第13話:ゲームのキャラ、だから
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屋上。
俺は、ずっと神代から聞いた話を考えていた。
――クラスメイトが死んだ。
その言葉が、頭から離れない。
「………」
屋上のベンチから立ち上がれそうにないくらい、体が重く感じる。
ダンジョンで死人が出る。
そのこと自体、この世界では珍しくもない。
実際、ニュースでも時々やっている。
高ランク探索者が死亡。
パーティー壊滅。
中層で消息不明。
そういう話は、普通に存在していた。
でも。
「いや、でもおかしいだろ……」
俺は小さく呟く。
だって。
ゲームではそんなことなかった。
もちろん、キャラロスト自体は存在した。
ダンプロは一応、キャラロストがあるゲームだ。
仲間にしたキャラが死ぬ。
だが。
それには条件があった。
「……プレイヤーとパーティー組んだ時だけ、だったはずだろ」
そう。
キャラロストの条件とは。
プレイヤーが介入しているか、否かだ。
戦闘中に見捨てる。
瀕死のまま放置する。
――そんなことを“プレイヤー”がすれば、キャラロストが起きる。
逆に言えば、プレイヤーがパーティーに誘わなければ。
クラスメイトは勝手にダンジョン攻略をしているはずなのだ。
堅実な攻略で。
キャラロストなども起きずに。
つまり。
俺がパーティーに入ってないのに、クラスメイトが死ぬのはおかしいのだ。
なのに。
現実では死んでいる。
俺は、死んだクラスメイトを含めてほぼ誰とも絡んでこなかった。
パーティー勧誘なんてもってのほかだ。
現実で、他人の命を背負いたくない。
――ソロにしたのはそんな気持ちがほんの少しはあった。
「……なんで?」
意味が分からない。
……あれ?
もしかして、他のプレイヤー、とか?
その考えが、ふと頭をよぎる。
俺以外にも、この世界へ転生した奴がいる、のか?
「……いや、こんなこと考えても意味ないか」
考えたところで証拠なんて何もない。
それに。
今はそんなことより――。
仮に、他にプレイヤーがいたとしても。
もう死んだ奴は戻らない。
ゲームみたいに、ロードなんてできない。
コンティニューもない。
生き返りアイテム?
そんなものは、ない。
あっても、瀕死を治す。
そこまで、だ。
瀕死ではなく、死んでしまってるなら。
もうどうにもならない。
「…………」
胸の奥が、妙に重かった。
別にそのキャラが好きだったわけじゃない。
転生してからも、ちゃんと喋った訳でもない。
でも。
ゲームのキャラが、死んだ。
いや。
クラスメイトが、死んだ。
考えたくないのに、その事実だけが妙に生々しく頭に張り付いていた。
「……授業、受ける気しねぇなぁ」
ぽつりと呟く。
結局、その日は何もできなかった。
◇
翌日。
「……はぁ」
ベッドの上で天井を見ながら、俺はため息を吐く。
ダンジョンへ潜る気は元からない。
学校へ行く気にもならない。
なんかもう、全部だるい。
いや。
元々だるかったけど。
今は種類が違う。
「…………」
死。
ゲームだと軽かった。
キャラロスト。
ここまで育てたのに。
とか。
ロードして戻そう。
くらいの認識だった。
でも。
現実で聞くと重い。
なんか、心にいつまでも響いている。
「……ゲームじゃないんだなぁ」
今更すぎる言葉を呟く。
でも、本当にそうだった。
神代の時も思った。
現実になると、こんなにも違うのだ。
「……ん?」
そこで、ふと考える。
じゃあ。
犯罪集団と関わるようになったクラスメイト。
そいつも。
放置したら、こっちも取り返しつかなくなるんじゃないか?
「………」
神代の件は、上手くいった。
まぁ、好感度問題は残ったけど。
でも少なくとも、最悪の未来は回避できた!
……と、思う。
なら。
今度もなんとかなるかもしれない。
「……まだ犯罪してない可能性もある、しな」
神代の話では、犯罪者と“つるんでる”って段階っぽかった。
なら。
まだ間に合うかもしれない。
「………」
ベッドから身体を起こす。
そして。
「……いやまぁ、別に正義感とかじゃないけども」
俺は小さく呟いた。
そんな立派な理由じゃない。
ただ。
また。
ゲームキャラがおかしくなるなんて見たくない。
勝手にいなくならないでほしい。
俺が。
好きだった、ゲームなのだ。
俺のいないところで、ゲームを無視しないでくれ。
―――ゲームのキャラであってくれよ。
そんな。
自分でも最低だと思う、願い。
それに。
(……キャラロストは、もう嫌だなぁ)
ゲームの時ですらそうだった。
お気に入りキャラが死ぬと普通に萎える。
それが現実に起きてしまった。
犯罪に巻き込まれて、また……。
なんてことも、ないとは言えない。
神代の件は、まだ助けられた。
でも。
死んだら、もうどうしようもない。
なら。
防げるなら防ぎたい。
「……よし」
俺は立ち上がる。
まずは学校だ。
そして。
犯罪集団と関わってるというクラスメイトについて、詳しく聞こう。
「……神代なら、知ってるかな」
あいつ、なんだかんだ知ってそうだし。
それに。
――あいつ以外ちゃんと喋ってくれなさそうだもん!
そう思いながら、俺は制服へ袖を通した。
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