第17話:平和主義なんですぅ
20時に更新します。
数十分後。
俺は、ダンジョン協会の応接室にいた。
「それで」
向かい側に座るスーツ姿の男性――協会支部長が、こめかみを押さえながら言う。
「なぜ受付前で探索者四名を戦闘不能にしたのですか?」
「いやぁ……」
俺は困ったように頭を掻いた。
「俺も被害者なんですが」
「だから、戦闘不能に?」
「いや、加減はしたんですよ?」
「したんですか!?」
なんでそんなに驚くんだ。
ちゃんと生きてるぞ?
むしろ俺が驚いた。
だって、弱かったもん。
てか、あんなやからは協会で取り締まっといてほしい。
いや、そんなことより。
(なんで俺はまたこうなるんだよ……!)
せっかくクラスメイトの問題を解決しようと思った矢先だぞ?
試験の模擬戦といい、今回といい。
ダンジョンの外では、ゲームになかったイベントばかり起きている気がする。
呪われてんのか?
「周囲の証言と監視映像は確認しました」
支部長が疲れた顔で言う。
「どうやら先に絡んだのは向こうのようですね」
「ですよね?」
「ただ」
ギロリと睨まれた。
「もっと、穏便に、解決してください」
「一応、穏便だったんですが……」
「私が現場に着いた時、気絶、失禁、錯乱、発狂と四者四様の有り様でしたが?」
「ははは、まぁ」
「まぁ、じゃありませんよ」
いやぁ、思いのほか効いたよね。
俺の威圧。
ちょっと怖いな。
もし学園で使ってたら、今の比じゃないくらい嫌われてただろうなぁ。
威圧は封印しないと。
「とりあえず今回は正当防衛扱いになります」
「おぉ」
「ただし! 次からは職員を呼んでください」
「……善処します」
「……信用できませんね」
失礼な。
俺は基本、平和主義ですよ?
ただ、相手が攻撃とかしてくるから、つい?
「それで」
支部長が話を戻した。
「本来の用件は?」
「あ!」
そうだった、目的を忘れていた。
「犯罪組織の捕縛に協力して欲しいんです」
その瞬間。
支部長の顔から先ほどの疲れたような感じが消えて、真剣な顔になった。
「……どういう意味でしょうか?」
声のトーンが変わる。
俺も少し真面目になる。
「昨日、薬物取引を見ました」
そして、昨日見た取引について説明した。
場所。
人数。
そして、その上にいる連中の存在。
支部長は真面目な顔でメモを取っていた。
「上、だと?」
「その上の連中がいる場所も分かってます」
「どうやって?」
「追跡用アイテムです」
「追跡用?」
「逃げる前に印を付けておいたので」
「……そんなことが可能なのか?」
「まぁ、それなりのレアアイテムなので」
「そうか……?」
支部長は訝し気な顔になった。
まぁ、この世界は全然深層を開拓できてないからなぁ。
知らなくてもしょうがない。
「うーむ、そのようなアイテムは聞いたことがない。証拠とかは出せるかな?」
「いや、証拠自体は出せないですねぇ。俺がアイテムを使ったから俺には場所がわかるのですが」
まあ、そこはそうだ。
俺だっていきなり言われても信じない。
でも、このために切り札を用意している。
「じゃあ、これを渡すので手伝ってもらえます?」
アイテムボックスから瓶を二本取り出した。
支部長の動きが止まる。
「…………」
目を限界まで開けた状態で固まっていた。
「そ、それは……」
「エリクサーですね」
「本物か!?」
「本物です」
支部長がソファから腰を浮かした。
まぁ、驚くよねぇ。
「いや待て……何故そんな物を高校生が普通に出してくるんだ……?」
「取ってきました」
支部長が固まった。
まぁ、そうなる。
エリクサーだもん。
俺だって知らない高校生が突然エリクサー出してきたら怖い。
盗んだ?って思って、通報する。
……あれ?
もしかして今の俺、かなり不審者では?
いやいや、流石にエリクサー二本が盗まれたなら、話題になっている。
流石に通報はないだろ。
ないよね?
「……」
支部長が遠い目をしてる。
心ここにあらず、といった感じだ。
俺は支部長の意識を戻すように強めに言葉を出す。
「それで、返答は?」
強気に言ってみる。
正直、断られたら普通に困る。
いや。
困る、じゃないな。
一人でやることになるのは、面倒だ。
「手伝ってくれます、よね?」
「……い、いや、待ちなさい!」
支部長が首を振る。
「そもそも君は何をするつもりなんだ」
「潰します」
「何を?」
「犯罪組織を」
「犯罪組織………?」
「元々、一人でやる予定だったんですが……」
支部長が黙った。
そして数秒後。
「……は?」
そんな素っ頓狂な反応をした。
◇
協会を出る。
もう昼を過ぎていた。
「……本当に行くことになったな」
ぽつりと呟く。
神代には。
警察に突き出してやる。
なんて、言ったが、あの時はその場の勢いだったんだけどなぁ。
まさか本当に協会まで巻き込むことになるとは思わなかった。
「影山、か」
空を見上げる。
ゲームでは操作キャラとしか思ってなかった。
性格は、
目立たなくて、
少し陰気で、
強くも弱くもない。
そんなキャラ。
それが今は。
犯罪組織の一員になっている。
「……なんでお前なんだよ」
思わず呟く。
怒っているのか。
呆れているのか。
自分でもよく分からない。
ただ。
ゲームで知っていた影山と。
現実の影山が。
どうしても結び付かなかった。
「まぁ」
今夜聞けばいいか。
影山本人に。
なんでそんなことになったのか。
……まぁ、捕まえた後にでも。
聞けるかどうか分からないけど。
少なくとも。
俺はもう見て見ぬふりをするつもりはなかった。
「というか」
ふと思った。
エリクサー二本。
普通に、渡す、とか言って出しちゃったなぁ。
「……半額だけでもお金もらえて良かったぁ」
危うく無駄にカッコつけるところだった。
エリクサー二本だぞ?
流石に、無料はキツい。
読んでいただきありがとうございます。
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