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act.55 中立の町ルイーネ

 遺跡の町ルイーネ。巨大な古代地下遺跡が発見されて以来、調査や観光のため発展した町だ。遺跡内部は魔物の巣窟になっており、複雑な生態系を成している。階層を重ねるごとに魔物は強力になるものの、低階層にいる魔物たちは非常に弱い。


 そのため、討伐ギルドでは常に低階層の魔物討伐依頼があり、駆け出しや新人が経験を積んだり、これからの路銀を稼ぐ場となっている。イグナールやモニカも旅のはじめに訪れ、数か月を過ごしたことがある。


「ほう、ここがルイーネか。なんとも賑わしい町じゃのう」


 物珍しそうにキョロキョロと辺りを見渡し、全てのものに興味を示すヴィクトリア。いつもの余裕のある物腰や、美人な容貌で「美しい」という言葉が似合う彼女。そんな彼女に対して「可愛い」という感想が初めて湧いた瞬間であった。


 ルイーネよりさらに東へと向かえば、大陸を分断するほど巨大なヴァスティーア山脈があり、それを越えた先にはイグナールとモニカの故郷である、ケーニヒ王国が治める領となっている。そのため、ケーニヒ王国とその他の国を結ぶ交通の要衝とも言えるため、現在は遺跡の観光以外でも賑わいを見せる中立の町だ。


 中立……ルイーネやバージスのようにどこの国の干渉も受けない独立した町。それぞれの国が出資金を出すことで成り立つ町である。それはこの世界にいる全人類の敵、魔王を討つことを念頭に置いた町なのだ。


 もちろん、国家間のいざこざは御法度である。中立の町の象徴である討伐ギルドを、国家間のいざこざに利用することも固く禁じられている。


「町を周るのも良いが、先に今日の宿を確保しよう」


 勝手知ったるなんとやら。数か月を過ごしたイグナールやモニカにとって、ルイーネの地理はお手のものだ。


「こんな賑わしい町でそう簡単に宿が取れるものなのかのう?」


 大勢の人々で賑わう風景を見て、ヴィクトリアが疑問に思うのも最もだ。しかし、ルイーネは討伐ギルドの新人の町と言われるほど、魔王討伐を目指す人間への支援が厚い。その一つが、討伐ギルド加入者のみが利用することのできる宿だ。


 充実した何不自由のない施設……とは言えないが、そこまで贅沢は言っていられない。一般客は利用することができないため、常にある程度の空きがあり、格安で寝泊りできるので駆け出しの人間にとっては重宝する施設である。


 そこで一つの問題にぶつかる。


「あぁ、そう言えば泊まるのに、討伐ギルドのライセンスが必要なんじゃないか?」

「それは問題ないと思うわよ。ちゃんとギルドでパーティ登録をすれば大丈夫。私達もディルクたちのパーティメンバーだったから使えたんだしね」


 イグナールが当時見せたのはパーティメンバーの登録証だったのだろうか? 少し記憶が曖昧である。

 何にせよ、先に向かうのは宿ではなく、討伐ギルドということになる。



 イグナール一行はパーティメンバーの登録のため、ルイーネの討伐ギルドにやってきた。バージスに存在するギルドの施設よりも広く、賑わいを見せている。そしてギルド員たちは若く、初々しい雰囲気の者が多い。


 魔物討伐の依頼掲示板の隣には、パーティメンバー募集専用の掲示板も用意され、ギルド員同士の交流や出会いの場にもなっている。そのためか、飲食ができる食堂も併設されているのだ。ギルドのライセンスを提示すれば割引もしてもらえる。


「すみません、ギルドのパーティ登録をしたいのですが」


 皆を連れて受付の女性に話しかける。


「それでは皆様方のライセンスを提示してください」


 事務的に答える女性に対して、ライセンスを提示するイグナールとモニカ。受付女性はイグナールのライセンスを見て目を見開き、その後イグナールの顔を訝しそうに見つめる。


 まあ当然の反応だろう。そんな色のライセンスは初めて見るだろうからだ。


「こちらのライセンスはどちらで発行いたしましたか?」

「バージスの討伐ギルドです。カミラ・ハーラーという女性が受け付けてくれました」


 そこまで詳細を伝える必要はないかと思ったが、念のためだ。


「かしこまりました」


 どうやらあまり深く詮索はしないようで安心する。もちろん、説明を要求されれば全てを話すが、今は少しでも早く旅の疲れを癒したい。


「イグナール様とモニカ様は、すでにパーティ登録がお済みのようですが?」


 ギルド登録時、パーティ登録の申し出まではしていなかったはずだが……おそらくカミラが気を利かせて済ませてくれていたのだろう。


「いえ、後ろの二人とのパーティ登録をお願いしたいのです」


 モニカが進み出て、ヴィクトリアとマキナを受付女性に紹介する。貴族然とした青いドレスのヴィクトリア、メイド服に身を包んだマキナ。二人は完全に貴族御一行様である。


「少々お待ちください」


 受付の彼女は再びイグナールとモニカのライセンスを確認している。


「はい、Bランク以上ですので問題ございません。お二人のお名前をお聞かせください」

「ランクが何かあるんですか?」


 パーティの登録に何か条件でもあるのだろうか? ディルクたちといたときは特に問題なかったと思うのだが……。


「宿や食堂の特典を受けるためだけに、ライセンス登録とパーティ登録をされる方がいらっしゃいますので、一定以上の貢献をしていただいたBランク以上の方々のみとさせていただいております」


 なるほど、そういうことなのかと納得するイグナール。


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