかかる火の粉を払っただけなんだけどもな。


 ……まさか漫画の主人公みたいなことを思う日が来るとは。


「なんで今更ノコノコ戻って来たのよ……!」


「え!? いや、ちょっと暇だったから……」


「ッ……!」


 あ、なんか今、さらにキレた!?


 地雷だったのか?


 でも、本当に暇だったから、他に言いようがないし。


「おやおや、朝から随分と険悪だねぇ」


 その時、教室の後ろ扉が開いた。


 入ってきたのは、銀髪の短めなソバージュヘアにした、中性的なイケメン然とした長身の女子生徒だった。


 この子は神代かみしろレイナだったな。


 女子人気が高そうな、いわゆる王子様系女子。

 宝塚の男役みたいな振る舞いをする、こちらもかなり人気なキャラだった。


 ステータス自体は中の上くらい。

 ただ、ユニークスキルが女子限定ではあるが強烈なバフを撒けるから、女子のみのパーティーを組みたいなら必須のキャラだった。

 女性のみでパーティーを組むなんて、男ゲーマーなら誰しもが一度は通る道だからなぁ。

 俺も一時期は百合百合パーティーを組んで遊んでいた。


「……あ、黒峰?」


 だが。


 入ってきた神代は、俺を見るなり目を見開いた。


「やっと、やっと見つけた……!」


 ……ん?


 次の瞬間。


 神代は一直線にこちらへ迫ってきて。


 ぎゅっ、と。


 俺に抱きついてきた。


「……は?」


「ユウマ様、急に来なくなるから心配しましたよ!」


 甘えるような声で、俺の胸に顔をうずめてくる。


 ……ふぇ? ヤワラカイ、イイニオイガスルナァ。


 ――いや、違う違う!


 お前、男に抱き着いたり、そんなキャラじゃないだろ!?


 え、ほんと何これ!?


 教室の空気が凍ったし、俺の脳みそはもっとフリーズしたぞ。


 九条が困惑した声を漏らす。


「神代さん……?」


 いや、俺が一番困惑してるけどな!


 なんだこれ。

 何か、俺が知らないイベントが始まっている?


 そんな俺の困惑など知ろうともせず、神代はさらに身体を寄せてくる。


「今日はちゃんと学校に来てくれたんですね。とても嬉しいです!」


 少し腕に力を入れて、より密着してくる。


 めちゃくちゃ媚びてくるやないか!


 ……怖い。


 喜びよりも怖さが勝ってきた。


 え、何これ。

 本当に何?


 俺があわあわしているだけで動けないでいると、神代は九条へ首だけ振り向いた。


「ミオくん。気持ちは分かるが、そんなにユウマ様を責めるのは感心しないなぁ」


「で、でも……!」


「悪いけどボクはユウマ様側に付くから!」


 柔らかな声色とは裏腹に、その言葉は冷たかった。


 九条は唇を噛み、悔しそうに席へ座る。


 ……いや。


 マジでなんなんだよ、これ!?


 ――九条くじょうミオ。


 ゲームではおっとりしたお嬢様キャラだった。

 少なくとも、あんな風に怒鳴るキャラじゃない。


 そして。


 ――神代かみしろレイナ。


 女子を口説くような王子様系女子だった。

 少なくとも、男に抱きついて媚びるキャラじゃない。


 なのに。


 目の前では、その二人が俺の知っている姿と全然違う行動をしている。


「さ、ユウマ様。席へ行きましょう!」


 神代が笑顔を向けてくる。


 俺はその顔を見ながら、ようやく気付いた。


 違和感の正体に。


 神代レイナは知っている。

 九条ミオも知っている。


 でも。


 ――目の前にいるコイツらは知らない。


「……誰?」


 思わず、そう口にしてしまう。


 俺が知っているゲームキャラと違いすぎるぞ!?



読んでいただきありがとうございます。


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