第63話:『冥界映え。 ―ハッシュタグは #地獄最高 #閻魔様マジ尊い―』
お母さんの掃除で「ホワイト化」した地獄が、まさかの観光地化。
閻魔大王は「ファンサービス」に追われ、三途の川は「渡し船」から「豪華クルーズ客船」へ。
リィナの適当な一言が、宇宙規模のトレンドを作ってしまいます。
「地獄」はもはや、恐れる場所ではなく、予約が取れない「聖地」となったのでした。
「……ちょっと、リィナ。これ、どういう状況?」
お母さんが、ハーブティーを飲みながら地獄のメインストリートを指差した。
昨日まで亡者の悲鳴が響いていた場所には、今やカラフルなネオンサインが踊り、自撮り棒を持った女子高生たちの集団が、「血の池(現在:ラズベリー色のバブルバス)」を背景にピースサインを決めている。
「……SNSでバズっちゃったのよ。『掃除が行き届きすぎてて、逆にエモい』って」
リィナがスマホを見せると、トレンドの1位には**#地獄の朝活**、2位には**#閻魔様の腹筋100分割**という文字が並んでいる。
「リィナ様! 閻魔様と私の2ショットが、100万いいねを突破しました!」
魔王サトウが、地獄限定の「ドクロ型タピオカ」を片手に、今どきのポーズで報告してくる。
「……サトウ、あんた魔王としてのプライドをどこに捨てたのよ」
『リィナ。……それだけじゃない。地獄の「映え」を維持するために、大量のサーバー負荷がかかっている。……(印:次元Wi-Fiの増設)×(印:フィルター加工の自動化)×(投げ銭:地獄限定スイーツの開発)。……よし。これで、どんなにブサイクな亡者も写真の中では美男美女に映る「地獄フィルター」が完成したよ』
パパが指を鳴らした瞬間、地獄中の「加工」が神レベルに到達。
SNSには「地獄に行ったら肌が綺麗になった(物理的に焼き払われて再生した)」「閻魔大王の説教がASMRとして最高」という口コミが爆発し、ついに現世と地獄を結ぶエスカレーターには、300時間待ちの行列ができた。
「リィナ、あんたも『地獄のイメージキャラクター』として何か投稿しなさいよ!」
とお母さん。
「……えー、めんどくさい。……(投稿:適当な空の写真)×(タグ:#帰りたい)×(拡散:強制)」
リィナが呟いた「帰りたい」という一言は、なぜか「深すぎる」「哲学的なエモさがある」と誤解され、さらに500万リツイートを記録。
リィナは本人の意思とは裏腹に、全次元の若者が憧れる「地獄のカリスマ・インフルエンサー」として君臨することになった。
第63話、ありがとうございました!
「地獄フィルター」で亡者が美男美女に(笑)。
パパのITスキルが、ついにインスタ映えの領域にまで貢献し始めました。
リィナの「帰りたい」がバズるのも、現代社会の闇を感じて面白いですね。




