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act.62 研究代表者の素性と、賑やかな祝宴

イグナールの救出劇に唖然としていた三人組に、エルフリーデによって生み出された空気の塊が襲う。男たちは弾かれたように横方向へと吹っ飛ぶと、木々にぶつかり地面に転がった。呻き声が少し聞こえたが、すぐさま沈黙する。


 それを見たイグナールは抱えていた袋を慎重に下ろし、口を開ける。中には案の定エーミールが、汚らしい布で猿ぐつわをされ、手足を縛られていた。


「ぷはあ! ありがとうございます!」


 息苦しいだろうとまずは猿ぐつわを取ってやると、元気な声が辺りに響く。どうやら何事もなく無事のようだ。


「エーミール! よかった……心配したのよ……」


 目の端に涙を溜めて、エルフリーデが駆け寄ってくる。イグナールには兄弟がいるわけではないが、もしモニカが攫われたなら自分も同じようになっているのかもしれないと、小さく思いを巡らせた。


「リーダルトがいてくれてよかった。彼女がいなければすぐには気が付かなかったからな」

「リーダルト? あ! またエリー姉さん、偽名を使ったの!?」


(偽名? リーダルトが?)


「申し訳ございません……私の本当の名前はエルフリーデ。エーミールからはエリーなんて呼ばれてます」


 彼女は後半、少し顔を赤くして言った。


「僭越ながら、ルイーネ遺跡研究の代表をさせていただいております。一応責任ある地位ですので……素性の知らない皆さまには、偽名を使わせていただきました……」


 なるほど、彼女の言葉には一理ある。いくら弟が連れてきた人だからといって善人とは限らない。むしろエーミールが人を信じすぎるところがあるので、丁度いいのかもしれない。それに遺跡研究の代表ともなれば、より慎重にもなるだろう。


「え、じゃあ、カミラさんの紹介状に書いてあったエルフリーデさんは貴方なのね?」


 気絶した男たちを、どこからか取り出した縄で縛り上げていたモニカが割って入ってくる。紹介状……そう言えばカミラに貰ってからモニカに預けっぱなしであまり確認していなかったが、彼女が言うなら間違いないのだろう。


「はい、お伺いしております。お世話になったカミラさんの紹介の上に、エーミールを救ってくれた皆さまを疑うような真似をして、申し訳ございません」


 エルフリーデは頭を深く深く下げて謝罪した。


「気にしないでくれ」

「はい、はい……ありがとうございます」


 しかし、どうやらイグナールに対しての緊張はまだまだ解けていないらしい。



「なんじゃ、頑張って駆け付けたと思ったら、全て解決済みとはのう」


 荒くれのギルド員たちが目を覚まし、街道に出たころ。ようやくヴィクトリアが追いついた。せっかくなのでギルド員たちは、彼女が生み出したゴーレムに連行してもらうことにした。モニカが用意した縄――野営で衣服を洗濯した際に干すための縄――ではいささか不安が残るからだ。


 魔法が一般に広く浸透しているこの世界では、ただの拘束具では簡単に破られてしまう。そのため普通は、取り付けた者の魔力を吸い上げ、魔法を使用できないようにするための「封魔石」が使用される。あいにく手元にはないが、ヴィクトリアのゴーレムでしっかりと見張っていれば、もう馬鹿な真似も出来まい。このまま討伐ギルドまで連れて行き、今後の処分を任せよう。


 エルフリーデとエーミールは仲良く手を繋いで――エーミールはやや恥ずかしそうに――並んで歩いている。イグナールには兄弟がいないため基準は分からないが、彼らはとても仲が良いように見えた。


◇◇◇


 無事に三人組を討伐ギルドに引き渡すことができて、一段落である。今回の件でギルドから特別報酬まで得ることができた。せっかくなので、その報酬で遅めの昼食に出かけることにする。ルイーネに来た目的の一つ、古代魔法を研究しているエルフリーデに話を聞くにも良い場だろう。


 エーミールの案内で、ルイーネでも評判の店に入っていく。無表情なメイドのマキナ、高貴なドレスを身に纏ったヴィクトリア、白衣を着たエルフたち。なんとバラエティ豊かな集団だろうか。当然、店の人間からは物珍しそうな目で見られている。


 事件のせいで昼食の時間がずれたため、大人数ではあるものの、しっかり席を確保することはできた。まばらに残った客からは奇異の目で見られているような気がするが、気にしてはいけない。


「本当に私たちも御馳走になってよかったのでしょうか?」


 エルフリーデが申し訳なさそうにモニカへ話しかける。どうやら彼女はイグナールに面と向かって話すことを諦め、モニカを介して話をしているようだ。


「気にしないで、エルフリーデ。それに、元々は私たちが困ってるのをエーミールに助けてもらったのがきっかけだしね」


 まあ、そういうことだ。それに研究の代表であり、忙しいであろう時に時間を割いてもらっているのだ。これくらいの発案はさせてもらわないと、逆に申し訳ない。


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