第62話:『地獄のホワイト改革。 ―閻魔の涙は、整理整頓の輝きに―』
福引きで訪れた地獄が、お母さんの手で「超クリーンな保養地」へ。
閻魔大王はもはや「地獄の支配者」ではなく、「九条家・地獄支部」の支店長へと降格(?)。
お母さんにとって、地獄の業火もただの「消し忘れたガスコンロ」と同じ扱いでした。
「……ちょっと、なんなのこの場所! どこを見ても血の池やら針の山やら、不衛生極まりないわね!」
地獄の最下層。九条家が到着するなり、お母さんの第一声が響き渡った。
本来、亡者を震え上がらせるはずの業火は、お母さんが**(神鉄製)×(消火:絶対零度)×(属性:大掃除)**の特大はたきを振るうたびに、シュン……としおれて消えていく。
「ど、どなただ! 我が聖域……地獄の秩序を乱す不届き者は!」
玉座から現れたのは、巨大な体躯に角を生やした地獄の主・閻魔大王。しかし、彼がお母さんの「主婦の眼光」と目が合った瞬間、その巨体がビクンと跳ねた。
「あんたがここの責任者? 見なさい、この『三途の川』のほとり! 空き缶と生ゴミが分別もされずに放置されてるじゃない! 亡者の管理以前の問題よ!」
「あ、あわわ……。それは、その……忙しくて手が回らず……」
地獄の王ともあろう者が、お母さんの正論(物理ダメージ付き)に気圧され、タジタジと後ずさる。
「パパ、これ見て。閻魔大王の『罪を裁く帳簿』、湿気でページがくっついてるわよ」
『リィナ。……これでは「天国行き」と「地獄行き」の判定に重大なエラーが出るね。……(印:データベースのクラウド化)×(印:全自動仕分け)×(投げ銭:閻魔への腰痛ベルト)。……よし。これで、裁きは0.1秒で終わるようになったよ』
パパが指を鳴らすと、アナログだった地獄の庁舎は、最新のIT企業のような「洗練されたオフィス」へと変貌した。
「おおお……! 腰の痛みが消え、仕事が驚くほどスムーズに……! 教母様、パパ様! 私を弟子にしてください! 地獄を……地獄を『世界一綺麗な観光地』にしたいのです!」
閻魔大王はその場で土下座し、お母さんに弟子入りを志願した。
「いいわ。じゃあ、まずはその『針の山』を全部抜いて、代わりに『ハーブガーデン』を植えなさい! 挨拶は大きな声で! ゴミを拾うまでが地獄よ!」
その日から、地獄のルールは**『整理・整頓・清掃・清潔・しつけ』**の「5S」へと改正された。
亡者たちは、責め苦の代わりに「雑巾掛け」と「ラジオ体操」を命じられ、あまりのホワイトな環境に、逆に「更生して天国に行きたくない」と言い出す者が続出した。
第62話、ありがとうございました!
「ゴミを拾うまでが地獄」というパワーワードが生まれました(笑)。
地獄の住人が「更生しすぎて天国に行きたがらない」という、本末転倒なハッピーエンド。




