第64話:『天国の大掃除。 ―白すぎて落ち着かない、母の殺意―』
天国からのプロデュース依頼を受けた九条家。
しかし、お母さんの「白さ」へのこだわりが暴走し、天国は「リラックス」から最も遠い「超・潔癖空間」へと変貌。
天使たちは過酷な労働(掃除)に明け暮れ、亡者たちは「汚したら殺される」という恐怖に震えることに。
お母さんの前では、天国すらも「厳しい実家」へと書き換えられるのでした。
「九条様! お願いです、我が天国も地獄のように『バズらせて』ください!」
地獄のナイトプールでくつろいでいたリィナたちの前に、黄金の光を纏った天使の軍団が土下座で現れた。
最近、地獄が「映えスポット」として人気になりすぎたせいで、天国へ行く亡者が激減。天国は今、過疎化が進んで「限界集落」のような状態になっていたのだ。
「……天国ねぇ。あそこ、Wi-Fi飛んでないし、娯楽もハープ弾くくらいしかないでしょ」
リィナがスマホをいじりながら気のない返事をする。
「リィナ、せっかくの招待なんだから行きましょう。……パパ、車……じゃなくて、次元戦艦出して!」
お母さんの号令で、九条家一行は「天国」へと乗り込んだ。
しかし、一歩足を踏み入れた瞬間、お母さんの顔色がサッと変わった。
「……何よ、この部屋。壁も床も真っ白じゃない。これ、一番ホコリが目立つのよね……! あら、あそこの雲の角! 黒ずんでるじゃないの!!」
「あ、いや、それは『聖なる陰影』でして……」
「言い訳無用! (お母さんの激怒)×(属性:漂白)×(印:サンポール)! 全員、雑巾を持ちなさい! 天使の羽も、柔軟剤で洗い直しよ!」
お母さんの怒声と共に、天国の門が「工事現場」へと変貌した。
「パパ、これ止めて。天使たちが羽をむしり取らんばかりの勢いで洗濯機に放り込まれてるんだけど」
『リィナ。……お母さんは「完璧な白」以外、許せないモードに入ってしまった。……(印:天国の高圧洗浄)×(印:全自動ワックス掛け)×(投げ銭:天使たちのメンタルケア)。……よし。これで、天国は物理的に「発光」するレベルまで磨き上げられるよ』
パパが指を鳴らした瞬間、天国中のチリ一つが消滅。
しかし、あまりにも綺麗になりすぎた結果、天国は「病院のオペ室」のような緊張感に包まれ、訪れた亡者たちは「一歩歩くごとに足跡がつくのが怖くて動けない」という、地獄以上の精神的責め苦を受ける場所になってしまった。
「リィナ様……。地獄はナイトプール、天国は『精神と時の掃除部屋』……。これ、どっちが救いなんですかね?」
魔王サトウが、ピカピカに磨かれた自分の角を鏡にして溜息をついた。
第64話、ありがとうございました!
「天使の羽を柔軟剤で洗う」というパワープレー。
綺麗すぎるがゆえに誰も動けなくなる天国……これはこれで地獄よりタチが悪いかもしれません(笑)。




