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act.56 エルフの少年との出会い

「せっかくじゃ。わらわも討伐ギルドに入ろうかのう」


 まるでお使いのついでと言わんばかりの緩さで話すヴィクトリア。かと言ってライセンスを取得すること自体はそんな大変なことではない。もちろん何も依頼を受けず、一定の期間が過ぎると失効するのだが、持っていて損になることはない。


「これから、お主らについて回るのなら、あったほうが何かと都合がよかろう?」


 なるほど、彼女がクルトたち黒いローブの連中に巻き込まれた一件をあがないたいと言っていた。ライセンスの取得はその一環ということか。


「あぁ、ありがとうヴィクトリア」

「礼を言われるようなことではない。これから妾が礼を尽くすためのものじゃからな」


 優しい笑顔でそう言うヴィクトリア。つい先日、森の中で盗賊団を壊滅させた人間と同じ女性の微笑みとは思えない。


 その後、ヴィクトリアのギルド登録は何事もなく完了し、一行は改めて宿を目指す。その最中、イグナールは町中から奇異の目で見られ続けた。中には嫉妬を露わにするような刺さる視線もある。


 ついこの前まではそこまで目立つようなことはなかったのだが、何よりもヴィクトリアとマキナの存在が大きい。そこに男一人、女三人のパーティときている。女性陣は誰もが容貌一級だ。むさ苦しい男たちの嫉妬を招くのも無理はない。


 決してそういった関係ではないのだが、それをこの場で声高らかに宣言したところで、ただ羞恥にさらされるだけなのでやめておく。


「よぉよぉ! そこの綺麗なお姉さんたち!」


 宿を目前にして、なんともベタな三人組の男たちに出くわしてしまった。どうやら情欲を持て余す、討伐ギルド員らしい。これ見よがしにギルドライセンスを見せびらかしている。


「俺たち、この前Cランクに昇格したばっかなんだよねぇ」


 Cランク。ギルドが定めるランク付けとしては中の下といったところであるが、勇者の名を借りて一気にBランクになったイグナールとモニカにとっては、それがどれだけの労力を要するものなのかはわからない。


 ただ、自信満々にライセンスを見せびらかし、その点をアピールしている所を見ると、その価値が窺い知れる。


「だからさぁ。そんな冴えない男のパーティは止めてさぁ、俺たちと組もうぜ?」


 明らかに悪口を言われているにもかかわらず、それに関してはなんとも思わないイグナール。それよりも、彼らの方が心配だ。よりにもよって彼女らに声を掛けているのだから。


「死にたくないのなら、それ以上はやめておいた方がいいですよ」


 だから彼らを案じ、優しく敬意を込めて注意した。


「あぁ!? ふざけてんのか! ぶっ殺すぞ!」


 優しく注意したつもりだったのだが、彼らにはそういった意味で伝わらなかったようだ。言葉選びを間違ってしまったらしい。


 こんなところで問題を起こして悪目立ちするのは避けたいのだが……モニカは何故かもう水弾の生成をしているし、ヴィクトリアは拳をかき鳴らしている。どうやらうちの女性陣はやる気に満ち溢れているようだ。


 唯一マキナだけが、いつもの無表情を浮かべて静かに佇んでいる。


 さすがに町中で武器を抜く蛮行までは働かないものの、じりじりとにじり寄ってくる男たちにほとほと困り果てたイグナール。おそらくイグナールがどんな言葉を並べたとしても、彼らを鎮めることは不可能だろう。


 彼らには申し訳ないが、痛い目に遭ってもらうしかなさそうだ。彼女らによって……。


「衛兵さん! こっちです! 暴漢たちが!」


 どこからか聞こえる少年の叫び声が響く。どうやら親切な誰かがこの状況を見て、助けを呼んでくれたようだ。


「ちっ! 覚えてろよ!」


 こっち側が彼らに何かした覚えはまだないのだが……男三人組はそそくさとその場を立ち去った。本当に良かった。さすがの彼女たちも殺すような真似はしないが、彼らが痛い目に遭っていたのは間違いない。


 そう考えると、彼らは衛兵を呼んでくれたであろう少年に礼を言うべきだろう。


「ハァハァ……大丈夫でしたか!?」


 息を切らせて走ってきた彼は、声のイメージ通り少年だった。少年の目鼻立ちは整っており、人間よりも長く尖った耳を持っている。エルフだ。淡いエメラルドを思わせる髪は短く切りそろえられていて、少年特有のハツラツさを強調している。


 イグナール一行、もとい荒くれの彼らを救ったのはエルフの少年であった。人間よりも長寿で、心身共に成熟するのが遅い。その多くはルイーネ南にあるヴァルト大森林で静かに暮らしていると聞く。


 近年では一部のエルフたちが積極的に人間との交流を持ち、討伐ギルドに所属しているエルフも存在する。


「ありがとう。助かったよ。俺はイグナール・フォン・バッハシュタイン」


 イグナールの胸に届かないくらいの低身長である彼を前にして、口調が砕ける。人間で言うと十歳前後といったところだろうか。だが、彼らは途方もないくらいに長寿であり、重ねた年齢だけで言うと間違いなくイグナールよりも上だろう。


「いえ、当然のことをしたまでですよ。僕はエルフ族のエーミールです。この町で古代魔法研究の助手をさせていただいております」


 よくよく見てみると、エーミールは学者然とした白衣を着て、価値がありそうなモノクルをしている。


 古代魔法の研究……。


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