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ゲーム世界に転生して最強になった俺、なぜか青春だけ攻略できない  作者: 愛川 唯々
第2章

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17/26

第16話:因果は繰り返される

20時に更新します。

 倉庫の屋上。


 影山達が消えた後も、俺はその場に立ち尽くしていた。


「…………」


 夜風が冷たい。


 さっきまで下にいた影山達の笑い声が、頭にこびりついている。


 影山は、脅されていた訳でも、無理やり付き合わされていた訳でもない。


 普通に馴染んでいた。

 普通に笑っていた。


 ――普通に、あそこがアイツの“居場所”になっていた。


「……なんだよ、それ」


 ぽつりと呟く。


 ゲームの影山は、そんなキャラではない。


 もっと暗くて。

 もっと空気みたいで。


 だが。


 現実の影山は。

 ゲームの時と違う。


 それなのに。


 影山には、ちゃんと居場所がある。


 笑い合う仲間がいて。

 必要とされていて。

 あんな風に楽しそうにしている。


 そんなの。


「――ズルい、じゃねぇかよ!」


 俺は、影山が――羨ましかった。


 俺はゲーム世界に転生して、強い力を得たのに、ダンジョン以外は何もかも思い通りにならない。


 それなのにダンジョンには飽きた。


 そして学園に戻ったら、クラスメイトは俺に対して、険悪だ。


 ゲームキャラだからと言って、好感度システムを使うのも躊躇われる。


 ……そりゃ、険悪にはなったのは俺がやり過ぎたのもあるけれど。


 あっちだって悪かったじゃん!


 それなのに!


 それなのに、俺の居場所は学園の屋上しかない!


 人の温もりがない!


 なんで、犯罪してるアイツの方が充実してるんだよぉ……。


「いやいやいや、今はそれどころじゃないよなぁ」


 影山が楽しそうにしてたから、思わず変な事を思ってしまった。


 確かに影山はゲームよりも楽しくやってるのかもしれない。


 だからって、見逃していい理由にはならない。


 麻薬取引にガッツリ参加していた。


 どう考えてもアウトだ。


「……はぁ」


 俺は頭を掻く。


 そして、考える。


 どうするべきか。


 普通なら、警察へ通報。

 あるいはダンジョン協会へ連絡。


 それで終わりだ。


 でも。


「……それで終わらせるのもなぁ」


 もし俺が通報したら。

 影山は、そのまま犯罪者として捕まる。

 終わり。


 それだけ。


 俺にはもう関係なくなる。


 でも。

 それで本当にいいのか?


「…………」


 いや。

 良くはない。


 少なくとも。


 俺が納得できない。


 だって。

 影山は、元々そういう奴じゃなかったのだ。


 なら。


 どこかで間違えたんだ。


 そして。


 もし、その原因の一端が俺にあるなら。


「……責任くらい、取るか」


 小さく呟く。


 別に、影山を救いたい訳じゃない。


 犯罪に手を染めたなら、捕まるべきだ。


 でも。


 このまま見なかったことにしたら。

 多分、俺はずっとモヤモヤしたままだ。


 少なくとも、もう見て見ぬふりはしたくなかった。


 そして。


 プレイヤーとして、アイツの結末を見届けたい。


 ……俺が知らないところで、キャラが死んだのは結構こたえたからなぁ。


「……でも、最後、になっちゃうのかなぁ」


 それでも。


 最後まで見るって決めたから。


    ◇


 翌日。


「よし」


 俺は鏡の前で頷いた。


 作戦は単純だ。


 ダンジョン協会へ行く。

 影山達のことを伝える。

 そして犯罪者グループの検挙に同行する。


 完璧だ。


 前回の犯罪組織は、協会とかと連携してなかったから、多くの犯罪者を取り逃がす結果になったと思われる。


 今回は、同じ失敗を繰り返す気はなかった。


 影山達の上にも人がいるようだし、出来るだけ取り逃さないようにしないと。


「……いや、普通に断られるかな?」


 未成年の学生だし。


 ダンジョンこそがほぼ全てな世界とはいえ、前回の試験みたく変なイチャモンをつけられるかもしれない。


 学園ではそれなりに知られているが、協会とかあまり近寄ってなかったからなぁ。


「うーん」


 少し考える。


 そして。


「あ」


 名案が浮かんだ。


「我ながら天才では?」


 俺は自分自身を褒める。


 装備。

 そう、装備だ。


 この世界には有名装備が存在する。


 国家級。

 伝説級。


 そんな形容詞がつく、探索者なら誰でも知っているような装備。


 そして当然。

 俺は持っている。


 コレクション用に装備はほとんど持っている。


「これ着ていけば舐められることはないだろ」


 完璧である。


 人は見た目が九割。


 強そうな装備を着ていれば強そうに見える。


 つまり。


 上位探索者として、話も聞いてもらえる。


「よし」


 俺はアイテムボックスを開いた。


 そして。


 テレビで見たことある装備を取り出した。


「……いや、これはやっぱりやめとこう」


 仕舞った。


 眩しい。

 あと羽根が生えている。

 尻尾もある。


 完全にゲームでしか許されない装備だった。


 ……でも、これを着て探索してる奴がいるらしいんだよなぁ。


 デッカい角が生えてる装備とか、現実で見たら、頭重くないの?って思ってしまった。


「うーん、実際に見ると俺にはキツいなぁ」


 次。


「……これもダメ、だよなぁ」


 白銀の鎧。


 羽とか角などの余計な付属品は付いていない。


 ……でも、大事なところの部分も少し取り払われてる。


 完全にゲーマーの目を楽しませる用だ。


 テレビではインナーとか、外套とかで自然に着こなしていたが、俺にはハードルが高い。


「強い装備ほど見た目がおかしくなるのは、ゲームあるあるだからなぁ」


 結局。


 比較的マシなデッカい角装備で妥協した。


     ◇


 ダンジョン協会。


 受付へ向かおうとしていた時だった。


「おい坊主」


 声を掛けられたので、振り返る。


 ガラの悪い探索者パーティーだった。


 四人組。

 どいつもこいつも、まあまあって感じだ。


「その装備、どこで拾った?」


「ん?」


「装備ってのはなぁ、自分に見合ったもん付けるもんだぜ?」


 男がニヤニヤ笑う。


「そんな高そうなもん付けてるとよぉ」


 肩へ手を回そうとしてきた。


「悪い奴に取られちまうかもなぁ?」


 あ、ラノベで見たやつだ!


 俺はそんなコテコテのテンプレに少しだけテンションが上がった。


「どうだ、俺たちがお友達価格で買い取ってやるぜぇ」


 相手が俺に威圧してくる。


 現代になっても協会の中ではこんなことあるんだなぁ。


 周りを見るとみんな知らない顔して、気まずげに目を逸らす。


 マジか、これ黙認されてんの!?


 うーん、だったら俺もしていいのか?


 相手の威圧に返すように、俺も威圧をした。


 数十分後。


 なぜか応接室にいた。


「それで」


 協会職員で偉い立場らしい人が疲れた顔で言う。


「なぜ受付前で、探索者四名を戦闘不能にしたのですか?」


 俺は困ったように頭を掻く。


「いやぁ……俺も被害者なんですが」


 また、やっちまったー!


 俺は、本当に学ばない生き物なんだな。


読んでいただきありがとうございます。


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