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act.65 静かな朝の出立、冒険への備え

「今になって扉が開いたことについてだが……おそらく、俺がルイーネに来たことが原因だと思う」

「イ、イグナールさんの話を聞いて……私もそうだと考えていました」


 エルフリーデがイグナールの考えに賛同する。


 以前訪れた場所と今との違いは、紫電の力。バージス近郊にあった研究所や、マキナの目覚め。これらもイグナールが紫電の力を得てから動き出した。ならば、ルイーネの遺跡もマキナが造られた時代に稼働していた施設であることは間違いないだろう。


「初めからここに来た理由はルイーネ遺跡の調査だ。エルフリーデ、今回の依頼、受けさせてもらうよ」


 こちらから断る理由は一切ない。提示された調査依頼を快諾する。念のためモニカ、マキナ、ヴィクトリアの顔を伺うと、皆小さく頷いて了承してくれた。


「ありがとうございます。それではギルドへの正式な依頼として書類の作成と、こちらにも準備がありますので……明日の朝出発でよろしいですか?」

「ああ、よろしく頼むよ」


 イグナールは依頼人となるエルフリーデに手を差し出した。彼女は少し戸惑ったような仕草を見せたが、おずおずと手を差し出してイグナールと握手を交わす。まだ書面上の正式なものではないが、契約成立だ。


「それじゃあ、各々準備をして明日に備えよう」


 ルイーネ遺跡での調査では、魔物との戦闘は避けて通れない道だろう。さらに未開エリアの探索となれば、それなりの準備をしておく必要がある。


「それでは皆さん、こちらを!」


 エーミールが懐から袋を取り出し、テーブルの上に置いた。金属音と袋の形の崩れ方からして、金が入っているのだろう。


「依頼の前金です。手持ちの分で申し訳ないのですが、調査前の準備金として使っていただければ幸いです!」

「ありがとう」


 エーミールの差し出した金を素直に受け取る。これと今日受け取った特別報酬の残りを合わせれば、十二分な準備をすることができるだろう。


「それでは皆さん……明日の朝、ルイーネ遺跡前でお待ちしております……」


 エルフリーデ、エーミールとは店の前で別れ、イグナール一行はそのままルイーネの町へと繰り出すことにした。明日の準備を整えるためだ。ルイーネは駆け出しの討伐ギルド員が多くいる町だけあって、バージスに比べると質は少々落ちるものの、どれも安価で十分にアイテムを揃えることができた。


 そして、早めに就寝して明日に備える。


 翌日。たっぷりの睡眠をとることができたので、気持ちの良い朝を迎えることができた。自分の部屋で装備を整えて、宿屋の食堂へとやってくる。女性陣はまだ誰も降りてきていないようだ。ざっと見回したところ、彼女たちの誰かがすでにいるのならば、男たちが群がっているはずだからだ。


 しかし、そもそも食堂はいつもよりもずっと空いている。朝の時間帯は比較的混雑するものだが、今日はとても静かだ。後から連れが来るとはいえ、四人席に一人で堂々と座るわけにはいかないが、今日の様子であれば咎められることはないだろう。注文を取りに来た従業員に朝食を頼む。


 今日から始まる遺跡の調査……しっかり食べておくべきか、それとも激しく活動することになるやもしれないと量を控えておくべきか。少し迷って、量を抑えてもらうようにした。閑散とした食堂の入り口を眺めながら、窓から注ぐ朝日を浴びて仲間たちを待つ。


 しばらくして、パンとスープにサラダ、メインディッシュのベーコンと目玉焼きが同居する朝食が運ばれてきた。オーソドックスで日常を感じられる良い朝食だ。今日、ここには晩餐会と見間違えるような品の数々も、射殺すような男たちの視線もない。


 一人で平和な朝食に浸っていると、モニカとマキナが食堂に入ってくるのが見えた。モニカがいつも持っているカバンは、心なしか普段より膨らんでいる。そしてマキナは布で包んだだけの得物――黒の槍――だけでなく、モニカと似たカバンを持参してやってきた。昨日買って、モニカのカバンに収まりそうにない物を詰めているのだろう。カバンは彼女の趣味で選んだものだから、デザインが似ている。


「ごめんね、遅くなって。荷物は昨日のうちに詰めておいたんだけど、持ってみると意外と重くて……」


 イグナールの正面の席に陣取りながら言うモニカ。そして、すかさず駆けつけた従業員に、イグナールの朝食を指差しながら同じものをと頼む。


 備えあればなんとやらとも言うが、行動を制限するほど重かったのだろう。それでモニカとマキナが少し遅くなったことは理解した。少しすると欠伸をしながら、いかにも眠いといった態度のヴィクトリアが合流した。


「ヴィクトリア、珍しく寝坊?」


 ヴィクトリアは時折大雑把な面を見せるが、いつも時間には余裕を持ってやってくる。単純に寝坊というのは、どうも違和感がある。


「少し、魔石にな……魔力を込めておったら遅くなってしもうてな。少々寝不足じゃ」


 魔石に魔力を込める作業をやったことがないイグナールには感覚が分からないが、たまにモニカが体調悪そうにげっそりとしている時期があるのは、彼女もこうして準備をしているからなのかと、変な納得をした。


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