表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゲーム世界に転生して最強になった俺、なぜか青春だけ攻略できない  作者: 愛川 唯々
第1章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
13/26

第12話:覆水は盆に戻らない

20時に更新します。


「…まぁ、でも」


 俺はフェンスへ寄りかかりながら、小さく息を吐いた。


「神代が元に戻ったなら、よかったわ」


「元に戻った?」


 神代が不思議そうに首を傾げる。


「あー……いや、なんでもない」


 危ない。


 流石に“ゲームの時のキャラに戻った”とは言えない。


 でも実際、今の神代はかなり自然だ。


 最初の媚びまくっていた時に比べれば、雲泥の差である。


(……やっぱり、悩みを解決すればいいのか?)


 ふと思う。


 神代は、キャラ個別クエストである妹の病気の件で追い詰められていた。


 それと、俺の試験時の模擬戦での強さを見てしまい、余計に追い詰められてしまっていた。


 だからあんな風に壊れていた。


 でも、その()()()()()()()()が解決した今は、ちゃんとゲームの“神代レイナ”に戻っている。


 なら。


 他のクラスメイトも同じなんじゃないだろうか?


 今の状況はゲームと違って、みんな普通じゃない。


 まぁ、多少重い設定持ちの奴もいた、はずだけども。


 でも少なくとも、今みたいに来てない人がたくさんいたり、空気が死んだような教室にはならないはずだ。


 悩み=個別クエスト、と考えればだ。


 悩みを解決していけば、元のゲーム通りの教室に戻るのではないだろうか?


 そして俺はそんな。


 ゲーム通りな日常を眺めながらの、日常が過ごせるのではないだろうか。


 今の状況もあって、それは感慨深いものがあるだろうな。


(でも、ストーリーは覚えてないんだよなぁ……)


 そこが問題だ。


 俺が覚えているのは基本、ダンジョン攻略関連の事だけだ。


 ステータスは戦闘に関連してるから覚えてる。


 性格とかも戦闘中に掛け声とか、戦闘後にある勝利コメントみたいなのもあって、なんとなくだが覚えている。


 でも。


 サブクエとかストーリーはほとんど忘れているのだ。


 神代の件だって、“エリクサー”という単語を神代から言われることで、やっと思い出したくらいだ。


 ストーリーを覚えてないのに、クラスメイトの悩みを解決していくのはかなり難しいだろう。


 だが。


(まぁ、俺の今あるアイテムとか装備なら大体なんとかなるだろ)


 正直。


 今の俺の手持ちなら、大抵の問題は解決できるだろう。


 病気。

 借金。

 呪い。

 ダンジョンでの力不足。


 俺が持ってる深層アイテム、この世界からしたらバランス崩壊レベルの性能をしている。


 クラスメイトの悩みなんて、大体どうにかなるだろ。


「……よし」


 俺は小さく頷いた。


「なんだい急に」


「いや、ちょっとクラスメイトのお悩みでも解決してみようかなって」


「……は?」


 神代が変なものを見る顔になった。


 失礼な。


 今回の件で分かったのだ。


 ストーリーの問題を解決すれば、ちゃんと元に戻るんだ、と。


「なんか、クラスのみんな、神代含めておかしいだろ? だから、悩みでもあるのかな? って」


「うーん、そりゃボクがおかしいって言われるのはしょうがないけども。突拍子もなさすぎるよ」


 今の俺はちょっとだけ前向きだ。


 神代の件は、かなり上手くいったと思う。


 直接渡さず、ストーリーを解決した。


 好感度も最小限に抑えられたと思う。


 しかもキャラ崩壊も改善できた。


 ほぼ完璧では?


(まぁ、悩みを解決したら多少は好感度上がるかもしれんけど)


 そこは……まぁそのあと何もしなければ勝手に下がるだろう。


 なんだかんだここは現実だ。


 好感度が上がって、好意を抱いても俺自身を知れば勝手に離れていくだろう。


 100年の恋も冷める、ってやつだ。


 ……悲しいけど、これは現実なのよねー。


  力と金、あとは名誉も取ろうと思えば取れる。


 これだけあれば、いつかはモテるだろうさ!


「……ユウマ」


「ん?」


「なんか、泣きそうな顔してるけども。今、かなり哀しいこと考えてるのかい?」


「顔に出てたかぁ。考えてるけど、受け入れているから問題ない!」


「いや、それは問題だと思うけど!……まぁ、本人が言うならいいけどね」


 神代がジト目になる。


 鋭い。


 いや、そりゃ力と金と名誉でモテてやるってかなり悲しいけども。


 だが、万人に好かれる人間ではないことは俺自身が一番知ってる!

 ……じゃあ、万人以外からは好かれるのか、って言われると疑問符が出るのだが……。


「まぁそこはいいだろ! それで、クラスメイトのことを聞きたいんだけども」


「クラスメイトの?」


「教室の雰囲気、かなり変だっただろ?

 俺あんまり学校来てなかったから分からないんだけど、何かあったのか?」


 その瞬間。


 神代の表情が、強張った。


「………」


「神代?」


 神代はすぐには答えなかった。


 何かを言うべきか迷うように、視線を伏せる。


「……本当に、何も知らないんだね」


「? いや、まぁ、ほとんど学校来てなかったし」


「……そうだったね」


 神代は小さく息を吐いた。


 そして。


「……クラスメイトね、一人死んでるんだよ」


「―――は?」


 思考が止まる。


「男子、なんだけど。去年、ダンジョンでね」


「し、死んだ……?」


「……うん」


 神代は重い口調で言った。


「それもあってね。ダンジョンが怖くなったりして、学園に来なくなった子も多いんだ」


「……」


「そのまま引きこもりになった子もいるし、犯罪集団と関わってると噂の男子もいる。……逆に、狂った様にダンジョンへ潜り続けてるパーティーも、あるんだ」


「そんな、の……」


 知らなかった。


 本当に。


 何も。


 ゲームでは。


 クラスメイトは普通にいた。


 みんなゲームの中で、笑っていた。


 でも。


 現実では。


 もう取り返しがつかないところまで、壊れている、のか。


「……もう、戻せない、のか」


 ぽつりと呟く。


 死んだら終わり。


 キャラロストしたら終わり。


 ゲームみたいに、データをロードしたら復活。


 なんてできない。


 神代は何も言わなかった。


 ただ。


 冷たい風だけが、静かに吹いていた。


読んでいただきありがとうございます。


面白いと思っていただけたら、★評価やフォロー、感想などをいただけると執筆の励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ