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94話 ACT19-24

「大したもんだな、動きが読めていたわけじゃないだろうに」


 鉤爪が少しづつヒビが入っている。破壊される毎に硬化させているはずの鉤爪だが、シキの攻撃への耐久に中々ついていけない。


「その余裕をすぐにでもなくしてあげますよ。【エクスプロージョンクロウ】」


 マリアが詠唱した【エクスプロージョンクロウ】によって衝突する鉤爪と拳の拮抗した状態に終わりを告げる。アサシンが持つ【エクスプロージョンダガー】を帰化プレイヤー化したマリアの鉤爪バージョンになっていることは想定できる。つまりはこの特殊スキルは爆発を起こすものであることは明確だった。


 マリアの鉤爪は触れるものすべてを溶かしてしまいそうな赤いマグマのように燃え上がり、その瞬間、鉤爪が爆発物としての役割を果たし周辺を大きく爆発させた。


 大きな爆発を起こしその場を素早く離れるマリア。【エクスプロージョン】スキルの爆破タイミングは仕掛ける本人が一番理解している。爆発ダメージの被害を一番食らわずには受けられるが、全く自身も攻撃を受けずに済むものではない。その為、乱発するのは自身へのダメージ負荷も積み重なってくる。もちろん爆発を大きく食らう相手側のダメージはその比ではないので、相手に与えるダメージとの対比を見ながら数多く仕掛けていくのは十分な戦術としては申し分ない。


 爆発タイミングで受けるダメージを最小限にし、素早く離れたマリアは爆発後の煙を深く見入る。シキの油断も重なって大きなダメージを与えている確証はあった。だがそこには、MPで作り出した防御物質でHP同等分のダメージを吸収してしまう【マジックバリア】を左手にかざし大きなシールドとして発動させているシキがいた。


「危ねえ、危ねえ」


 【エクスプロージョンクロウ】の爆発攻撃を受けた【マジックバリア】はその後すぐヒビが入り崩れていく。


「さすがですねシキさん」


 マリアは自信があった【エクスプロージョンクロウ】をこうも簡単にふさがれてしまうとは思っていなかった。シキとの戦いが難航していく流れに、気持ちが重く乗りかかってくる事を感じながらもその戦術の旨さに言葉がついつい洩れてしまう。


「いやいや、マリア、お前もさすがだよ。帰化プレイヤーなんかにならなくてもお前は強くなれたって」


 シキの返答を返す事はなくマリアがまた姿を消す。


「【バックキル】」


 姿を消しシキの背後に現れるマリア、シキの背はマリアの右の鉤爪に狙われている。


「その言葉はもう結構です。」


 だが背後を取られたシキも姿を消す。そして自身の顔の近くまで大きく振り上げた右足を掲げてマリアの背後に現れる。


「俺は言い続けるぞ!!耳を傾けろ!!」


 かかと落としがマリアに迫る。マリアは左の鉤爪で大きく振り払いかかと落としに打つけて攻撃を防ぐ。その衝突で左の鉤爪は破壊されるが、またすぐに復元される。


「【速度上昇】(スピードアップ)6th」


 かかと落としを鉤爪で防がれたシキは反動でバク転して距離を空けるが、そこへさらに【速度上昇】(スピードアップ)パッシブスキルを加えてきたマリアは、すぐにシキの元へと近づき、次なる攻撃を仕掛ける。


 早い・・・。段々とマリアのスピードがシキのスピードを凌駕し始めてきている。


「【エクスプロージョンクロウ】」


 マリアは再び触れた瞬間に大きな爆発を起こす【エクスプロージョンクロウ】を両鉤爪にまといシキを挟みかけるが、シキは大きく飛び上がり、鉤爪挟み斬りは空を切る。


 そして


「【ファイアーボール】」


 シキは右の掌からシキの体を包み込めるほどの大きな火の玉を作り出す。


「あれが【ファイアーボール】!!、でかい!!」


 マリアが見たそれは、もはやAH(アストラルホライズン)で公式スキルとして認識されている【ファイアーボール】とは形状、規模とレベルが違っていた。


 同じくガインもシキの【ファイアーボール】の規模感に驚きを隠せない。


「小童が、調子に乗りおって・・・」


 下にいるマリアに叩きつけるように投げ込んだ【ファイアーボール】が描く大きな閃光は、まるで地面に隕石が叩き込まれるような線を描きマリアがいる場所を中心に大きな爆発を起こす。


 だが


 【ファイアーボール】を投げてつけて、その後地面に降りようとしていたシキに【エクスプロージョンクロウ】を両鉤爪にまとったマリアが宙に上がり、迫ってくる。【ファイアーボール】を交わしダメージを最小限に抑える事よりも、このタイミングを逃したくなかったのか、マリアは自身めがけて叩きつけられようとしていた【ファイアーボール】の中心部をギリギリ避ける形でシキに向かって飛び上がり、【ファイアーボール】の周りでうねる炎の飛び火を食らうダメージ程度に済ませる。


「シキさん、ここで終わらせていただきます」


 【エクスプロージョンクロウ】の両鉤爪をシキに挟みかける。


 勝った!!


 っとその瞬間。


 爆発の場面でその場をいち早く離れる行動を取ろうとしていたマリアの頭の中と、地面に向かってシキに殴りつけられて叩きつけられているマリアの身体は、まさに頭の中と状況が一致しない状態に陥いる。


 そしてマリアは地面に叩きつけられた。


「え??」


 大きなダメージを受けている。HPゲージは1/5を切り危険水域に入ってきた。体が動かない。地面に寝そべっていて、地面もマリアを中心点として大きな窪みが出来ている。誰がどうみてもマリアはシキによって地面に叩きつけれてダメージを受けているようだった。

次回も月曜日19時に投稿します。

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